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春休み。
買い物バックを持ったお母さんに「小遣い欲しくない?」と扇動され、おつかいを頼まれた。いや、これも親孝行だから…! 別にお小遣いで可愛い服買って政宗さんを悩殺するとかそんな狙い抱いてない、……わけがない!
そして夕方、スーパーで買い物をしたのはいいものの、外に出ると雨が降っていた。
小降りなら走って帰るつもりだったけど、この雨あしの強さはなあ。ていうか今日雨降るっていってた? いってないよ、多分!
お店の屋根から出ることが躊躇われ、とりあえず自動ドアから横にずれるわたしを尻目に、他のおかあさんがたはマイカーまで走っていく。チッ、わたしも免許持ってたら車で来たってのに! 近いけど。
この強雨の中、意外と重いバックを持って走る気もないし、かといってここにずっといてもしょうがない。どうしようかなー、ケータイは「すぐ帰るし」と軽い考えから自宅待機にしちゃってるし。お母さんに迎えに来てもらうことはできない。
「あれっななしちゃん」
だからこそ、この声の主にわたしは驚いた。
「あ、猿飛さんじゃないですかー! 傘持ってるし!」
「そりゃ雨降ってるからねー。で? あんたは待ちぼうけ?」
近寄ってきた猿飛さんは、真田さん宅からの帰り道だったそうだ。仲良いな~相変わらず。
「待ちぼうけっていうか……年上の猿飛さんより一足お先に超短期バイトに就職したんですよね。それで買い物に来たんですけど、まさか雨降ってると思わなくて、傘持ってきてないんですよ」
「なんで素直にお遣いって言わないのかなこの子は。つーか今日夕方から一時雨っていってたぜ?」
「マジですか! さすがオカン、天気予報もばっちりチェック済みなんですね」
「はは、じゃあね走って帰るわ」
「アアアアすんませんでした! 待って猿飛さん! ヘーイ!」
傘を狙っていたわたしからダッと走りかけた猿飛さん。慌てて謝罪すれば、ため息をついて渋々というように傘を差しだしてくれた。
ホッとしたわたしは、微笑みながら傘の柄をつかむ。
「ありがとうございます、明日返しますね」
「は? 俺様の傘は?」
「え? この傘をわたしに貸してくれるんじゃないんですか」
「真顔で言わないでくんねえ? びっくりするから」
そして猿飛さんは当たり前のように、「一緒に帰るに決まってんでしょ」と言い放った。
こ、この…猿飛さんと二人で…相合い傘…?
考えた瞬間に、ぞわわわと鳥肌が立つ。
「げー!! やばい、食後だったら吐いてましたよ、もう!」
「人の親切心に対して嘔吐ってどういうこと?(やっべ張り倒してぇ)」
政宗さん以外の男の人と相合い傘なんてっ!
そんなこと……そんなとこ…!
「政宗さんに見られたら、浮気って思われちゃう!」
「あっそ、じゃ、これで」
「と! 思ったけどっやっぱ入れてくださァァい!」
そもそも政宗さんは夕方に出歩くことなんてない、多分。可能性があるとしたら小姑である小十郎さんだ。
一人ですぐさま解決させると、わたしは急いで傘の下に入ったのだった。
「お邪魔します」
真下に入ると、傘の生地にあたって雨の弾ける音が聞こえる。思ったより強めのそれは、隣なのに声を張らないと聞こえないくらいだ。
傘の柄を猿飛さんに持ってもらい、しばらくの間は途切れ途切れながらも会話をする。そしてまた沈黙が訪れたところで、
「ん? ななしちゃん、肩に雨当たってね?」
「え…あ、ほんとだ」
外側の肩…というか、その服の部分が少し濡れていた。でも、着ている生地が厚いので肌が冷えることはない。
本心から「平気ですよ」と答えたら、猿飛さんは困ったように眉をひそめた。え、なぜ。
「そんなに距離とらなくていいだろ」
「距離? 誰とですか?」
「俺様以外にいるわけ?」
言われて、気づいた。
てっきり傘が小さくて肩が出たんだと思っていたら、無意識に傘の柄から身体が離れている。つまり猿飛さんから遠のいているわけで。
「すいません、つい」
「『つい』って何? 全然フォローになってねえよ」
酷いわこの子~、と嘆く猿飛さんが、ほんの少し、マジでちょっぴり、パーセントでいえば0.1パーセントほど可哀相になったので、しょうがないなあと思いながら傘の中心部に寄った。
すると猿飛さんはニヤッと笑い、かと思えば濡れた肩をがっしりと掴んできた。貴様っ、孔明か!!
「離してください、セクハラで訴えますよ!!」
「日頃からセクハラ連発してるアンタに言われてもね」
「何言ってんですか、何一つしてませんよ、猿飛さんには」
「うん、知ってる。俺様じゃなくて伊達にだから。アンタに風邪ひかれちゃたまんねーし」
「え……まさか猿飛さん、わたしのこと好きなんですか?」
「そうだね、ゴキブリの次に好きだよ」
「それ結構ワースト付近!!」
相手がたとえ完全なる恋愛対象外だとしても、全世界で一番嫌われている虫と比べられると傷つくものなんだ……と、わたしは学習しました。
「まあわたしも猿飛さん、結構好きですよ」
「どうせ夏の蚊の次くらいでしょ」
「違います! 真田…」
「え…」
驚いたように目を見開く猿飛さん。
「…虫の次に好き」
「あんたもう傘から出てけ」
「やだ、嘘に決まってるじゃないですか~~! って、ちょっ走るなァァァ!!!」
肩から手を放したかと思うと、突然走り出した猿飛さん。…を追うわたし。
荷物は両手にあり、さらに、当然のことながら逃げ足の速い野郎に傘があるので、結局追いつけないまま。おまけに日頃の運動不足がたたり、重い荷物を持つ腕も、走る足も悲鳴をあげている。
「ちっ、ちくしょーおォォォ……ッ!! ハァ、ハァ…!」
猿飛さんを心の底から呪いつつ、ずぶ濡れになりながら帰宅した。
やっぱあの男、真田虫未満だ!!!
It's muggy today.
(真田虫とゴキブリ付近にいるランクの人たちが戦った日)
翌日、政宗さんの家に遊びに行くはずだったのに風邪をひいてしまい、わたしはベッドで一人泣いていた。
悲しいやらムカつくやら悔しいやら、気づけば政宗さんへのお詫びメールが、
『すみませんでした、本当は政宗さんと(※自主規制)だったんですけど、昨日猿飛さんに、雨の中激しい運動を強いられたせいで身体の節々が痛く、熱が出たので家で休みます』
返信はやはりこなかった。わかってたけどさ。
冷たいなあ、もう。
奴は犠牲になったのだ……。