番外・現パロなど様々
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「気持ち悪…」
今の気分を口に出しても、まったく良くならない。
どうしてちょっとしたことで、こんなに体の中がグルグルしてるんだろう。
「…きもち、わるー…」
わたしはさっき出たばかりの自室に戻り、うずくまっていた。
「いっただっきまーす!!」
今朝。
野郎どもの方々が朝食をワッサワッサとかきこんでいて、通常であればわたしもそれにならっていた。でも、匂いをかぐだけで食欲が失せて、むしろ広間から飛び出したいという衝動にかられたほど。
ちなみにいつもならどでんと座っている政宗さんと目を光らせている小十郎さんは席を外してたので、誰にも文句言われずこっそりと抜け出すことができ、現在に至るわけだ。あああ~本当は政宗さんに思い切り心配されたかったんだけど、それよりも小十郎さんに「俺の飯が食えねーか!!」とぶち切れられる方がゴメンだな。
「はあ~」
そして現在、部屋に戻って布団かぶって、体を縮こまらせてるわけだけど……。
お腹がキリキリと痛い。吐き気もする、でもその動作をするのに体を動かすのが面倒でちょっと我慢してる。
「(ま、自業自得なんだけど…ね)」
実は昨日の夜、数日前からこっそり部屋に隠しておいた菓子を食べたのだ。それがどうやら腐ってたらしい。数日前でも大丈夫だろうと、戦国時代の賞味期限および消費期限をなめていたわたし。
おかげで今現在、激しい腹痛と吐き気におそわれております。あほだね、うん!
とりあえず……具合が少しでもマシになったら厠に行こう…今はそんな力さえ出ない。
「うう~~……」
その時、女性の声がふすまの向こうからした。続いてそれが開く音と、スパンと閉まる音。
そういえばいつも朝食に出てる間、女中さんが洗濯してくれた着物を直してくれてるんだった。
まさかわたしが朝食タイムをさぼり部屋にいるとは思っていなかったようで、畳をすべっていた足音が止まった。
「…ななし様?」
「ど、どーも……ヘヘッ」
ばつの悪い顔で女中さんの顔を見上げる。ヘヘッてなんだわたし。どっかのオヤジかちくしょう。でも上手に笑えなかったのだからしょうがない…!
一方、女中さんはわたしの枕元に正座すると口を開けた。その静かな声色に、ちょっとだけ落ち着く。
「おはようございます。ななし様、朝餉はお召し上がりになられたのですか?」
「えっと、それが…お腹痛くて食欲もなかったんで、戻ってきちゃいました」
「まあ」
大丈夫で御座いますか、と眉をひそめる女中さんに、力なく「大丈夫です」と答える。うん、意味ないよね。
女中さんは着物を脇に置くと、わたしに一言断ってからおでこに手を乗せた。どうやら熱をはかっているらしい。
「……風邪ではなさそうですね…。もしよろしければ、医者をお呼びしましょうか」
「いえいえそんな滅相もないっ。そのうち治りますって」
「しかし……症状が重いのであれば、手遅れにならぬ内に」
「あ、重くはないですよ」
わたしは軽い気持ちで、症状をベラベラと打ち明けた。腹が痛くてなんとなくだるくて食欲がなくて眠くて、………と話していくうちに、女中さんの表情がみるみる変化していったことに気づいた。
「あ、でもわたしが悪いんです。ていうのも、きの…」
「ななし様」
「え? なんでしょうか」
「あの……」
「はい?」
「……………い、いえ…! それでは失礼致します」
え、えええ!! そんな、もったいぶらずにーー!!
わたしが慌てて止めるのもきかず、女中さんは慌ただしく部屋を出て行った。
……なんなんだろう、いったい。
ま、いいか。ふうとため息をついて天井を見上げると、わたしは目をつぶった。ねむい、なあ。
ざわざわ、ざわざわ。
なんだよ~騒がしいなあ、健全なわたしはギャンブルなんてしてないんだけど、と無意識のうちにイライラする。
しかし、さっきから耳に聞こえてくる、ざわめきは全然止むことがない。わたしのいる部屋自体は静かなんだけど、遠くから男の声が多く聞こえる。
目を開けると、そこには一人だけ座っていて、やはり男共の声はふすまごしだった。
そしてその一人、というのは。
「よォ」
「ひ…!!」
絶対零度且つ、どすのきいた声。
こんな声を出せるのは小十郎さんしかいない。口元は笑っているようにみえても目が冷たい、めっさ冷たい。こんな目を見たのは、黙って小十郎さんの部屋に入って畳いっぱいに「LOVE&PIECE☆」と筆書きしたのがバレた時以来だ。あの政宗さんが止めに入ってくれたおかげでわたしは脳天にトドメをさされずにすんだんだよなあ…。
小十郎さんの臨戦態勢に対するわたしは、いまだに体がだるく、思ったように動かない。うん、今何か攻撃されたら間違いなくクリーンヒットだよ。政宗さんというストッパーがいない今ダイレクトアタックかまされちゃうよ。ライフポイント0だよォォォ!!
「あ、あの………?!(ていうか何、なんで小十郎さんってば朝からこんなに怒ってるの?!!)」
生唾をのみこんで布団の掛け布団をぎゅっと握りしめながら、震える声で小十郎さんにもう一度呼びかける。
「こ、こじゅろ…さん?」
「具合はどうだ、ななし」
「え? あ、ああ…あの、まあ、だるくて……お腹も痛いし…」
「吐き気はするのか」
「……はい」
あ、あれ? 普通に体調聞かれた…。小十郎さんのオーラからして体調管理について怒鳴ったり説教されたりするのかと思ったんだけど…。
「ななし」
「へっへい」
「………………」
小十郎さんはわたしを見下ろしたまま、深く深くため息をついた。この時だけいつもの小十郎さんに戻ってくれた気がして、ホッとする。
でもすぐに冷たい目になって、口を開いた。
「隠し立てはすんじゃねーぞ。少しでもそんな素振り見せたら遠慮なくドスたたき込むからな」
「はっはいィィィ!!!」
ドスというにはあまりにも立派すぎる長身の刀を畳の上に置く小十郎さん。ああ、今回はふざけちゃいけないみたいです。ふざけたら首と胴体が永久にサヨナラになるみたいです(というか何、そんなに怒られることなのこれは?!!)
「てめェ、どこの男とこさえた?」
「……………」
……………。
……………。
……………。
え、えええええっっっとおお。
聞き間違いかな、聞き間違いかな。
今の聞き間違いかな!(大事な事なので三回言いました)
「……、コ、サ、エ、タ?」
「ああ」
「………あー、あのー、本当に……すいません。いまいち話が…見えないんです、けど………?」
瞬間、小十郎さんが鞘をひっつかみ、柄を手に勢いよく抜いた。どうやらわたしがとぼけたと思ったらしい。
ぎょえええっと奇声を発するわたし。だがしかし、小十郎さんは全くツッコミをいれることなく、わたしをギロリと睨みつける。
「言ったはずだ。誤魔化すんじゃねえ」
「ごっごまかしてません! ごまかしてませんから!! ていうかなにっ、どういう展開なんですかこれ?! せんせーっついてゆけまっせーん!!」
「どうもこうもねえよ。今すぐそいつの内蔵ぶったぎってくるから、言え」
「エエエエエエェェェェ!!!!?!!」
い、意味がわからないんですけどォォーー!!! なんでこの状況に他の男が出てくる?!
ていうか今小十郎さんはなんて言った?
わたしが!!
政宗さん以外の男と!!
何を!!
こさえただと!!
「(……いやいや、それよく考えたら、わたしかなり誤解されてるじゃん。なんで小十郎さんがそんなこと思ってるのかはわからないけど)」
小十郎さんの物騒な言動に振り回されていたわたしの思考回路は、ようやくクールダウンしてきた。
そこで真っ先に思いついたのは、小十郎さんの誤解をとくこと。それは寝たまま言っても伝わらないと思い、わたしは布団から体を起こして、その上に正座した。
「小十郎さん、落ち着いてください。わたしは誰ともそういうことになってませんから」
「ハッ。それではいそうですかと納得できるわけねーだろ」
「(ムッカー!)だァから、そこを納得してこその姑と嫁の関係でしょうっ!! ていうか大体、小十郎さんにそんなふしだらなことを責められるいわれがぜんっぜんわかりません、見あたりません、ぞんじ上げませんっ!!」
すっかり元に戻り、勢いだけの言葉をぶちまけるわたし。今気づいたけど、興奮しすぎてお腹の痛みとかだるみがすっかり治ってる、かも。ラッキー!(いややっぱラッキーじゃない、目の前にまだ刀身ちらつかせる輩がいる)
わたしの突然の反撃に小十郎さんは一瞬だけ目を見開いたものの、すぐに口調を荒げた。
「とぼけんじゃねェ!」
そして怒りのままに、わたしへ人差し指を突きつけた。
正確には、わたしのお腹へ。
「その症状は、どう考えても懐妊だろうが!!」
「……、は…」
究極の結論をドストレートに言われて、わたしは今度こそ言葉を失った。
アホか、というたったの三文字を、あんなに大声で怒鳴ったのは生まれて初めてだった。
それからまたお腹が痛くなって(うん、そりゃあんだけ腹に力入れたらね)、うずくまるわたし。絶叫をモロにくらって呆然としていた小十郎さんだったけど、わたしが苦しみだすのを見て、すぐに担いで布団にもぐらせてくれた。
か、かついでってのがアレだけど…まあいいや。
「ななし様ァ!!」
「姉御ォ!」
「片倉様ァ!」
そんな時ワラワラとやってきたのは、かわいいかわいい弟分たちだった。嘘です、かわいくないです。怖いお兄さん方です。どうやらふすまの向こうにいたのは伊達軍の皆さんのようだ。
わたしが大声をあげたのがきっかけだったのか、今まで事の成り行きを見守っていたらしい皆さんは部屋にドタドタと入ってくると、わたしを取り囲み、やいややいやとわめきだした。
「姐さん! 大丈夫ッスか!」
「腹ァ痛いんスか?!」
「おい、布団めいっぱいかっぱらってこい!」
「腹をあっためろ!」
「つーか女中の話って事実なんっすか?!」
「そうッスよ、聞きましたよ姐さん!!」
「腹も痛くて吐き気がするって!」
「そういや朝飯ン時抜け出してましたもんね!」
「それで女中が言ってたんス、姐さんが身ごもってるって!」
「本当なんですか!!?」
「身ごもったってマジっすか!?」
「なんにせよめでてえ!!」
「ご懐妊おめでとうございやす!!」
「おめでとうございやす!!」
「それでそいつァ、いったいどこのガキなんですか!!」
「教えてください!!」
「そうしねーと…」
「そうじゃねーと……ッ!!」
そこで、わたしは気づいた。
彼ら全員、頬がハムスター並にふくらんでいる。そこにできた青あざが痛々しい。
そして、全員泣いていた。
「俺達ァ全員、筆頭に殺されちまうよォォォォォ!!!!」
天然娘に説明する時は結論を先に述べましょう
数分後、小十郎さんに担いでもらって厠へ行き、回復したわたしが事実を話し、小十郎さんと政宗さんが別の怒りで暴れ出したのはまた別のお話……じゃ、ないよね。
妊娠疑惑リク。政宗さんは小十郎さんのようにダイレクトではなく、事実を調べようと真面目に一人一人しらみつぶしに脅…探ってました。