番外・現パロなど様々
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久々に奥州へ(遊びに)きて、真っ先に課された任務は嬢ちゃんのお守りだった。まあ忍だからね、給料くれんならなんでもやりますよ。それに嬢ちゃん楽しいから好きだしー。
だがしかし、あちらさんは俺様に対し敵意むき出しだった。いや嫌われてはないと思うけど、なんつーか、言葉の端端に嫌味が入ってるっつーか…。
「猿飛さんてアレですよね、なんかこう、ウワア忍者だ忍だァ!とか騒がれませんよね」
「それ、どういう意味?」
ほらね、突然変なこと言い出すしね。
とりあえず大人の対応としてにっこり笑いながら、嬢ちゃんの両頬をつかみ、ぎゅうとねじってやる。あ、大人の対応っていうのはどんなこと言われても笑うってところね。
さらにちょっと力を込める。………うわあ、女の子が発しそうにない声出しちゃったよ。その恐ろしい形相に思わず負けて手を放すと、あちらさんは涙目でにらみ付けた。
「ぬわ、ぬわにするんですか…!? ヒ、ヒリヒリする…!!」
「いやあ、嬢ちゃんが突然変なこと言い出すからつい仰天しちゃってえ~」
「………(目が笑ってない)」
「で、さっきのどういう意味? 何もしないから教えてくれなーい?」
「教えますけど、でも、口にしたら殺されそうなので紙に書いて渡しても良いですか?」
「そんなに酷い事言うつもりなのアンタ」
前言撤回。どうやら俺様は真田の旦那と違いだいぶ嬢ちゃんに嫌われてるようだ。まあ心当たりがないわけじゃあないけども。でもしょうがない、嬢ちゃん、すごい面白いもん。
そして俺様が許可してないのに、嬢ちゃんは本当に紙に筆を走らせると、「はい!じゃ!」とそれらを文机に置き部屋を出て行った。あ、今 自分の部屋出ちゃいけないんじゃなかったっけあの子。まあいいや。頭をかきながら畳の上に放置された用紙を見る。
『忍者のくせに派手だし手裏剣とか持ってないし術も使ってるの見たことないし、
真田さんのオカンって感じ』
「……………………」
よし、ちょっとだけ。
ちょっとだけ、ね、思い知らせてあげましょーか、ね!
「くっそー小十郎のアホめ…あんなに強く殴らなくてもいいじゃんか…」
つい猿飛さんから逃げる為に部屋を出てしまい、気づけば会議をしている広間にまでお邪魔してしまってこの始末。後頭部にできたたんこぶがヒリヒリしてしょうがない。でも真田さんがすごい笑顔でわたしを迎えてくれたから嬉しかったり! その後政宗さんが小十郎さんに目配せして無言で追い出させなければもっと嬉しかったり!!(無言が怖いんだよ無言が!)
あーどうしよっかな……部屋には戻れない。小十郎さんの畑にお邪魔して草むしりしようかな。ご機嫌取りに思われそうだけど、まあ実際そうだし? 全国のお嫁さんへ一言メッセージ、小姑を敵に回したら駄目、仲間にしなくちゃ! さあレッツトライ!
「ななし」
「あぎゃあああ!!!」
いきなり背後から肩をポンと叩かれ、悲鳴をあげる。でも声に見覚えならぬ聞き覚えがあって、すぐに振り向いた。思った通り、そこには麗しのマイダーリン! 不適な笑みが似合いすぎて…うぐ、鼻血が…!?
「ていうか政宗さん、さっきまで真田さんたちといなかったですか?」
「後は小十郎に任せてきた。あんな退屈な話し合いより、もっと優先するもんがあるだろ?」
「え? 優先するもの?」
「ああ」
ふいに、顎に指をそえられ、くいっと上を向かされる。そこで政宗さんの片眼がわたしをジッと見つめていて、無意識の内に生唾をのみこむ。ま、まさかここで言わないよね、いやいや政宗さんに限って
「アンタが、な」
わたし、今なら政宗さんの為に織田信長討ち取れそうです。</big>一回も会ったことないけど。
うわーなんだか気分も身体もふわふわ浮いてどうにかなっちゃいそう。今の殺し文句って言うんじゃないだろうか。いやまさかこのシチュエーションで、ツンツンデレこと政宗さんが放つとは…!!
どっちかって言うと政宗さんてこういうキャラじゃないもんね。いやそのギャップがまたいいんだけども。そうですよ結局 政宗さんが毒舌になろうがクールだろうが熱血漢だろうが、今みたいにデレモードだろうがわたしがメロメロなことに変わりはないのですよ!
「い、今のマジですか政宗サン…」
「俺は嘘は言わねェ。ましてやななしになら、尚更だ」
「うわあああそれ以上わたしを殺さないで! 心臓が爆発します! 時限爆弾カウントダウン開始しちゃいます!!!」
無い胸を両手でおさえながら、本能のまま政宗さんから一歩離れる。ダッダダダメだこの状況は慣れてない、心の準備が、ていうかこの甘ったるいムードをどうにかして!? ほらっギャグの神様おりてこい! 今日も良い日和だよぉぉぉぉ!!!
だがしかし、神様も天使もおりてくる気配はない。更に、いつにないデレモード全開の政宗さんは妖しい笑みを浮かべながらわたしを追い詰めていく。もっもお駄目!! 三十六計逃げるにしかず!
「わっわたし部屋に戻ります! じゃ!」
政宗さんに背中を向けて走りだそうとしたものの、すぐに片腕を握られぐいっと後ろへ引き寄せられる。よろめいたわたしを優しく包むのは、やはり政宗さんの長い腕で、おまけに力までゆるく込められる。
そしてとどめの、耳元でのささやき攻撃。
「俺から逃げられると思ってんのかい…?」
「思ってません! すみませんでした!」
反射的に謝りつつ、心臓がバクバクして体温が急上昇して…ああああ何がなにやら! 混乱してわからない。ていうかおっおかしい今日の政宗さん…いやでもぐっじょぶ! でもやっぱりおかしい! それでもありがとう!!!
そのまま身体をくるりと反転させられ、政宗さんと向かい合う形になる。
髪をなでられながら、政宗さんの口が動くのを放心状態で眺めるわたし。や、もう思考停止寸前なので…。
「アンタ……かわいいねえ」
「え」
今までの殺し文句で一番きいた、かもしれない。だってわたし、政宗さんにこうして面と向かって可愛いって言われたことないもん。いや殺し文句自体ないけど。でも、どんなに刺激的で妖しい台詞より、この台詞が一番、
「ほ、……ほんと、ですか?」
胸にきてしまった。
思わず政宗さんののびたままの腕に手をのせ、ぐいっと顔を近づける。これで頷かれたらまじで死ぬわわたし。
その時だった。政宗さんがハッとしたような目で わたしを見下ろし、息を呑んだ気がした。
そして次の瞬間、素晴らしい程の跳躍力で上空に跳ね上がる。ええええっ政宗さんてばこんなに飛べるも……
「………」
あれ。
おかしいな、政宗さんの後ろに政宗さんがいるぞ?
思わず目をこする自分に対し、二人目の政宗さんが腕組みをし胡乱げな目つきを向ける。
「…え、あ、れ?」
「ななし。俺はアンタに、部屋にいろと言ったはずだぜ?」
「ま、まさむねさ…あれっじゃあ今の…」
「ごめんねえ~嬢ちゃん!」
「!!?!」
ジャンプしていたはずの政宗さんは、いつの間にやらわたしの背後にいたようで。慌てて声のする方へ振り向くと猿飛さんにかわって…いや、違う。戻っていた。つまり、今までの政宗さんは……
「…っさ~る~と~び~さァァァァァん!!!」
ちくしょう、でも、これなら納得がいく。今までの政宗さんが偽物、もとい猿飛さんであれば、あんな甘い言葉の一つや二つ平然とはき出すに違いない。ケッこれだからイケメンは!!(あっでも政宗さんは別!) ということは今までわたしはあの猿にドキドキさせられていたってこと?!
「うがあああっっ!! 許すまじッ!!」
「まーまー。でもこれでわかったろ? 俺様だって立派な忍なんだぜ~?」
「そんな立証の為にわたしの純情を踏みにじったんですね!? 返してください、心臓が無駄に高鳴ったあの心拍数を今すぐ!!」
「んな無茶な」
政宗さんが猿飛さんをジロリと見ていることに一切気づかないわたし(背中向けちゃってるからね)は、突然 猿飛さんが妖しく笑ったのでちょっと引いた。
「でも、嬢ちゃんのあの顔、すっげェそそられたよ」
「は?」
「かわいいって言われてあんなに反応するなんてねー。ちょっと ときめきそうだった」
「黙ってください!! その口縫い付けますよ!」
それなら、猿飛さんをそそるより政宗さんをそそりたかったっつの!! 今にも歯ぎしりしそうなわたしをクククッと笑い、猿飛さんは笑みを浮かべる。
「俺様、思わず嬢ちゃんを…おっと、これ以上はまずいか。伊達の旦那もいることだし」
「…何一人でブツブツ言ってるんですか…。…先生、あの子のテンションについていけません」
「...Me too.」
結局猿飛さんの独り言はよく聞こえないままで。真田さんに大声でどこからか呼び出されたかと思うと、シュンと消えてしまった。完全に取り残されたわたしと政宗さん。
「……………」
「…………」
よし、とりあえず次会ったら何か投げつけよう。
そう決意するわたしの横を通り過ぎた政宗さんは、しかし、足を止めた。そのまま振り向くことなく、呼びかける。
「ななし」
「? はい」
「……いや、なんでもねェ」
「……?」
そこでわたしは、政宗さんがやはりツンデレなんだと改めて思いました。
きっと、わたしのこと「かわいい」って言いたかったのね!
「(ムフフ…政宗さんてばかわいいなあ)」
「(背中に『阿呆』の紙が貼ってあンだが、…別にいいか)」
「佐助! お主今までどこに…」
「んー、ちょっと遊んでた。いやああの子ってほんと面白くて」
「む…」
「やーだー旦那ってば妬かないでよ」
「な!! だっ誰が誰に……ん? 佐助、その衣服、背の部分が少し切れているぞ」
「え? ああ、背中…そっか。あの時やっぱ刀ぬいてたんだ、独眼竜」
世の中知らないほうが幸せなこともある
もしななしちゃんに一瞬でも長く見惚れてたら背中斬りつけられてたっていうことです。リクありがとうございました!