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ごくり、とつばをのどの奥に押し込む。そうでもしないと途中で止まる、くらいに こゆい。
どうしよう。
『ケーキ食いたかったら放課後十分以内に家に来い』
ケーキ。
あの政宗さんが作った、あのプロが作った、ケーキ。
「食べたい!!!」
「そうですか」
明智先生の冷えるような声に、脳に大量分泌していたアドレナリンが沈静化する。し、しまった。今は他ならぬ極悪で冷酷で非道な明智先生の授業だった……!!
慌てて携帯電話をしまったので取り上げられることはなかったけど、かわりにむんずと首根っこをつかまれ、わたしは教壇に連れてこられる。
「貴女の為に切り刻んでおきました。どうぞ、……召し上がれ」
「………」
わたしの目の前には、仰向けになった、ぴくりともしない、通常よりも大きなサイズのアマガエル。
「………」
お腹の上には、メスとミニフォークがそえられていた。
「すっすいませんでしたああああアァァァ!!!」
キーンコーンカーンコーン。
恨めしそうにわたしを睨みつつ明智先生が教室を出て行くのを確認してから、わたしは机に倒れ込んだ。
「ああ~…死ぬかと思った…」
やっぱり授業中にケータイは開くもんじゃないとしみじみ思う。元々わたしはそんな不真面目じゃない、むしろ授業中はカバンの中に突っ込んで触ってない。
それがなぜ明智先生にバレたかというと、昨日やっと政宗さんにメールアドレスを聞くことができ、嬉しくてずっとアドレス帳を見つめてしまっていたわけで。そりゃ嬉しいさ! 愛しい人の個人情報がわたしの! 手中に!! 住所も電話番号も誕生日も血液型もぜーんぶその場で(無理矢理)聞き出したしね。最後に初体験について聞こうとしたけど、政宗さんの友人である小十郎さんが暴れ出したおかげで失敗しちゃったなあ。見かけ通り、酷いよあの先輩は。わたし女の子なのにプロレス技を本気でけしかけてきたからね。パイルドライバーとか、床、言っておくけどもの凄い固いからね。とりあえず二度と小十郎さんの前では政宗さんを汚さないように心がけます、はい。
「大丈夫だったか? ななし」
「いつきタン!」
「その呼び方はやめれ」
「あはっごめん」
このクラスの、いや、学年一のマドンナであるいつきちゃんが、わたしを心配そうに見上げている。相も変わらず可愛いなあ。
そんないつきちゃんはわたしが突然絶叫したことがいまだに謎のようで、「変な夢でも見ただか?」と首をかしげた。
「ううん、違うの。さっきの授業の時、ずっとケータイのアドレス帳見てたらメールが届いてさ。そしたら政宗さんからで、放課後家に来てくれって!」
「へえ! ななし、それってすごいだよ! 楽しんでくんろ」
「うんっ、ばっちり楽しんでくる!」
「でも気ぃつけるだよ、男はみんな狼だかんな。ななしは無防備すぎるから、ぜってぇあぶねえだ!」
「だーいじょーぶ! むしろわたしが襲ってやるくらいだしねフフ!」
「ははっ、ななしならほんとに そうなりそうだべ!」
満面の笑みでそう言い放ついつきちゃんは、やっぱり天然だと思います! 可愛いから許すけど。
そして放課後、わたしは颯爽と教室を飛び出し、
「おーいななし!」
「!!」
…たかったものの、担任の前田先生につかまってしまった(とほほ……) 振り向けば奴がいる、ちくしょう殴りにいきたい。
「やあやあやあ、なんですか前田せんせー」
「なんだその返事? まあいいか、それよりさ、アンタ明日日直だろ?」
「そうですけど」
「うん、じゃ、教室に残って手伝いしてくれよ」
「あーはいわかりました。明日ですよね?」
「いや、今から」
「…ええええええ?!!!」
なんでそーなるの! これからわたしは政宗さんのご自宅に突撃するというのに! いつもなら前田先生の朗らかな笑顔に負けて「しょーがないなあ」と了承するけど、ダメだ、天秤にかけるまでもない。圧勝で政宗さんだ。
「すいません先生、わたし用事があるんです。ほんと急用でやばいんです、下手したら警察沙汰かもしれません」
「なんだそりゃ?! ならちょうどいいや、俺がこれから相談に乗ってやるよ!」
「!? い……いいいりませんいりません!! 先生はただわたしの後ろ姿を見送ってくれるだけでほんとっいいんで!」
先生の手から無理矢理腕をもぎ取ると、わたしは風の如く走り去った。途中階段を下りてきた先生に「廊下を走るな!」と怒られたけど、政宗さんに約束を破ったことで怒られるほうがもっと嫌だ。
でも……前田先生には、ちょっと酷いことしたかな…まあいいや、明日は何かお手伝いしてあげよう。
「逃げんなって」
「ホギャアアアアアアアアアア!!!」
なななんっばでぇぇぇぇ!? わたしの足そんなに遅かった?! あっという間に捕獲されちゃったんですけど! 思いきり走ったはずなのに、追いつかれるの早ッ!
さらに今度は相手も考えたようで、腕ではなく、胴体ごと捕らえられた。…え、胴体? 胴体!? 先生、これは危ないと思いますが! 何が危ないってわたしの命! 今にも心臓破裂しそうだし何より周りの前田ファンが怖い。決めた、明日、休む。明後日は土日だし。
「はっ離してくださいィィィ!」
「やだね。離したら伊達んとこ行っちまうだろ?」
「!? なんでそれ……」
「あれっ適当に言っただけなんだけどな」
「!!!!!」
そしてわたしの手をとり教室へ戻る前田先生。とりあえず教室に戻ったらすぐメールしよう、見かけもわたしの扱いもクールな政宗さんだけどとっても優しいから、きっと許してくれる。まあ許してくれなくても構ってくれるなら問題ないしねフフッ!
それにしても。前田先生の手、あったかいなあ。力こもってるなあ。…ちょ、痛いんだけど。廊下が下校生徒でごった返してるから、わたしがそれに紛れて逃げないようにしてるんだろうけど、うん、痛い。ぎゅううって、手の甲が真っ二つに折れるくらい。
「せっ先生、痛いです! もう帰りませんから!」
「下手したら警察沙汰になるくらいの相手より、俺のほうが絶対いいのになあ」
「…え? 何? なんか言いました?」
「ああ、悪い悪い! 強く握りすぎちまったな」
「? そうですよー」
前田先生の呟きは廊下の騒がしさでぼそぼそとしか聞こえず。
ようやく先生の手から離れたわたしのその手には、真っ赤な跡がついていた。
「諦められるもんか
まだまだチャンスはあるはずだ」
「え、先生なんかまた言いました?」
「ななしの気のせいだって」</font>
モラハラって一種の悲恋も兼ねてるのね…。