番外・現パロなど様々
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「政宗さーん」
わたしがへんてこな飲み物をのんで政宗さんとラブラブになった騒動の翌日。……といっても、どんな感じでラブラブだったのかは一切覚えてないし知らない。政宗さんが照れて教えてくれないのだ(ほんとにシャイなんだからもォ!) でも目をさました時に政宗さんがああやってくれたのはとっても嬉しかった。また味わいたい、というわけでつい先ほど物置小屋を探したんだけど、なぜか見つからない。もしかしたら政宗さんが持ってるのかもしれないと思って、今会いに来たんだけども。
「お邪魔しまーす、ところで昨日の飲み物、どこにいったか知りません?」
「唐突すぎるだろ。…知らねえな」
「えー…まいったなあ」
「…なんでそんなもん知りたがるんだ?」
「そりゃ勿論、飲んで政宗さんとラブラブに」
言い終わる前に座布団を顔面にくらいました(一瞬息がつまった! 呼吸器ビックリしてたよちょっと!!) チッどうやら政宗さんは持ってても持ってなくてもわたしに情報を提供する気はサラサラないみたいだ。
まーいいや、ここで政宗さんと攻防戦を繰り広げてもしょうがない。「またきますね、深夜に」とスマイルを浮かべて部屋を出ると(今度はダブルで座布団きたけど、避けれたよ!)、わたしはもう一度物置小屋を調査することにした。
………するはず、だった。
「ゲ!!」
「…なんだその顔は。まるで化け物に出くわしたような顔しやがって」
「なっ、そ、そんな思うわけないでしょ! 全国の化け物さんに対して失礼ですもん!」
「どの口がほざくんだテメェ!!」
物置小屋の前に、小姑こと小十郎さんが立っていたのだ。早速 本音を滑らせたわたしは小十郎さんにガミガミと言われながら、チッどうしてくれようかこのオールバック、と考える。恐らく物置小屋を気にしすぎたら小十郎さんもそれに気付いて、昨日のことが芋蔓式にバレるかもしれない。政宗さんに「他言無用だ」と約束(という名の脅迫)された以上、たとえこの鬼姑でも白状するわけにはいかない。ていうかむしろ姑だからこそ、白状しない、できない、殺されるから!
「……おい」
「!? はっはい!」
「…何、さっきから物置 気にしてんだ」
「なっにを?! すいませんわたし意味わかんないんですけど何これもしかしてアレなのナンパですか? 悪いけどわたし、政宗さん以外の人間に興味ありませんから!」
「刺すぞ」
「すいませんでした」
斬るぞとかじゃなくて刺すっていうのがなんとも危ない。刺すって、しかもめっちゃ本気の目だし…!
……兎にも角にも、物置を凝視しているわたしに気付いた小十郎さんは、やっぱり小屋に興味をしめした。
「そういえば、こいつの扉が開きっぱなしだったのァ…お前か」
「えへ、すいません。ちょっと急いでて」
「なんで急いで物置に入る必要がある。捜し物でもあんのか?」
「はい、見つけにくい物なんです。鞄の中も、机の中も、探したけれど見つからないのに…」
「うぜえ」
フフッフー、と歌うわたしのつむじに拳骨をくらわせると、小十郎さんは物置の扉を思いきり閉めた。
「少なくともこんな所にお前の捜し物はねーことは確かだ。オラッ、散れ」
「散れってわたし一人なんですけど」
何それ、わたしをさらに分散させろと!?と突っ込みたいのも山々、すいません、元々そこから連れ出した物が迷子なんですと告白したいのも山々だった。でも小十郎さんにはそう言っても無駄だから、ここは大人しく引き下がることにした。別に今じゃなくてもいい。小十郎さんがここにいないのを見計らって来ればいいだけだし。
その時、物置小屋の中で音がした。ボスン、という音だ。先に動いたのは小十郎さんで、扉を思いきり開け放った。ビキ!と扉が悲鳴をあげたことには同情したよ…(ああ、扉の破片が…!)
「…なんだ」
「あー! あったーあ!!」
どうやらさっきの音は、あの瓶がどこからか落ちた時のようだ。突然出現した瓶に、小十郎さんは拍子抜けした表情だけど、わたしは目を輝かせて駆けつけると、それを手に取った。これでまた政宗さんとイチャイチャに…!
「……あれっ?」
手にした時、違和感があった。なんだろう。今更だけど、この時代は電気なんて便利なものはないので、物置は本当に薄暗い。そんな中で瓶の違和感を確かめようとしてもわからない、それで確かめる為に明るい外に出ようとした時、突然上から手がのびて、それを取り上げられてしまった。言うまでもない、小十郎さんだ。わたしがやけにハイテンションなのを怪しんでるんだろう(ちくしょう正解だぜ!)
「何 勝手にてめーのモンにしてんだ。返せ」
「えっちょっと、やっ…やああだあああ~~!!!」
小十郎さんの手に渡ってしまった瓶をなんとしても取り戻したいわたしは、年齢無関係で全力で抵抗した。しょうがないじゃない、愛の力は巨大なのだから! 政宗さんに愛される為ならわたしなんでもやるわ! やってやりますともっ!!
「待って待って小十郎さん!! 一口でいいからちょうだい、一口!」
「ふざけんな、ここにある酒は全部 政宗様への献上物だ。間違ってもてめーみてーな女に飲ませるもんじゃねえんだよ」
「ちょっと小十郎さん、わたしはその妻になる女ですよ! いーじゃんちょっとくらい、ほんと、口につけるくらい! もしかしたら思わずゴクゴク飲むかもしれないけど!」
「尚更渡すわけねーだろうがァ!!」
ああああ待って、小十郎さァァァん!!
そう絶叫する時、わたしは小十郎さんしか見てなくて、一歩踏みだした時、足下の床のちょっとした段差に気付く事ができなかった。そんなわけで勢いよくつまづいたわたしは、小十郎さんの手によって留まることができたけど、
「あっ」
瓶が小十郎さんの手から放れ、空中を舞うと同時に、ひゅんとわたしの頭上に降ってきた。いや渡してほしいとは言ったけど、こういう渡し方は望んでないな、うん。
「チッ!」
舌打ちした小十郎さんは、わたしの頭を手のひらでわしづかむと、ブンッと投げた。く、首がァァァァァァァ!!
地面に叩きつけられた体を起こしたわたしは、物置の外にいた。どんだけ投げられたのわたし、ていうか首が痛いです先生。
「いったー…じゃないっ、小十郎さん!」
どんなやり方であろうと、わたしを助けてくれた小十郎さん。慌てて物置に再度突入すると、そこで待っていたのはむせかえるような酒の匂いだった。そして目に映る、割れた瓶の残骸。
もしかして、と血の気が失せる。どうしよう、わたしのせいで小十郎さんが怪我してしまったかもしれない。ただ床に落ちて割れただけならいいけど……。
けれど、それは都合の良い希望だった。もう一歩進むと、薄暗い中、倒れている人物を目にする。
「こっ…こじゅうろうさん!!」
足で酒をビチャビチャと踏みながら、小十郎さんの元へ駆け寄る。きゅっ救急車!! 救急車呼ばなきゃっ!! 違う医者だお医者ァァァ!! いやその前に人工呼吸? ちょっ流石にそれは…でも躊躇してる場合じゃない! ていうか落ち着けわたし、保健体育を思い出そう。こういう時は…えと…そうだ、意識確認!
「小十郎さんっ大丈夫ですか?!」
これで小十郎さんが声を出せば良し、出なければ本格的に危ないと思う。心臓バクバクで小十郎さんの上半身を抱き起こしたわたしは、声が出なかった。
「……………あ、……れ…え…?」
小十郎さん、じゃ、ない。
誰だ、この、男の子。
「……もしかして、変わり身の術?」
口にしたものの、それはないと自分ですぐに否定した。だって変わり身の術って木の幹だし。今わたしが抱き起こしたのは紛れもない人間で、ちょっと身じろぎして「ング…」とかこぼしてる男の子で。
でも、この子が着ている(というか身に包まれている)ものは、紛れもない、ついさっきまで小十郎さんが着ていたものだ。
意味がわからない。ついでに言うと、この子、酒臭い。もしかして瓶がどこかに当たって割れてそのまま被ったのか?!と思うほどの、全身からの匂い。そこまで思って慌てて怪我がないか頭をさすってみると、たんこぶらしきものもなく、血は出ていなかった。ホッ。
「もー…どこにいっちゃったんだろー…小十郎さん」
「…なんだ」
「………あ、気が付いた? 良かった」
「良かったも何もねぇだろうが…くそっ」
「どうしたの? 腕が痛いの?」
「まぁな…どうやら腕で防いだくらいで瓶が割れちまったみてーだ」
「え」
「にしてもお前、随分と馴れ馴れしい口調になってんじゃねーか」
「え」
少年、は、あれ、少年だよね?
間違っても、「こ」で始まって「う」で終わる、あのヤクザの方じゃないよね?!!
「おいななし、拭きもん持ってこい。酒臭くてかなわねー」
「………あの、もしもし」
「ウダウダ言ってねえで持ってこい!!」
「ストップストップ、……あの、すいません、もしかして小十郎さんですか?」
今度は少年が目を丸くする番だった。うう、可愛い。もし今までの台詞を小十郎さんの声で言われれば「イエッサー大佐!」と物置を脱出しただろう。でも今のはとっても可愛い声で全然低くなくて、微笑みながらスルーできるほどの余裕がある。これなら、そうね、そうだね…みたいな、お姉さんタイプになれそうだ。
「……頭でも打ったか?」
「良いから答えてください」
「意味がわかんねーな。俺は俺だ。たった今お前をぶん投げて酒ぶっかけられた男だよ」
「…ていうことは…こじゅうろうさん…」
次にわたしがすることといえば、土下座でした。
「すっすいません!!! ほんとすいません!!」
「は?」
「悪気はなかったんです、殺意もその時はなかったし…! なのにこんなことになるなんて!」
「おい、その時はってなんだてめェ」
「でも許してください、今からやること許してください」
「なっ、てめ」
「だって今の小十郎さん、」
超かわいいんだものおおおおお!!!!!
「……どういうこった、こいつァ」
「小十郎さん、です」
「酒くせえ」
政宗さんの部屋にて。
ぐったりした小十郎くん(少年だから)をだっこするわたしを見て、政宗さんは何故かハァ、とため息をついた。あれ、てっきり「嘘だろ」と吐き捨てられるかと思ったんだけど……。
「…何があった」
「それが……」
かくかくしかじか、四角いなんとか、そんなわけで説明を終えたわたしは政宗さんの反応を伺った。
「……で、アンタはなんでそいつ抱えてんだ」
「え」
感想とか今の説明の疑問点とか、一切スルーですかちょっと。政宗さんは小十郎くんを見ていて、気のせいか機嫌が悪そうだ。えへ、もしかしてジェラシー?なんてこっそり嬉しがるけど、すいません、こうしたのは自分だし(ぎゅってしたりすりすりするだけで絶叫した小十郎さん、絶対に誰にも言えない…)実際かわいいのでだっこしてます。
「とりあえず、あの、小十郎さんをこんな風にしてしまって申し訳ないです。戦とか始まるときわたし呼んでください、頑張りますんで!」
「呼んでたまるか」
余計邪魔だろ、と容赦ないツッコミだけど、今のわたしにはどうってことない。ようやく動けるようになった小十郎くんがわたしの腕から離れようともがくので、わたしはそれを阻止した。
「てめえっいい加減にしやがれ!」
「やーだー! だって小十郎くんかわいいんだもん!」
「『くん』だあ?!! なめんじゃねえぞ!」
思わず口走ってしまったけど、気にしない。小十郎くんの胴体に腕を回すと、そのままぐいっと胸におさめた。ほんとかわいいなあ、小十郎くん。小学生の低学年くらいかな…? ちなみに衣服はきちんと身につけております、小十郎くんの部屋にあったものを。幼少期に着ていたものらしいけど、大事にとっておくなんて……ううん、ますます小姑じみてきてる。
「ああーもうほんと、やばい」
「やばいのはお前の脳みそだ」
「そうだね、わたしの脳みそやばいね。ていうか…なんかあの…お願いがあるんですけど、こーくんって呼んでいいですか?」
「良いわけあるかボケ」
だってこんな男の子に「小十郎」なんて、ねえ? いや勿論格好いいけど、だからって「小十郎くん小十郎くん」と呼ぶよりも、「こーくん」のほうがいいと思うんだよね。
わたしを にらもうとしたのか、怒った顔で振り向いた小十郎くんの目はとってもクリクリしてて澄んで、「え、これがあの将来のヤーさん?」と疑いそうなほどの可愛いもので。ズキューン!!と何かがわたしの胸を貫通した。
「ぐはっ! やばいキた…キュンッてきた…!!」
「「勝手に一人で盛り上がってんじゃねーよ」」
おお、奥州コンビがシンクロ。二人とも絶対零度の視線をわたしに寄越してます。ひいっ、ちょっと調子に乗ったかも…。
しょうがなくわたしは小十郎くんを離すと、小十郎くんは急いで政宗さんのところへ向かった。ああ、走る姿もかわゆい。
「政宗様、」
「Stop. ……何も言うな、小十郎。とりあえず、ななしみたいに記憶がぶっ飛んじまうようじゃねーみたいだな」
「…ななしみたい、と申されますと?」
「………そういう事、だ」
「………」
「Come here,ななし」
「はいっダーリン!」
政宗さんにおいでおいでをされてから二人の方に突撃する。ただし場所は、政宗さんではなく小十郎くんの隣だけど。
にしても、これから一体どうするのだろうか。小十郎くんがどうやったら小十郎さんに戻れるのか、全く見当がつかない。
政宗さんや小十郎くんはどう考えてるんだろう、と二人の表情を伺ってみる。
「……!! ……ッ!!」
やばい。政宗さん、格好いい。小十郎くん、可愛すぎる。なんというパラダイス! はううっ、お持ち帰りいィィィィイ!!!
でも、小十郎くんの頭をなでた時(嫌がられたけど)酒の匂いがぷーんと漂ってきた。
……決めた。今から、やること。
「政宗さん」
「どうした」
「小十郎くん、お風呂に入れてきていいですか?」
「は?」
小十郎くんが眉をひそめてわたしを見る。わたしはニッコリ笑うと(あれっ顔背けられた…そんなに嫌かチクショー)、
「ほら、お酒の匂いすごいするし、このまま考えても先に進まないなら、一度サッパリしたほうがいいと思うんです」
「…俺ァ別にかまわねーが…。小十郎はどうなんだ」
政宗さんの目が小十郎くんを捉える。小十郎くんは何故かギクッとした表情を浮かべたけど、すぐにそれを消して、「いえ、結構です」と首を振った。ちょっとォォ今のパワハラでしょ! 政宗さん今小十郎くん威圧したでしょ!!
「政宗さん、パワハラはダメですよ! ほらっ行くよ小十郎くん」
「はっ?! ふざっ、」
小十郎くんをひょいと抱き上げると、わたしは政宗さんの部屋を出たのだった。
「...You pissed me off.」
「? 政宗様?」
「え? なんですか?」
「……いや。さっさと入れてきな」
「…? はーい」
「……って……なんでてめーまで入ってくんだ!!」
「だってー」
心配だし、と渋るわたしを、小十郎くんは「絶対に来るな!!」と念押しして、扉を閉じた。まあいいや。
まだかなーまだかなーとわたしが素直に外で待っていると、突然小十郎くんの叫び声があがった。
「えっ…!!」
ひ、非常事態だ、非常事態!! わたしは慌ててお風呂場へ駆けつけると、再び倒れている小十郎くんを発見した。気のせいか湯げむりがいつもよりひどい。桶が小十郎くんのすぐ側に転がっていることから、思いきりお湯をかぶった、のかな? でもそれで叫び声って……よほど熱かったのかな。
「ッグ…」
「大丈夫ですかっ、こじゅうろ」
わたしが駆けつける直前に起き上がった小十郎「くん」は、
「……てめー、また俺の言いつけ…あ」
「あ」
声が低くて、顔が老けてて(あ、これ禁句だ)
「あ……ッ」
「どうした、馬鹿な顔して」
上半身だけ体を起こした小十郎「さん」は、堂々とした素っ裸で。
ましてや下半身なんて、ふんどしもタオルも巻いてなくて。そういう時に限ってかき消されているのだ、あの湯げむり。
「…………!!」
冷静になったわたしは、小十郎さんに駆け寄るはずの足をその場で止め、無意識のうちに絶叫していた。
「うわアアアアアアアア!!!」
しばらくして、お酒の匂いがさっぱり消えた小十郎さんが帰ってきた。
「よォ、戻ったな小十郎」
「は…御迷惑をおかけ致しました。お湯をかぶった途端に身体中から痛みを感じたのですが……どうやら酒を流した事により戻れたようで」
「そうかい」
「……ところで政宗様」
「What?」
「…ななしは一体何をしているのですか」
「……さあな」
ククッと笑うと、政宗さんは、自分の背中に抱きついて離れないわたしを振り返った。
「……余程、刺激のつえーもんを見ちまったようだ。…なァ、ななし?」
お酒はかけるものではありません、飲むものです
ちなみに政宗さんが呟いたのは「あんた、むかつくな」です。「あんた」がどっちなのかはご自由にどうぞ。