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今日はとってもいい天気で、戦もなし。なのでせっかく政宗さんとデートしようと思ったのに、お客さんがきて台無しになってしまった、チッ!
「おでかけしたいよー!!」
「筆の練習でもしとけ」
小十郎さんがそう言って持ってきたのは、用紙と筆と硯と固形の墨だった。それを机の上にドンと置く。どうやら本気で私に勉強させるつもりみたい。ありえないでしょ、こんッなに晴れ晴れしてるのに!! いっその事、政宗さんじゃなくて・・・。
「そうだ、小十郎さ・・・いや、やっぱやめます」
「んなもんこっちから願い下げだ。やれ」
ななしの字はみみずみてーで見てるこっちが情けねーと言われ、ちょっとムカッとする。正月の抱負で特製の長い紙に、「伊達の嫁に、私はなる!」と筆でかいたけど、たしかに、バランスも悪かったし字も弱々しかった。でも実際バカにされると、ちっくしょう、ここまで言われちゃ引き下がれんわ!!
「絶対に上手くなりますからね! そしたら政宗さん解放してくださいよ、1日貸してください」
「政宗様は物じゃねえ。が、お前が万が一にでも上手くなりゃあ、考えてやってもいい」
ふんっ、と鼻で笑われ、さすがの「ポジティブななしちゃん」もキレそうになった。・・・痛い。今のは痛い。
「で、何を書けばいいんですかっ」
「書く前にやる事あんだろーが」
「・・・はーい」
習字なんていつぶりだろう、中学の1年生以来かな。2年生からの国語は習字しなかったし。久々の「硯をする」という行為に、私は懐かしさを感じた。
「楽しいなー」
「それは今だけだ。真っ黒になるまでやってもらうぜ」
「別に平気ですよ、元々の時代でもやってたし」
「ほう。何百年経っても、筆と墨はあんのか」
「まあ、実際使う人は少ないですけどね」
本当は墨がはじめからすられている、墨液があった。でもそれだと物足りなくて、私だけ毎回硯をすっていたのだ。それで筆を握る時間が削られて、練習時間も短くなって、そのツケが今回ってきたのかもなあ。ちなみに元々下手という説は認めません。
「この音、すごい好きなんです。こりこり、っていって、削られてるのが」
「・・・えらい変態だな、お前」
「ここで言う、それ!?! 真面目に言ってんですよ、真面目に!!」
そして硯をする音に、だんだんと背筋がのびていく。それを見て小十郎さんが、目を少し細めた(気がした) おし、やる気はばっちりある。後はいかに集中して文字を書くか。
もういい、と言われた頃に硯を見ると、真っ黒な墨がたまっていた。おお、これも久しぶりだなあ!
「で、何を書くんですか?」
「簡単に、いろってかいてみろ」
「いろ?」
「いろはにほへと、の始めだ」
「ああ、なるほど」
そうだ、そういえばこの時代は「あいうえお」じゃなくて「いろは」なんだ。学校で毎回使っていた大きさの紙を前に、私はつばを飲み込む。緊張するのは100%小十郎さんがガン見してるからだ。
紙を折ろうとしたらはたかれたので、だいたいここら辺だな、と視線で線を作る。上に「い」、下に「ろ」をかけばいいだけ、簡単簡単。
筆を握って、墨に毛先をつけようとした時、小十郎さんがスッと動いて、隣に膝をついた。
「待て!」
「ギャ!」
スパーンと手を叩かれ、筆を落とす。しかしそれは小十郎さんの手に落ちたので、墨は付かなかった。何、なんで叩かれたの?!
「お前、握り方から学習しろ」
「え」
「なんでこんな持ち方なんだテメーは!! 飯でも食うつもりか!」
「ええええ?!」
だって学校じゃあ、筆の持ち方は箸や鉛筆と大体同じって言ってたのに。
そう言い返すと、「そりゃちっせー筆に使え」と言われた。小筆?
「いいか、筆ってのァこう握るんだ」
小十郎さんの手が私の手に筆を持たせる。そして大きな手が、私の指をその位置につかせていった。
後からわかったんだけど、これは双鉤法といって、筆の軸に親指と人差し指・中指をかけ、薬指を軽く添えて書くやり方なのだそうだ。筆の動きがゆるやかになるので、強い線を書けるらしい。こんなの習ってないよ私!!
書道の先生みたい、とずれた事を思いながら、小十郎さんの指示に従う。
「ななしの時代はしらねーが、あれでずっと練習するより、新しいこのやり方でいけ」
「はいッ」
元気よく答えて、今度こそ墨をつけた。
「・・・・・・(し・・・ぬ・・・)」
小十郎さんは本当にスパルタだ。スパルタ族の末裔じゃないかと思うほどに、容赦ない。私を筆のプロに仕立てあげるつもりじゃ、と本気で考えた。
だいたい、「簡単にかいてみろ」っていうから、素直に簡単にかいたら怒鳴られるとかありえなくね!? 天の邪鬼にもほどがあるよ姑め・・・!
そして、その姑は今も私の部屋にいるんだけども。
「集中できません、小十郎さん」
「できねーんじゃなくて、してねェだけだ」
「政宗さんが恋しいです、小十郎さん」
「知るか。だいたい、これのどこが習字なんだお前」
そう言って小十郎さんが見せつけてくるのは、私がかいたものばかり。別に変じゃない。これのどこが、と首をかしげると、小十郎さんは眉をひそめて言った。
「これのどこがおかしくねーんだ!!」
畳にたたきつけられた文字は、「伊達ななし」「愛」「恋」「奥州の妻」「愛羅武勇」「小姑」と、私が日頃心にひめている単語ばかり。ええええ、
「だってさっき、小十郎さんが素直になんでもかけって言ったから・・・!」
「素直すぎなんだよテメー! 小姑ってなんだお前」
「小十郎と姑をかけてみまし・・・ああああビリビリに切り裂かれたァァァ!」
「当たり前だろーが!!」
うわあああ酷い! これが本当の嫁いびり!! 自分の息子もとい嫁の夫には甘くて、嫁にはすごく鬼ババなんだッ!!! 全国の嫁いびりされてる妻の皆さん、頑張ってください。私、頑張りますから。愛にいびりが勝てるわけないのです!
「全部声に出してんなァわざとか、ボケななし」
「・・・えへ、ボケちゃいました」
「(ブチッ)ふざけてんじゃねェェェェ!!!」
「ギャアアアアアア!!」
小十郎さんに背中をとられ、スリーパーホールドをかけられる。私はすぐに机をバンバンバンと叩いた。ちなみにスリーパーホールドとは、よく友達同士でふざけてやる、首しめ攻撃だ。なんで私こんなこと知ってんだろう。
そして、机の上には墨や筆や紙がある事を忘れないでいただきたい。
「あ!!」
びしゃ、と墨が私と小十郎さんの顔にかかった。だけじゃない、服にもだ。なんてこった、墨って簡単におちないのに・・・!!
しまった、そう呟いて小十郎さんが力をゆるめる。その隙に私は素早く逃げ、そのまま匍匐前進で扉に向かった。政宗さんに触らなきゃ、充電しなきゃ!!
「逃がすかテメー! いつもいつもゴキブリみてーにかさかさ動き回りやがって」
「酷くない今の台詞!? ゴキブリと同類項とか差別発言じゃないですか! 乙女ですよ、よきも悪きもヒロインですよ!」
「ちったァ女らしくしたら、こんな事しねーよ。それにお前の場合差別じゃねー分別だ」
「小十郎さんのドエスーーーー!!」
「だ・ま・れ!」
どすん、と腰に座られる。そしてアゴの下にをつかまれたと思ったら、勢いよく上に持ち上げられた。これぞ、キャメルクラッチ!
「死ぬ死ぬ死ぬ!!!! 背骨がァァァ!」
「ちょうどいい、ななしの猫背かかった部分治してやる」
「いらんいらんそんな親切!! やめてくださアアア・・・!」
ていうか小十郎さんに技かけられる女なんて私くらいじゃないの・・・って全然嬉しくねええええ!! 死んじゃう、背骨が死んじゃう!! 政宗さんタスケテケスター!!
「ギブギブギブギブギブギブギブゥゥゥ!!」
「・・・・・・何してんだ」
え、と数メートル先のふすまを見ると、政宗さんが立っていた。おおお、まさに以心伝心! 小十郎さんはパッと私から離れて、「政宗様」と正座をし、頭を下げた。私も起きあがって、それに続・・・こうとしたら、背骨が嫌な音を立てたので、正座だけに留まった。
「飯の時間だ、アイツら待ちくたびれてるぜ」
「申し訳ありません、政宗様自らがお呼びに・・・」
「気にすんな。今日は誰かサンが不在だったおかげで、有意義に過ごせた。Thanks,小十郎」
「・・・・・・」
「酷い政宗さん! 私は必死に嫁いびり我慢しブッ!」
小十郎さんに口を手のひらで叩かれ(バチ!って・・・!)しばらく黙る事にした。
政宗さんは部屋をのぞきこむと、お得意の皮肉な口笛を鳴らす。
「こりゃ、随分奮闘したもんだな小十郎」
「は。なにぶん初心者で、集中力もない奴なので」
「へェ」
部屋に入ってきた政宗さんは、私の作品を見た。作品といっても、さっき小十郎さんに問題視された単語ばっかりなんだけど。
「どうですか! 愛がばっちりこもってるでしょ?」
口の痛みも忘れてニコニコと問うと、一言、
「汚ねーな。もっと練習しろ」
小十郎さんの台詞以上に、ぐっさりきました。
「俺が適当に片づけっから、おめーらは顔についた墨落としてきな。そんな顔で広間行かれちゃ、とんだ笑いモンだぜ」
「政宗様、・・・申し訳ありません。では、お先に失礼します」
「ああ」
見事に沈没した私を引きずって、小十郎さんは部屋を出たのだった。
「あーあー、せっかく政宗さんとたくさん話そうと思ったのに」
「お前、今度筆習う時は政宗様にお願いしろ」
「えっなんでですか?」
「・・・・・・なんでもだ」
意味ありげにため息をつく小十郎さんを、まったく理解できませんでした(理解したくないけどね、ケッ!)
sweet darlin!
「小十郎さん。私の紙知りません?」
「あのふざけたやつか。ねーのか?」
「ふざけたって・・・。ご飯食べて部屋に戻ったら、紙が一枚だけなかったんです」
「なんの紙だよ」
「『伊達ななし』のやつです。結構気合い入れてかいたのにー」
「・・・・・・二度と戻ってこねーと思え」
「ええええなんでですか!?」
(「Thanks,」の部分がやけに皮肉まじりだったのは気のせいだと思いてーな)</samll>