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雨がざーざーと降って、外に出てもお店は閉じていて、城はむしむしして、この時代は何もすることがなくて。大好きな政宗さんも、仕事が忙しいとかで、部屋に閉じこもりっぱなし。わたしが抱きついてもいつものように乱暴に振り払うことはせずにひたすら無視をしていた(酷い、けどやっぱしょうがない)
そんなわけで、奥ゆかしい妻としては夫の邪魔をしないため、部屋で一人寝そべっているわけなんだけども。・・・わたし間違ったことやってないよね。
「・・・やることが、ない・・・!!」
お手玉も飽きたとばかりに畳に放置されている。あーもう、ゲームを手にしてからトリップしてくればよかった。・・・って、いやいや、わたしが自分からここに来たわけではないけれど。それにしても、雨は酷いなあ。今まで日照りが続いたぶん、やっぱりはじめは嬉しかったけど・・・。雨が降り続けてもう3日。さすがに飽き飽きしてくる。
これ以上部屋にいるとキノコが生えてきそうだから、わたしはのっそりと起きあがって傘をかぶると、外に出た。現代では「さす」ものだけど、この時代では「かぶる」もの。他の地域では現代のような番傘などがあるかもしれないけど、あいにくうちの城主は所有されてないよう。雨粒の落ちる感触を頭上で感じながら、水たまりを避けるように庭を歩き回る。上を見上げれば、とっても高くて大きくて、威圧のあるお城と目があう。・・・政宗さんやーい、って声をあげてみようかな・・・いや、やめておこう。小十郎さんに両足をつかまれてブンブンと振り回されたあげくやっぱり外に放り出されること確実だから。
「・・・・・・」
なんだか変な気分。まるでわたしも空気か何かになったかのようにこの時代にいないように感じる。だって今わたしは誰とも話してない、会ってない。そう思ったのがいけなかった、今 無性に政宗さんや小十郎さんに会いたい。雨ってユウウツになるわあ~と(現代にいた頃の)友達が随分前にぼやいていたけど、うん、実感してます。ものすんごいユウウツになる。いかん、このままじゃハイテンションななしからローテンションななしというとんでもない異名をもらってしまう(ローよりハイのほうがまし!!) 政宗さんのことを考えると幸せででもやっぱり不安で、だから今 こんなうじうじしたわたしを見せるわけにはいかない。はじめは避けていた水たまりに草履を脱いだ素足をつっこむと、柔らかい土の感触がした。うう~、冷たい!
「ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷ!」
英語で習った歌を口ずさむ・・・というよりも叫ぶ。政宗さんに届け、政宗さんの耳に入れ。そのうちどんどん楽しくなって、着物が汚れることもかまわなくなってきた。どうせ怒られるなら、思いきり遊んでからのほうがいいしね! よっしゃ、こんな傘も取っちゃえ! それをブーメランのように、さっき脱いだ草履のように縁側にぶん投げる。そんな無防備のわたしを、雨がどんどん ぬらしていく。
「らんらんらぁん!」
周りに人の声はしない。ざあざあと無機質な、あたたかみのない音ばかり。でも今のわたしはそれが心地よかった。・・・・・・あ、どうして変な気分なのか、わかった気がする。今の時間が、わたししかいない空間を過ごしてるみたいに感じるのだ。いつものヤンキーな怒鳴り声も聞こえない、うるさいはずの馬のいななきも聞こえない、ここまで届く城下のにぎやかさも聞こえない、そして誰もわたしの前に現れない。
「・・・・・・・・・・・・・・」
・・・あれっ。テンションが下がってないかわたし。おかしいなー。ただ静かになっただけじゃないか。
ただ、あの人がいないだけじゃないか。
「・・・・・・楽しくない」
はあ。やっぱり部屋でゴロゴロしてよう。それよりも問題なのが、この着物と冷えた身体をどうするか。とりあえず着物はしぼって・・・・・・・・・
「What are you doing?」
縁側に背を向けていたわたしは、肩をピクリと揺らせた。低い声、わたしがエロボイスと評価したら殴ってきたあの人だ(でもわたしは前言撤回しなかった) なんでこんなところにいるんだろう、政宗さんが。おそるおそる振り向いたら、政宗さんがぎょっとしたように問うてきた。
「泣いてんのか?」
「え? 誰が・・・」
「アンタだよ」
「泣いてませんよ」
ほら、雨が顔についてるだけ。そう ヘラヘラと笑うわたしの心の中は、泣きやんだばかりだ。ああ本当に、この男は。どうしてわたしよりもわたしを扱うことが上手なんだろう。あれだけはしゃいだのに泣いていたわたしは、政宗さんが来ただけで笑っている。
「政宗さんこそ、わたしに会いに来てくれたんですねー! ななしカンゲキ!」
「いってろ」
「どっちの意味ですかそれ」
「両方だ」
酷いこと言うな・・・。言ってろと逝ってろ両方て。まあいいか、政宗さんが来てくれたんだから。着物が濡れたまま、わたしは縁側に向かった。そして政宗さんの嘲笑をあおることになってしまう。
「Ha! アンタ本当にバカだな。なんでこんな天気で楽しめんだ?」
「こんな天気だからこそですよ! ていうか政宗さんが相手してくれなかったからじゃないですかー。・・・あれ? そういえばお仕事終わったんですか?」
「終わらせてきた」
へえ、と気づかないフリをしておく。「終わった」んじゃなくて、「終わらせて」くれたんだ。そして政宗さんが呼んだ小十郎さんに布を投げつけられ・・・る、かと思いきや。
「何してんだお前は! その着物は・・・」
「小十郎、眉間にしわ寄ってるぜ」
「・・・・・・」
「こじゅーろう、眉間にしわァよってるぜ!」
「黙ってろクソななし」
頭に布を押しつけられて、がむしゃらに水気をふきとってもらった。頭皮がジンジンとするんですけど・・・・・・。着物はしぼって、足はとても汚いので洗う前に小十郎さんに叩かれてしまった(いったー!)
「何するんですか小十郎さん! たたくの好きなら木魚プレゼントしてあげましょうか?!」
「お前がふざけたことするからだろうが! 本気で政宗様の正室になろうってんなら、少しは大人しくしとけ!!」
「す、すんません」
うーん、そこを突かれると・・・きつい。口うるさい小十郎さんと、バカにしたように腕組みをする政宗さんにいじめられながら、わたしは冷たい外から暖かい中へと入った。雨にあたっている時に思ったことは、2人に言わないでおこう。きっと叩かれて「バカ」と返される。でも、そんな2人がいるから、わたしはこうして笑うことができる。
「筆頭ー!」
「あァ? またなんかやらかしたな・・・」
「・・・えへへ」
「・・・何笑ってんだななし」
「ちょっとですね、幸せをかみしめておりまして」
本当に、大好きです。
例えば一生の別れの時が訪たとしてもサヨナラなんて 言わない
(だってわかれるきもないし わかれてもかならずまた であうから)