本編
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「ななしちゃ~ん!」
待ち合わせ場所で、わたしが気づくより先にアイちゃんが声をかけてくれた。わたしは普通に洋服だけど、アイちゃんは可愛らしい着物を身にまとっている。それに仕草もいちいち丁寧だから、どこぞのお嬢さんかと思ったほどだ。もう一度言おう、神様、ありがとう。
「ごめんね、この寒い中待たせちゃって!」
「ううん、大丈夫だよ。それに私も今来たんだ~」
笑いながら手ぐしで髪をなおすアイちゃんにホッと微笑む。
そしてわたしとアイちゃんは、近くのそば屋で年越しそばを食した後、神社に足を運んだ。この神社は縁結びの神様が祀られているそうで、どうやらアイちゃんはわたしを励ますために誘ってくれたみたい。
「ここで新しい恋をゲットしよ~!」
「ああ、うん・・・」
ごめんなさいアイちゃん、いまいちノれません。ていうか新しい男なんてゲットしたくないです神様ァァァァ! できれば新しい恋じゃなくて復縁頼みます神様! 今度からはちゃんとDVだDVだって騒ぎません、小十郎さんのいびりが腹に立って小十郎さんの部屋の障子紙を一つ残らず破いたのも謝ります、だから何とぞなにとぞッ!!
・・・・・・って、お願いしたらなんとかなるかな。ならない気がするんだけど。第一、一人の人間がトリップしたってことも神様は知ってるんだろうか。というか、トリップさせたのは誰なんだ。
妙に冷めた考えを抱いていると、アイちゃんがくいくいとコートを引っ張ってきた。なんだろうと視線をその先に向けると、大きな鈴がガランゴロンと鳴り、次々に賽銭箱に小銭が投げられている。どうやらあの列に並ぼうということらしい。
「いいよ、並ぼうか」
「うん。あとね、お祈りした後おみくじ買おう!」
「そうだね!(復縁こい復縁・・・!)」
その時、アイちゃんのケータイが鳴った。
ぴろぴろぴーん♪とファンタジーめいた後に突然ドォン!!と何かが爆発する、それが着信音。
「(なんだこのチョイスは・・・!)」
性格ににあわずスリル満点な音が好きなんだろうか。というか何その着信音、それどこの機種にあるんだよ。ツッコみたいけど、生憎電話の着信音だったためアイちゃんは誰かさんと通話中(・・・てことはあれですか、電話嫌いなんですか?)
そして列に並び、アイちゃんが電話を切る。その時の時刻を見ると、11時半を過ぎていた。あと30分で今年が終わり、わたしは何年ぶりかに現代で年を越すわけだ。ううん、なんだか変なかんじ。本当はわたしはこの時代で生きるべき人間なのに、妙に緊張する。ここにはお父さんもお母さんもアイちゃんも他の友達も便利な機械もたくさんあるのに、満たされない。みんな大好きだけど、でも、わたしは・・・・・・。
「あっ。ななしちゃん見て見て、あそこで除夜の鐘が鳴ってるよ~」
「え?」
ふと視線を上にあげ、高い位置にある鐘を見た時。
その鐘を見上げる途中で向いた方向を歩いていた人物に、わたしはもう一度目を奪われた。
「まままさむねさ・・・・・・!!!!!」
「え? マママサムネサ?」
比較的背が高いその人は、人混みにまぎれることなくどこかへと歩いていた。まさかという疑いと、こみあげてくる嬉しさで、わたしはどうすべきかわからず、かちんこちんに固まった。
なんで、なんでこの現代にあの人が?!! いや、よく見るとあれは違う人なのかも。第一、突然見知らぬ世界にきて、神社でのんびりしているはずもないし。そうだ、見間違いだ。たしかに髪型似てるしあの着物は冬に政宗さんがよく着てたから見覚えあるけど・・・・・・・いやあないない。そうだ、あれはわたしの煩悩が見せてる幻なんだ。そうだそうに違いない煩悩消えろォォォォ!!!
・・・それでも気になってしょうがなく、その人の後ろ姿をじいっと見つめていると、横にいたアイちゃんが突然わたしの肩をぽんと叩いた。
え、と振り向けば、今年一番の笑顔。
「いってらっしゃい」
「え、どこに?」
「あの人のところ」
「えええ?! いやいや、違うよアイちゃん、あれは別の人だよ」
慌てて弁解するけど、アイちゃんは首をかしげて例の人を見た。そして「そうかなあ」と不思議そうに言う。
「それじゃあ、確かめてきたら? あの人がななしちゃんの好きな人なのか、別の人なのか」
「た、確かめる・・・?!」
「そうそう」
わたしに ゆっくりと話して聞かせるアイちゃんは、どこか大人びた表情をしていた。本当に同じ歳か、ちくしょう。
「諦めきれないんでしょ? あの人かもって思うんでしょ? それならまず行動だよ」
「・・・・・・」
「別に告白するわけでもないんだし、ほらほら、肩の力ぬいて、ね? 私はここで並んで待ってるから」
「え、ちょっアイちゃん!」
「頑張ってねえ~」
アイちゃんはわたしの背中をポンと押し、列から出すと、にっこり笑った。
それ以上わたしは何も言えず、そのまま走り出した。
違ってもいい。確かめるだけでいい。
「・・・・・・あれ?」
なんだかアイちゃん、変じゃなかったっけ? 何が変なんだって言われてもわかんないけど、・・・・・・まあ、いいや! もしこれで違っても、アイちゃんのところに戻って聞けば良いだけだし。
「待って・・・」
人波が激しい一本道は、わたしとあの人を簡単に離していく。それでもわたしは諦めるつもりは毛頭なかった。あの人が本物なのかはわからない、でも、「違うだろう」って勝手に決めつけて終わるわけにはいかないのだ。
「ぬおおおおおおお!!!」
これでも女子学生です☆と言っても到底信じてもらえないようなたくましい声を叫びつつ、わたしは波をどかしながら走り出した。アイちゃんに頑張れって言われた。いってらっしゃいって、言われたんだ。
「・・・・・・っま、政宗さああああん!!!」
その時、だった。不思議なことに、すいすいと歩いていたその人が突然ぴたりと止まったのだ。あれっなんでだろう。まさか本当に政宗さん? いや、さすがにそれはないか・・・・・・。なんにしてもチャンスだ。偽物だろうが本物だろうが知ったこっちゃない、間違えたら「すいまっせーん」と逃げればいいだけだし。
はあはあと息をきらせながら、わたしはようやくその人の背後に追いついた。そして、ゆっくりと声をかける。
「政宗、さん・・・?」
「・・・・・・」
その人はわたしを振り返ることもなく、かといってまた歩き出すわけでもなく、微動だにしない。
変だ、と不信感をおぼえたわたしが、その人の手元を見る。そして驚いた。わたしのケータイだ。何十日かに見る、ケータイ。機種も一緒だし、何より、ストラップに付けた、古風な鈴がちりんちりんと涼しげに鳴っているのだ。
どうしてこの人が持ってるんだろう、と、とりあえずケータイだけでも返してもらえないかしら・・・とケータイに触れた。その瞬間、
「!!」
ケータイとわたしの指先の間にばちっ!と静電気が走り(いったあああ! 何今のすんごい痛いんだけど!)、とっさに手を引こうとする。ところが、その手は逆に掴まれた。
「えっ」
掴んだのは、紛れもない、あの人の手。
そして世界は変わった
とりあえずリクの「ちょっとしたことで険悪になって2人で悩む」と「ヒロインが伊達さんを諦めてしまうネタ」解消です(諦めてるかこれ)