本編
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「じんぐるべーじんぐるべーすずがーなるー」
「相変わらず異国語の発音がヘッタクソだな」
「うるさいです小十郎さん。ていうかなんで私の部屋にいるんですか? 何、今までライバル関係だったけどそのライバルと戦ううちに心開いてついには恋愛まで発展的なかんじですかこれは」
「テメエなんぞを好敵手(ライバル)だと思ったことは一度もねえ」
俺ァ変態を好きになる趣味はねー、とクールに突き放す台詞。でもそれって政宗さんが聞いたら複雑な心境だよね、だって政宗さんわたしにベタボレだもの! ベタボレのあまりあんなツンツンツンツ(以下略)ンデレボーイになっちゃってんだから。
ちなみに朝っぱらから自室に小十郎さんがいる本当の理由は、政宗さんにお客さんがきて、わたしが来ないように見張りにきたという。もしそのお客さんとやらがわたしよりも変な人だったらどうするんだと思ったけど、そのお客さんは普段からよしみのある城主だそうで、それに小十郎さんの代わりに別の側近(成実さんとか)が一緒にいるそうだ。ああ、それなら安心!
「それにしても、もうすぐ今年も終わりますねえ! 今年はあんまり戦がなくて良かったです」
「少なくとも奥州は、だ。京周辺の国じゃ、毎日戦三昧だろうさ」
「・・・奥州で良かった・・・・・・」
小十郎さんがわたしに背を向けてしているのは、裁縫。ちくちくと手ぬぐいを作る姿はまさにオカンだ。あっやばいこの人本格的に姑化してるじゃん。ということはここで嫁であるわたしが「お義母さんあたいがやります!」と言わないと後で政宗さんに「ちょっと、ななしさんったらねェ私が裁縫してるの手伝おうともしないんだよ、あんた嫁選び間違えたんじゃないのかい?」とか告げ口するんじゃないだろうか!!
そうはさせぬぞ小姑め! 立ち上がると、小十郎さんから裁縫道具を奪おうと彼の背中越しに手をのばした。
「お義母さんッ、あたいがやり」
「誰がお義母さんだ」
振り向きざまに小十郎さんが、まち針を突き出す。それはプツ、とわたしのおでこに軽く入った。あら?とはじめはよくわからなかったけど、ようやく痛みを感じると、裁縫道具をとるはずだったわたしの手の指がわやわやと震える。
「――――!!」
絶叫とも悲鳴ともとれる大声をあげながら畳をゴロゴロと転がる。なんだよこれなんかのマンガで見たよ!! すっごい痛いんだよ地味に! 小十郎さんの勝ち誇ったような笑みがうかがえた。これだから姑はヤなのよ・・・!!
「まだ終わらないんですかー小十郎さん」
「まだだ。終わったら成実殿が報せにくる」
遅い。あれから二時間経ってる。ケータイの待ち受け画面で動く時計をちらちらと見るけど、うん、二時間経ってる。いつの間にか、おでこから垂れていた血は流れなくなっている。鏡がないからわからないけど、きっと止まったんだ。
ふと、時計の上にある日付を見た。十二月の、今日は。
「あ、誕生日だ」
「・・・・・・」
「ちょっ反応してくださいよ」
小十郎さんが完璧無視を決め込んでいるので、まけじとわたしもベラベラ喋ることにした(負けん!負けんぞおおお!!)
「今日は近所の子の誕生日なんですよ、多分いつきちゃんと同じくらいの背で年なんですけどね、とっても可愛くて、くりくりっとした目がわたしをのぞきこんだ時なんてもう昇天するかと思いました」
「そうか、そりゃ惜しいことをした」
「なんでこれだけ反応してんですかお義母さん」
「誰がお義母さんだ」
「でもね、その子可愛すぎて、うちのお母さんてばわたしよりも可愛がるんですよー実の娘みたいに。まあ妹みたいだからいいけど」
「・・・お前母親にまで見捨てられたのか・・・」
「ちっ違いますう!! わたしだってバリバリ可愛がられてますよきっと!」
「(自信ねーのか・・・)」
小十郎さんの不憫そうな表情に気づかず、わたしは畳に寝転がった。あー、久しぶりに現代思い出したなあ。
「お母さん元気かなー・・・・・・・・・。・・・ねえ小十郎さん」
「俺にふるんじゃねえ、知った事か」
「いやそうじゃなくて。思ったんですけど、政宗さんのお母さんてどんな人なんですか?」
その時、今まで微動だにしなかった小十郎さんの肩がぴくりと動いたことに、わたしはまったく気づかなかった。
「ここには政宗さんのこと昔から知ってる人たくさんいるけど、お母さんていませんよね、そういえば。他の城にいらっしゃるんですか?」
「・・・・・・さあな。大体そいつァ政宗様の身内話だ。俺のような一部下がしゃしゃる場所じゃねーよ」
「そうなんですかー」
口では納得しても、気になってしょうがない。きっとお客さんが帰っても忙しいかもしれないし、小十郎さんに止められるかもしれないから、明日の朝ご飯を食べる時にでも聞いてみようっと。それにしても政宗さんのお母さんかあ、全然会った事も、というか話にでたこともないからなあ。美人さんに違いない、そして政宗さんがああなってるからきっと子育てで苦労したんじゃないだろうか。あれっそしたらわたしと結構気が合うんじゃない? 少なくとも小十郎さんよりは数倍あうだろうな!
ひそかに楽しみが増えたことにほくそ笑んでいると、ふすまが開いた。成実さんが正座をして、小十郎さんに「終わった」と一言。それだけで小十郎さんは頷き、裁縫をわたしに手渡した。え、何これ。
「わたしにやれと?」
「ふざけんな、んなもんしたらまた一からやり直しだろうが。部屋に置いておけ」
ちっくしょう、どこまで見下してんだこの男は・・・!!
「おいななし、絶対部屋から出るんじゃねーぞ」
「はいはーい」
「はいは一回だ」
「(チッ) はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああい」
「成実殿、三つ数えるうちに終わ」
「はい!!」
こんな日常がいつまでも
たまにはいいかなと思ったシリアス編。