本編
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翌日、私は日の光で目を覚ました。空気が奥州と違う。寝る環境が違うと、まるで修学旅行を思い出す。そういえば修学旅行も、私ってすごく早起きだったんだよなあ。思った通り、ケータイを見れば、いつもなら起きる時間より二時間早い。
どうしようかなあ、もう着替えておこかな。ここに来てすっかり慣れた衣に着替えて、顔を洗いに部屋を出た。・・・・・・あれ、そういやどこだろう、井戸。
「おーす嬢ちゃん、早起きだねェ」
「ふげー! ちょっ猿飛さん、いい加減ドッキリさせるのやめてくれません?!!」
「ふげーって・・・年頃の女の子が口にする叫びじゃないよ・・・」
「誰のせいですか、誰の!」
突如 出現した猿飛さんは、天井から床に足をつけた。相変わらずの迷彩服・・・かと思いきや、ん、なんだこの服。始めて見るや。遠目からすれば全身真っ黒の衣装で、この近距離だと、黒い迷彩服だとわかる。そして何より、猿飛さんの口は漆黒の布に覆われていた。うわ、呼吸しにくそう。本人もそう思ったのか、布をとって「ぷは」と息をはく。
「猿飛さん、この衣装はあまり着用しないんですか?」
「ああ、隠密や夜動く時はこっちにしてんの。で、これで昨夜アンタの手紙を奥州に届けてやったわけ。多分今頃誰かが、伊達の旦那に渡してんだろうな」
「へええ、ありがとうございます」
「どういたしまして」
でもこれはこれでいいのかも。ちょうどいい、井戸まで案内してもらおう。猿飛さんはあっさりと了解してくれて、私は井戸にたどり着く事ができた。
朝食もすみ、真田さんに呼ばれた私は今、甲斐の城下町にいる。何もかもが初めてで、私は真田さんに「ななし殿!」と呼ばれるたび、彼からすごく離れている事に気づいた。ごめんなさい、子供です。甘いにおいや子供の声、鍛冶屋がこんなに近くにあるなんて。
「そういえば真田さんがくれた団子のお店ってどこなんですか?」
「そこは後ほど案内致す。ひとまず、ななし殿の浴衣を探しましょう」
「ああっ、そうですねっ! 忘れてた、浴衣さがさなくちゃ!」
あはは、と一人笑うと、真田さんもぎこちなく笑った。そういえばこの人ってあまり笑わないなあ。奥州で団子を出した時も、笑顔というよりも微々たる微笑ってかんじ。真面目な表情や怒る表情や人を尊敬する表情(武田さんにしか向けられてないけど)とかは何度も見てきたけど、素直な笑顔は見た事がない。意外だ。
呉服店に向かう途中、私はなんだか、真田さんの笑顔を見てみたいと思うようになっていった。熱い人が笑うと、すごくプラスで格好いいんだろうし、見てみたいし! 大丈夫、別に見てもそんなに気持ち揺らがないし。
「(うーん、ここはやっぱりくすぐるのが一番だよね。それとも一発ギャグとか? いや、真田さんは頭がガッチガチに固そうだから逆に『今のどういう意味?』とかまさにギャグ殺しな台詞を言いそう)」
考えた結果、私はさりげなく真田さんに近付いた。そして勢いをつけて、「おりゃー!」と両手で脇をくすぐった。どうだ! 友達みんなにやったら「ツボ抑えすぎるもう触んな!」と逆ギレされた最強の技だぜ!!(逆ギレじゃなくって正常な怒りだと思わないでいただきたい)
ところが。
「・・・ななしどの・・・」
「うりゃー・・・あ・・・はは・・・は」
まっっっっっっっっっっっっったく効かなかった。
それどころか私の手をがしっとつかむと、ぐいーんと頭上に持っていった(何このバンザイ!?) そして呆然とする私に、至近距離で真田さんがお得意の(?)台詞を叫んだ。
「破廉恥でござる!!!!」
「うわ! さっさなださか・・・!(真田さん顔近いんですけどォォォオ!)」
「ななし殿ともあろう方が、はした、な・・・・・・」
私の顔をまじまじと見ているうちにみるみる顔が赤くなった真田さんは、再び何かを叫んで私をつかんだ手を離した。突然の事なので足が地面につくよりも先に、尻がついた。いったーい!!
「はっ、ななし殿! 大丈夫でござるか!?」
「だ、だいじょぶデス・・・」
嘘です、痛いです。でも真田さんの心底面目なさそうな顔に、私は苦笑いをした。真田さんは意気消沈した様子で、私を立ち上がらせるととぼとぼと歩き出した。・・・あれっなんだか幻覚が見えるぞ。犬耳みたいなのがすごい垂れ下がって尻尾みたいなのも地面にべっとりついてる感じが・・・・・・。無意識のうち目をゴシゴシこすると、それはなくなった。同時に、真田さんがこっちを振り向く。
「ななし殿、もうすぐでござる。・・・ななし殿?」
「あ、すみません・・・一瞬真田さんが犬に見えました」
「犬?」
「気のせいです、気のせい」
真田笑顔計画開始
でも真田さんがすっごい笑顔だと逆に腹黒いイメージがあります。