本編
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お初におめにかかります。わたくし、奥州の数少ない女中をまとめる頭でございます。ななし様とはあまり面識がございませんが、とても印象に残る方でありますから一度見て覚えない方はいらっしゃらないと存じます。あの方は、この時代の女性らしさ・おしとやかさはあまり備わっておりませんが、とても明るく太陽のようで、きちんと礼儀をわきまえておられる不思議な素敵な女性です。
そのななし様が奥州を出たとわかったその瞬間から、政宗様のご機嫌がすこぶる悪うございます。女中の者どもが政宗様の部屋を通り過ぎるたびに、障子を勢いよく開けられ、鬼の様な剣幕で見られるそうで。その為 あの場所は通りづらいと女中達がわたくしに殺到してきましたコノヤローあら失礼致しました。若干奥州の殿方の口調がうつってきてしまったのです。
それにしてもななし様が甲斐に向かわれてから、奥州もさみしいものとなってまいりました。以前であればどこからか政宗様の名が連呼され小十郎様の怒鳴り声が響き渡っていたはずなのに、今はとても静まりかえっております。大切なものはなくなってから気づくというのは、どうやら本当のようです。
そんなわたくしの手元には、一通の手紙があります。差出人は「ななし」、つまりあの方からです。政宗様の喜ぶお姿がやっと目に入ると、わたくしはもう楽しみでしょうがありません。急いで政宗様の部屋にたどり着きました。膝をついて、一声かけます。
「政宗様」
「あァ、アンタか。どうした」
「政宗様宛に、お手紙がございます」
「・・・・・・入れ」
障子を静かに開け、そして ご一緒されていた小十郎様に一礼し、閉めました。
そして本人に渡そうとすると、それを断られてしまいました。
「アンタが読んでくれ。俺ァ手が離せねェ」
「畏まりました」
主の命とあらば、しょうがなく手紙を開けます。こういったものは普通、本人が読まなくては。
けれど私はそれができませんでした。開けたものの、言いにくい事に、
「・・・申し訳ありません、読めません」
「あ? そんなに汚ねー字なのか」
「いいえ、そうではありません。・・・異国語ばかりで・・・。未熟で申し訳ございませぬ」
冒頭の「DEAR☆MY DARLING」という文字に困惑しました。なんと読むのか見当もつきません。「☆」とはなんでございましょう、何かの爪痕なのでしょうか。
小十郎様は頭を抱えて何か呟かれ(糞餓鬼と聞こえたのですがそれはきっと空耳でございましょう)、わたくしから手紙を受け取りました。お咎めが無く安堵しております。思えば、このような強面の男性にも果敢に立ち向かうななしは、素晴らしい女性なのではないでしょうか。
「政宗様、これは口に出す手紙ではありませぬ。恥辱にございます」
「・・・まァ、あいつの事だからただの内容じゃあねーだろうな」
ついで政宗様の手に渡った手紙。わたくしは異国語についてまったくの無知でございますが、記憶は確かな自信をもっております。解釈はできませぬが、文字の羅列はきっと、こうでございました。
『DEAR☆MY DARLING(政宗さんの事ですヨ!) 8月某日
お元気ですか、私は元気です!今 甲斐にいます、そして今日は私のために宴をひらいてくださいました。みんな超優しくてフレンドリーで、すっごく楽しいです!!パワフルさでは奥州より甲斐のほうが圧倒的でテンションもあがってきますよ。あ、でも大丈夫です、浮気はしてませんから!真田さんはすっごくいい人で真面目でちょっとときめいた時もあったけどやっぱり政宗さんが一番です。愛羅武政宗です。そういえば甲斐のお祭り、明後日みたいなんです。奥州のお祭りはそれよりもちょっと遅めだから間に合いますよね。なのでお祭りが終わり次第、奥州に帰ってくるので楽しみに待っててください。本当はお迎えに来てほしーなって思ったんだけど、真田さんが送ってくれるみたいです。真田さんって親切なんだなと思いました、政宗さんもこういうところは見習ってほしいです。それじゃあ、明々後日に!
FROM☆YOUR HONEY(ななしですヨ!)
PS.ツンデレで親切ってなんだかおかしな組み合わせですね!笑』
直後、手紙が悲鳴をあげました。ひい、と思わず声があがってしまいます。恐ろしい方です、政宗様は。どうやら真田様の話題で(あの部分だけは解りました)至極腹を立てたようで、手紙を微塵にしたのち、低い声で仰いました。
ええっ、ななし様なのですか?!
「あのアマ、ひねり潰す」
小十郎視点は難しいので、女中視点。リクありがとうございました!