本編
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ここでござる、と、お風呂に入る前に連れてこられた部屋は、広くてあったかくて、どこか奥州と似ていた。まあこの時代、洋室がないわけで、和室であればどこも同じように感じるのだ。ここが、お祭りの日まで(というか奥州に帰る日まで)お世話になる部屋だ。
本当に甲斐に来たんだ、と、ちょっと奥州をさみしく感じたけど、あの鬼姑を思い浮かべたとたんそれが吹っ飛ぶ。もおおおおなんなのよあの男はァァァ! 思い出したらまた腹立ってきたわ!! 政宗さんの側近よりヤクザの筆頭のほうが明らかに向いてるような顔してさ!
「真田さん、武田さんに仕えていて本当に良かったですね」
「? それは、勿論でござる!! この命燃え尽きるまで 甲斐を守り続ける所存!」
「・・・真田さん見てると、ああ、戦国だなって思いますよ」
はてなマークを浮かべる彼に思わず苦笑いする。だって今までいた所は、英語が常に飛び交うし(政宗さんのせいで)戦国というよりヤクザの世界にいると思うし(ヤキいれるぞ!!なんて普通言わないでしょ!)・・・。奥州ってすごい特殊なのかもしれない。
「ななし殿の部屋でござる、自由におつかいくだされ。それから佐助が、付きの者はいかが・・・」
「ああああいらないですっ! 一人でできますから、奥州でもそうでしたし」
「そうでござるか。ななし殿はおなごだというのに、ずいぶんと自立してござるな」
男子のようだ、とニカッと笑う彼に悪気はないんだろうと思う。これが政宗さんや小十郎さんだったら悪気どころか悪意100%なんだろうけど。やっぱ人柄って大事なんだなあ。
そして案内された風呂でリラックスして、部屋に戻る。お風呂と部屋はとても近くて迷わずにたどり着く事ができた。真田さんが気をつかってくれたのかと思ったけど、・・・いや、多分猿飛さんだと理解する。真田さんだったらこんな気遣いはできない(さっきのお付きの者~っていうのも猿飛さんだったしね)
部屋に戻るとすでに布団が敷かれていた。結局 お付きの者はいるようで、けれどその姿はまったく見あたらない。
「ふあ・・・」
眠い。長旅と宴で疲労がピークに達してるみたい・・・って、そりゃそうか。
髪もかわかさず布団に飛び込む。なんだこの温かさ・・・!! やっぱり甲斐の皆さんはクールな奥州とは違いホットだから、布団もホットなのか。ぽかぽかするその気持ちよさに、私は次第に目を閉じ「重いよ嬢ちゃーん」
私の絶叫に、一目散に駆けつけてくれたのは真田さんでした。
すぐに布団をはぎとり、「ん? ゲッ!!」と仰天したうつぶせ状態の猿飛さんめがけて、見事なハンマーパンチ!(わからない人へ、相手の背中に腕を振り下ろして叩きつけるプロレス技だよ!) あまりにも素早すぎる攻撃に、避けられなかった猿飛さんはもろにくらった。
「ぐふっ!! ・・・ったく、アンタの腕力でやられたんじゃたまんねーな!」
「(背中の防具があったか)佐助、いい加減にせよ。ななし殿、無事でござるか!」
「は、はい大丈夫です!! ていうか猿飛さんの背骨ミシッとかいってませんでした?」
「あやつは自業自得でござる、気に召されるな」
「旦那、誤解だって! 俺様はただ、疲れてる嬢ちゃんを想って、あったかい布団にしてあげようと」
「それがいらないお節介なんです!! どうせ敷いてる途中でちょっと布団に入ったら意外にあたたかくて出るに出られなかったとかじゃないんですか?」
「おおー、すごいな嬢ちゃん。いい監察になれるぜ」
ぱちぱちと拍手する猿飛さんに、真田さんが腰に手を当てて怒鳴った。
「佐助、いい加減に出ろ!」
うーん、ここだけ切り取ると、真田さんがオカンに見えてくるかも。日頃は逆なのにね! そう思っていた私に、部屋を出ようとした猿飛さんがすれ違いざま ひそひそと言った。
「あーあー、嬢ちゃんと会う前はこんな旦那じゃなかったのに」
「ちょっ、私のせいですか」
「いんや、ほめてんだよアンタの事。旦那をヨロシクね」
ハートと星マークがダブルでついてきそうな語尾。なんだ、その意味深そうな笑みは。
やっぱり猿飛さんって苦手だ!!
「ななし殿、誠に申し訳ござらん。佐助は本来あんな奴ではなく、」
「わかってますって、真田さん。猿飛さんは本当はとても頼りがいのある立派な忍でしょう」
「・・・ななし殿」
わざわざ深く一礼をして、真田さんは出る間際に明日の予定を聞いてきた。お祭りは明々後日だそうで、当日まで2日もある。私は考えて、パンと手をたたいた。
「それじゃ、明日は甲斐の見学と浴衣を探しに行きましょう」
「わかり申した。明後日はいかが致すでござる?」
「浴衣を買って、遊ぼうかなって。でも、真田さんは忙しいんじゃ」
「大丈夫でござる。必ず間に合わせるから、ななし殿は待っていてくだされるか?」
「はい。ああっ、それと! 手紙を書きたいんですけど」
「・・・政宗殿にか?」
にっこり笑って頷いた私は、すぐに「持ってくる!」と走り出た真田さんの表情を見る事はできなかった。
離れても、常にあるもの
明後日だと早すぎる、弥明後日だと遅すぎる。そんなわけで明々後日です。