本編
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何が・・・、
「なァにがただの男じゃねーんだよだバアアアアアアアカ!!!」
「バーーーカ!」
「佐助ッ、悪乗りするな!」
ぽつり、と呟いたかと思えば、絶叫する嬢ちゃんことななし。そのあまりの声のでかさに、せっかく盛り上がっていた宴が一瞬にして静まる・・・のは、きっと普通の宴。うちの血気さかんな男達は、その嬢ちゃんの男らしさ(?)に拍手を送った。
それに気をよくした嬢ちゃんは、またお酒を飲んだ。あーらら、俺様知らないっと。
「だいたい意味がわかんないんっすよー、なんであれで小姑がでてくるわけ?! 政宗さんに言われるならまだしも、なんで姑?!」
「ななし殿、小十郎殿でござる。小姑でも姑でもない」
「わーってますって、真田さん!」
ニッカーと笑う嬢ちゃんに、旦那はほとほと困っていた。そりゃそうだよなあ、発端は旦那のいらないお節介だもんなあ。ただ一人、隣で 武田の大将は大皿に酒をなみなみ注いで一気飲みして「俺は知らん」的な立場だけど。
甲斐に着いた俺達は、まず嬢ちゃんに客室を案内した。客室は日頃 使われてないから心配になったんだけど、さすがうちの女中、埃一つない。それに景色も嬢ちゃん好みらしく、疲れも感じさせないほど騒いでたので、満足なんだろう。ただ、その騒ぎようがいつもより異常だなー。なんて。
「ななし殿、しばしここで くつろいでくだされ。それがし、お館様に話をしてくるでござる」
「はーい、わかりました」
「はーい、俺様もここにいま」
「猿飛さんキモい真似しないでください!」
「お前は一緒にくるのだ、給料泥棒め!」
「二人ともひでェ!」
嬢ちゃんの隣で、嬢ちゃんの声真似をしてみたら、酷いことになった。嬢ちゃんより旦那が口が悪いってどうよ。昨日 偵察の後 寄り道して団子食って帰っただけで給料泥棒って・・・!(単に羨ましかっただけだろ!) 旦那に首ねっこをつかまれると、ずるずると引きずられていく。一見 普通のことなんだけど、嬢ちゃんは旦那が予想以上に力持ちだということにビックリしたのか、目を丸くしていた。
「んじゃ、嬢ちゃんごゆっくり~」
角を曲がって見えなくなっても、大将のいる部屋の前まで、俺はずっと引きずられていた。あれっ、旦那、そんなに怒ってるの?
「べーつに、ちょっと くっついたくらいで妬くなよなー。みっともないぜ、旦那」
「だっだだだだれが 妬くなど・・・! 佐助がななし殿に昨日から破廉恥な事を・・・」
「はいはい、妬いてる奴はみーんなそう言い訳するんだよ」
とりあえずこのまま大将の前に現れるのは恐ろしいので、俺は 素早く旦那の手を離れた。そして少し後ろに立って、「どーぞ」と旦那を促す。まだ納得してない表情だったけど、気を取り直して、
「お館様アアアア! 只今戻りました!!」
部屋の中に飛び込んだ真田幸村(ああ、態度が全然違う・・・)に、武田信玄が「幸村ァ!」と怒鳴りつけた。いや、訳したら「おお、戻ったか!」なんだろうけど・・・いやはや、熱い人間には熱い人間用の言葉があるみたいだ。俺様まったくわかんないけど。
それから思う存分殴り合わせた後、大将に嬢ちゃんのことを報告する。すると「その娘に会わせよ」と言うかと思えば、「宴じゃァ!」と叫んだ。え、なんで宴?
「あのー、大将?」
「どうした、佐助ェ!」
「(うるせェ・・・)嬢ちゃ・・・ななし殿は、今日はもう疲れてるから宴は無理なんじゃないですかねー、と」
「安心しろ、佐助!」
耳元で叫ぶ旦那はマジでうざい。何が安心だよ、と 聞くと、自信満々に返された。
「実はこうなると思って、ななし殿に道中そのことを聞いたのだ。ななし殿は宴が大好きだから、とても楽しみだと」
「ふむ、決まりだな。幸村、よくワシを解ったな!」
「なんのこれしき! この幸村、どこまでもお館様についていきまするうううゥァァアア!!」
「幸村ァァァァアア!!」
「うお館さぶァァアア!」
「(転職してえ・・・)」
そして現在、酒をどんどん注がれ、始めは「ミセイネンですから!」と断っていた嬢ちゃんが、今はぐいぐいとその酒を呑んでいた。あーあー、何やってんだか。更に厄介なことに嬢ちゃんは泣き上戸でも笑い上戸でもなく、怒り上戸だった。出発の時元気がないとは思ってたけど、どうやら昨日、片倉のオニイサンに何か言われたらしい。あまりにもバカバカと連発するので、俺様も続いて言うと、旦那に睨まれちまったけど。
「旦那がいらないこと言ったからだよー、なァにが『嫌な事は吐き出したほうが良いでござる!』だか。聞いた本人が一番びびっちゃって」
「う、うるさいぞ佐助! ・・・まさかななし殿がここまで思い詰めていたとは・・・」
俺様と真田の旦那にはさまれている嬢ちゃんは、赤い顔をしながら お椀を持つと、ご飯をかきこんだ。うおっすげえ! 酒の後に米を平気でかきこむのが流石 嬢ちゃんだね。と思ったら すごい口の中が気持ち悪そうな顔になった(そうだ、アホなんだこの子)
「でもさ、俺様も正直ビックリしたよ」
「何がだ、佐助」
「普段 伊達の旦那にくっついてるのに、どうして今回だけ真田の旦那についてきたのかなって」
旦那には悪いけど、断られると思ってたんだよねー。魚をつつきながら言う俺様の感想に、嬢ちゃんは目をしばたたかせる。酔いが少しさめたのか、口調が戻っていた。
「だって、あそこまでされたら 行くしかないでしょう」
「あそこ・・・ああ、俺らが嬢ちゃんの不安要素をすべて解消したやつ?」
「・・・まあ、それもありますけど。一番の理由は、真田さんです」
「・・・それがし、でござるか?」
今度は旦那が驚く番だ。それに嬢ちゃんは にこっと笑って、
「ご丁寧に団子まで持ってきてくれて、すごく感心してしまったんです。それでその感動のあまりここまで来ちゃったんですよねー、多分」
「ああ、なるほど」
「待て待て、どうしてそこで納得するのだ佐助。それがしが団子を持って訪れたのは、以前ななし殿が約束をしたからであって、何も感心されることはない」
「ははは、真田さんはそのままでいいですよ。真相を知らないままで。ね、猿飛さん」
「ねー、嬢ちゃん」
あの戦闘には全く参加せずに高みの見物だった俺様だったけど、嬢ちゃんが 早く家に帰りたいのと、旦那の懺悔をこれ以上聞きたくないという理由で適当に言ったことは理解していた。そんな適当さえも真面目に受け止め、見事に約束を果たす旦那に、嬢ちゃんは 感心してるらしい。ま、そこが旦那の唯一の長所だしね。
ところが何も知らない、ていうか何もわからない旦那は、俺らが仲良く首をかしげ合うのが不満だったらしい。
「お館様、そろそろ宴をお開きにしましょう。ななし殿を風呂に連れて参りますゆえ」
「そうだのう、夜も更けた」
大将は話を聞いていたくせに(旦那の隣だからね)まったく 無関心とばかりに、宴をあっという間に終わらせてしまった。まったく、おっさんの考えることはわかんねーなあ。
でも、
「ななし殿、それがしについてきてくだされ」
「えっ、あ、はい!」
旦那なら、心の中までばっちりわかるんだよねー。ちょっと嬢ちゃんと仲良くしたくらいで、そんなにムキになんなよ。
「旦那、眉間にしわよってるよ。色男が台無し」
「うっうるさい! 誰のせいで・・・」
「? 誰のせいなんですか、真田さん?」
「・・・ななし殿はわからなくて良いでござるよ」
伊達の旦那、こりゃ危ないかもね。
真田さんといると素に戻るヒロイン。リクありがとうございました・・・!