本編
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桜吹雪が舞う中、わたしと政宗さんは歩いていた。なんて素敵なシチュエーション。幸せってなんだっけ、と一時期そんなウツになったときもあったけど、今のわたしはその状態に限りなく遠い。幸せってね、こういう時間なのだよ。愛しい人と2人きりで自然の中を歩いて、お互い無言で、鳥のさえずりが耳に心地よく入って、そしてきれいな景色をながめる。
「何してんだななし」
「いや、ここまでくると疑心暗鬼になってしまって」
ほおをギューとつねってみる。大丈夫、夢じゃない。もし夢だとしてもリアリティのある夢だから問題ない(前向きすぎるねわたし!) その嬉しさがさらにプラスされ、顔がとてもだらしなくなってしまう。いかん、好きな人の前でにへらにへらするなんて・・・! なおそうとしたら遅かった。一歩前を歩く政宗さんの頬がひくひくと引きつっている。
「Hey,顔は洗ってきたのかい」
「ばりばり洗ってきましたよ! ごしごし洗って赤くなるほど!」
「アンタ、本当に馬鹿だな」
えへへ、悪いけど政宗さん、今のわたしに何を言っても無駄なのですよ。政宗さんの暴言にまったくこたえないわたしは、両手でかかえていたふろしきに ほおずりする。わたしの楽しみはもう一つ。このお弁当。なんと政宗さんの手作りで、わたしの数々のリクエストにもの凄い嫌な表情をしつつもこたえてくれた料理ばかりが入っている。早く食べたい!のに、政宗さんはまだまだ桜の木々を通る。
「政宗さーん、どこまで行くんですか?」
「まだだ」
「えええええー!! もうここら辺でいいじゃないですか・・・! お腹すきました、お弁当食べましょう」
「は? お前さっき食ったばっかだろうが」
「う゛・・・」
楽しみのあまり眠れず、結局遅く寝付いたために寝坊してしまった。そして出る寸前まで朝ご飯を食べていたわたしだったけど、ここまで馬を使わず徒歩できたので 疲れてるし、エネルギーを消費しすぎて すでに空腹。ちなみに政宗さんはばりばり馬です(あれっバリバリって死語?)
「だいたいずるいんですよ政宗さんだけ馬なんて!」
「乗馬の練習もしてねーアンタを乗せる奴なんていねェ」
「だって一人で乗るなんて恐いですよ! 政宗さんが一緒に乗ってくれたら全然恐くないんですけどね、きっと☆」
「俺がこえーよ」
俺の愛馬がアンタの体重に耐えれるとも限らねェ、と付け足す政宗さん。え、酷くないですか。妻より愛馬をとるんですか、この人。「ひーどーいー!」「うるせェ!」のやりとりを続けながらわたしたちは歩き続ける。
そして着いたところは、桜の木々が並ぶ場所・・・・・・が見える、別の場所。
「政宗さん」
「弁当を用意してくれ」
「わたしは、お花見がしたいって言いました」
「『花見』してんだろ」
「なんでこんな草っぱらから遠い桜を眺めにゃならんのですかあああああ!!!」</big>
ていうかそれ屁理屈だしね! 花見って普通 桜の木の下でシート広げて重箱を開けてみんなで箸つつきあってするもんでしょう? それがどうして、桜の花びらが舞うのを遠くから見ながら直射日光の草原でお弁当を・・・! 政宗さんの考えていることがよくわからない。政宗さんは青々とした緑の上にどっかと腰を降ろしているので、動くわけにも行かず。しくしくと嘆きつつ、わたしも向かい合うかたちで正座をする。そして前にふろしきを置いた。柔らかい草がちくちくと刺激してくるけど、ふと小さい頃こうやって家族と座っていたことを思い出した。けれどもそれは、突風によってあっという間に吹き飛ばされてしまう。すると目を閉じようとしたよりも早く、何かが目に入った。
「痛ッ! 入った! なんか入った!」
「どんくせーなアンタ・・・」
「だっだって! 政宗さん、なんか入ってますこれ?」
「ハア・・・」
向かい合ったまま、政宗さんがふろしきを越えてきた。わたしは入ったほうの目の下を指で下げて、あっかんべーのように白目を見せる。政宗さんは真剣にその目を見て、「土かこりゃ」と呟く。
「・・・・・・政宗さん、ティッシュあります?」
「・・・時代を錯誤してんじゃねえ」
「じゃ、じゃあ、もういいですか」
「あ? アンタが見ろっつったんだろ」
鼻血出してしまうんですよこのままじゃ。すごい顔が近い上に真剣な目で見つめ合うとか、今までなかったし、ていうか、
「・・・チッ、よく見えねえ。目に入れんなら もっとでかいもん入れろよ」
「・・・・・・!(あ、あともうちょいで唇が・・・ちくしょうっ、たらこ唇になあれ!!)」
政宗さんの愚痴をまったく聞いていないわたしは、ひたすら顔をぐぐっと近づけようとする。できたら初キッスは政宗さんからもらいたかったんだけど、この人はツンデレ大王だからするはずもない。なのでここだけはわたしからするしかない。いざ!!
「アンタ、まつげまで入ってるぜ」
「・・・・・・」
「・・・おい聞いてんのか」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
時間が止まったような、そんな気がした。
「(ふぉお・・・もうすぐ、初
キ)「むあさむねさまアアアァァァ!!!」</big></i>
馬にひかれた身体は宙を舞って、自然のベッドへ叩きつけられた。
「しね・・・まじでしね・・・こじゅうろう・・・しね・・・・・・ッ!!」
「政宗様ッ、ご無事ですか!! ななしに何かされや」
「落ち着け小十郎、なァに勘違いしてやがる」
どこまでもcoolな政宗さんは、頭をガシガシとかいて「ななしの目に入ったゴミ取ってんだよ」と小十郎さんを見上げる。凛々しい馬と登場しやがったオールバックは、そうですか、と一息ついてから 倒れているわたしをジロリ、と見た。ここまで来るともう疑うしかない。むくり、と起きあがったわたしは、ゼエゼエ息巻きながら小十郎さんに拳から中指だけをのばし突きつけてみせた。
「わたしは絶対に負けませんからね! 知ってるんですかあんた、男と男じゃ子供生めないけど男と女だったら子供生めるんですよ! つまりわたしの勝ち!」
「そういう考えはいい加減やめろっつってんだろ! その時点でお前は正室にふさわしくねえんだよ! 政宗様にふさわしい女は まるっきりお前と対照的な奴だ、そうでしょう政宗様」
「別に小十郎さんに認めてもらわなくてもいいしー、わたしは政宗さんの正室になるんであって小十郎さんの正室になるわけじゃないんだしー、ていうかこっちから願い下げだしー。ねっ政宗さん☆」
「・・・もうお前ら勝手にやってろ」
あれ? なんでだろう、政宗さんが怒ってるようなそんなかんじがする。さすがに小十郎さんも察知したのか、下馬するとちゃっかり政宗さんの隣を陣取る(この野郎!) 負けずにわたしも空いた方の隣に座った。そして多分だけど、政宗さんの拗ねた理由がわかった。お弁当、せっかく作ってくれたのにまったく手をつけてない。きっとわたしが食べて「美味しい!」と言うのが楽しみだったに違いない、ごめんね政宗さん!
「しょうがないから小姑さんもまぜてあげますよ。さっ、お弁当食べましょう☆」
「誰が小姑だ」
「あらすいません小十郎さん、『こじゅうと』と『こじゅうろう』が似てるから」
「いい加減にしろ!」
スパンと叩かれたけど、その分の怒りは政宗さんの料理で解消された。美味しい。あまりにも美味しくて、わたしはそのまま無言で食べ続けていた。それがとても夢中で(料理もたっくさんあるしね!)政宗さんと小十郎さんが何か話していたみたいだけど、内容が頭の中に入ってくることはなかった。
「しかし政宗様、なぜこのような所で風呂敷を・・・」
「別にどこでも一緒だろう」
「は。・・・ですが、当初は桜の木の下にいる、と仰っておられたので」
「それを言うなら、お前まで城を開けちゃまずいんじゃねーのかい」
「いえ、城は別の者に任せております。ただ、政宗様に何かあったほうが拙いかと」
「・・・・・・過保護だねェ、アンタも」
「そうさせているのは どなたですか」
「・・・・・・」
いい加減にしてくれ、どいつも。
たまには逆らったりしてみたいもんで。