本編
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雪もとけてようやく「春」という言葉が使われるようになった日。戦もなく平和に過ごしていたわたしは、平和すぎて、平穏すぎて、かえってつまらなかった。そりゃ戦がないことが一番いいんだけども、なんていうかこう、体がなまるといいますか! さて、そんなわけで!
「政宗さん、花見しましょう!」
「断る」
「ええええ!!!」
ど、どうしてですか!と項垂れるわたしの頭にばしっと飛んできたのは 紙。びっしりと黒い文字がつめられているそこの頭には、「治水」とあった。・・・工事、ってこと? 政宗さんに尋ねてみるとどうやらそうらしく、そこの土地は雪が降りすぎてしまい、その雪解け水で川を流れる量が増えてしまったとか。そこで工事をする、という紙のようなんだけど、詳しいことはよくわからない。ただ、政宗さんはこれがあるために遊ぶ暇はないんだそうで。
「それじゃあわたしも手伝いますから、早めに終わらせましょ!」
「やめろ、アンタが関わると一生終わらねえ」
「そんな・・・! 少しは妻を信頼してもよろしいじゃありませんかっ」
「誰が妻だ、誰が」
「くォらななし! てめーどこほっつき歩いてるかと思えば、政宗様の邪魔をしやがって!」
「ぎゃあ! 来た鬼!!」
ちくしょう、せっかく小十郎さんがいない隙に説得するはずが・・・! 予想通り足蹴にされ部屋から放り出されたわたしは、思いきり声をあげて宣言してみせた。いいよ、こうなったらみんなで行ってやるから!
「いいですよーだ! 武田の皆さんも呼んで、とっってもエンジョイな花見やってやりますから! バーカ! 小十郎のバーギャアアアア!!!」
しまった、逃げながら叫ぶんだった・・・! 「後悔先に立たず」ということわざ通り、わたしはアニキよりも鬼の人物に再度 命を狙われ追いかけられるはめになってしまった。ていうかなんか毎度毎度わたしこうなってない? あれっ進歩なくない?
「と、とりあえず・・・! この場をなんとかして・・・ッ!」
そしてタイミングよく「小十郎!」と政宗さまが(あっ小十郎さんがうつった)叫んでくれたおかげで、このリアル鬼ごっこは終了を告げたのだった。まだ春だというのに、どうしてこんなに汗が流れるんだろう。でも今はそんな場合じゃない。しばらく時間をおいて、また政宗さんの部屋へ向かうわたし。武田軍ははっきり言っていてもいなくてもいい。重要なのは政宗さんと花見ができるかできないか、だ。廊下、部屋の前で、それぞれ四方八方をチェック。そして聞き耳をたて、政宗さんだけがいると判断してから、わたしは中に素早く入った。
「・・・アンタ、忍にでもなるつもりかい」
「いえいえー、わたしがなるつもりなのは政宗さんの正室です☆」
「Bye.」
グッバイ(良い感じにさようなら)でもシーユー(ではまた)でもなくあえてバイ(さようなら!)を使うとは・・・! この男、英語を熟知している。って、何脱線してんだわたし! 事は一刻を争うのに! 敵が来ないうちに政宗さんを説得せねば!!
「政宗さん、さっきのお話なんですけど!」
「武田軍呼ぶなァ無理だぜ?」
「え、なんでですか? ヤキモチ?」
「そのうぜーほどのpositive thinkingはどうにかなんねーのか」
ハア、と政宗さんが筆を置いてわたしを見る。相変わらず片目の政宗さんだけど、わたしはこうやって見合うたびに眼帯で隠れたほうの目も見たくなる。好奇心とかじゃなくて、なんというか、「見たい」。・・・ま、それは今度にするとして(あ、今後の予定にメモしておかなきゃ)
「武田のおっさんが上杉謙信とまたドンパチやらかしてんだよ。それであの真田幸村とあの猿が甲斐でのうのうと過ごしてるわけねーだろう」
「・・・た、たしかに」
「そういうわけで花見は諦めな、ななし」
「えー」
面白くない。どっかのドラマじゃないけど、「わたしと仕事どっちが大切なの!」と聞きたい。やらないけど。100%の確率で「仕事」と即答されることくらいお見通しだしね! 政宗さんのこと熟知してるわたしだからこそ考えれるのよ、アッハッハッハッハ・・・・・・ハ。・・・むなしい。ちえー、わかりましたよ。そうぼやいて立ち上がると、わたしはようやく本音をもらした。だって、言っても言わなくても花見は無しだし。どうせなら言ってやろうじゃないか。
「わたしは政宗さんと花見できるだけで よかったんですけどね・・・」
「・・・・・・・・・」
お仕事頑張ってください、と 一声かけてから退室する。さて、これからどうしようか。
「・・・・・・・・・・・・なんて、考えなくても良かった、な」
わたしの手には、小十郎さんから受け取った 和紙。和紙というか、学校の習字で使っていたあの薄っぺらい紙。その紙には達筆な文字で、一言「早起きしろ」とあった。
「・・・えへへへへへへへへへへへへへへへへへ」
顔がにやける。これはもしかしなくとも、政宗さんが花見に付き合ってくれる了承の合図では・・・! 部屋で鼻の下をのばしつつ踊り出したわたしを見て、小十郎さんは頭を抱えた。
花見より、
なんだかんだで政宗さんは振り回されてるといい。