本編
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わたしの努力もむなしく、この日タヌキちゃんは現れなかった。とりあえず寒い寒い寒い寒いと永遠に連呼するわたしのために政宗さんがわざわざ着替えをもって、今までわたしが行ったことのない、でも城内にあるらしい温泉に案内してくれる。露天風呂みたいだからきっと温かいに違いないだろうなあ・・・と考えるとホクホクするけど、やっぱ寒いものは寒い。ガチガチと震えつつ、わたしは前方を歩く政宗さんに声をかける。
「どうせなら政宗さん、一緒に入りませんか?」
「・・・・・・」
「すみませんでした、お願いだから無視しないでください」
そして脱衣所に到着して、わたしは政宗さんから着替えを手渡される。その時 政宗さんの手がわたしの手に触れたんだけど、とても熱くてビックリした。すごいですね政宗さん、風邪引いたんですか?と聞くと「バカか、アンタの手がつめてーんだよ」と乱暴に返される。そしてわたしの手をそのままギュッと握る。手と顔が爆発するかと思いました。な、なんだ突然んん!! 慌てるわたしに、政宗さんは静かに言葉を発した。
「悪かったな、霜焼けになるまで立たせてよ」
「・・・・・・!」
「でもな、長曾我部もあれで焦ってんだ。それにアンタはあいつをbrotherっつってんだから、これくらいどうってことねーだろう?」
「・・・は、はい」
ごめんなさい政宗さん、わたし今のは聞いてませんでした。まさかあの政宗さんが謝るとは思わなくて驚きのあまり呆然としてしまいました。だってぶつかっておいて自分は絶対に謝らないしわたしのお菓子勝手に食べてもむしろわたしに「先に食べねェのが悪ィ」と笑う男が・・・・・・! ポカンとしたままのわたしを放って、政宗さんは手を離した。急に温かみが消えたけど、わたしの心は熱い。
「ま、まさむねさあああん!」
アイラビュウウと抱きつこうとしたけど、さすが政宗さん切り替えが早い。サッと避けてみせると、「しっかり温まれよ、snow fairy!」と去っていく。なんだ、スノーフェアリーて・・・。まあいいや、今は温泉温泉! パパッと服を脱いで、スッパで中に入る。ドボーン、と音がするほどわたしは勢いよく飛び込んだ。うわあ温かい・・・! 身体がポカポカして、いい気分になる。
「いい湯だな、アハハン! いい湯だな、イヒヒン! いい湯だな、ウフフン!」
サビだけわかるこの歌(間違ってても気にしない!)を延々と繰り返しながら、中央に突き出ている岩のところにざぶざぶと向かう。わたしの身長より高くて、この円形の中央を貫いているのが立派だ。わざと崩さずに残してるんだろうか。そんなことを思いながら、肩までたっぷりと湯につかる。
「・・・はー、さっきはビックリした・・・」
政宗さんに手を握られたときを思い出すと、急にじわじわと身体中が火照ってくる。おかしい。政宗さんの側にいて手に触れるなんていつものことなのに、どうしてこうもドキドキするんだろう・・・。自惚れじゃなかったら、あの時の政宗さんは普段のクールな目じゃなくてとてもあったかい目をしてた。ツンデレだとは思っていたけど、デレっとなったらあんな目ができるのか・・・。・・・反則だ。超反則だ。日頃あんなにいじめぬくくせに時折とてつもない愛情表現をするものだから、よけいに彼にのめり込んじゃうじゃないか! ていうかわたしってやっぱ愛されてるんだよねうひょう!(結論これだよね、確実に!) ああーもしかしたら今この場に政宗さんがいたりして、・・・・・・ん? なんだ、今岩の向こうで何かが動いた気が・・・。ちなみに願っていた政宗さんはまずない、だってさっき、わたしの目の前で廊下を歩いて去ったんだから。
「・・・・・・アニキ?」
長曾我部さんと今更言い換えることもできず(さっきは勢いで呼び捨てできたけど、やっぱ本人を前にしたら無理・・・!)わたしはそのまま、岩の向こうの気配に呼びかけた。でも返事はない。よく見ると、アニキとは思えないほどの小さな影が、湯気に浮かんでいる。なんだ、と構えていた大きめの石を元に戻した。・・・アニキだったらこれで失神させるつもりだったんだけど。子どもかな? いや、それとも動物? この温泉は目の前に森があるから、きっと野生の動物が入ってきてるんじゃないだろうか。
「・・・お、おいでー・・・! 何もしないからわたし、本当に何もしないよ。チッチッチ・・・!」
チッチッチ、と舌打ちじみたものをしながら手招きをする。これで動物に伝わるとは思えないけど、近付いても逃げないからそのままの体勢で向かうことにする。見知らぬ男が入っていたらすぐ声をあげよう、政宗さんがすぐさま駆けつけてやっつけてくれる。これで来なくても、政宗さんの悪口を言えばわたしをやっつけるために駆けつけてくれるし!(哀しい現実を受け止めるよ、わたしは)
「・・・・・・(せーの・・・)誰だー!」
声を張り上げて見れば、逆にわたしが驚かされることになった。すぐさまこの子をすぐ抱き上げて、この世の天国から迷わずあがる(寒い、けどしょうがない!) 身体をふいて着替えも適当にしてわたしは露天風呂を後にした。
「政宗さんん! タヌキちゃんがいましたよォォォォォォ!!!」
シモヤケでドッキリ
a snow fairyは雪女のことです。ネタを再び使用、ありがとうございました!