本編
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「私が誰よりイチバン~♪」
好きなラブソングを口ずさみながら、わたしが向かうのはやっぱり政宗さんの部屋。ケータイの液晶画面を再確認すると、間違いない、今日は2月14日のバレンタインデー! こっちの時代の暦はまったくといっていいほどわかんないけど、季節も行事の日もだいたい合ってるからこれは助かる。正月もピッタリだったしね!
「は~、こういう時 不便だねえ、この戦国時代は」
はふうとため息をついて、昨日 積もったばかりの雪でうまった庭をながめる。
ここは、乙女にとって大切な(文字通りの)材料・チョコレートがない。だから、せっかく好きな人がいるというのにチョコレートを持って告白できない・・・! ウガアァァァなんてこと! どうせならチョコもクリスマスもある戦国時代にしてくれればいいのに! ・・・・・・うん、ごめんなさい調子にのりました。
とりあえず、チョコの代わりに菓子を作った。菓子といっても、戦国時代らしく質素な感じで、クッキーみたいなものかな。小十郎さんに手とり足とり・・・じゃない、手を叩かれ足を踏まれ教えてもらった。あの人凄いドメスティックバイオレンスが激しいんですけど。わたし今まで小十郎さんに何かした? と本人に聞いたら、「お前それでも政宗様の妻になるつもりかゴルァ」と睨まれてしまった。その時はすごいショックだったけど、今こうして考えれば、あれは立派な嫁修行。なんだかんだあーだこーだと言いつつ、小十郎さんはわたしを支援してくれているんだ。えへへ、そう考えたら小十郎さんていい人なんだよね! ただ姑みたいで口より手が出ちゃうタイプなだけなんだよね・・・・・・あれッこれってフォローになってない、か?
まあ、「料理ができなくても愛があれば夫婦なんてちょろいもんです」と言ってしまったわたしも悪かった、んですがね。
「まっさむーねさあん」
ふすまなのでノックするわけにもいかず、わたしは一声かけてからよいせと開けた。政宗さんは振り向くようにしてこちらを見ている。向こうにある机にむかっていたようで、呆れたように「Hey」と返してきた。
「アンタは犬以下じゃねーか。返事より先に入ってくるたァ無神経にもほどがあるぜ、ななし」
「いいじゃないですか、夫婦間に遠慮は無用です」
「あの薬また飲ませてやろーかい」
「今度から気をつけます、エヘ!」
おっと、いけないいけない。夫婦漫才してる場合じゃなかった。
政宗さん、と菓子を手渡すと、彼は酷く驚いたようで、多分わたしが料理するなんて思ってもみなかったようだ。
「これ食えるのか」
「失礼な!! 小十郎さんがそばにいて乱暴に教えてくださったから大丈夫ですよ!」
「それならいい」
「・・・・・・(小十郎のバカ)」
チッと見えないところで舌打ちをし、さあさあ と政宗さんに菓子をすすめる。政宗さんが「OK.」と、わたしビジョンからすればどこかワクワクした様子で菓子を手にとると、それがボロボロと崩れ落ちた。
「「・・・・・・・・・」」
・・・・・・何も言えないわたし。
そして、実は優しいからあえて何も言わない政宗さん(あ、涙で視界がにじんできたわたし)
こんな気まずいバレンタインデーは生まれて初めてでございます。
「・・・・・・す、すみません」
「・・・・・・・・・」
政宗さんが別の菓子をつまむと、そこからヒビが入ってもろく 散っていく。
他の菓子も。他の菓子も。そして箱に入っていた5つのかたまりは、クッキーを食べ散らかしたようなカスに変貌をとげていた。泣いても良いですか。
「・・・・・・政宗さん」
「・・・なんだ」
「・・・・・・・・・わたし、実は政宗さんのことが好きなんです」
「お前それ今頃じゃねーの?」
バレンタインデーは告白する為にあるんですうううううう!!!!
負け犬の遠吠えよろしく、わたしは部屋から逃げるようにして走り去った。
チクショー、小十郎さんが意味ありげに笑って見送っていた理由がわかった!
「やっぱアイツは敵だーーーーーー!!!」
今日だろうが明日だろうが敵は敵
ヒロインの料理ベタは管理人と同じくらいです、エヘ!(そこに刀があるよ)