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朝、政宗さんから遠乗りに誘われ、ワクワクしながら城を出た。
山道の途中で一度後ろを振り向くと、わあっとテンションが上がる。
「凄い遠くまで来ましたね、政宗さん! もう城があんなちっちゃくなってますよ」
「ああ」
政宗さんは同じように振り返ることはなかったものの、馬を止めた。
不思議に思っていると、政宗さんが突然下馬し、わたしに向けて手を差し出す。あれっまわり何もないんだけど。
「ここで降りるんですか?」
「ああ。ここからは馬で行けねェ道を通る」
「へえ~!」
一体どんな景色が広がってるんだろう。
ワクワクしながら政宗さんの後ろをついて歩いていく。
やがて360度を木に囲まれ、道しるべが政宗さんしかいなくなった頃、突然立ち止まった。
「ななし」
「なんですか? 政宗さん」
「……アンタは、俺達と出逢えて良かったと思ってるか?」
「え…やっだなあ、当たり前じゃないですか! 現代に帰れないのは、そりゃまあ時々さみしく思ったりしますけど…でも、政宗さんや小十郎さんといて楽しいですし、あ、勿論真田さんや猿飛さんたちとも仲良くなれて嬉しいですよ。まあ一番は政宗さんですけど!!」
「そいつァ良かった。行くか」
「あ、はい!」
この会話の最中、政宗さんがわたしに振り向くことはなかった。
さらに歩くこと…えー、多分一時間くらいかな。
くたくたになったわたしを政宗さんが手をひいてくれ、なんとか目的地にたどり着く。
今までいやというほど目にうつりまくっていた木が、その範囲だけは綺麗に伐採されている。その空き地の真ん中に、三角屋根の木造建築物があった。山小屋っていうやつだろうか。
こんなところに小屋があるなんてね~と一人思っていたら、政宗さんがそこに向かって歩き出した。ええっまさか!
「あ、あそこですか?!」
「Yes. 小十郎や真田達もいる」
「え?!」
いやまあ確かに立派な山小屋だから、大人数人は余裕で入る。
しかしわたしは政宗さんと二人きりでデートをしにきたわけであって…ていうか、小十郎さんもかよ!! なんで小十郎さんまで? 監視か、わたしが政宗さんに手を出さないように監視でもするというのか畜生め…(チッばれていたか)
「なんだ…二人きりのデートじゃないんですね」
「安心しな」
政宗さんは、ぶーたれるわたしの顔を見てニヤッと笑った。
「じきに、気にしなくてもよくなる」
「……え?」
気にしなくても、よくなる? 何を?
理解できなかったわたしはオウム返しのように返したけど、政宗さんは口を閉ざしてしまった。
扉を開けると、真田さんと猿飛さんと小十郎さんが座敷に腰をおろしていた。
わたしを見つけた途端、真田さんが目を輝かせて飛びついてくる(うわ!)
「ななし殿! お待ちしておりましたぞ!」
「ぐえっ!!」
真田さんらしからぬ行動に目をしばたたかせる。ハグしてきたよちょっとォ! 破廉恥を連呼する人だったはずでしょ、きみ!
「こらこら旦那、嬢ちゃん苦しんでるから」
猿飛さんがすぐに真田さんの首ねっこをつかんでくれた為、呼吸困難に陥ることはなかった。
それにしても……なんだ、ここ。
「なんだか薄暗いところですね」
今は昼間だから、隙間から日の光が差しているけど、ろうそくが一本も用意されていないことに首をかしげる。時代が時代だから電球なんてあるわけないっていうのは知ってるけど、どこの家庭にもろうそくや提灯くらいはあるはずなのに…。
小十郎さんはさっきからこちらに背中を向けているけど、その先には大きな鍋が見えた。比喩とかじゃなくて、本当に大きい。直径一メートルはあるんじゃない?
その鍋は、これまた大きな竈にのっていて、炎がごおごおと音をたてて燃え上がっていた。
「何作ってるんですか、小十郎さん?」
近寄ろうとしたわたしの両腕を、猿飛さんと真田さんが片腕ずつがっちりつかみ、反対方向の角にある座敷に座らせた。
「?」マークをめいっぱい浮かべるわたしに、猿飛さんが眉を八の字にした。
「ここまで来るの疲れただろ? 吸い物準備してあるんだけど、飲む?」
「わっ本当ですか! ぜひ!」
さすがオカンな猿飛さん、気配りができてる。
ニコッと笑い、小十郎さんの見ている鍋とは別の鍋に向かう猿飛さん。あ、あんなところにも竈が。
「政宗さんも飲みましょうよ」
少し離れた場所で、あぐらをかき、ジッとこちらを見ていた政宗さんにも声をかける。するとかぶりを振り、「もう飲んだ」と答えた。
……飲んだかな? まあ、わたしが見てないだけかも。
隣の真田さんは何が楽しいのか、さっきからずっと笑っている。
その笑顔を見ていると、違和感がした。
「……なんか、おかしくないですか?」
つい、口からそんな言葉がもれる。
「可笑しい…? それがしはいつも通りでござるが」
困り顔をする真田さん。それを見てわたしは笑いながら「あは、すみません」と謝る。何言ってんだか、わたしってば。
そりゃあ場所は確かに薄暗くて不気味だけど、猿飛さんも真田さんもいつも通りだし、政宗さんはクールにこちらを見守っているし、……小十郎さんはずっと背中向けてるけど、まさかのっぺらぼうというわけでもないし。
「はい嬢ちゃん、お待たせ」
戻ってきた猿飛さんの手には、お椀が。
透き通っているからお水かな、と思ったけど、受け取ったお椀があったかいのでお湯だとわかった。
しかし、運動後にお湯か…。正直お水が欲しかったな~…って、さすがに贅沢か。
「…ん…?」
一口飲んだそれは、お湯ではなかった。
薄めながらも舌に広がる、甘い甘い味。
砂糖水とはまた違った、たとえようのない心地よい甘さ。
「おいしいですね…!」
「それは何よりでござる」
満足そうに笑む真田さん。
美味しさにわたしもつられて笑おうとした。
……?
あ、あれ。
「…ん、と」
笑えない。いや決してシリアスな「笑えねーよ!」という意味ではなく。
なんというか、恐らく表情筋とよばれる箇所が動かない、気がする。
頬がつりあがらないし、口も思うより開かない。
困惑するわたしをよそに、真田さんがお椀をゆっくり手から取り上げる。
ところが、その感覚がない。
わたしの手からお椀が離れた、という感覚が感じられないのだ。確かにこの目で真田さんの行動をはっきり見たはずなのに、まだお椀が手に包まれている感覚が消えない。
何、これ。
どうなってんの?
「(まさか真っ昼間から金縛り?! ちょっ真田さん笑ってないで気づいてよ!!)」
幸い視聴覚は問題ない。
けれど次第に、手や顔は勿論、足の感覚までなくなっていく。
でも見下ろせばきちんとそこにあるのだ。手足共に健在で。
「どうしたでござるななし殿」
「あ……ふぁ……ッ?!(ええええ!)」
舌まで回らないんですけど!!
これってもしや俗に言う麻痺状態なの?!
「(ちょっ真田さんヘラヘラ笑ってないで助けてくださいよ!!)」
焦るわたしに気づいたのか気づいてないのかわからないけど、今まで静観していた政宗さんが立ち上がった。
こちらに向かってくる。
「真田、猿。もうどきな」
「はいはーい。行くよ旦那、準備準備」
「そっそれがしもななし殿を見ていたいでござる!」
「我が儘言わない! もうすぐ終わるから」
なんとまあ、不可解な会話。理解ができない。
準備?
終わるって、何が?
「………(み…んな…?)」
あれだけ長い時間(国が違えど)一緒にいたのに、今、考えていることが全くわからない。
そして二人が去ったかわりに、政宗さんが目の前で腰をおろした。
「ななし。……眠いか?」
眠い?
ああ、そうかも。そう言われれば眠い。
なんでだろう、いくら長時間 馬に揺られていたとはいえ、こんなに急激に眠気が襲ってくるなんて考えられない。
頑張って逆らおうとまぶたをこす…りたい。けれど麻痺した手はもうわたしの脳の管轄から外れていて、全く動かない。
「ま……(政宗さん)」
次第に重くなってくる頭。
ゆらゆら揺れていると、政宗さんの大きな手がなでてくれた。あったかい。なんて心地良いんだろう。
ていうか政宗さん、いつのまにかみんなの前で…デレモードぜんか…い…じゃ…………。
「(あ…やば…)」
もう………む……り………。
「ななし」
「………?」
「安心しな。怖がることはねェ。これからはずっと一緒だ」
政宗さんの口が、わたしの耳元に近づいた。
「俺『達』とな」
どうしてだかわからない。
その言葉を耳にした直後。
政宗さんと出会った頃から昨日までの出来事、日々が、ぐるぐると脳内で再生された。
『政宗さん!』
『ななし、遅ェぞ』
『政宗様、放っておきましょう』
『酷すぎませんその扱い!? ねえ真田さん』
『そうでござる! ななし殿は仮にも女子ですぞ!』
『…真田さん、さりげに酷い』
『旦那~、余計印象悪くなってるぜ?』
みんな、みんな、笑っている。
まぶしいくらいの。
笑顔。
「政宗様」
小十郎さんの声が遠くで聞こえる。
「煮えました」
シキン、と金属音が耳につく。
力が抜けたわたしを、政宗さんの香りが抱きすくむ。
「I love you.」
それは呪文のようだった。
胸に何かがスッと入っていく。
妙な感覚。体が一瞬にしてカッと熱くなる。
そのうち、動かない腕に、熱いような温かいような、あるいはぬるい、液体のようなものがツツツ、としたたってきたのがわかる。
みるみるうちに視界が白くにじんでいく。
唇に何か、温かいものが押し当てられた。
でもなんなのかわからない、
わからない、
あれ、
なにがわからないんだ…………。
なぜか突然、まぶたが自動的に開いた。
開こうとしたわけではなく、自然に開く。
いつの間にか小十郎さんも猿飛さんも真田さんも、政宗さんの後ろに立っていた。
表情はわからない、見えない。
ただ黙り込んで、わたしを見下ろしている。
さっき小十郎さんがいた竈の上で、大きな鍋がぐつぐつと煮えていた。
ぐつぐつ。
グツグツ。
用意されているお皿の数は四枚だった。
ずっと一緒にいようよ</b>
(ああ、あれはきっと走馬燈)
誰がなんといおうと究極の愛。