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今日はゴロゴロゴロ、と雨雲が空いっぱいに広がる日らしい。
こういう時お天気おねーさんがいると頼りになるんだけどなあ、と思いつつ、わたしは政宗さんの部屋に突入した。
「政宗さーん、おはようございます! [#dn=1#]ですっ!!」
「ああ」
あら、いつもなら最低限の挨拶は返してくれるのに。首をかしげて、こちらに背を向けたままの政宗さんへ近づくと、わかった。筒状の用紙が山をつくって、机を占拠している。それを一つ一つ見ては筆を走らせ、政宗さんがサインらしきものを書く。
………え、これ、もしかしてお仕事? この山を片付けるのが?
「…あの、政宗さ」
手伝いましょうか、と発しようとしたのどを首ごとつかまれ、「キュウ」と鳴くしかないわたし。
犯人? バーローんなもん決まってんだろ!!
「てめェが手伝おうとした瞬間仕事が倍になるのは目に見えてんだ。こっち来い」
「小十郎さんんんん!!(しねェェェェ!)」
わたしがギャアギャアとわめくのも想定済みなんだろう、そのままの状態で背後から襲ってきた小十郎さんは政宗さんに一礼して、わたしを引きずっていく。アアアアアわたしのオアシスぅぅぅぅ!!!!
そして小十郎さんの部屋に連れられたところで、ようやくのどが解放された。まずすることは、ため息。
「せっかく政宗さんとラブラブしようとしたのに…。でもまあいいか、会話できたし」
「………」
「…ちょ、なんですかその顔。すごい複雑そうな」
「…変なところで初だな」
「へんなところって!! 失敬ですね!」
乙女はいつだってウブでロマンチックなんですよ、と腕を組んで(無い)胸を張ってみせると、小十郎さんは既にわたしに背を向けていた。もしもし、忍者さん聞こえますかー? わたし貴方のこと100%援護します、誘導します、さあ今が好機です、奴にとどめさしてください。
「ていうか、わたしを部屋に連れこんで何する気ですか? ハッ!! まさか臣下にもかかわらず、殿の妻に手を出すなんて…!」
「ほう、よくわかったな」
「え アギャ!! いったーい!!!」
そっちかよ! ゴインと脳天にチョップをくらい、わたしは恥じらいもなく畳の上を転げ回った。いや、わかってたけどね! 小十郎さんがそういうつれない態度&DVに出るのは。でもあえてそれを待っていたわたしは…いや、別にそんなんじゃないから。Mじゃないもん、政宗さんに対してはMだけど他の人に対してはNだもん。ニュートラルだから!
「いい加減起きやがれ。働かざる者食うべからずだ、これやってこい」
「え?」
つきつけられたのは、一枚の紙。達筆な文字でつづられているのは…えーと、…どうやら、調味料の種類…かな?
うまく状況がのみこめないわたしは、とりあえず紙から小十郎さんへ視線をかえる。
姑はそれがわかったらしく、舌打ちをしておでこに手をついた。むかつく。主語がないキャッチボールを、このわたしとできると思ってんのかコルァ。ちなみに政宗さんとは言葉なくてもキャッチボールできるけど! むしろボール取りに行くから。
「お遣いだ。俺は今から野菜の収穫。お前は城下に降りてそこに書いてあるもん買ってくりゃいい」
「なんだ! そんなことなんですねー!」
びっくりしたー、てっきり作らなくちゃいけないのかと!!(や、小十郎さんならあり得そうなムチャぶりだから) 安心したわたしはニカッと笑うと、お金が入ったポチ袋を小十郎さんからひったくり、部屋を飛び出した。
「おいっ、傘ァ持ってけ!! …………聞こえてんのか、あの阿呆女」
「おじさーん、これとーあれとーそれをくださいっ」
「はいよっ毎度あり~」
ふふん、小十郎め。相手が小娘だと油断したのが命取りってものよ。
わたしは城下町に到着後、無駄な動き(=寄り道)をすることなく、見事に調味料を次々と買い占め、あっという間に目的を達成することができた。
フフン、あとはササッと帰って小十郎さんに「やったな!」って白い歯を見せてもらうんだ、……。
…ごめん、想像したら、ナカッた。
「今ので最後だっけ」
竹かごに入った数々の調味料を見て、買い忘れがないか確認する。
うん、オッケーオッケー。
「よしっかーえろ!」
気分も上々に、歩き出した時だった。
ぽつり、と鼻の先に何かが落ちる。そして頭のつむじにポツポツと落ちてきた。
そこで「ん?」と首をかしげた直後、ザーと突然降ってきたのは、
「わー! 雨!!?」
さっさいあくなタイミング! しかも小雨とかではなく、それこそバケツにたまりにたまった水を神様が「あらよっ」と蹴っ飛ばし空からこぼしたような量だ。
これはいかんと慌てて風呂敷でかごを包み、調味料が濡れないようにする。
一方、お店を出していいる人たちも、右往左往しながら次々に商品をしまっている。普通ならここは手伝う、べきなんだろうけど、す、すみません…わたしにはその余裕すらないのですうう!!
すいませんを絶叫しながら(絶叫しても雨の音に消されてるけど! ほんとすごい雨だから!)雨宿りができる場所を探す。
幸いにも、人一人がちゃんと雨宿りができるくらいの屋根がある、大きなほこらがすぐ先にあり、そこに避難することができた。
基本キリストとか仏教とか信仰に偏りのないわたしは、ほこらの主こと神様(が入ってる小さな社)に手を合わせて、ようやくホッと息をつく。た、助かった。
気分が落ち着いたところで、風呂敷の結び目をゆるめて竹かごの中身をチェックしたけど、異常はないようだ。これにもホッと一息。
「うーん……」
しかし。
避難してしばらく経っても、雨はまだ勢いが止まないらしく、よく見れば地面の土が跳ね上がるほど強く打たれている。
そういえば最近雨降らなかったけど……や、でも別に関係ないけどね。
たまりにたまった鬱憤が爆発したとか、天候にそんな感情あってたまるか。
また、雨が激しいせいで、見回せば人っ子一人見あたらない。
さっきまでワーキャー騒いでた、お店を出していた人も既に避難したんだろう。手際いいなあ、慣れてるんだな。
ちょっと暗くなった空を見上げながら、わたしは誰にともなく呟いた。
「やっぱ、わたしが珍しく任務こなしたからかな」
こっくり、こっくり。
首が曲がり頭が下がり、重心が傾く。
そして一定以上傾いた時、おでこに激痛が走った。
「いったあああ!!」
ドテッと倒れそうな体をなんとか手で支える。い、痛い。めっちゃ固い物がおでこに激突した…と思ったら、前にあるのはほこらの柱。
そこで脳が覚醒した。どうやら暇すぎて寝てしまったらしい。まあしょうがないよね、すごい静かだし騒音とかまったくしないし!! ちょっと寒いけど。
「ん?」
そこまで考えて、ちょっとした疑問が浮かんだ。
それとほぼ同時に、パカラッパカラッとひづめが地面を蹴る音が遠くからやってくる。
疑問と、その音の正体を確かめようと首をめぐらせてみる。
やっぱり、雨は止んでいた。まだ空は少し暗いままだけど、地面にできた大きな水たまりには、一滴も雨が落ちてこない。
「[#dn=1#]!」
「え? あっ小十郎さーん!」
どうやら馬に乗ってきたのは白馬の王子様……のお守りをして早何十年おかしな輩が王子に近づいた瞬間愛用の刀でめった刺しのヤーさん風じいでした。
ほこらの前で馬をどうどうと止めると、わたしをジロリと見下ろす。
「今すぐ馬の前に正座しろ」
「変なたとえ方してすいませんでした!!」
チッどうやらわたしが妙なことを考えてるのがバレたらしい。さすがに馬の前ではできないので、その場(ほこら)で土下座する。
「[#dn=1#]、てめェなんでさっさと帰ってこねェんだ」
「え? だって雨が降ってて…」
「あ?」
「……」
「……オイ」
「…いつから止んでました?」
「……寝てたんだな」
「…! あ、あは☆」
笑って誤魔化すわたしから視線をそらし、深い深いため息をつく小十郎さん。
その様子からすると、あれは通り雨かもしくは短時間の豪雨だったらしい。それにも関わらず外で爆睡するわたしです(うん、そりゃため息つくわな)
「それはそうと、材料はちゃんと買ってんだろうな」
「ああもうそりゃバッチリです! 雨が降る前にぜーんぶ揃えましたからね!」
「へェ(だからあんな雨が降ったんだな)」
まさか小十郎さんがわたしと同じ理由で納得したことなんてつゆ知らず。
自慢げにそう伝えた時、鼻がムズムズとかゆくなり、止められずに大きなくしゃみをぶちかました。
「きたねえ…。ん? お前、そういやいつからそこに…」
「えっと、雨が降り始めた頃からですねー。や、ずっと座ってると眠くなっちゃって。竹かご抱えてたんですけど邪魔なので後ろに隠してました」
「………おい、大丈夫なのか?」
「え? ああ大丈夫ですよー」
なんならみせてやろうと、小十郎さんが馬から降りてほこらに近づくのを音で聞きながら、竹かごを前に差し出す。そして小十郎さんを見上げると、ちょうどあちらも目の前に立っていた。
視線がかちあった瞬間、あちらのまぶたがクワッと見開いた。
「!?(こわ!!)」
「馬鹿野郎、何が大丈夫だ!」
「え?」
「幽霊みてーなツラしてんじゃねえ!」
「ダアッ!!」
ばちっと両ほっぺを叩かれてしまった。ちょっと痛かったので文句を言おうと口を開いたものの、その手がほっぺから離れなかったので再び閉じる。
小十郎さんの手は温かくて、すっかり冷えてしまったわたしの頬がじんわりぬくまっていくのがわかる。
あー気持ちいい。あまりにちょうどいい心地よさに、思わず目を閉じてしまいそう。ていうかわたしって体冷えてたんだ、いや、小十郎さんが熱いのかな?
そこで、小十郎さんがいぶかった「大丈夫」がわたしに対してだったことにも気づいた。いや、いつもの小十郎さんなら絶対調味料だから…!
「今日は優しいんですねー、小十郎さん」
「…てめェに万が一何かあっちゃあ、政宗様に申し訳が立たねーんだよ。オラ、立て」
ほっぺから離れた小十郎さんの手が、わたしの冷たい手首を握る。また小十郎さんの体温を直に感じる。
そのまま上に引っ張られ、抵抗することなく立ち上がったものの、長時間腰を曲げていたのでいろいろな筋肉が固まっていて、足がもつれ転びそうになった。
「ぎゃ!」
「…何やってんだ、馬鹿」
「こ、こじゅろーさんが急に引っ張るから…っくしょ!」
「きたねーな」
「ひどい!!」
ため息をつくと、小十郎さんがわたしの前から横に移動する。
突然しゃがんだかと思えば、ひざの裏をすくい上げられ、ひょいと抱えられた。
……………こ、こここれはぞぞくにいう、
「おおおおっおひめさま!!?」
「あ? どのツラ下げて姫だと?」
「い、いやそうじゃなくてですね」
わたしの時代ではお姫様だっこと…なんてうんちく垂れる余裕がない。まさかまさか、小姑にしてやられるとは!
政宗さんにしてもらえれば幸せ100%なんだけど、小十郎さんにされるとなんだろう、なんでかわかんないけど落ち着かない。
ていうか小十郎さんの顔! めっちゃ近い!!!(ほぎゃああなんだこのトラブルゥゥ!?)
今までこんなに至近距離で顔付き合わせたことなんて、去年の春黙って野菜をつんだのがバレて打ち首獄門寸前になった時「最期に言い残すことあるか」と目の前で言われた時以来だ。
ああ、あれは怖かったほんとに。
「おおっおろしてください!」
「何勘違いしてんだ」
「え? …グハァッ!!」
そのまま馬に近づくと、背中に放り出される。お腹をしたたかに打ち付けながら、アアなるほどねとちょっと冷めた。
……いや、いや、別に全然がっかりしたわけじゃないし!! 馬に乗せる為にだっこしたなんてわかってるし!!
よじよじと態勢を自分で立て直し、手綱を握ろうとする。しかし小十郎さんにその手をパシンとはたかれた。
「何するんですかっ」
「お前じゃこの馬は乗りこなせねェよ。どけ」
わたしと手綱の間に乗った小十郎さんは、大きな背中をわたしに向けたまま、馬を歩かせた。
「……………」
「………」
「小十郎さん、小十郎さん」
「なんだ」
「あの…ここは普通、わたしを後ろからハグするようにして、手綱を握るもんなんですけど」
「そんな氷みてーな体抱えたくねェ」
「ちょっ…ほんと傷つきますよ」
「んなタマじゃねーだろ」
ちっくしょう、わかってないようでわかってる小十郎さんが妬ましい。
悔しいので、わたしは後ろから小十郎さんの胴体にしがみついた。
おお、意外にこれでもあったかいぞ!
「わーあったかーい」
「………」
「あれっ反応なしですか」
「……本当にお前、色気ねえな」
「ひっでえええ!!」
てっきりすぐに腕を振り回され拒否されると思ってたから、小十郎さんの無抵抗っぷりになんだか拍子抜けしてしまった。でもあったかいのでこのままだけどね!
「いいですもん、いつか色気ムンムンたくわえて、見返しますからね!」
「んなもんたくわえんでいい。気持ち悪い」
……あの、小十郎さん。
「あまりにハキハキ言いすぎると、さすがのわたしも泣きますよ」
「お前はそのままでいろっつってんだ。それが政宗様の為であり……」
「……? なんですか?」
「…なんでもねーよ」
「なっ…! なんでいつもいつも、そうやってわたしを嫌うんですかァァァもおお!!」
「うるせェ黙れ」
セクシーと世界一離れている女
「誰もお前を嫌いなんざ言ってねーだろうが」
「おい、もうすぐ着くぞ」
「…………」
「おい」
「………」
「[#dn=1#]?」
「…………んぐ…」
「…寝てやがる…」
「ウフ…政宗さァん…」
「…政宗様じゃなくて悪かったな」