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食欲の秋、読書の秋、もしくは恋の秋(えっ初耳?)
だがしかし、そんな秋のさなか。
朝起きて、お昼を過ぎて、夕方になっても。
政宗さんに会っていない、わたしがいる。
いや、正確に言うと小十郎さんから雑用を押しつけられ、会えなかったのだ。
でもそれがやっとこさ終了し、わたしは小十郎さんに黙って政宗さんの部屋へドタドタと走ってきたわけです。ふふっ今日は遠慮なく抱きついちゃうぞ! 体内の政宗ゲージが赤ランプ点滅しっぱなしで、昼からは「緊急警報!充電してください」の表示しか出てないんだから!
だからしょうがないよ、ハァハァ興奮しちゃうのも!!
わたしの顔を見てどん引きするリーゼントの方々を無視して、わたしは曲がり角を勢いよく通過した。見えた、本日のわたしのゴール地点ッ!
「まっ」
政宗さァァァァん!!! と愛の限り叫ぶつもりだったのに。
ふすまごと部屋に突撃しそうになったわたしの首に、あの男が無言でラリアットを決める。呼吸が止まりましたよ、ええ。世界が白く見えました。
まさか小十郎さんがいるとは、というか入室してすぐ首をやられるとは夢にも思わず、完璧に油断していたわたしは畳の上に頭から着地した。
「チッ……。誰だ、この馬鹿に知らせたのは」
すこぶる不機嫌そうな小十郎さんは、白目のわたしをゲシゲシ蹴って「起きやがれ」とムチャクチャなことを言った。もうやだこいつ!! 八つ当たりだろ!! なんの八つ当たりかはわかんないけど!
こんな最低な姑に負けてられるか、と根性でなんとか生死の淵から這い上がってきたわたしは、目・鼻・口から液体を垂らしつつ不敵に笑う。
「ふふ…まだまだですね小十郎さん、わたしは簡単に死にゃしませんよ」
「気持ち悪ィ」
「誰のせいですか!?」
うげっと青ざめわたしから顔を背ける小十郎さん。すいません、ちょっと銃とか持ってませんか? ガトリングでもいいです、バズーカでもジェットでもいい。わたしに悪魔の実をください。今すぐボッコボコにしてやりたい人間が、目の前にいるんですゥゥゥ!!!
ヨロヨロとと立ち上がり、小十郎さんを思い切り睨みつけたわたしは、その後ろに政宗さんを見つけた。
「……寝てる」
ああ、なんと…ふつくしい…ッ! そんな至近距離でもないのに、興奮のあまり鼻血が出そう……ん?
政宗さんは、寝ている。でも、ここには小十郎さんがいる。
「…………」
「なんだ、こっち見んな」
周りを見回すけど、人はいない。
カシャンカシャンと、静止画で脳内の妄想がふくらむ。
「みんなァァァ!! 小十郎さんが政宗さんを」
「命(タマ)殺られてェのか」
「グフウッ!!」</i>
長身で怪力の小十郎さんに首を両手でつかまれ、そのまま上に吊り上げる。これをネックハンギング・ツリーといいます、普通女の子にする技じゃないよ!! いや、一般人にする技でもないから。
しゃがれた声しか出ないまま、「すいませんでした」と連呼してようやく許してもらい、ドシャリと再び畳の上に崩れ落ちる。なんだ、今日の小十郎さんは首をすごい重点的に狙ってくる…ぞ…?
思わず両手を首に巻き付けガードしながら、わたしは小十郎さんに尋ねた。
「ていうか、小十郎さんはなんでここにいたんですか? 政宗さんを起こさないと」
「駄目だ。政宗様は今、安静になさらなくちゃならねェ」
「……え…」
それは、いったいどういうこと?
ぽかんとしたわたしに、小十郎さんは「知ってて来たわけじゃねェのか」と言った。そういえばさっき、変なこと言ってたな小十郎さん。
政宗さんに何かあったの?
「小十郎さん、それって……」
小十郎さんに隠れて見えなかったけど、政宗さんのおでこには手ぬぐいが乗っていて、側には桶がある。
まぶたを閉じたまま、死んだように動かない政宗さんから、目が離せない。そんなわたしに、小十郎さんは独り言のように呟いた。
「…最近、政が忙しくてな。ご無理をされたあまり体調が崩れ、朝から熱が下がらねェんだ」
ゾクゾクして、ひんやりして、鼻の穴がむずむずした。
「…ぶエっくしょォい!!」
自分しかいない時にしかしないくしゃみの仕方で、脳内が覚醒する。
あれ、わたし……何やってんだ。ていうか、どこだ、ここ。
寝ていた体をむくりと起こし、大口開けてあくびをしながら、あたりをのんびりと見回す。んー、と。見覚えがある、部屋。
そして上を向いて、下を向いて。
政宗さんが、いた。
「……!!! え、え、あ、え?!! あっそっか!」
すいません全て独り言です。自己完結です。でもそのおかげで目が覚めたよ。
わたし、政宗さんの手握って寝ちゃったんだ。本当は小十郎さんに「お前いても意味ねーから寝ろ!」って止められたけど、深夜寝静まったのを見計らってお邪魔したんだ、うんうん。思い出した。
だって大切な旦那さまが風邪だもの! 妻が側で支えてあげなきゃ!!
で、はじめはおでこの手ぬぐいとか交換してたんだけど、多分それから眠くなって、手を握ったまま横になって寝ちゃったんだ。…い、意味ない。寝る間も惜しんで尽くすはずが…一緒に寝ちゃってるじゃん。
そんなわけでがっくりと肩を落としたわたしだったけど、不意に政宗さんが身じろぎしたので、反省とか回想が一気に吹っ飛んだ。
「…………」
「……あ、政宗さん…?」
うっすらとまぶたを開け、黒目を左右へ動かす政宗さん。そしてわたしの姿を認めると、確かめるように「[#dn=1#]…?」と呟いた。
……その声、酷くエロい。…って、そうじゃなくて!! わたしの馬鹿、それどころじゃないでしょーがっ!
あわあわと慌てるわたしは、矢継ぎ早に政宗さんに聞きまくった。
「そうです、[#dn=1#]です。大丈夫ですか? 頭痛くないですか? お腹すきました? どっか痛いとこあります?」
「……さーな…。俺は一体……」
「え?」
どうやら自分のおかれている状況がわからないらしく、おでこの手ぬぐいをどかすと前髪をくしゃりとつかんだ。
わたしもそんなに詳しく聞いたわけじゃあないので、とりあえず簡潔に言ってみる。
「小十郎さんが言うには、疲労で風邪ひいたそうですよ。昨日はずっと寝てて、起きなかったって」
「そうか…」
そこで、お互いに沈黙。よくよく耳をすませると、ふすまをはさんだ外の世界では、既に小鳥たちがさえずりをしている。朝は寒いかもしれないけど、ちょっと開けて太陽の光を政宗さんに浴びせた方がいいかな。
そう思ってわたしが立ち上がろうと、政宗さんの手を握っていた片手を離そうとした時だった。
「…は、れ」
「………」
「あ、…っと、政宗さん?」
一瞬離れかけた手を、政宗さんに掴まれた。
振り向くと、政宗さんはこっちをジッと見ている。うう、格好良すぎて耐えられない…! ていうか恥ずかしい。
そういう照れ隠しと本音を込めて、頬に手を添えてみた。
「もお~、そんなに見ないでください、もだえちゃいますよっ」
「寒ィ」
「酷! もだえさせてんのはどこのどちら様…」
「そっちじゃねェ」
「え?」
政宗さんは黙りこむと、もう片方の手で布団を半分開けた。
「…………」
……あの、まるで、わたしに入れと言っているような感じなんですけど。
嘘ですよね。あっそうか、夢だこれ。
「……あの、これ夢ですよね」
「そうかい、じゃあ俺はもう一眠りする」
「わーわー嘘です、これは夢じゃないです!!」
しまった、絶好のチャンスを無駄にするところだった。
結局混乱しながら素敵なお誘いに乗らないはずもなく、わたしはドキドキしながら、手を握られたまま方向転換し、政宗さんの布団の中へ入った。
「お…お邪魔、します」
「Welcome.」
「ぐはっエロい」
耐えきれずセクハラ発言を口走ってしまったものの、政宗さんは一切つっこむことなく笑ってすませた。ああそうか、病み上がりなんだもの、まだ完全に元気になったわけじゃない。
だが、しかし。
「…んなっ?!」
スッと、政宗さんの腕がのびてわたしをつかまえる。
そして優しく、決して無理矢理ではない腕力で、抱きしめられた。
その途端、今まであった少ない余裕が一気になくなり、わたしの頭は大パニック寸前。嬉しすぎるあまりどういう対処をすればいいのかわからないし、かといって嫌ではないから離れたくもないし、というわけでそのまま固まるしかないわけで。ていうか匂い! やばい政宗さんの匂いがするゥゥゥ!! やめて、わたしをケモノにさせないで!! 思わぬ充電タイムだよ、ちょっと待ってェェェわたしに心の準備をさせてェェェ!!(既に混乱開始してる)
そんな、色々と限界なわたしを知らない政宗さんは、もう狙ってるとしか思えないくらいの至近距離で呟いた。
「アンタ、冷てェな」
「あ、はは…! 気づいたらここで一夜あかしちゃってました」
「What did you say? …アンタ、いつからここにいた」
「夜這い以降です」
「………馬鹿だろ。俺の看病してアンタが風邪ひくなんて、それこそ小十郎が鬼の形相だぜ?」
「う、うぐう…! だって、昨日全然政宗さんに会えなかったですし…看病は本当にしたかったんですけど、小十郎さんに止められて、お忍びでくるしかなかったし…」
「…………」
ふう、と頭上でため息をつく政宗さん。わたしは申し訳ない、と心の中で返しながら、政宗さんの熱い体に思い切り抱きついていたりする。図々しいって? ありがとう、ほめ言葉だね!
「[#dn=1#]」
「はい?」
「あったけェ」
「え? …いや、冷たいって…」
「あったかくて、気持ちいい」
「………!」
熱い吐息と一緒に、耳元でそう囁かれて、昇天しない女の子がどこにいるというのでしょう! 昇天したよ、一瞬。なぜか顔のこゆい天使たちが舞い降りてきたよ。なんとか帰ってきたけど。
それであまりにも体温が上昇したので、政宗さんとつないでいる手が汗ばんでくる。すごいベトベトしてるに違いない。汗臭いとか思われてないか急に不安になってきた。
「ま、政宗さん、わたしほんと幸せすぎて死にそうなんですけど…手、ちょっと離してもらえませんか…」
「離さねェ。このままアンタの冷えた体も、俺があっためてやるよ」
「いやあもう十二分にわたしはあったまってますですよ。MAXです、病原菌全て死滅するくらいの高温度です」
「No.」
きっぱりと断られ、がびーんとショックを受けてしまう。さらに政宗さんの手がもぞもぞと動いて、わたしの手が逃げられないように、指をさらに絡めてきた(ホ、ギャアアアア!!!) あ、熱い!!
「ままままっままま」
「…はあ…。やっぱもう一眠りするかい」
「い、いえ! 拙者はもう完璧に覚醒しておりまする!」
ちっくしょおおおお!!
ハイテンションで頭がグルグルするわたしと違って、いつも通りクールな政宗さんが小憎らしいよおお!!
悔しさと、ちょっとツンな政宗さんに戻ってほしくて(Mですが何か)わたしはヘヘンと不敵に、しかしぶっちゃけ無理矢理笑った。
「ふん…いいですよ? 二度寝しても? でも小十郎さんが来てもわたしは離れませんからね、全力で政宗さんにしがみついてやりますから」
「All right.」
「え」
あっさり快諾した政宗さんを、ポカンと見るわたし。
それに対しクールな夫は、でもやっぱりデレてくれた。
「俺はずっと、このままでも構わねェぜ?」
そっと重なる幸せ
「離したくない、この手も、アンタも」
「むあ、ま、政宗さ…」
「なんだい」
「お願いがあるんですけど…!」
「kiss以外ならな」
「えっダメなんですか?!」
「耳元で騒ぐな」
「えええ~…雰囲気的にアリかと思ったのに…」
「雰囲気ねェ…」
「え、ちょ、顔…いや耳に近…」
「…ここで一端始めると…俺は止まらねェが、いいのかい」
「……ッ!!」
「……クク…気絶したか」