番外・現パロなど様々
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
伊達政宗と手合わせをしたいと「ふ」と思い、真田幸村は馬を走らせた。勿論一番の被害者はその部下もとい下僕もとい奴隷である猿飛佐助である。
その日は仕事も入っておらず、そりゃもうのんびりと一人で過ごす予定だったのに、上司が突然「ちょっと奥州に行ってくる」と言い出すものだから、「え、ちょっとじゃなくね? 買い物感覚じゃなくね?」なんて柄にもなく真剣にツッコミを入れてしまったほどだ。
しかし、きちんと安定したお給料をもらっている以上、仕事はしなくてはならない。その結果始終ため息をつきながら乗馬した上司の背中を追いかけたのだった。
たのもう、たのもうと声を張り上げていると例の竜の右目が現れたが、近くに伊達政宗と「例の彼女」が見あたらない。猿飛も同様に思ったのか、
「片倉の旦那ー、独眼竜は?」
「!! そっそれと、[#dn=1#]殿も…!」
「(………) 政宗様は見廻りの為に城下へ降りていらっしゃる。[#dn=1#]は知らねえ。どっかそこらへんで寝そべってんじゃねーか」
「あー、なるほど。そうかもね」
あっさりと納得する部下とは裏腹に、無意識の内にキョロキョロとあたりを見回す上司。
半分の目的が目の前にいない今、真田はもう半分の目的を達成すべくそわそわと動き出した。だが本人なりに不自然と思われない様、落ち着いて口を開いた。
「そ、それではしばし城の中をお邪魔致す。佐助、お主は」
「(すげえ早口)わかってるって、旦那」
俺様も自由に行動させてもらうよ、と片手をひらひら振る猿飛に頷き、真田は片倉に一礼すると、素早い歩きでその場を去ったのだった。
「…………」
「…………ちなみに、伊達の旦那はいつ戻ってくるんだい?」
「まだ、出られたばかりだ」
「…へえ…(やったね、旦那!)」
「……(こいつ………)」
「[#dn=1#]殿…!!」
城中を歩き回ってようやく見つけた彼女だったが、よく見ると様子がおかしい。
庭が広がっている縁側で柱を背もたれにしてうつむいている姿は、どうやら寝ている様だ。念のためそろりそろりと近寄ってみると、確かに眠っている。寝息も聞こえた。
どうしよう、と悩んだ。
悩んだ末に、あたりに人の気配がないこと(猿飛の気配もないこと)を確認した上で、隣に腰をおろした。
「………(う゛…ッ!)」
ぐうぐうと寝息を立てる[#dn=1#]をちらちらと盗み見ては、心臓を高鳴らせる姿は、どう見ても一人の純情な青年である。
しかしこのまま時間が過ぎていくのももったいない。少し申し訳なく思いながらも、真田は意を決して[#dn=1#]を起こしにかかった。
「[#dn=1#]殿、[#dn=1#]殿」
「………ん…んー…」
それでも起きない[#dn=1#]の肩をつかみ、力を加えてゆする。すると[#dn=1#]は眉をひそめ、真田の方へ顔を向けた。勿論目をつぶったままだ。
そして突然、腕をにょきっと突き出し真田の首に回してきた。
「!!!! なっなななな……!!!!」
完全に寝ぼけている[#dn=1#]に抱きつかれ、一瞬呆けた真田だったが、温かい感触を感じた瞬間状況を察し、体中の水分が蒸発するくらいに体温が上昇した。
ななめ上から青空を見上げ、必死に[#dn=1#]の顔を見ないように頑張りつつ、真田は唇を震わせた。
「おおオォおおっ、おおお…起きてくだされ…!! [#dn=1#]どの…!」
だが一切聞こえない[#dn=1#]は、余程いい夢を見ているのかにやけたまま両腕を離さない。
一方の真田は首をほぼ360度めぐらせて人助けを頼もうとするが、日ごとからにぎやかなはずが、今は静かだ。もしかしたら、この場所が人通りが少ないのかもしれない。
全身から汗を吹き出しながら、真田は少なすぎる経験を駆使してどうすべきか考えた。だが思いつかない。
というよりも、考えようとしても考えられない。
しかしそうしている間に、真田の首に回していた腕の力が徐々にゆるんできた為、真田はホッとした。やっと起きてくれたのか。
だが、[#dn=1#]は起きていなかった。図太く夢の中で騒ぎに騒いでいるようだ。
そのままずりずりと落ちた腕に再度力をこめた場所が、真田の胴体だった。
[#dn=1#]は無意識のうちに真田の胸板に身を寄せ、うーんと呟く。
「!!!!」
それに対し真田は今度こそ体を固まらせ、1ミリも動けなくなった。彼の戦闘服はご存じの通り。その無防備な表面に[#dn=1#]の頬がぴたりとくっついた。心臓が今まで以上に活発に動き、耳いっぱいに心臓音が鳴り響く。
もしかしたらこの心臓音で[#dn=1#]が驚きのあまり目覚めるかもしれないという程の高鳴りだが、彼女は起きない。
「(それがしは…どっ、どどどうすれば…!?)」
あまりの展開に、思わず目が回る。
どうすればいいのかわからない。
気持ちよく眠っている彼女を、鬼になって無理矢理起こせばいいのか。
それともこのまま彼女が起きるのをただただ待てばいいのか。
他に何か案はないか。
どれが一番いい方法なのか思い浮かばない。
それより何よりも、彼女が目の前にいる。寝ぼけているとはいえ、その彼女に抱きしめられている。
どうする。
「(…『どうする』……?)」
それがしは、俺は。何がしたいのだ。
ふと思い、つい青空を見ていた目を下げた。下を向けば、彼女がいる。顔を少し上げている為、寝顔も見える。
迂闊だった。
それを見た瞬間、真田はついに考えを捨てた。
「………すまない…」
葛藤に葛藤を重ねた結果、真田はおずおずと、それでもしっかりと[#dn=1#]を抱きしめた。
どんなに純情でも初心でも生真面目でも、「男」である以上我慢はできない。本来男は理性より本能で生きる生き物だ、と[#dn=1#]に以前教えてもらったが、それをふと思い出した。
「(…[#dn=1#]殿)」
彼女は思ったより遙かに やわらかくて小さかった。腕を回し力をこめた瞬間驚きのあまり弱めてしまったほどだ。
そして、ふわり、と。
[#dn=1#]の香りが真田の鼻腔をくすぐった。
石けんでこんなに良い香りがするものなのか、と思うほど、優しく、女性らしいというか、とにかく「女の子」の匂いだった。
今まで激しい程に脈打っていた心臓も、その匂いをかいでいるうちに少しずつだが落ち着きを取り戻していく。真田の赤面も、いつの間にか治っていた。
「(ずっと…)」
脳裏に最大のライバルが、笑みを浮かべながらよぎる。
彼ならばきっと[#dn=1#]が起きている状態でも、こうすることはできうだろう。だが自分は、こんな状況でしか、触れることができない。それが悔しく、妬ましく、羨ましい。
しかし、だからこそ。
狡いと思われてもいい。
このまま、こうしていたい。
できれば少しでも長く、ずっと。
[#dn=1#]を抱きしめ目をつぶり、真田は素直に願った。
唯一目撃した太陽は温かい光を、二人に降り注ぐ。
「んー……」
どれくらい時間が経ったのだろうか。
太陽からの温かい光と[#dn=1#]の香りで目をつぶり、すっかりウトウトしていた真田だったが、[#dn=1#]が身じろぎした為慌てて目を開けた。
様子を見ようと[#dn=1#]の顔を上からのぞき込んだ、その時。
ばちっと[#dn=1#]は目を開けた。むしろ「くわっ」とした方だ。
「!!」
頭を上げると、ふわあとあくびをする[#dn=1#]。
しかし脳は覚醒しておらず、真田を見てもなんら発言がない。
まだ夢との名残を惜しんでいるのか、ボーッとした表情のまま、目の前にいた真田を見つめた。
それも、じいいいいっと。穴の開くほどに見つめる[#dn=1#]の目はさっきのあくびで涙が少しだがたまっている。
「……[#dn=1#]、どの…?」
起きていないのか。
恐る恐るといったように[#dn=1#]に声をかけるが、返事はやはりない。
むしろ。
気のせいか、[#dn=1#]の顔が近づいている気がする。
気のせいではないと真田が断定した頃、お互いの鼻の先がくっつくほどに縮まっていた。
「あ、……う…!! は、はれん」
そこで、真田の意識はぷつりと途絶えた。
政宗さんが城下に行ってる間暇だから一階の縁側で寝そべってたら、太陽の光があったかくて気持ちよくて、眠ってしまったらしい。
夢も結構楽しくて面白くて、わたしとしては気持ちの良い目覚めだった。
はずだった。
「は、はれん」
真田さんが近距離で大声を出して、わたしは目が覚めた。
え、真田さん?
「真田さん…だ」
最近来ないなあと思っていた矢先に再会だ。でもなんでこんな状況?
しかもなんだ、この体勢。
わたしが真田さんに抱きついてる状態で、真田さんは気絶してて。
真田さん……なんでそんなに顔が真っ赤なの。
小さな疑問を思いながら、わたしは真田さんの体を揺すった。
「真田さん、真田さん! ちょっ…返事してくださいィィィ!!」
結局、騒ぎ(というか真田さんの絶叫?)を聞きつけた猿飛さんや政宗さんたちが来るまで、真田さんはゆでだこの状態でぐったりしてました。
わたしってば何しでかしたんだろう…。
真田さんが起きたら、すみませんでした、ってちゃんと謝ろう。
恋のチャンスは突然に
「彼女の香りが脳に焼き付いた」
「う…こ、ここは…」
「あっ真田さん起きました?!」
「!!!」
「旦那、顔真っ赤っかだよ」
「さ、さすけ…それがしは一体」
「嬢ちゃんから聞いたよ」
「!!!(ま、まさか!)」
「本当にすみませんでした、真田さん」
「い、いや、[#dn=1#]殿が謝るようなことは!」
「わたしが寝ぼけて真田さんの首締め上げてしまったんですよね?」
「…………」
「あれ、旦那違うの?」
「でもすごい顔が赤かったんで、わたしが寝ぼけて技かけたのかと思ったんですけど」
「い、いや……
(しかしあながち間違っては…いないかもしれぬ)」