本編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
たぬきを捕獲して、わたしと小十郎さんと政宗さん以外の皆さんは引き上げた(夜も遅いしね) たぬきはしばらく目を閉じていたけど、ピクピクと鼻を動かすと同時に目を開けた。たぬきなんて図鑑や動物園でしか見たことないから、わたしにとっては感動モノ。けれど政宗さん達にとってはどうでもいいことらしく、たぬきのしっぽをグワシとつかんで宙づりにした。たぬきの悲鳴が上がる。
「動物に暴力はいけません! 動物愛護団体に訴えられますよ! ていうかわたしが訴えますよ!」
「やれるもんならやってみな」
政宗さんからたぬきを取り返すと、たぬきは小さなツメでわたしの腕をつかみ、またさっきと同じように顔をのぞきこんできた。初対面にもかかわらず、積極的なのね!(落ち着けわたし、相手はタヌキ) なんでだろう・・・。
「ななし、アンタもしかしてこいつと会ったことがあるんじゃねェか?」
「え? ・・・・・・うーーん・・・」
タヌキに、ねえ・・・。しばらく考えたわたしは、ハッとした。うん、あった あった!
「この間・・・いつきちゃんを見送った後、いなくなったポチを見つけたとき、一緒にタヌキがいました。でも、それだけですよ。あのときのタヌキがこれという証拠もなさそうだし・・・」
「証拠なんかなくても、タヌキが人間になつくわけねーだろ」
な、なるほど。普通の野生動物であれば、人間がいたら逃げるもんね。それなら、と、わたしを見ていたタヌキの背を、おそるおそるなでてみた。嫌がられるかと思いきや、そのままジッとして気持ちよさそうにするものだから、ときめいてしまった! か、かわいい・・・!
「タヌキちゃんってこんなにかわいいもんでしたっけ? ポチよりかわいいんですけど、政宗さん。というわけでポチとタヌキちゃん入れかえていいですか?」
「動物を捨てるのは団体とやらに訴えられねーのかい?」
「や、やだなあジョークですよジョークッ☆ 目が怖いですよ政宗さん!」
あれ、でも理解できないことがある。どうしてタヌキちゃんは政宗さんに化けたんだろう? なでているうちに寝てしまったタヌキちゃんを抱きながら呟くと、小十郎さんがあごに手を添えて言った。
「そいつァ、ななしが政宗様にくっついてばかりだからじゃねーのか?」
「・・・ああー」
わたしが政宗さんラヴァーなのを知って、それならタヌキとして現れるよりも、政宗さんに化けて自分を思い出してほしかったってこと? それ無理だから。むしろ政宗さんに化けることによってわたしのテンションは上がってタヌキなんてつゆほども思いつかなかったしね! 動物の考えることはよくわからん!
「で、どうすんだそいつは」
「・・・どうしましょうか」
「Oh,こいつはrareだな。アンタなら即答で飼うとか言い出すかと思ったぜ」
「いや、思いましたけど。でも、この子にも家族くらいいるでしょうし、人間が気まぐれで、簡単に飼ってもいけないと思うんですよ」
だから、飼えない。けど、遊びにも来てほしい。わたしがそう言うと、政宗さんは珍しく嘲笑ではなく、普通に口元を上げた。か、かっこいい!
「ハッ、ななしのくせに良いこと言うじゃねーか」
「えへ、惚れ直しました?」
「前言撤回する」(即答)
「男に二言は駄目ですよ!!」
結局、タヌキちゃんは山に帰すことにした。でも、どこから来たのかわかんないから、適当に帰せない。うーん、この子どっから来たんだろ? 三人で考えていると、いつの間にかタヌキちゃんをなでる手が止まっていた。そのせいでタヌキちゃんは目覚めたようで、わたしはにっこり笑った。
「あの時のタヌキちゃんだよねー、思い出したよ」
その言葉がわかったのかは判断できなかったけど、タヌキちゃんはのぞき込もうとするのを止めた。そして、わたしから離れると、タタッと駆け出して、外に出てしまった。・・・あれ、帰っちゃった?
「・・・随分あっけないお帰りだったな」
「そ・・・しかし、これでよしとしましょう」
「そうですね」
小十郎さんと政宗さんが出ていき、わたしは布団を敷いて、はあとため息をついた。それは悪い意味ではなく、むしろ うっとりとしたもの。
「今日の夢は、いいもの見れそうだわ」(キラーン)
タヌキちゃんだったとはいえ、政宗さんの姿で至近距離だったことは、あれからすぐ日記に書いておいた。へっへっへ、これも神様がくださったゴホウビなんだよね(なんのゴホウビかはわかんないけどってか心当たりないですけど!) わたしは布団に飛び込むと、グースカと眠ったのだった。
「ところで政宗様」
「なんだ、小十郎」
「・・・まだ青いですな」
「・・・・・・なんの話だ、そりゃ」
大人びて笑う小十郎に、珍しくいらだちを感じた。Shit,と舌打ちをしても相手は大人だ。小十郎は俺の後ろを歩きながら、また、言った。
「まだまだ青い」
うるせェな、わかってるよ。
これが恋でも、そうじゃなくても
あの現場を目撃した時の怒りといったら。