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女性向け台本

彼が出ていった。
私は机の上に残された赤丸の箱をじいと見つめていた。

銘柄はよくわからない。なぜなら彼は、マルボーロと書かれた箱に何種類も違う煙草を入れているからだ。普通だったら味が混ざるからそんなことはしないのだと、彼は自慢げながらに話してくれた。それも、たくさんの女の子から煙草を貰うのだと、何の悪びれもなく。

湿ってくしゃくしゃになってしまったタバコを一本手に取り、火をつけた。どこぞの誰かもよく分からない女が彼にあげたはずの煙草。
ぱちぱちと燃える音がする。そのまま私は息を吸い込んだ。

「うわまっず!」

思わずむせてしまう。彼は、ずっとこんな不愉快な物を吸っていたのだと呆れてしまった。彼に染み付いた煙草の匂いと比じゃない程キツイ。

こんな美味しくもない煙草を吸っていた彼も、きっとその程度の存在だったということだろう。

私は溜息をつきながら煙草の火を消す。彼が煙草と一緒に置いていった吸殻の役目も、これで最後だろう。

私は窓を開けて、外の空気を吸った。
心地よかった。清々しかった。

これ以上、彼のことを好きにならずに済んだのだ。

煙草と吸殻としょうもない男への気持ちをまとめてゴミ袋に放り込んで、私は仕事に向かったのだった。
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