男性向け台本
【 スマホ 】
「今までありがとう」というLINEで途切れた君との繋がり。
布団の中に潜り込んで、スマホを眺める。
最後の連絡時間が午後8時56分という表記から昨日に変わっても、まだ僕は君と連絡が取れると思っていた。
涙は出てこない。
本当に好きだったかどうかも思い出せなかった。その程度の相手だったという事だろうか。なんて強がりを見ないふりして、相手の嫌だったことを思い出そうとする。
結局、幸せだったことしか思い出せないくせに、ミイラ取りがミイラになるとはこういう事を言うのだろう。
ふとYouTubeを開いて、僕が昔よくきいていた失恋曲を調べる。
イヤフォンをつけて聞きながら、コメント欄で僕の知らない誰かに「あなたは幸せになりなさい」と言われて色褪せた枕に水滴が染みた。
「僕、ちゃんと好きだったんだなあ……。」
思わず君の名前を呼ぼうとして、慌てて歯を食いしばる。
このままではきっと、また君にLINEを送ってしまう。自分のために「これで連絡は最後」と言ったあの時の僕だけは裏切りたくなかった。
曲が終わる。
君も知らない僕の孤独を作ったスマホで、僕は孤独を埋めようとしていた。
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