台牧
「ワイ、処女とちゃうで」
薄赤く花弁のように染まった唇が開かれ、零れ出た言葉がなす術もなく皮膚の上を滑り落ちた。唐突な告白の意味を考える前に、持ち上げたままにしていたグラスを呷る。まあ、そうでしょうよ。意外だ、とは少しも思わなかった。
「なに、眠いなら寝なよ」
脈絡のない言葉を酔っ払いの戯言として片付けながら机上を眺める。空壜4本にグラスが2つ、そのうち3本は珍しく彼女が飲みきったものだった。
「今日はもうおしまい。また明日」
おかしなことを言い出したのはこのせいか。こうなる前に止めればよかったなと思いながら席を立った。
「酔っとらへんわ」
「酔っぱらいはみんなそう言う……」
机の上を片す為に、両手に空壜とグラスを抱えながら振り返った。眉を吊り上げているか、口を尖らせていると思っていたが、その予想はどちらも当たらなかった。
やけに凪いだ、夜をそのまま流し込んだような色の目がじっとこちらを見ている。ああ、まいったな。と思いながら、抱えていたものを机の上に戻しながら座り直す。
「なんでさっき、あんな事言ったのさ」
ひた隠しにされていた困惑が露わになったのを感じ取っても、ウルフウッドは顔色ひとつ変えなかった。ベッドの上に投げ出したままだった身体を起こし、床の上に視線を落とす。その様子は、何かを考え込んでいるように見えた。
「何でやろな、おどれがどんな顔するんか見たかったんかもな」
沈黙の果てにたった一言、これまた答えにならない様な、反応に困る一言だった。
「あー、そうデスか。で、満足した……?」
「半々やな!」
薄く開いた口から鋭い犬歯が覗く。満足そうに微笑まれ、男はとうとう力尽きて机の上に顔を突っ伏した。
わざわざそんな事を言うなんて、処女じゃないから変な幻想を抱くなとでも言われるのかと思っていた。
内心の焦りが木っ端微塵に霧散していくような笑みを脳裏に焼き付けながら、どうかまだ、この思いが伝わっていませんようにと願った。
薄赤く花弁のように染まった唇が開かれ、零れ出た言葉がなす術もなく皮膚の上を滑り落ちた。唐突な告白の意味を考える前に、持ち上げたままにしていたグラスを呷る。まあ、そうでしょうよ。意外だ、とは少しも思わなかった。
「なに、眠いなら寝なよ」
脈絡のない言葉を酔っ払いの戯言として片付けながら机上を眺める。空壜4本にグラスが2つ、そのうち3本は珍しく彼女が飲みきったものだった。
「今日はもうおしまい。また明日」
おかしなことを言い出したのはこのせいか。こうなる前に止めればよかったなと思いながら席を立った。
「酔っとらへんわ」
「酔っぱらいはみんなそう言う……」
机の上を片す為に、両手に空壜とグラスを抱えながら振り返った。眉を吊り上げているか、口を尖らせていると思っていたが、その予想はどちらも当たらなかった。
やけに凪いだ、夜をそのまま流し込んだような色の目がじっとこちらを見ている。ああ、まいったな。と思いながら、抱えていたものを机の上に戻しながら座り直す。
「なんでさっき、あんな事言ったのさ」
ひた隠しにされていた困惑が露わになったのを感じ取っても、ウルフウッドは顔色ひとつ変えなかった。ベッドの上に投げ出したままだった身体を起こし、床の上に視線を落とす。その様子は、何かを考え込んでいるように見えた。
「何でやろな、おどれがどんな顔するんか見たかったんかもな」
沈黙の果てにたった一言、これまた答えにならない様な、反応に困る一言だった。
「あー、そうデスか。で、満足した……?」
「半々やな!」
薄く開いた口から鋭い犬歯が覗く。満足そうに微笑まれ、男はとうとう力尽きて机の上に顔を突っ伏した。
わざわざそんな事を言うなんて、処女じゃないから変な幻想を抱くなとでも言われるのかと思っていた。
内心の焦りが木っ端微塵に霧散していくような笑みを脳裏に焼き付けながら、どうかまだ、この思いが伝わっていませんようにと願った。
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