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百神(短編)


「シン、休まないで本当に大丈夫なの?」

「嗚呼…平気だよ」



そう言いながら船の上から地上を眺めているシンの横顔を、私は作業に没頭する事で緊張している事を悟られない様にしていたわ。
私が役目の為に船に乗っている間は、勿論シン本人は役目を終えて一先ずは神殿に戻っている筈なんだもの。其れなのに今日は戻って来たシンと入れ違いに出発する私の腕を掴んで「一緒に行っても良い?」って言って来るんだもの、ビックリしちゃったわ。
でも……「嫌だ」何て言えないし、むしろ嬉しいからついつい「良いわよ」って答えちゃっていて。本当に私ったらどうしちゃったのかしら?
シンだって疲れている筈だもの、こんなに明るい太陽の光の下で眩しすぎて休める訳が無いし、シンからすれば暑すぎて余計に疲れさせてしまうから、本当は「駄目よ」って止めた方が良かったのに……。
好きって、難しいわ。
これがアスタル様やギルガメッシュさん達なら好きでも簡単に「駄目」って言えるのに、シンにお願いされると「駄目」って言えないんだもの。


そんな風にグルグルと考えながら作業していた私の手を、私よりも少し冷たくて大きな掌がソッと触れてきたの。
思わず「ひやっ」ってビックリして変な声が出ちゃった私に、シンがクスクス笑いながら「そんなに緊張しないでよ」って囁いて来る。
悔しい……シンには何もかもお見通しなんですもの。
私が今何を考えていて、何を緊張しているのか、きっとシンは全て分かっていて…分かっているから、さっきまでは一定の距離を保っていたんだと思うから余計に悔しく思ってしまうわ。
小さく唇を噛み締める私の顔を「こら」ってシンが覗き込んで来る。
其れだけで心臓がバクバク鳴って、頬とか耳朶まで赤くなって来て、身体が油の差していないロボットみたいにギギギ…って固まってしまう事に気付いてくれないの?
見て欲しくない訳じゃないのよ、勿論見られて嬉しくない訳じゃないの。ただ今はお仕事中で、取り乱してばかりだと支障が出てしまうし、何よりも悔しくてシンの事で頭の中がいっぱいになっちゃうのが困るだけなのよ。


そんな自分が恥ずかしくて嫌なだけなのよ。シンが悪い訳じゃないのに、ついシンに文句を言ってしまいそうな私自身が嫌なだけなの。
ああ、だからシンもそんなに私の顔を見詰めないで!
ドキドキ、胸の鼓動が張り裂けそう。
もう本当に痛くて煩くて堪らないの。
思わずギュッて目を強く閉じる私に、シンは私の手を取って自分の胸の音を聞かせてくれたの。
私みたいに凄くドクンドクンって早く鳴っていて、私は「え?」って驚いてシンの顔を見詰めたわ。
「あのね?……僕だって君と同じだよ?」って小さく言葉を紡ぐシンの声は、何時も以上に緊張しているのが伝わって来て、ああシンも一緒なんだわって安心したの。



「緊張するなって方が無理だ。こうでもしないと君と二人きりに為れないからって、らしくない事をしている自覚も有るけど……それでも君の傍に居たかったんだ」

「シン……」

「御免ね?……僕の我が儘に付き合わせてしまって」

「そんな事無いわよ、シンは我が儘なんか言ってないわ!その……私だって貴方が居てくれて嬉しいんだから、だからそんな風に謝らないでよ」

「シャマシュ、有り難う」



そう言って優しく微笑んでくれるシンが好き。
皆、きっとシンの事を冷たいって誤解してると思うけど……本当はシンってとても優しいのよ?
何時もそれとなく助けてくれてたシン、昔からずっと其れだけは変わらないの。私がドジをすると、何時も然り気無く助けてくれるシンの事を皆は誤解しているのが悔しいし、哀しいけれど……シンの優しい所を知ったら、皆がシンの事を好きになっちゃいそうで複雑なのも事実なのよね…。
本当に謝らなくちゃいけないのは私の方だわ、って思っていた私にシンは「でも…やっぱり僕は君に謝らなくてはいけないみたいだ」って苦笑混じりに呟いてくる。


「だから謝らないでって言ってるじゃない」って言い返そうとした時には、私の顔はシンの胸元に押し付けられていた。
「え?」ってビックリしてる私の身体を、折れるんじゃ無いかしらって位にギュッて抱き締めながら、シンは「傍に居られたら未だ我慢出来ると思っていたのに…余計、歯止めが利かなくなってるみたいだ」ってぽつりぽつりと呟いている。



「え、だから…どうしたの?歯止めが利かないって何が?」

「…………分からない?」



オロオロしながら尋ねる私に、むう…って少し不機嫌そうな顔をしてシンは私を見ていたけれど、「仕方ないか」って自分だけで納得した様な顔に変わると、私の手を下の……シンの下腹部辺りに持って行って布越しに触れさせて来た。



「え、え……うえええ!?」



すっとんきょうな声を出した自覚だって勿論有るわよ。でも、でも……何か凄く熱くてその、かた、かた…硬い、んですけど……え、嘘。何で?
シンは一体何時からそんなになっていたの?むしろ今までのやり取りからどうして、そんな状況になってるの?
私は目を白黒させながらシンを見たわ。だけどシンがあんまり真っ赤な顔して、申し訳無いって顔をしているから……何だかとても可愛く思えてきちゃって。
まあ、良いかって思ったの。男の人って時々こんな風になるもんだって、そうイシュタルさん達が話しているのを聞いた事が有るし、きっとシンにとっては”今”がその時なんだわって、私の中でそう納得する事にしたの。



「あの、シン……大丈夫?」

「大丈夫じゃ、ない……御免、無理を承知でお願いするけど……もっと君に触れても良いか?」

「え、と…船の上だから、あんまり激しくしないでくれたら良いわよ」

「本当に?……君、僕の言ってる意味…きちんと理解出来ているのか?」

「失礼ね、私だって…今のシンがとても切羽詰まってる事くらいは分かるわよ!」



もう、失礼しちゃうわ!
って頬を膨らませて怒ったら、シンはクスッて笑うと「御免…確かに君に対して失礼過ぎたな」って謝ってくれたの。
やっぱりシンって基本的に穏やかで優しいのよね、今はとても男の人らしい獰猛さが見え隠れしているけれど、でもそんなシンも嫌いじゃ無いのよ?
まだ数える位しか触れ合った事が無い私達だけど、誰かと比べられる様な経験も勿論無いけれど、それでもシンに触れられるのは嫌いじゃ無いの。
優しくゆっくりと、だけど時々強引な…この腕に支配されるのは嫌いじゃ無い。



「あ……」



額やこめかみ、瞼や頬に小さく触れてくる唇は少し薄くてでもとても柔らかかった。
触れられる度に身体が震えて、其れだけで本当にどうにかなってしまいそうだけど、そんなシンの唇が私の唇に触れた瞬間……もう本当に何も考えられなくなってしまったの。
頭の中が酷く痺れて、触れ合う所から熱が伝わって来ている様な…そんな全ての自由が奪われていくのに、私はただ流される事しか出来なくて。本当に不思議。



「ん………」



触れてくる唇が、顎や首筋に移動するのをぼんやりと眺めていると不意にシンの綺麗な髪に目を奪われてしまったわ。
日の光に照らされて、キラキラと輝く銀色の髪って本当に綺麗。私は恐る恐るシンの髪に触れてみたの。
その髪は想像していたよりもずっと細くて柔らかくて、サラサラと指に通る感触がとても気持ち良かった。
だからついつい触り続けてしまったの。だって本当に気持ち良かったんだもの、でもシンは嫌だったみたい。



「こら、余り触らないで貰えないかな?…これでも直ぐに縺れて後が大変なんだから」



そう言って、少し困った様な顔をして怒られちゃった。
「だって気持ち良かったんだもの」って言うと、「仕方ないな…なら、後で直して貰えるか?」って妥協してくれたのね。
苦笑混じりに言われた言葉を「勿論よ」って頷いたわ。



「ずっと触ってみたかったんだもの。その為にティアマトの髪やアマテラスの髪を結わさせて貰いながら、実はコッソリ練習させて貰っていたんだから」



そう笑って教えると、「そんな事していたのか?」って少し呆れたみたいだったけれど。でも直ぐに「君らしいね」って何時もの様に優しく微笑んでくれたの。
でもシンの唇が私の胸の方に移動した時は、少しだけ複雑で……「イシュタルさん達みたいなプロポーションなら良かったのになあ」って思わず呟いてた。



「え?」



思わず呟いた言葉に反応して、私の顔を見上げたシンは子供みたいにキョトンと可愛かったけれど、それでも私は自分の身体にコンプレックスを持っている事を知っているから、直ぐに「ああ…」って気が付いたみたい。
「まだ気にしていたのか?」ってシンは私の頭を優しく撫でてくれた。



「君が気にしている程、僕は君の身体が貧相だとは思わないけどな……むしろ抱き心地とか、腕の中にスッポリ収まるサイズで丁度良いけど……?」

「でも、もう少し胸とかお尻とか大きく為りたかったんだもの」

「うーん……心配しなくても大きくなると思うけどな、確か異性に揉まれたり…ドキドキすると大きくなるって聞いた事が有るし」

「それ本当なの!?」



少し考えながら教えてくれた言葉に、私は思わず食い付いてしまっていたわ。
流石のシンも私の必死さを見て、少しタジタジしていたみたい。でもやっぱり気になるんだもの、シンは大丈夫だって言ってくれるけど……それでも見た目から釣り合っていないと、シンが笑われちゃうかも知れないでしょ?
私は良いのよ、今まで形振り構わず無頓着に生きてきたから。ティアマト達みたいに自分自身を磨いていない分、笑われても注意されても仕方がないなって思っているから。でも、そんな私の無頓着さからシンまで笑われたら嫌じゃない?
だから必死なのよ。シンはいまいち分かってくれていないみたいだけど、私が一番気にしているのはソコなのよ?
恥ずかしくてシンには面と向かって言えないけれど、コッソリ髪を伸ばしてみたりプロポーションとか気にしているのは、全部シンの為なんだから!
何て、シン本人が全く気にしていない事なんだから、私が今更気にした所で意味なんて持たないんだけどね。



「あ、ああ…前にアプスやイザナギ様達、ほら夫婦神の彼等が話していたのを聞いただけだから確証は無いけど、夫婦になって触れ合う機会が増えたら胸とかもふくよかになって来たって言っていたけど?」

「そうなんだ……」

「因みに話していたのは、アプスとイザナギ様にポセイドン様とオシリス様だったかな。シヴァ様やハデス様は少し引き気味だったけど、フッキ様も加わって楽しそうだったよ」

「ねえ、もしかして話の発端はポセイドンさんから?」

「ああ、そうだったね。『前々から大きかったけど、夫婦になってから益々大きくならなかったか?』って言い始めて…それから盛り上がっていたみたいだけどね」



そ、そうなんだ。
もうそれしか言えなかったわ。
男の人達もそんな話をする事が有るのね、そんな事を聞くと益々気にしちゃうわ。何となく、シンは口には出さないけれど本当はそうやって比較されてるかも知れないんじゃ無いかって、そう思ってしまうから。
でもシンはそう思わないみたい。



「言っておくけど、僕はその手の話には極力参加しないし…むしろ君の事を誰かと比較されるのは許せなくて、本気で怒るからか皆も君の話題はまず出さないよ。だから安心して?」



そう言いながら私の頭を撫でてくれるシンの掌は何処までも優しかった。
確かに、シンは怒るかも知れないわ。そんな対象で見ないでくれって言っていたのを聞いた事が有るから、本当にシンは嫌なのかも知れない。
その嫌は、もしかしたら私がコンプレックスを抱いている”本当の理由”に気付いているからなのかも知れない。
そう思うと、愛おしさが溢れて来て……その感情のままに私はシンの身体に抱き着いていたの。
優しい人なのよ、本当に本当に優しくて、暖かい人。それでいて穏やかで可愛い人。
そんなシンが私の事を求めてくれている。その気になれば、きっとシンにお似合いの素敵な人が沢山見付かる筈なのに、シンはそれでも私を選んでくれた。
今も私を守ってくれている、それが嬉しいの。私もシンの事を守りたい、そう思うのは自然な流れよね。



だから自然に言葉がでたの。
「シンが好きよ」って、そうしたらシンの方がさっきまでの私みたいに身体が硬直しちゃったみたい。
「あれ、大丈夫?」って声を掛けようとした時には我に返ってくれたけれど、私を見詰めるシンの目はとても切羽詰まっていて、「え?」って声を出す頃には行為が再開されていたの。



「あ、あ……ぅん…ふ…」



痛い位に胸を揉まれて、ちゅうって音を立てて乳房を吸われる度に変な声が出てしまって……其れだけでおかしくなってしまいそうだった。
今は自動でゆっくりと運行しているから何も問題は無いけれど、それでも身体中の力が抜けてどうにかなってしまいそうだと私は思ったの。
シンは私が背中を怪我しない様にって、自分の着ていた服を私の背中に敷いてくれていたから、痛みとかは殆ど感じないけれど……それでも日の光を浴びたシンの引き締まった身体を見ているだけで、私はクラクラしてしまったわ。
身体が熱くなって来て堪らなかったの、何でこんなにもどかしく思ってしまうのかって……そう思うと私自身がとても”はしたない”子なんだわと恥ずかしくなってしまうのに、もっと触れて欲しくてシンの頭に腕を回していたの。
綺麗でサラサラな髪を掻き撫でて、目が合ったシンに再び唇を奪われたけれど……そんな事にも気にならない位、私はシンに支配される事を望んでいたわ。
この人と触れ合える幸せと、交ざり合う悦びを既に心と身体は知っているから”はしたない”けれど、そうなる事を望んでいたのよ。



…………でも、今は間違いなく太陽神としての責務を全うしなくてはいけないから。



「あ、ああっ……んくっ、あ……」



胸を揉まれて、乳房を吸われながら、それでももう片方の手は、シンの綺麗な指は私の一番”恥ずかしい処”を優しく撫でてくれていて……その指が既に濡れていた”中”に入り込んで来た時も、私はただ声を上げて震える事しか出来なかったけれど、責務の事を思い出すとやっぱり駄目だわって行為に集中出来なくなるの。



どうしよう…どうすれば良いの?
私はシンにこのまま身を委ねたいのよ、でも責務中にって思うと戸惑ってしまう。これは太陽神として、地上の人達を庇護する為に必要な力で……シンとはまた違った意味で大切な彼等を見守る為にも、今は必要な時間だって分かっているから。


ぴくんぴくん、と身体が痙攣しているのが分かる。
身体が、心がシンを求めているのが、今の私には分かるの。でも……このまま求めてしまえば、きっともっと求めてしまう。
責務中なのに、シンの事だけで頭の中がいっぱいになってしまって……責務を疎かにしてしまうかも知れない。



そんな私の揺れる気持ちに、シンも気付いてしまったのか……もう直ぐ頭の中が真っ白に弾けてしまう、その前にピタリと全ての動きを止めてしまったの。



「…………え?」



はあはあ、と息を荒くしている私にシンは「御免」って謝りながら、乱れていた服を直してくれた。



「幾ら何でも任務中の君にこれ以上の行為は酷過ぎる。君は特に責任感が強いのに、せめて続きは君の任務が終わってからで無いとね……?」

「シン……でも……」

「大丈夫。さっき君に触れられて、僕は未だもう少しだけは我慢出来るし……どうしても我慢出来ないならば、君だけは先にイかせてあげるから」

「わ、私だけなんて嫌よ!シンが我慢するなら、私も我慢するわ!!」



当然じゃない。
身体は酷く熱くて疼くけれど、それはきっとシンだって同じだもの。
狂いそうだけど、シンが我慢するなら私も我慢してみせる。私よりも男の人であるシンの方がもっと辛い筈だから。



「御免ね、シン……今日はエレシュキガルにお願いして、出来るだけ早く貴方に逢いに行くから……待っていて?」

「ああ。僕も真面目に任務を熟すから、きちんと終わったら…もっと深く触れ合おう。むしろ僕から君の所へ逢いに行くから、其れまで待っていてくれるか?」



シンも身支度を整えると、私の額に額をコツンと合わせてそう言ってくれたの。
『私から』では無くて、『僕から』って言ってくれる所がシンの優しさだと思う。
男の人の寝室に、女の私が入り込むのは良く無いから。きっとシンのお父さんである”エンリル様”に私は良く思われていない事を知っているから、私が周りに悪く言われるのを防ぐ為にそう言ってくれているのが分かるだけに、シンの強さと優しさを感じるのね。



「シャマシュ?」



そう名前を呼んでくれる優しいこの人の唇に、私は精一杯の想いを込めて自分から唇を合わせたの。
気持ち、伝わっていると良いな……。
そう思う私の身体を、シンはギュッと強く抱き締めてくれた。



(終わり)



こんな夢を見たのですよ……!
大興奮だ、コノヤローッ!!!!!!ΣI(///□///)I
大興奮し過ぎて真面目に書き出しただけで、この時間だよ!早番だってのに何やってんの、私!?
もう纏め終わったので寝ます、今度こそ寝ます!!
続きは?続きプリーズ!!
と思いつつも、起きてしまったので仕方がない。


純愛路線なリア充爆発しろ、な俺得シンシャマを有り難うございました。
って言うか、これも自己発電?(笑)




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