刀剣乱舞(女性審神者の本丸)
激しくも熱く幸せだった情事の後、きちんと後始末までしてくれる鋭くも優しい両の瞳に『嗚呼、やっと逢えたんだ』と僕は愛しい龍の頬を撫でた。
少し目を細めて、撫でる僕の掌を受け入れてくれる彼は───三振り目の大倶利伽羅で、僕は彼と同じく三振り目の燭台切光忠だったりする。
受け身役でいる事に抵抗は無かった。そんな事は僕にとっては然したる問題では無かったからだ。其れよりも、目の前の美しい龍に触れて貰える事の方が、他の何を引き換えにしても重要で、僕にとっては尊い事だったんだ。
《逢瀬》
「光忠」
「なんだい、倶利伽羅」
珍しく言葉を探している倶利伽羅の様子に、僕は『二振り目の僕が何かしたのかな?』と何となく思った。彼は僕であって”僕”じゃない。其を言ったら一振り目の僕も、僕であって”僕”じゃない。
だけど一振り目の僕も、”僕”と同じく過去は過去だと受け入れられている。水戸へと嫁入りした事も、関東大震災で被災した時に焼刀してしまった事も、あれ等の経験を経て今の僕が居る。
そう理解して受け止められている僕達と違い、二振り目の彼は、あの燭台切光忠は受け入れる事が出来ていないから。
強い様でいて、弱くて繊細な、そんな二振り目の”僕”が、二振り目の大倶利伽羅に何かしたのでは無いか。
そう思った僕は、倶利伽羅に「二振り目が何かした?御免ね」と謝った。
「光忠、アンタが謝る事は無い。むしろ燭台切が伽羅に弱い所を見せる事は、伽羅にとっても良い刺激になる」
「そうかい?…僕には、余り伽羅を追い詰めないであげて欲しいと思っているんだけどね。一振り目の”僕”もきっと同じ気持ちだと思うよ?」
「アンタ達が優し過ぎるだけだ。燭台切も伽羅も互いに不安定過ぎる。成長し合わなければ潰れるだけだ、と俺は思うがね」
「ふふっ、僕にはそんな倶利伽羅が一番優しいと思うよ。まるで人の子のお父さんみたいだ」
話しながら倶利伽羅の首筋に腕を絡めると、「どうした?甘えているのか、光忠?」と彼はゆっくりと僕の上に乗って来る。
其れでも僕よりもしなやかで、引き締まってはいても細い身体の倶利伽羅を重いとは思わず、彼よりも大きくて逞しい身体で良かっただなんて、そんな事を思いながら乗って来た彼を「僕専用の毛布だね」なんて囁くと、「アンタ専用の毛布はやけに如何わしいな」と耳許で甘く囁かれた。
「如何わしい所も素敵だと思うな。僕の身体を熱く溶かしてくれる”熱”は君だけで充分だし、君に乱されるならば本望だよ」
「……格好を気にする伊達男が、同じ男に乱されても良いとはな。水戸に嫁入りする前からその気は無きにしも在らずだったと記憶しているが、益々誘うのが巧くなった気がするな……浮気でもしていたのか?」
「意地悪な事を言わないでよ。”刀”だから時代の流れと共に離されるのは詮無き事だけど、其れでも僕が自分から嫁入りしたい相手は君しか居ないって、あの頃から言っていた筈だよ?……忘れちゃったのかい?」
「だとしたら寂しいな」と続けようとした僕の唇に、倶利伽羅の唇がそっと触れて来た。深く絡ませ合う口吸いをしてくれないのは物足りないけれど、「はあ…」と息を吐く音が艶っぽく、僕の身体に当たる彼の熱がまた存在を強く主張し始めてくれている事に気付いていたから、今度は僕から倶利伽羅の唇に唇を重ねる。
薄く開いた唇の中、彼の舌を自分の舌で軽く突くと、彼はそれに応える様に、今度は深く深く絡ませてくれた。
嬉しい、嬉しい。
はしたない、と言われるかも知れないし、違う僕が見たら「格好悪い」と嫌悪するかも知れないけれど、倶利伽羅が僕を嫌わなければ構わないと僕は思っている。
此れだけはずっと変わらない。この身体と心を全部、目の前の狂おしくて愛しい僕の龍が求めてくれるのならば、僕は喜んで全てを差し出してみせる。
ねえ、倶利伽羅?
二振り目の”君”は兎も角、二振り目の”僕”の事を気にしなくても良いんだよ?
優しくて慈愛に満ちている僕の龍は、あの可愛らしい”君”と一緒に、あの繊細で格好付けてばかりの”僕”の行く末を案じて、時々心を傷めているけれど、本当はそんな事を案じてあげる必要は無いんだ。
だって認めれば良いだけなんだから。
僕と倶利伽羅の様に、自分の心と向かい合って『認める』。ただ其れだけで彼の視界は広がるのだから。
一振り目の”僕”も、三振り目である”僕”でも出来た事。同じ燭台切光忠が出来ない訳が無いんだから。
だから、ね?
君が心配するのは、何だかんだ言いながらも巻き込まれて疲弊しがちな、一振り目の『倶利』や、二振り目の”僕”に問答無用に振り回されている『伽羅』にするべきだと思うよ。
───……悔しいから言ってあげないけど、ね。
再び熱く火照り始める身体を、彼の滑らかな褐色の肌に擦り合わせて強請りながら、僕は愛しい彼に身を委ねた。
(一気に気恥ずかしくなってきたので終)
……済みません。
飛ばしたら微妙なアダルトもどきに(;´д`)
加えて短すぎました。三振り目×三振り目はこんな感じです。
この時ばかりは本丸の離れ(鍵が掛けられて、内風呂が付いてる。簡単な調理なら出来る位の厨も付いてる。そんな専用の離れ)に移動している二振りの話です。
御免なさい、省いたものだからこんな所で説明しています。
勢いだけで書いてしまいましたが、私が書いたら《くりみつ》はこんな事になってしまいました……が、友人へ!(///ω///)♪