千銃士(短編)
わざわざ己の古傷を抉るかの如くにちょっと書いてみようと思います。鬼畜マフムトさん…(笑)
TLで賑わっているのですが、「今までの攻めキャラが大抵こっちに走るからなあ…マフムトさんまで走ったら洒落にならないけど、表現力が広がると良いな」と思っていたのでちょっと頑張ってみます。
↓↓
「ふむ、個体差…?」
「はい。他のマスター殿達との交流が増えていくにつれて思うたのですが、やはり各々のマスター殿の気性や相性によって顕現される順番も変わりますが、何よりも個々の性格と申しますか……感情の表し方も若干変わるのだなぁ、と思いまして」
そう言いながら彼女から注いで貰った『冷酒』と呼ばれる彼女の故郷で作られている酒に口を付けた。
前に飲んだ時は、その物珍しさからかついつい色々と口にしてしまい、情けなくも軽く酔ってしまったのだが、今夜は彼女自らが部屋に招き、こうして二人、実に珍しく穏やかな時間を過ごしている。
だからだろう。思い出した様に語る愛しいカーネリアンの瞳を見詰めながら、『個体差』と言う余の様な貴銃士の違いについて興味が湧いてしまったのは。
「そんなに驚く程に違うのかな?」
「そうですね…パッと見た位ならば特に感じませぬが、こう…じっくり眺めておりますとな『あ、やはり違うのだな』と気付くので御座います」
「ふむ……例えば?」
「例えば、で御座いますか?……そうですな、マフムト殿は私とこうして色々なお話をして下さいまするが、他のマスター殿と共に居られるマフムト殿は余りお話されている様には見えなかったりとか」
「ほう」
「と思えば、驚く程に距離の近いマフムト殿もいらっしゃったりするので御座いまする!……あとは酷く過保護な方も居られましたな。まあ総じて各々のマスター殿を見守っておられるのだろう事は伝わりましたが」
「成程」
彼女の話を聞きながら、まあ、それはそうだろう。と、余は思った。
余は勿論だが、余と言う人格と器を持った『違う世界軸の余』であったならば、最初から気に入った相手(マスター)の前に姿を顕した筈だからだ。気に入らない相手の前には顕れる筈の無い余が、大なり小なりマスターの存在を気に掛けない訳が無い。
余が選んだのは、目の前で酒を注ぎ、余の為に酒に合う肴を作り、何気無い話を楽しそうに話してくれる小さくて凛々しく可愛らしい異国の娘だった。
時代錯誤だとも取れる口調に、普段は少々距離を置きがちだが、それでも拒絶している訳では無い。
あくまでも平等に、分け隔て無く振る舞う姿につい視線を傾けてしまう……そんな不思議な娘だ。
敢えて疑問をぶつけるとすれば、そんな平等に扱う娘が、余の手を取ったと言う事だろうか?
娘の正体に気付いていない訳では無かった。
むしろ初めて娘と対峙した瞬間、ただ、漠然と『嗚呼、この娘は人間では無いのだろう』と思ったものだった。どうしてそう思ったのかは分からない。
ただ余と同じ様に遥か遥か遠い時代を、永い時を見詰めていたのでは無いかとそう思ったのだ。
だから、ふと思ったのだ。
マスターによって多少の変化が有るのならば、それはマスターがごく普通の人間の娘である場合では無いのか、と。
何時か来る『別れ』を惜しみ、傷付きながら守ろうと手を伸ばす脆すぎる存在を、喪う恐怖にもし余が耐えきれないと思ったならば……その時は、と。
「マフムト殿?」
突然考え込んでしまった余を見て、愛しい娘が小首を傾げている。
「千鳥、その個体差なのだがね……もし、その中の”余”が、あなたを誰にも気付かれない。誰も知らない部屋に閉じ込めて、これから先、”余”以外の何者も見てはならない。話す事も出来ない様にしてしまったとしたら、あなたは”余”を見限るだろうか?」
「え?」
「不安が無い訳では無いのだよ。あなたは誰よりも速く、強く、飛び立ってしまいそうだからね。そう思わない”者”が居ないとは限らないだろう?」
怒るだろうか?
呆れるだろうか?
見限るだろうか?
それでも『全く無い』とは言い切れない恐怖だった。情けない話だが、各々のマスターの傍に居る”余”とて有り得る可能性なのだから。
大切だと思う者、愛しいと想う者、共に駆けたいと願う同朋達、その何れも大切に見守りたいと思っているが、それ以上に……守れるだけの”力”が余に有るとは思わないから。だから、願い祈っても叶わないと思い知らされた瞬間───その瞬間、何をしようとするか予測出来ない程、”余”は”余”の事を知らない訳じゃない。
だから尋ねたいのだ。
まだ”時”の来ていない”今”の内に。
最悪のシナリオが待ち構えていたとした場合の、行く末を、今、考えてみて欲しいのだ、と。
不安に駆られた問い掛けに、彼女───千鳥は、その美しいカーネリアンの瞳を輝かせたまま、少し考える仕種を続けていた。
【囚われのアイ】
「マフムト殿が、私を閉じ込めて…マフムト殿以外の者との交流の一切を禁じられたとしたら…ですか?」
「嗚呼、そうだ。具体的に言うと、あなたを拘束し、目隠し…否、違うね。余は綺麗な物が好きだから、綺麗なあなたの瞳を抉り取る位の事はしてしまうかも知れない」
「目を?」
「それ位の過激な行動に出る”個体差”も居る可能性が有るだろう?」
「成程…確かに」
ふむふむ。
と、頷きながら千鳥はその場合の光景を思い浮かべようとしている様だった。勿論、話ながら『娘の瞳を抉り取られたら、幾ら”余”で有っても許さぬだろうな』と思いながら。
狂気に走る人間の行動には果てが無い、だからこそ理性で己自身を戒める。律するのだろう。
それが出来るから人間なのだ、と、余は思う。律する事が出来ない人間等は、畜生以下に堕ちた下劣な人間擬きに過ぎない。
人間の言葉を持たず、ただ悪戯に他者を傷付け、奪い、踏み躙る……世界帝の者共とどう違うのだ。
そう嫌悪する心と相反して『喪われてしまう恐怖から逃れられるならばいっそ』と夢想する心も有るのは事実だ。
普段ならば先ず口にも出したくは無い、悍ましく醜い感情を口に、言葉に乗せてしまう程に、余は”世界軸の違う所に居るらしい余達”の姿を想像し、そのマスターに何かしているかも知れない可能性に押し潰されそうになっていたらしい。
「拘束して、目を抉り取った後はどうするので御座いまする?まさかそのまま放置は致しませぬよな?」
「ん、嗚呼…それは勿論しないよ。何も出来なくなった”あなた”を、”余”は”余”の手でずっと世話をしていたい」
「世話、で御座いますか?」
意外な言葉だったのだろうか?
千鳥はキョトンと、目を大きく見開き、確認するべく復唱している。
「先ず”あなた”の衣服は逃げない様に全て剥がしてしまうだろう。一糸纏わずその肢体を拘束し、光の差さない世界で生かさず殺さず……”あなた”の全てを”余”のものにするのだから、そんな”あなた”の世話をするのは当然だろう?」
「嗚呼、成程…」
「やはり怖いかな?」
余の問い掛けに「まさか」と千鳥は微笑みを浮かべた。その返答に少し驚いた”余”の表情には気付かずに言葉を紡ぎ始める。
「ふふっ、マフムト殿……やはり私は普通の女子(おなご)では無い様で御座いまする。恐ろしい筈なのに、その腕が貴方様だと思うと……嬉しいと思うてしまう様です」
「……千鳥」
「私は神の末席に位置する付喪神、役目が終われば本霊の所に戻るが道理。所詮、分霊の身に過ぎない私が、自由になる事など叶いませぬ」
「嗚呼、そうだね。あなたが縛られている身で有る事は良く分かっているつもりだよ。だが、あなたはそれでも余が触れるのを拒まなかった」
千鳥の言葉を聞きながら、嗚呼、そうだった。と、余は彼女の立場を改めて思い出した。余の国には無い文化だが、彼女は虚偽を語る程の愚か者では無い。
役目が終われば本霊と呼ばれる者の所へと帰る、否、帰らねば為らない筈だった。
帰れるのは『他者と混じり合っていない魂』の場合のみ、他者───限り無く性質は似ていても、神では無い”余”と交わった彼女には既にその資格を失っている。
帰る場所を奪われた、失った彼女はそう語り「私自身が望んだ事。後悔はしておりませぬ」と笑ったのはそんな遠い過去の話では無い。
「もし、その行動が、貴方様の喪失感から来る恐怖で有ったとして、何を怖れる必要が御座いましょう?……何処に行くかも分からぬ身の、何も持たない人間ですら無い出来損ないの”私”を、貴方様が救い上げて下さると言うのに……見限る訳が有りませぬ」
「嗚呼、そうだったね。あなたの事は余が連れて行くと約束したのに、つい不安に駆られてしまったみたいだね」
「ふふっ、そんな日も御座いますよ。それに貴方様を不安にさせてしまった責任は私にも在りましょう?」
そう続けながら”余”に抱き着いて来る華奢な身体を壊さない様に抱き締めると、不安に駆られていた心が一気に拭い去られていく様だった。
嗚呼、これが『個体差』と言うものなのだろう、そう思いながら。
【終】
時間が掛かった割に鬼畜マフムトさんにはなりませんでした(笑)
……と言うか、千鳥が人外だった時点で無理でした。しれっと千鳥側の事情とか、その辺りまで入れてしまってますが、うちの千鳥さん(分霊の付喪神)は、貴銃士の誰か(うちの所では圧倒的に相手はオスマンになりますけども…!)と深い関係になってしまった場合、『神気が混ざり合ってしまう』為に、本霊の元へ帰れなくなると言う未来が待ってます。
混ざり合ってしまうと純正の大千鳥十文字の神気では無くなるから、弾かれるのが正しいのですが……平和になったとしても、千鳥はさ迷う事になってしまうので、余計に身持ちは難いのですが、頑固な娘なので「こうだ」と決めてしまうと、その業も全て一人で背負ってしまう所が有るので、後でその事実を知った貴銃士の胸中はと思うと……ちょっと申し訳ない気持ちになりますね(;A´▽`A
まあ、絶対高貴な貴銃士達ですので、手を出した時点で「どうにかして手元に置いて守る方法を探さないと」って奮闘してくれそうな予感しかしませんけども…!
実は付喪神が相手でも色々と大変なんですよ、な話になっただけになりましたねw
TLで賑わっているのですが、「今までの攻めキャラが大抵こっちに走るからなあ…マフムトさんまで走ったら洒落にならないけど、表現力が広がると良いな」と思っていたのでちょっと頑張ってみます。
↓↓
「ふむ、個体差…?」
「はい。他のマスター殿達との交流が増えていくにつれて思うたのですが、やはり各々のマスター殿の気性や相性によって顕現される順番も変わりますが、何よりも個々の性格と申しますか……感情の表し方も若干変わるのだなぁ、と思いまして」
そう言いながら彼女から注いで貰った『冷酒』と呼ばれる彼女の故郷で作られている酒に口を付けた。
前に飲んだ時は、その物珍しさからかついつい色々と口にしてしまい、情けなくも軽く酔ってしまったのだが、今夜は彼女自らが部屋に招き、こうして二人、実に珍しく穏やかな時間を過ごしている。
だからだろう。思い出した様に語る愛しいカーネリアンの瞳を見詰めながら、『個体差』と言う余の様な貴銃士の違いについて興味が湧いてしまったのは。
「そんなに驚く程に違うのかな?」
「そうですね…パッと見た位ならば特に感じませぬが、こう…じっくり眺めておりますとな『あ、やはり違うのだな』と気付くので御座います」
「ふむ……例えば?」
「例えば、で御座いますか?……そうですな、マフムト殿は私とこうして色々なお話をして下さいまするが、他のマスター殿と共に居られるマフムト殿は余りお話されている様には見えなかったりとか」
「ほう」
「と思えば、驚く程に距離の近いマフムト殿もいらっしゃったりするので御座いまする!……あとは酷く過保護な方も居られましたな。まあ総じて各々のマスター殿を見守っておられるのだろう事は伝わりましたが」
「成程」
彼女の話を聞きながら、まあ、それはそうだろう。と、余は思った。
余は勿論だが、余と言う人格と器を持った『違う世界軸の余』であったならば、最初から気に入った相手(マスター)の前に姿を顕した筈だからだ。気に入らない相手の前には顕れる筈の無い余が、大なり小なりマスターの存在を気に掛けない訳が無い。
余が選んだのは、目の前で酒を注ぎ、余の為に酒に合う肴を作り、何気無い話を楽しそうに話してくれる小さくて凛々しく可愛らしい異国の娘だった。
時代錯誤だとも取れる口調に、普段は少々距離を置きがちだが、それでも拒絶している訳では無い。
あくまでも平等に、分け隔て無く振る舞う姿につい視線を傾けてしまう……そんな不思議な娘だ。
敢えて疑問をぶつけるとすれば、そんな平等に扱う娘が、余の手を取ったと言う事だろうか?
娘の正体に気付いていない訳では無かった。
むしろ初めて娘と対峙した瞬間、ただ、漠然と『嗚呼、この娘は人間では無いのだろう』と思ったものだった。どうしてそう思ったのかは分からない。
ただ余と同じ様に遥か遥か遠い時代を、永い時を見詰めていたのでは無いかとそう思ったのだ。
だから、ふと思ったのだ。
マスターによって多少の変化が有るのならば、それはマスターがごく普通の人間の娘である場合では無いのか、と。
何時か来る『別れ』を惜しみ、傷付きながら守ろうと手を伸ばす脆すぎる存在を、喪う恐怖にもし余が耐えきれないと思ったならば……その時は、と。
「マフムト殿?」
突然考え込んでしまった余を見て、愛しい娘が小首を傾げている。
「千鳥、その個体差なのだがね……もし、その中の”余”が、あなたを誰にも気付かれない。誰も知らない部屋に閉じ込めて、これから先、”余”以外の何者も見てはならない。話す事も出来ない様にしてしまったとしたら、あなたは”余”を見限るだろうか?」
「え?」
「不安が無い訳では無いのだよ。あなたは誰よりも速く、強く、飛び立ってしまいそうだからね。そう思わない”者”が居ないとは限らないだろう?」
怒るだろうか?
呆れるだろうか?
見限るだろうか?
それでも『全く無い』とは言い切れない恐怖だった。情けない話だが、各々のマスターの傍に居る”余”とて有り得る可能性なのだから。
大切だと思う者、愛しいと想う者、共に駆けたいと願う同朋達、その何れも大切に見守りたいと思っているが、それ以上に……守れるだけの”力”が余に有るとは思わないから。だから、願い祈っても叶わないと思い知らされた瞬間───その瞬間、何をしようとするか予測出来ない程、”余”は”余”の事を知らない訳じゃない。
だから尋ねたいのだ。
まだ”時”の来ていない”今”の内に。
最悪のシナリオが待ち構えていたとした場合の、行く末を、今、考えてみて欲しいのだ、と。
不安に駆られた問い掛けに、彼女───千鳥は、その美しいカーネリアンの瞳を輝かせたまま、少し考える仕種を続けていた。
【囚われのアイ】
「マフムト殿が、私を閉じ込めて…マフムト殿以外の者との交流の一切を禁じられたとしたら…ですか?」
「嗚呼、そうだ。具体的に言うと、あなたを拘束し、目隠し…否、違うね。余は綺麗な物が好きだから、綺麗なあなたの瞳を抉り取る位の事はしてしまうかも知れない」
「目を?」
「それ位の過激な行動に出る”個体差”も居る可能性が有るだろう?」
「成程…確かに」
ふむふむ。
と、頷きながら千鳥はその場合の光景を思い浮かべようとしている様だった。勿論、話ながら『娘の瞳を抉り取られたら、幾ら”余”で有っても許さぬだろうな』と思いながら。
狂気に走る人間の行動には果てが無い、だからこそ理性で己自身を戒める。律するのだろう。
それが出来るから人間なのだ、と、余は思う。律する事が出来ない人間等は、畜生以下に堕ちた下劣な人間擬きに過ぎない。
人間の言葉を持たず、ただ悪戯に他者を傷付け、奪い、踏み躙る……世界帝の者共とどう違うのだ。
そう嫌悪する心と相反して『喪われてしまう恐怖から逃れられるならばいっそ』と夢想する心も有るのは事実だ。
普段ならば先ず口にも出したくは無い、悍ましく醜い感情を口に、言葉に乗せてしまう程に、余は”世界軸の違う所に居るらしい余達”の姿を想像し、そのマスターに何かしているかも知れない可能性に押し潰されそうになっていたらしい。
「拘束して、目を抉り取った後はどうするので御座いまする?まさかそのまま放置は致しませぬよな?」
「ん、嗚呼…それは勿論しないよ。何も出来なくなった”あなた”を、”余”は”余”の手でずっと世話をしていたい」
「世話、で御座いますか?」
意外な言葉だったのだろうか?
千鳥はキョトンと、目を大きく見開き、確認するべく復唱している。
「先ず”あなた”の衣服は逃げない様に全て剥がしてしまうだろう。一糸纏わずその肢体を拘束し、光の差さない世界で生かさず殺さず……”あなた”の全てを”余”のものにするのだから、そんな”あなた”の世話をするのは当然だろう?」
「嗚呼、成程…」
「やはり怖いかな?」
余の問い掛けに「まさか」と千鳥は微笑みを浮かべた。その返答に少し驚いた”余”の表情には気付かずに言葉を紡ぎ始める。
「ふふっ、マフムト殿……やはり私は普通の女子(おなご)では無い様で御座いまする。恐ろしい筈なのに、その腕が貴方様だと思うと……嬉しいと思うてしまう様です」
「……千鳥」
「私は神の末席に位置する付喪神、役目が終われば本霊の所に戻るが道理。所詮、分霊の身に過ぎない私が、自由になる事など叶いませぬ」
「嗚呼、そうだね。あなたが縛られている身で有る事は良く分かっているつもりだよ。だが、あなたはそれでも余が触れるのを拒まなかった」
千鳥の言葉を聞きながら、嗚呼、そうだった。と、余は彼女の立場を改めて思い出した。余の国には無い文化だが、彼女は虚偽を語る程の愚か者では無い。
役目が終われば本霊と呼ばれる者の所へと帰る、否、帰らねば為らない筈だった。
帰れるのは『他者と混じり合っていない魂』の場合のみ、他者───限り無く性質は似ていても、神では無い”余”と交わった彼女には既にその資格を失っている。
帰る場所を奪われた、失った彼女はそう語り「私自身が望んだ事。後悔はしておりませぬ」と笑ったのはそんな遠い過去の話では無い。
「もし、その行動が、貴方様の喪失感から来る恐怖で有ったとして、何を怖れる必要が御座いましょう?……何処に行くかも分からぬ身の、何も持たない人間ですら無い出来損ないの”私”を、貴方様が救い上げて下さると言うのに……見限る訳が有りませぬ」
「嗚呼、そうだったね。あなたの事は余が連れて行くと約束したのに、つい不安に駆られてしまったみたいだね」
「ふふっ、そんな日も御座いますよ。それに貴方様を不安にさせてしまった責任は私にも在りましょう?」
そう続けながら”余”に抱き着いて来る華奢な身体を壊さない様に抱き締めると、不安に駆られていた心が一気に拭い去られていく様だった。
嗚呼、これが『個体差』と言うものなのだろう、そう思いながら。
【終】
時間が掛かった割に鬼畜マフムトさんにはなりませんでした(笑)
……と言うか、千鳥が人外だった時点で無理でした。しれっと千鳥側の事情とか、その辺りまで入れてしまってますが、うちの千鳥さん(分霊の付喪神)は、貴銃士の誰か(うちの所では圧倒的に相手はオスマンになりますけども…!)と深い関係になってしまった場合、『神気が混ざり合ってしまう』為に、本霊の元へ帰れなくなると言う未来が待ってます。
混ざり合ってしまうと純正の大千鳥十文字の神気では無くなるから、弾かれるのが正しいのですが……平和になったとしても、千鳥はさ迷う事になってしまうので、余計に身持ちは難いのですが、頑固な娘なので「こうだ」と決めてしまうと、その業も全て一人で背負ってしまう所が有るので、後でその事実を知った貴銃士の胸中はと思うと……ちょっと申し訳ない気持ちになりますね(;A´▽`A
まあ、絶対高貴な貴銃士達ですので、手を出した時点で「どうにかして手元に置いて守る方法を探さないと」って奮闘してくれそうな予感しかしませんけども…!
実は付喪神が相手でも色々と大変なんですよ、な話になっただけになりましたねw