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千銃士(短編)

昨夜から滾り過ぎて仕方がないので書いてみます『女体化マフムトさんと当方宅マスターの千鳥さんのキャッキャッ話』。
えー…何時も以上に注意が必要です。普段以上に千鳥の性格が全力馴れ合いです。
マフムトさんも普段は隠していそうな能力を如何せん発揮してます(笑)


勿論、百合に該当します。否、展開によっては「百合じゃない!GLだ!」と怒られる内容かも知れませんので、本当に大丈夫な方のみ↓へズズッと移動して頂けると助かります。


↓↓





「おい、起きろ!」


何時もの様にアリ・パシャの少し怒りの籠った声で覚醒した。が、何かがおかしい。
疑問を抱きはしたがそれが何なのかは解らず、余はむくりと上体を起こす。


「………?」


やはり何処かおかしい。
何がおかしいのか、否、見えている手の甲が既に違う。余はもう少し大きく骨ばっていた様な気が……そもそも、胸が重いと思う。まるで胸の中に何か詰め込んだかの様な重みだろうか?
そんな未体験の重さと妙な怠さに余は首を傾げた。


「アリ・パシャ、エセン、おはよう。何時も早いね」


はて?
先程から何の反応も示さない二人に視線を傾け、そう声を掛けたのだが……二人は初めて見るかの様な顔を余に向けて口をはくはくと動かしている。
否、余も同じだった。何だ今の声は?
今の声は本当に余の唇から発せられた声なのか?
まるで女性の様な声に驚きを隠せない余に、我に返ったアリ・パシャが今まで聞いた事の無い声で叫んだ。


「な、なんだそれはーっ!!」


済まない、アリ・パシャよ。
それは余が一番聞きたい。何故、どうしてこんな事になってしまったのか。
嗚呼、良い天気だね…と窓の外に広がる平和な景色に視線を傾けそう現実逃避がしたくなったのも許して欲しいものだ、と、内心思いながらも「何か変な物でも食べたのでは無いのか!貴様は野菜クズや硬いパンでも上手いと食える様な卑しい男だからな!」と言うアリ・パシャからの失礼な言葉を聞き流していた。


【一瞬のクオリア】


「本当に身に覚えが無いんですか?」
「うむ…あれば良かったのだけどね」
「それは……困りましたね。恐らく前例なんて有りませんよ、多分…ですけど」
「まあ、そうだろうね。余も耳にした事は無い……が、まあその内元に戻れると思うよ」
「マフムト、貴様、その自信は何処から来るんだ」


少し落ち着いたらしいエセンからの問い掛けに答えていると、同じく取り乱していても仕方がないと持ち直したアリ・パシャから突っ込まれた。否、そうとしか答えられないだろう。気付いておくれ。

ちらりと余は己の胸元に視線を傾けた。嗚呼、たゆんたゆんと双方の山が見える。
何なのだ、これは?
これは本当に余の身体に付いておる物なのか?
信じたくは無いが恐る恐る双方の山を両の手で揉んでみると、ふよふよと山が動いた。嗚呼、駄目だ。取れそうに無い。


「ふむ…やはり取れない様だね」
「いや、どう見てもマフムト様に付いてますからね、それ」
「そもそも揉むな!」
「そうは言っても、今日は皆で共に出撃の予定だっただろう?こんな事で皆の士気を下げる訳にはいかないだろう?」
「ああ、それなら安心して下さい。アリ・パシャ様の先程の叫び声で、何かしら異常が有った事は伝わっているでしょうし、おそらくそろそろやって来ますよ」


エセンの言葉を聞いている間に皆が部屋へとやって来たのか、アリ・パシャが事情を簡単に説明している。こう言う非常事態の時は特に遺憾無く力を発揮する子だったね、と先程までの取り乱していた姿を少し懐かしく思っていると、


「うわー、本当に女の子になっちゃってるよ」
「こんな事で嘘なんか吐かないだろ。で、身体の方以外に何か変わった事は無いのか?気分は?悪くないか?」


普段は余り交流のない英国の銃士と、そんな彼の隣に良くいる柔らかな印象の若者から声を掛けられた。
「大丈夫だよ、身体以外は何もおかしな所はない」と答えると、少し安心したのか息を吐いている。


「流石にこんな事例は俺も知らないからな。今日はマフムト達には休んで貰って、代わりに俺達が出る事になったから心配するなよ」
「あなた達が?…それは悪い事をしたね」
「ん?別に構わないぞ。こう言う時はお互い様だしな」
「まあ、こんな事態が毎回有ると困るけどねぇ」
「シャルル!っと、まあそう言う訳だ。同じ貴銃士なんだ、困った時は協力し合わないとな」


そう続けると彼等は早々に部屋を出て行った。当然だろう。彼等は余の代わりに戦いへと赴くのだから。


「おい、そんな顔をするな」
「そうですよ、折角ですから久し振りにゆっくりお祈りでもしていたらどうですか?」


ぺちんと軽く頬を叩いてくるアリ・パシャは何時もよりも幾分優しいし、エセンもまた気を遣っているのが分かり「それが困るのだがね」と小さく呟いた。
嗚呼、不便な身体だ。良い事なんて何も無い。
そう思っていた時だった。
ドタドタと普段では先ず聞こえない慌ただしい足音がこの部屋に向かって聞こえてくる。
いや、まさか。そんな事が有る筈がない。
彼女は、余の愛しい娘はメディックとしての役割をこなし、常に毅然とした態度で戦場に赴いている様な娘だ。そんな彼女がまさか…。
まさか、こんな姿になってしまった余の元へやって来る筈がない。此れから出撃する彼等と共に戦場に赴く予定である筈の彼女が、余の、元へ、なん……


「マフムト殿!お体!!お体は本当に大丈夫なのでするか!?」


息を切らして飛び込んで来た娘は、普段の一歩距離を置いた振る舞いとは程遠く、まるでごく普通の生娘の様な勢いで余の胸に飛び込んで来た。


「は?おい、お前!ブラウン・ベス達と共に出撃したのでは無いのか!?」


アリ・パシャが余の代わりに尋ねると「そんな物、直ぐに取り止め申した!この様な一大事にのんびり出撃なんぞ出来ませぬ!」と直ぐに返ってくる。

恭遠は今頃胃を痛めているかも知れないね……。

普段の彼女ならば先ずしないであろう行動に、恭遠達は今頃頭を悩ませているだろうと思うと少し悪い気もするのだが…。


「本当に凄いですね、あなたの行動力の数々って一体何処から来るんですか?」


エセンからの問い掛けにも「ん?そんなもの…貴殿達、貴銃士達を大切に想う心故に決まっておろう!」と余を抱き締める腕に力を込めている。
ふるふる震えている身体に気付いて、嗚呼、余の事をこんなにも心配してくれたのかと不謹慎だが嬉しく思っていると、


「あーっ!やっぱり居た!駄目だろ、千鳥!マフムトがゆっくり休めないからお前は大人しく衛生室で待機してろって、そう言われただろー?」


彼女が来た時よりも一層大きく軋む床板の音に、この宿舎の床に穴でも空くのでは無いかと驚きながら扉から同じく飛び込んで来たのは、彼女とは昔馴染みのユキムラだった。


「ほら、戻るぞ!千鳥!」
「嫌!絶対に嫌で御座います!衛生室で居ても原因は分からぬ!資料や書物の類いも調べもうした、それでも分からぬのだ!其れなのに何故待機せねばならぬ!!」
「そりゃそーだけどさー、下手に軍規違反したら後がヤバいだろ?只でさえ千鳥はお偉方に目を付けられてるんだからさー」
「そんな物知らぬ!大体上官殿方は机上でしか戦を語れぬ者ばかり、否、今はその様な事は関係無かろう。非常事態に貴銃士の元に参って何が軍規違反だ!」
「おい、どういう事だ?今、目を付けられてると言わなかったか?」
「何やら不穏な単語が幾つか有りましたけど……って聞いてないみたいですね」


ユキムラと彼女の会話を直ぐ傍で聞いている余と、少しだけ距離を置いているアリ・パシャとエセンが会話の中で気になった箇所に反応するも直ぐに無駄だと悟り、仕方なく椅子に腰を下ろしている。
余は何とか宥めるべく愛しい娘に声を掛けた。余は大丈夫だと言う事と、今はどんな状況なのかと言う事を伝え、確認する為に。


「あ……申し訳御座いませぬ。今は全軍待機する様にと通達が届き、ベス殿達にも世界帝の情報が入り次第の進軍になる旨を伝えておる状況で御座いまする」
「今は何か世界帝の連中もゾッとする位、静かみたいでさー、だから今は何時でも出られる準備だけして待機って感じだな」
「ふむ、成程」
「それで私はマフムト殿の様な前例が無いかと調べておりました、が、調べてもこの様な事が起こったと言う記述が見付からず……」
「流石の千鳥もお手上げでさ、で、上から千鳥は衛生室で待機って言われて」
「居てもたってもいられず、マフムト殿の部屋へと踏み込んだ訳で御座います」
「ああ、大体分かったよ。有り難う」


そこまで聞いていると、じっと余の事をトルマリンとカーネリアンの瞳が見詰めているのに気が付いた。「嗚呼」と思い直して「余は大丈夫だよ」と笑い掛けると漸く安心したのかトルマリンの瞳が離れていく。


「マフムト殿……」


それでも余の愛しいカーネリアンは離れたくないらしい。
やれやれ、と苦笑を漏らしながら「こんな経験は初めてだから戸惑っているけどね、身体自体は至って良好だよ」と続ける事にした。


「それなら良いのですが……」
「ん?」


それでも動かないカーネリアンだが、今は少し意味が違う様だ。もじもじと恥ずかしそうにしながらも、抱き着いている両腕は一向に離れようとはしない。
どうしたのだろうか、と声を掛けようとした余の唇よりも先にその愛らしい唇が驚きの言葉を紡ぎ始めた。


「あの……マフムト殿が余りに美しくて、その、あといい匂いもしていて…あ、勿論普段からマフムト殿はお美しいのですよ!?でも、その…何だか姉上様って感じがして……嬉しいなって思ったので御座います…」


…………………ん?
……………………んん?
………………………んんん?


愛らしい唇から紡がれた言葉に、流石の余も理解する迄に少しの時間が必要だった。勿論、この発言を聞いたアリ・パシャとエセンも時が止まったかの様に微動だにしない。
唯一「あー、やっぱりなあー」と頭を掻いているのは娘と昔馴染みであるトルマリンの瞳を持つユキムラだった。


「千鳥って昔からお姉様ってのに憧れてたもんな、だから、マフムトの所には行くなって止めたんだけどさ。まあ、無理だったけど……そもそも本気出した千鳥の足に、俺が追い付ける訳がないんだよなー」


否、ユキムラよ。
一人で納得する前に余にも分かる様に説明しておくれ。


「はあ…マフムト殿、本当にお美しゅう御座いまする…」


紡がれる言葉の賛辞と瞳がまるで恋する乙女そのものなのだが……否、千鳥よ。
そなた、普段の余と共に居る時でさえそんな顔を見せなかった様な気がするのだが?
よもやこの様な状況に陥って初めて、愛しい娘の意外な嗜好を知るとは夢にも思わなかった。


だが……。


うっとりと余を見詰めてくるカーネリアンの両の瞳が余りにもキラキラと輝いているものだから、嗚呼、これはこれで悪くない。そう思った。


(続く…?)


あああぁぁぁ!
事の発端だけで終わったーっ!。・゜゜(ノД`)
悔しいので開き直ったイチャイチャ(本番)編を書きます、これで終わらせてなるものか!!
あ、タイトルは最後まで決まらなかったので聴いていた曲のタイトルそのまま入れてます。
タイトル変更するかもです。
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