千銃士(短編)
明日は協力してくれる人達との大事な話し合い(兼「交渉事も含まれている」そうだ)との事で、貴銃士の中でも一番適任らしいマフムトたっての希望で僕とアリ・パシャも一緒に遠いこの街までやって来た。
最初はホテルの手配も僕がしなくてはいけないんだろうな、と此処まで来るだけでも疲労困憊していた僕は荷が重かったのだけれど、今回はマフムトの友人(石油王経由で知り合った友人らしい。一体この人の交遊関係はどうなっているんだろう。考えるだけでも気が遠くなってしまいそうだ)が先に手配してくれているそうで、案内されるがままに部屋に入り、荷物を置いた所でアリ・パシャと共に絶句してしまっていた。
【滞在先の浴室にて】
「今まで取っていたホテルが霞んで見えるんだが…」
「言わないで下さいよ、今までのホテルも質は悪く無いんですから」
そう言いながらも部屋の広さと共に置かれている調度品の数々がもう、今までの部屋の比じゃなくて、何となく惨めな気持ちになってしまうのは何故だろう…とそんな気持ちを持て余しつつ、『嗚呼、でも僕だけだと先ず泊まれないし、泊まる機会すらない様なホテルだから逆に楽しむのも良いかな』と、普段とは全く違う空間を楽しむべく辺りを見渡していると、子供みたいに部屋の中を探索していたマフムトから声が掛かる。
「アリ・パシャ、エセン。此方には魚が泳いでいるよ、可愛いね」
にこにこ笑っているマフムトは今のこの空間の中、全く動じる事もなく寛いでいる。むしろ楽しむ余裕まで有る。明日の交渉相手から直接名指しされるだけの事は有るなと思いながら「確かに可愛いですね」とマフムトが見ている水槽の中を覗いて声を掛けた。
「ふん、くだらん」
こんな遠い所まで連れて来られて機嫌が頗る悪いアリ・パシャが吐き捨てる様に一蹴した。まあ、分からなくも無いですけど…と思いながらも、「凄く豪華なホテルですね」とマフムトに伝えると「有無。彼は「折角こんな遠い所まで来てくれるのだから、少しでも旅の疲れを癒せる様に」と心を砕いてくれた様なのだよ。有り難い事だね」と笑っている。
恐らくはマフムトのこう言う所が、権力者…特に富裕層の者達に気に入られる所なのだろう。思わず手を掛けてしまうと言うか、マフムトがにこにこ笑って受け入れている素直さとか、無邪気さとか、アリ・パシャや僕には先ず出来ないし、仮に見せても薄ら寒くて取り繕った反応だと伝わる仕種や言葉になるだろうから、逆に信用されるんだろうなあ、と少し思っている。
毒気を抜かれるんじゃ無いかな、とも。
「おお……!エセン、此処には大きなお風呂が有る様だよ」
「え、お風呂ですか?……嗚呼、凄いですね。アリ・パシャ様、とても大きなジャグジーの浴槽ですよ」
「何!?」
水槽の魚を充分観賞した所で、今度は浴室の中を確認したマフムトが嬉しそうに僕を呼んだ。
「大きなお風呂」と聞いて確認しない訳にはいかない。何せ僕は宿舎内では文句も言えないし、仮に水でも多少は綺麗になるなら…と妥協している日々を送ってはいるものの、実はこっそり浴槽に浸かるのが好きだったりするからだ。勿論それはアリ・パシャも同様で、街でホテルを手配する時の最重要事項に『お風呂が在るか否か』が含まれていたりするし、マフムトもお風呂が好きだからか、此れには僕達三人共に喜んだ。さっきまで不機嫌だったアリ・パシャの機嫌が少し良くなる程だから余程好きなんだろう。
僕の言葉を聞き、慌てて確認しに来る位だから「本当に大好きなんですね」とは口に出さない様にして、浴室の中で何か見付けたマフムトに近付いた。
「マフムト様、今度は何を見付けたんですか?」
「おお、エセン。見てごらん、このボトルは良く見ると入浴剤の様だよ。とても良い香りがするそうだ」
「へえ、ホワイトムスクの香りなら男の僕達が使っても悪くは無さそうだし良いですね」
「ほう…このメーカーか。確かに悪くない、ホワイトムスクと言っても仄かに香る程度に調合されていた筈だ。そのまま石鹸としても使える様に作られている液体のバブルバス用のボトルだな」
「何と、アリ・パシャは良く知っているね」
「今度使おうかどうか検討していた物だからな、此処で試せるとは丁度良い」
「基地内はシャワーなんですけど、普段使いに検討していたんですか?」
「そうだが?」
さも当然だと言わんばかりに言葉が返ってきて、基地に有るシャワーは直ぐに水に変わってしまう程に環境が良くないのに、其れでもボディソープだけでも拘りを見せたい位にはお風呂好きだったんだ…と、どう答えたら良いのか分からなくなっている僕を置いて「これはどう使うのかな?」とマフムトがアリ・パシャに尋ねている。
「先ずは湯をある程度溜めてからだ。この浴槽はジャグジーだから、水圧で泡を作る必要も無いし、溜めてからこいつを必要量入れてスイッチを押せば直ぐに泡風呂が出来るぞ」
何時もならば軽く一蹴しそうな質問にも丁寧に説明する位『好き』なんだなあ…と思うと、何だか物珍しさを越えて微笑ましさまで感じてしまうけれど、それ以上に初めての水では無く温かいお湯の、それも泡風呂が体験出来るかも知れない喜びに、僕も何だか興奮して来ていた。
「大切な用事は明日だし、今日はもう外に出る事も無いから、湯を張って泡風呂とやらに入ってみようか」と笑って準備を始めたマフムトと、間違えていないかしっかりとボトルの説明文を確認しているアリ・パシャの代わりに、僕はいそいそと三人分のタオル類の準備を始めた。きっと別々に入るだろうし、僕は入れたとしても一番最後に入る事になるだろう。
それでも温かいお風呂に入れるかも知れないと思えるだけで、『嗚呼、来て良かったなあ』とにやけてしまう。
「うわっ!?」
「なっ!?マフムト!泡風呂は滑り易いから不用意に手を突っ込もうとするな!危ないだろうが!!」
「は!?アリ・パシャ様、一体どうしたんですか?」
突然緊迫した様な声が響いて来たから、慌てて浴室へと戻ると、マフムトを抱き締めたアリ・パシャが怒っていた。
どうやら泡が出来る状況が嬉しくなって思わず手を出してしまい、なまじボディソープにも使える程の入浴剤だったから滑ってしまった様だ。もう少しで服のまま浴槽の中へダイブする所だったと呆れ混じりに説明してくれるアリ・パシャと、「助かったよ、アリ・パシャ。有り難う」とお礼を言っているマフムトを見て、怪我が無くて良かったと僕はホッと胸を撫で下ろした。
「全く…どうしてお前はそう目を離すと何かしら危機に陥ってるんだ」
「うーむ、どうしてなのだろうね。余り外にも出ない様にしているし、言い付け通りに過ごしてはいるのだが…」
本気で分かっていないのだろう。小首を傾げて考え込んでいるマフムトに「まあ良い。今更、貴様に言い聞かせた所で分からんだろうしな」とアリ・パシャが蟀谷(こめかみ)を押さえながら言っている。
こんな事で折角の泡風呂を満喫出来なくなるのは嫌なのだろう。本当に好き過ぎでしょ、と思いながらも「それで誰から入るんですか?」とタオルをどちらに手渡せば良いか分からず尋ねると、意外な言葉が二人の口から発せられた。
「は?何を言っている。先ずは三人同時だろう」
「此れだけ広い浴槽なのだから、皆で入っても充分余裕は在るだろう?それに…余が一人で入ると溺れてしまうかも知れないからね」
「目を離すとこの馬鹿が浮かんでいるかも知れないからな……不本意だが見張り兼ねて一緒に入ってやる事にしただけだ。だからエセン、お前も入れ」
「ふふふ、皆で入れるのは嬉しいなあ。とても良い香りだし、エセンもきっと気に入るよ」
二人からの言葉に吃驚して固まっている僕の手からタオルを抜き取り、「おい、マフムト。お前も着替えを用意しろ、三人で入るとなると先に脱衣室に置いておかねば後で手間取るぞ」と声を掛けているし、「おお、そうだね。余の着替えはこれとこれと…エセン、貴方の着替えはこれで良いのかな?」と声が聞こえてくる。
「エセン?」
「おい、どうした?」
いつの間に戻って来ていたのだろう。一度部屋に戻って準備を整えた二人が再び浴室の中で固まったままだった僕に声を掛けて来た。
目の前で掌をひらひらと振っているマフムトに「あ、大丈夫です。済みません、ちょっとぼう…としてしまいました」と答えると「疲れたのかも知れないね。早く入って疲れを取った方が良い」と一緒に持って来てくれていた僕の着替えを脱衣室に備え付けられている洗面台の横に置いてくれている。
「おい、それだけ疲れたのならば先に入るか?疲れたお前にマフムトのお守りは余計に疲れ果ててしまうだろう?」
アリ・パシャからもそう耳打ちされたけれど、僕が固まってしまったのは『疲れたから』じゃない。まさか最初から三人一緒に入るだなんて意外過ぎて驚いただけだ。だからその言葉に頷く訳にはいかないし、今は…。
「いえ、大丈夫です。お供しますよ、マフムト様は目を離すと直ぐに何かに巻き込まれてしまう体質持ちですし、アリ・パシャ様だって疲れてしまうでしょうから」
そう言いながらも、本当は初めての泡風呂をこの二人と一緒に楽しめるのが嬉しくて、別々に入るのは惜しいだけなんですけど…。
とは流石に言えなくてただ彼の言葉を借りて『言い訳』しただけなんですけど、とこっそり心の中で懺悔しながら、にっこりと微笑んだ。
《終》
最初はホテルの手配も僕がしなくてはいけないんだろうな、と此処まで来るだけでも疲労困憊していた僕は荷が重かったのだけれど、今回はマフムトの友人(石油王経由で知り合った友人らしい。一体この人の交遊関係はどうなっているんだろう。考えるだけでも気が遠くなってしまいそうだ)が先に手配してくれているそうで、案内されるがままに部屋に入り、荷物を置いた所でアリ・パシャと共に絶句してしまっていた。
【滞在先の浴室にて】
「今まで取っていたホテルが霞んで見えるんだが…」
「言わないで下さいよ、今までのホテルも質は悪く無いんですから」
そう言いながらも部屋の広さと共に置かれている調度品の数々がもう、今までの部屋の比じゃなくて、何となく惨めな気持ちになってしまうのは何故だろう…とそんな気持ちを持て余しつつ、『嗚呼、でも僕だけだと先ず泊まれないし、泊まる機会すらない様なホテルだから逆に楽しむのも良いかな』と、普段とは全く違う空間を楽しむべく辺りを見渡していると、子供みたいに部屋の中を探索していたマフムトから声が掛かる。
「アリ・パシャ、エセン。此方には魚が泳いでいるよ、可愛いね」
にこにこ笑っているマフムトは今のこの空間の中、全く動じる事もなく寛いでいる。むしろ楽しむ余裕まで有る。明日の交渉相手から直接名指しされるだけの事は有るなと思いながら「確かに可愛いですね」とマフムトが見ている水槽の中を覗いて声を掛けた。
「ふん、くだらん」
こんな遠い所まで連れて来られて機嫌が頗る悪いアリ・パシャが吐き捨てる様に一蹴した。まあ、分からなくも無いですけど…と思いながらも、「凄く豪華なホテルですね」とマフムトに伝えると「有無。彼は「折角こんな遠い所まで来てくれるのだから、少しでも旅の疲れを癒せる様に」と心を砕いてくれた様なのだよ。有り難い事だね」と笑っている。
恐らくはマフムトのこう言う所が、権力者…特に富裕層の者達に気に入られる所なのだろう。思わず手を掛けてしまうと言うか、マフムトがにこにこ笑って受け入れている素直さとか、無邪気さとか、アリ・パシャや僕には先ず出来ないし、仮に見せても薄ら寒くて取り繕った反応だと伝わる仕種や言葉になるだろうから、逆に信用されるんだろうなあ、と少し思っている。
毒気を抜かれるんじゃ無いかな、とも。
「おお……!エセン、此処には大きなお風呂が有る様だよ」
「え、お風呂ですか?……嗚呼、凄いですね。アリ・パシャ様、とても大きなジャグジーの浴槽ですよ」
「何!?」
水槽の魚を充分観賞した所で、今度は浴室の中を確認したマフムトが嬉しそうに僕を呼んだ。
「大きなお風呂」と聞いて確認しない訳にはいかない。何せ僕は宿舎内では文句も言えないし、仮に水でも多少は綺麗になるなら…と妥協している日々を送ってはいるものの、実はこっそり浴槽に浸かるのが好きだったりするからだ。勿論それはアリ・パシャも同様で、街でホテルを手配する時の最重要事項に『お風呂が在るか否か』が含まれていたりするし、マフムトもお風呂が好きだからか、此れには僕達三人共に喜んだ。さっきまで不機嫌だったアリ・パシャの機嫌が少し良くなる程だから余程好きなんだろう。
僕の言葉を聞き、慌てて確認しに来る位だから「本当に大好きなんですね」とは口に出さない様にして、浴室の中で何か見付けたマフムトに近付いた。
「マフムト様、今度は何を見付けたんですか?」
「おお、エセン。見てごらん、このボトルは良く見ると入浴剤の様だよ。とても良い香りがするそうだ」
「へえ、ホワイトムスクの香りなら男の僕達が使っても悪くは無さそうだし良いですね」
「ほう…このメーカーか。確かに悪くない、ホワイトムスクと言っても仄かに香る程度に調合されていた筈だ。そのまま石鹸としても使える様に作られている液体のバブルバス用のボトルだな」
「何と、アリ・パシャは良く知っているね」
「今度使おうかどうか検討していた物だからな、此処で試せるとは丁度良い」
「基地内はシャワーなんですけど、普段使いに検討していたんですか?」
「そうだが?」
さも当然だと言わんばかりに言葉が返ってきて、基地に有るシャワーは直ぐに水に変わってしまう程に環境が良くないのに、其れでもボディソープだけでも拘りを見せたい位にはお風呂好きだったんだ…と、どう答えたら良いのか分からなくなっている僕を置いて「これはどう使うのかな?」とマフムトがアリ・パシャに尋ねている。
「先ずは湯をある程度溜めてからだ。この浴槽はジャグジーだから、水圧で泡を作る必要も無いし、溜めてからこいつを必要量入れてスイッチを押せば直ぐに泡風呂が出来るぞ」
何時もならば軽く一蹴しそうな質問にも丁寧に説明する位『好き』なんだなあ…と思うと、何だか物珍しさを越えて微笑ましさまで感じてしまうけれど、それ以上に初めての水では無く温かいお湯の、それも泡風呂が体験出来るかも知れない喜びに、僕も何だか興奮して来ていた。
「大切な用事は明日だし、今日はもう外に出る事も無いから、湯を張って泡風呂とやらに入ってみようか」と笑って準備を始めたマフムトと、間違えていないかしっかりとボトルの説明文を確認しているアリ・パシャの代わりに、僕はいそいそと三人分のタオル類の準備を始めた。きっと別々に入るだろうし、僕は入れたとしても一番最後に入る事になるだろう。
それでも温かいお風呂に入れるかも知れないと思えるだけで、『嗚呼、来て良かったなあ』とにやけてしまう。
「うわっ!?」
「なっ!?マフムト!泡風呂は滑り易いから不用意に手を突っ込もうとするな!危ないだろうが!!」
「は!?アリ・パシャ様、一体どうしたんですか?」
突然緊迫した様な声が響いて来たから、慌てて浴室へと戻ると、マフムトを抱き締めたアリ・パシャが怒っていた。
どうやら泡が出来る状況が嬉しくなって思わず手を出してしまい、なまじボディソープにも使える程の入浴剤だったから滑ってしまった様だ。もう少しで服のまま浴槽の中へダイブする所だったと呆れ混じりに説明してくれるアリ・パシャと、「助かったよ、アリ・パシャ。有り難う」とお礼を言っているマフムトを見て、怪我が無くて良かったと僕はホッと胸を撫で下ろした。
「全く…どうしてお前はそう目を離すと何かしら危機に陥ってるんだ」
「うーむ、どうしてなのだろうね。余り外にも出ない様にしているし、言い付け通りに過ごしてはいるのだが…」
本気で分かっていないのだろう。小首を傾げて考え込んでいるマフムトに「まあ良い。今更、貴様に言い聞かせた所で分からんだろうしな」とアリ・パシャが蟀谷(こめかみ)を押さえながら言っている。
こんな事で折角の泡風呂を満喫出来なくなるのは嫌なのだろう。本当に好き過ぎでしょ、と思いながらも「それで誰から入るんですか?」とタオルをどちらに手渡せば良いか分からず尋ねると、意外な言葉が二人の口から発せられた。
「は?何を言っている。先ずは三人同時だろう」
「此れだけ広い浴槽なのだから、皆で入っても充分余裕は在るだろう?それに…余が一人で入ると溺れてしまうかも知れないからね」
「目を離すとこの馬鹿が浮かんでいるかも知れないからな……不本意だが見張り兼ねて一緒に入ってやる事にしただけだ。だからエセン、お前も入れ」
「ふふふ、皆で入れるのは嬉しいなあ。とても良い香りだし、エセンもきっと気に入るよ」
二人からの言葉に吃驚して固まっている僕の手からタオルを抜き取り、「おい、マフムト。お前も着替えを用意しろ、三人で入るとなると先に脱衣室に置いておかねば後で手間取るぞ」と声を掛けているし、「おお、そうだね。余の着替えはこれとこれと…エセン、貴方の着替えはこれで良いのかな?」と声が聞こえてくる。
「エセン?」
「おい、どうした?」
いつの間に戻って来ていたのだろう。一度部屋に戻って準備を整えた二人が再び浴室の中で固まったままだった僕に声を掛けて来た。
目の前で掌をひらひらと振っているマフムトに「あ、大丈夫です。済みません、ちょっとぼう…としてしまいました」と答えると「疲れたのかも知れないね。早く入って疲れを取った方が良い」と一緒に持って来てくれていた僕の着替えを脱衣室に備え付けられている洗面台の横に置いてくれている。
「おい、それだけ疲れたのならば先に入るか?疲れたお前にマフムトのお守りは余計に疲れ果ててしまうだろう?」
アリ・パシャからもそう耳打ちされたけれど、僕が固まってしまったのは『疲れたから』じゃない。まさか最初から三人一緒に入るだなんて意外過ぎて驚いただけだ。だからその言葉に頷く訳にはいかないし、今は…。
「いえ、大丈夫です。お供しますよ、マフムト様は目を離すと直ぐに何かに巻き込まれてしまう体質持ちですし、アリ・パシャ様だって疲れてしまうでしょうから」
そう言いながらも、本当は初めての泡風呂をこの二人と一緒に楽しめるのが嬉しくて、別々に入るのは惜しいだけなんですけど…。
とは流石に言えなくてただ彼の言葉を借りて『言い訳』しただけなんですけど、とこっそり心の中で懺悔しながら、にっこりと微笑んだ。
《終》