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百神(短編)


「私、アヌ様みたいに色んな所に気が配れる神様になりたくって…!」

そう言って笑ってくれるなんて思ってもみなかった。君もまた僕を忌み嫌っていると思っていたから。
少し驚いていた僕には気付かずに君はずっと笑っている。

嗚呼、アスタル。
君はこの子をこんな風に育ててくれたんだね。
忌み嫌われている僕にすら、真っ直ぐな好意を向けて微笑んでくれる。何でも知っていて恐ろしいと、気持ち悪いと毛嫌いされている僕にでも『気が配れる』と捉えて伝えてくれる……そんな子に。

「有り難う。まさかそんな事を言って貰えるなんて…ビックリしたよ」

自然に言葉が出ていた。
思わず抱き締めたくなる両腕を抑える事はしても、その言葉だけは素直に。

「えっ、そうですか?!」
「あぁ…僕がそんな風に言って貰えるなんて思って無かったんだ…。シャマシュは優しい子だね…。」

僕の言葉に少し疑問を持ちながらも直ぐに「有り難う御座います!」と笑う君の顔は、彼女に似ていた。
同じ天空を司る神にして僕とは真逆に位置する彼女……アントゥム。
彼女の笑顔に似ている、と同時にもっと違う次代では大地の女神で有ったキにも似ている。
地上の大地に吸収されてしまった……彼女にも似ている、と僕は思った。

消えてしまったキと真逆の天空を守る役目からか、否、アントゥムは僕でも有るーーー故に誰にも理解されない孤独と重責と、こんな僕の娘では余りに忍びないとアスタルに頼ってしまった光輝く幼子……手放した時からこうやって話す事も触れる事もしてはいけないと今まで自制してきたと言うのに、僕は今こうして娘……シャマシュと話している。
ただずっと遠くから見守るだけで満足していた筈なのに。

君が漸く本来の力を取り戻せると知った。
それを知った瞬間、僕の心は動いていた。手放した娘の危機にもまた何もせずに、ただ在るがままに見守っていた僕の代わりに解放してくれた人の子に勇気を貰って。
今度こそ、あの優しい人の子の力となり……君ごと守ってあげたいと、ただそう思ったから。

例え『父』だとは名乗れずとも、僕はもう君を手放さないよ。
何時か君だけを守ってくれる相手が現れたとしても、僕はもう後悔だけはしたくは無いから。

他のどの神よりも、君に忌み嫌われていない事実がこんなにも嬉しいなんて……僕は泣きたくなった。有り難うは僕の方だと言いたかった。
そんな想いを胸に秘め、僕は名乗る事もせずにただただ微笑みの仮面を張り付かせたまま、つかの間の幸せを噛み締めていた。

《終》

シャマシュとのマイページ会話をちょいと含めながらの短文です。
勝手に妄想、百神版アヌ様とシャマシュ(実は親子)ネタ。説によってはシン様がお父様だったりエンリル様だったりと忙しいシャマシュですが、余り記述を見掛けないだけでアヌ様が父神だと言う説もあったりします。
エンリル様は進化後のマイページ会話にてシン様との親子会話がしれっと有ったりするそうですし、アヌ様のログボでもシャマシュの事が語られているみたいですし……他の神様が余り良い感情を持っていない中でのこの反応はシャマシュらしいと言えばそうですが、やっぱりアヌ様から見ても「嬉しいor可愛い」と思うと思うんですよね。
ましてやもしこれが親子だったら……と思うと居ても立ってもいられませんでしたwww
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