2020(03)

■祭囃子を浴びに行こう

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「おーっ、すげー! やっぱ大学の大学祭ってすげー規模だな!」
「屋台だけじゃなくて教室の中とかでも展示があるらしい」
「へー。でも、人がヤバい。おい北星、はぐれるなよ! いくらお前がデカいっつってもこの人混みじゃはぐれたらめんどくせーことになるぞ!」
「大丈夫~」

 青浪敬愛大学の大学祭は、この土日にかけて行われる。とは言え、俺たちはまだゼミにも入っていないし、サークルでも特に何もしないそうだから、この大学祭で何かをするというワケではなく、一般の来場客として楽しむだけだ。
 雨竜なんかは派手好き、祭り好きだからただお祭りムードの中を練り歩くだけじゃなくて、自分たちで展示なんかもしたいタイプだとは思う。実際、学祭前のサークルでも「AKBCは何もしないんすか」って先輩たちに聞いて回ってたし。
 AKBCは良くも悪くも緩いサークルだ。ハマさんによればキャンパスを移転する前はもっと緩いサークルだったようで、人が来たり来なかったりもしていた様子。そんな中で団体行動は期待出来ないし、学祭で何かするという雰囲気は微塵ともなかったそうだ。

「って言うか、他の大学祭にも行ってみたくね?」
「ああ、それはわかる。緑ヶ丘なんかは規模もめちゃくちゃデカそうだし」
「緑ヶ丘だったら~、俺も行きたいかも~」
「くるちゃんに会いにな」
「くるちゃんは~、焼きそば作ってるんだって~」
「青女なんかは華やかそうだし」
「でも、青女って確かウチと日程被ってんだろ? 行くとしたら今日これからか明日しかなくね?」
「え~、青女って~、男子は入れないんじゃないの~」
「大学祭の時は入れるってよ。つーか逆に、大学祭でしか入れねーんだよ」
「そうなんだ~。ステージと~、カフェをやってるらしいね~」

 雨竜がやたら青女の様子が気になると言って鼻息を荒くしている。男子禁制、女の園の内部が気になるのは仕方ないことなのかもしれない。ただ、俺が気になるのは北星がやたら他の大学の事情に詳しいことだ。なんなら俺たちの中で一番疎そうなのにな。

「北星、お前やたら他の大学の事情に詳しくないか?」
「ちょっと前に~、合宿で一緒だった子たちとご飯に行って~、そこで聞いた~」
「ああ、そういうのがあったのか」
「だから~、緑ヶ丘と青女と~、星大のことしか知らないよ~」

 北星の班は1年生同士がかなり仲が良くて、グループLINEは今でも活発に動いているし、実際にごはんに行ったり遊んだりすることもまああるらしい。それらはくるちゃんが発端になってることが多いみたいだけど、みんなそういうのが割と好きみたいなんだ。

「じゃあ、明日青女に行ってみて、来週だっけか? 緑ヶ丘と星大に行ってみるかあ」
「行く行く~」
「星大はめちゃ頭いいし、変な屋台とかたくさんあるんだろうな~」
「あー、イメージとしてはわからないでもない。偏差値高い大学ってニッチなブースとか多そうだ」
「千颯は~、普通だって言ってたよ~」
「なーんだ、普通なのか。あっ、つかさ当麻、お前俺たちとばっかり遊び歩いてるけど彼女はいいのかよ」
「なんでそうなるんだよ。まあ、向こうは向こうで忙しくしてるし。そこまでお互いいつも一緒にいなきゃダメってワケじゃないから」
「ふーん。ハタチにもなってないのに悟ってんなー」

 彼女と大学祭デートとか、憧れないワケじゃないけど必ずやらなきゃいけないってことでもないし。向こうの都合とか、いろいろあるから難しいところ。もし予定が合うようなら来年あたり誘ってみたいかもしれない。

「つかお前の彼女ってどーゆー人なんだよ」
「気になる~。年上とか~、年下とか~っていう話~?」
「そうそう。彼女がいるって話は聞いてても、どんな人かっつーのは聞いたことなかったからな! 北星、お前も参考に聞いとけ! で、歳は?」
「26」
「は!? めっちゃ上じゃん! 歳の差があっても精々1、2コだろ! 普通に出会わなくね!?」
「いつから付き合ってるの~?」
「2年前。高2の時から」
「つか、24が高校生に手ぇ出すとか下手すりゃ犯罪だぞ」
「そりゃ、相手は大人だし俺なんか相手にされないだろうとは思ってたよ。だから告ってオッケーもらえたときはすごい嬉しかったし」

 俺は何を喋らされているんだ。でも、見世物にされなければそれでいいか。これが人によっては話を聞くだけじゃなくて彼女と会わせろとか何とかと言って来ることも多々ある。高校の時とか、それでちょっと大変なこともあったし。だから必要以上には話さないようにはしてたんだ。
 今では俺も大学生だから別に何も犯罪じゃないし、何なら俺がつまみ食いされたとか手を出されたとかじゃなくて俺から攻めてったんだから向こうが悪く言われることじゃない。法や条例がどうした。……いや、守るところは守るけど。

「いや、俺の話はいいんだよ。他の大学の学祭に行く話はどうなったんだよ」
「そーだ! 明日は青女だったな!」


end.


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他の大学祭を回る話をしてたはずが、気付いたら当麻の彼女についての話がチラリと。ナノスパ比では結構年上の彼女がいるようです。
奈々率いる4班は、1年生同士の仲がかなり良かったみたいですね。合宿が終わった後でも交流は続いてたみたいだけどどんな風にご飯食べてるんだろう
雨竜は自分が、自分がってなってそうなイメージだけど、案外他の子に話を振ったりしてるので周りが見えないワケじゃないみたいですね

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