2023
■Paki-Poki.
++++
「はい、それでは二人一組になってください」
「とりぃ、やろーッ」
発声練習の一連の流れとして、まず準備体操を行う。声を出す前に、体の緊張をほぐすという目的だそうだ。発声はアナウンサーもミキサーも関係なく行う。そして、この準備体操は、二人一組になって行うストレッチの項目もある。自分は、身長が一番近いジュンとペアを組み、背中合わせになって相手を持ち上げたのだが。
「あー……伸びるー……」
「……ジュン、相当凝り固まっているようだが」
「自覚はしてる」
1人でやる体操にしてもそうだが、最近では、ジュンの方からパキ、パキと関節の鳴る音が聞こえていることに気付く。完全なる偏見だが、痩せ型の方がそういう音が鳴りそうなイメージがある。ジュンからそういった音が聞こえるのは、イメージ通りと言えばそうなのだが、鳴りすぎていて心配にもなる。
普段の勉強にしろ、夏から始めた絵の練習にしろ、机の前に向かって同じような姿勢を続けているのだろう。肩も凝りそうだ。元々は体育会系で、体を動かしたり、走ったりすることは好きらしい。だが、最近では、そのような機会はなかなかないそうだ。強いて言えば、体育の授業で体を動かす程度だと。このストレッチもいい機会なのだろう。
「ジュン、痛ければ、言え。押すぞ」
「はい。最近はさ、大学祭のブース看板のデザイン考えるのにずっと調べものしてて。看板のデザインはやったことないから基礎は勉強しないといけないし。食品ブースらしさとDJブースらしさをしっかりと表現した上で、同じサークルがやってる物ですよという統一感も出したいだろ。それでいろいろ考えてたら。いててて。殿、そこで止めて」
「……前より、柔軟性に欠けた気がする」
「最近は机に向かいっ放しだからかな」
「つかお前そんなトコまで細々とやっとるんか。そんだけやっとんのに何で授業中居眠りのひとつもせんのや、意味わからんわ」
「いや、授業は起きてちゃんと聞くのが基本だろ」
「その様子からすると、うっしーは授業中寝てる感じ?」
「講義によるな! つかパロの学科にも眠気誘う先生とかおるやろ?」
「あー、ちょっとわかるな。3限とか眠たい日はあるよ」
「あるよな!」
講義によってはパロと一緒に授業を受けているが、たまに居眠りをしているのを見る。そういつもではなく、本当にたまにだが。俺も、たまにではあるが睡魔に襲われることはある。うっしーが授業を受けるにも力を抜いているのは知っているし、そうやって抜けたノートなどをジュンにせがんでいるのは何度か見たことがある。
ただ、うっしーの場合は大学生に対する偏ったイメージから、自分もある程度は遊ぶと決めて大学へ進学したと聞いている。とは言え、自分は無能の大卒にはなりたくないとも普段から言っていて、遊んだ分の勉強はしっかりしているそうだ。場合によってはジュンに教える側に回ることもあるとか。
「ツッツは? ちゃんと寝てる?」
「寝てる日の方が多いかな……。特に、休み前はちゃんとしてる」
「休み前の方がはっちゃけたりするんちゃうん」
「うちに、父さんの木材加工用機械があるんだけど、ちゃんと寝て、体調が万全な時じゃないと貸してもらえないっていう決まりがあるんだ。集中しないと、重大な事故になるからって」
「親父さんもDIYするんか」
「父さんは飾り物が多いかな。実用的と言うよりは、飾るための物とか」
「はえー。そう見たらツッツは実用的なモンを作る印象やな。どっちにしても、趣味のために体調を万全にする! ツッツの姿勢は俺も見習わなアカンな。殿はどーや? 殿なんか朝めっちゃ早いやん」
「その分、夜も寝るのは早い。睡眠自体は、きっちりとっている」
「殿は授業中も居眠りしてるのを見たことがないよ」
「ヤバッ」
居眠りの問答に関しては、ジャックもうっしーに理解を寄せているようだ。ジャックは1人暮らしの中で、生活のリズムが崩れつつあるようだ。それでも授業にはまだ出ているようだが、いつ堕落しきるか。それも時間の問題のようだ。理系は進級をするにもボーダーがあると聞いたことがある。……本当に、大丈夫だろうか。
そして、ブースの看板作りで言えば、ツッツだ。ツッツはジュンの起こしたデザインに沿って、土台の板を切って来た。恐らく、それらの看板を作るに当たっても、親御さんの持つ機械もある程度借りているだろう。作業の前には体調を万全に整える、その姿勢は自分も積極的に見習って行かなければならない。
順序通りに柔軟体操をこなしていくと、やはりジュンの柔軟性はペアを組み始めた当初より低くなっているように思う。体調を万全に整えるには、適度な運動も必要だろう。俺も、日常的に運動をする方ではないから、サークルでの柔軟体操は非常にいい運動の機会だ。サークル棟に来るまでの徒歩15分も、ウォーキングと捉えよう。
「それでは皆さん、準備はいいですか? 発声練習に入って行きますよ」
「はーい」
「では、長音から。お腹にしっかり力を入れて、まっすく飛ばしていきますよ」
end.
++++
リハビリ。
(phase3)
.
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「はい、それでは二人一組になってください」
「とりぃ、やろーッ」
発声練習の一連の流れとして、まず準備体操を行う。声を出す前に、体の緊張をほぐすという目的だそうだ。発声はアナウンサーもミキサーも関係なく行う。そして、この準備体操は、二人一組になって行うストレッチの項目もある。自分は、身長が一番近いジュンとペアを組み、背中合わせになって相手を持ち上げたのだが。
「あー……伸びるー……」
「……ジュン、相当凝り固まっているようだが」
「自覚はしてる」
1人でやる体操にしてもそうだが、最近では、ジュンの方からパキ、パキと関節の鳴る音が聞こえていることに気付く。完全なる偏見だが、痩せ型の方がそういう音が鳴りそうなイメージがある。ジュンからそういった音が聞こえるのは、イメージ通りと言えばそうなのだが、鳴りすぎていて心配にもなる。
普段の勉強にしろ、夏から始めた絵の練習にしろ、机の前に向かって同じような姿勢を続けているのだろう。肩も凝りそうだ。元々は体育会系で、体を動かしたり、走ったりすることは好きらしい。だが、最近では、そのような機会はなかなかないそうだ。強いて言えば、体育の授業で体を動かす程度だと。このストレッチもいい機会なのだろう。
「ジュン、痛ければ、言え。押すぞ」
「はい。最近はさ、大学祭のブース看板のデザイン考えるのにずっと調べものしてて。看板のデザインはやったことないから基礎は勉強しないといけないし。食品ブースらしさとDJブースらしさをしっかりと表現した上で、同じサークルがやってる物ですよという統一感も出したいだろ。それでいろいろ考えてたら。いててて。殿、そこで止めて」
「……前より、柔軟性に欠けた気がする」
「最近は机に向かいっ放しだからかな」
「つかお前そんなトコまで細々とやっとるんか。そんだけやっとんのに何で授業中居眠りのひとつもせんのや、意味わからんわ」
「いや、授業は起きてちゃんと聞くのが基本だろ」
「その様子からすると、うっしーは授業中寝てる感じ?」
「講義によるな! つかパロの学科にも眠気誘う先生とかおるやろ?」
「あー、ちょっとわかるな。3限とか眠たい日はあるよ」
「あるよな!」
講義によってはパロと一緒に授業を受けているが、たまに居眠りをしているのを見る。そういつもではなく、本当にたまにだが。俺も、たまにではあるが睡魔に襲われることはある。うっしーが授業を受けるにも力を抜いているのは知っているし、そうやって抜けたノートなどをジュンにせがんでいるのは何度か見たことがある。
ただ、うっしーの場合は大学生に対する偏ったイメージから、自分もある程度は遊ぶと決めて大学へ進学したと聞いている。とは言え、自分は無能の大卒にはなりたくないとも普段から言っていて、遊んだ分の勉強はしっかりしているそうだ。場合によってはジュンに教える側に回ることもあるとか。
「ツッツは? ちゃんと寝てる?」
「寝てる日の方が多いかな……。特に、休み前はちゃんとしてる」
「休み前の方がはっちゃけたりするんちゃうん」
「うちに、父さんの木材加工用機械があるんだけど、ちゃんと寝て、体調が万全な時じゃないと貸してもらえないっていう決まりがあるんだ。集中しないと、重大な事故になるからって」
「親父さんもDIYするんか」
「父さんは飾り物が多いかな。実用的と言うよりは、飾るための物とか」
「はえー。そう見たらツッツは実用的なモンを作る印象やな。どっちにしても、趣味のために体調を万全にする! ツッツの姿勢は俺も見習わなアカンな。殿はどーや? 殿なんか朝めっちゃ早いやん」
「その分、夜も寝るのは早い。睡眠自体は、きっちりとっている」
「殿は授業中も居眠りしてるのを見たことがないよ」
「ヤバッ」
居眠りの問答に関しては、ジャックもうっしーに理解を寄せているようだ。ジャックは1人暮らしの中で、生活のリズムが崩れつつあるようだ。それでも授業にはまだ出ているようだが、いつ堕落しきるか。それも時間の問題のようだ。理系は進級をするにもボーダーがあると聞いたことがある。……本当に、大丈夫だろうか。
そして、ブースの看板作りで言えば、ツッツだ。ツッツはジュンの起こしたデザインに沿って、土台の板を切って来た。恐らく、それらの看板を作るに当たっても、親御さんの持つ機械もある程度借りているだろう。作業の前には体調を万全に整える、その姿勢は自分も積極的に見習って行かなければならない。
順序通りに柔軟体操をこなしていくと、やはりジュンの柔軟性はペアを組み始めた当初より低くなっているように思う。体調を万全に整えるには、適度な運動も必要だろう。俺も、日常的に運動をする方ではないから、サークルでの柔軟体操は非常にいい運動の機会だ。サークル棟に来るまでの徒歩15分も、ウォーキングと捉えよう。
「それでは皆さん、準備はいいですか? 発声練習に入って行きますよ」
「はーい」
「では、長音から。お腹にしっかり力を入れて、まっすく飛ばしていきますよ」
end.
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リハビリ。
(phase3)
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