2020(03)
■近くの人とペア組んで
＋＋＋＋
「これを見ろ！ これが、俺がサキに言って出してもらった例年のタイムテーブルを元に作った今年のDJブースタイムテーブルだ！ 注！ 提出・合格済み！」
「おー」
「よくやったね」
大学祭に向けて、くるみ率いる食品ブースチームが精力的に動いているという話は聞いている。DJブースの方はどうかなと思っていたら、シノはしっかりと動いてくれていたらしい。俺も玲那も何もしてないけど、さすがリーダーだけある。
シノが作ってくれたタイムテーブルは３日間分しっかりと練られていて、各人の企画番組とリクエスト番組がバランスよく配分されているようだ。企画番組の枠は事前に聞かれていた予定を元にアナウンサーの枠だけが決められている。
「今日のサークルでＬ先輩にプロポーズ解禁の号砲を鳴らしてもらうし、ミキサーはまあおいおいって感じで。くぁーっ、俺指名されるかなぁー！」
「これも一種のお遊びなんだろうけど、脈々と続いてるっていうんだから凄いよな」
「陸、誰と組みたいか決めた？」
企画番組というのは普段の昼放送でやってるような感じの番組をやるんだけど、もうちょっと凝ったコーナーなんかもやっていいんだそうだ。持ち時間は１人１時間。１時間を１人で捌くのは初めてだし、何をどうしたらいいやら。
そして相手のミキサーはまだ決まっていない。毎年DJブースのペアはアナウンサーが組みたいミキサーにペア結成を申し込むことで決まる。これを俗にプロポーズって言ってるそうだ。もちろんミキサーの人の都合もあるので一度で決まるとは限らないのだけど。
「俺はー……あー、まだ考え中。先輩がいいなとは思ってるんだけど。玲那は？」
「私はくるみがいいなって思ってるところ」
「え、くるみか。意外だな。どうしてか聞いていい？」
「昼放送とかインターフェイス関係のイベントのペア決めの仕方っていうのをちょっと聞いたことがあるんだけど、ああいうのは学年や性別の都合で決められることが多いんだって。実際私たちもMBCCだったから１年生相手だったけど、基本的には１、２年ペアだったでしょ」
「ああ、確かにそうだったかも」
「そーいや昼放送も同じ学年のペアにはあんまなんないな」
「でしょ？ 私は履修の都合でサキと組んでるけど。だから逆に、同じ大学の同学年の、私だったら女子とは組む機会が思ったより少ないんじゃないかと思って」
俺は本当に誰と組みたいかっていうのを考えてなかったんだけど、玲那はそういうことまでちゃんと考えてたのかと思ったら偉いなと思った。確かに玲那とくるみが番組でペアを組むイメージっていうのはなかったもんな。
それに、俺たちも学年が上がれば俺たち６人の中からじゃなくて後輩の面倒を見ることになるんだと思う。そう考えると同じ学年の人間と組む機会は案外少ないというのも頷ける。夏合宿で彩人と組むことになったのも、先輩の配慮があったと言え本当に偶然だったんだなと。
「俺はＬ先輩とシノ以外の人から申し込ませてもらうことになるかな」
「――って何で俺はハブかれてんだよ！ やだよ～、俺も入れてくれよ～！」
「いや、お前とは別に焦らなくても一緒にやれると思ってるし、佐藤ゼミのラジオブースで一緒にやるって言ってるだろ」
「MBCCでもやるんだよ！ 油断するとペア組む機会なんかあっと言う間になくなるんだぞ！」
「わかった、わかったから近い近い近い」
確かに俺はちょっと油断しているのかもしれない。佐藤ゼミにだってまだ入れるって確定したワケじゃない。ペアを組む機会なんかあっと言う間になくなるっていうのもそうだ。危機感はシノの方が強く持ってるんだよな。俺が楽観的と言うか。
「シノは本当に陸が大好きなんだね」
「そりゃそうよ！ 入学２日目で出会った相棒だぞ！ なあササ！」
「ああ、うん。そうだな」
「や、お前冷めてね!?」
「冷めてないって。冷めてたらテスト前にお前の面倒なんか絶対見てないし」
「それな！ 冷めてるように見えてるのはお前の性格！ オッケー！ ひゅーっ！」
「そうそう。ちょっとやそっとじゃ顔変わらないからね陸は。何ならシノより熱いかもよ」
「え、マジで。レナには何か言ってくれてんの」
「言わないでって顔してるから内緒」
「お～い～！ な～ん～だ～よ～！」
玲那は俺の顔を見るだけで何考えてるのか大体言い当ててくるのがただただ凄い。だから隠し事をしたところで無駄だし(そもそもしてないけど)。そうそう、俺の情熱みたいな物は内に秘められてるっていうことにしておいてもらいたい。
「まあ、とにかくだな、このタイムテーブルでＬ先輩にプロポーズの号砲かけてもらうのがまずやんなきゃいけないことな！」
「了解です」
「具体的に俺たちのやることって何かある？」
「あー、そうだな、リク番の準備かな。どこまで音源とストックリストがライブラリ化してんのかとか？ まあ俺もＬ先輩か高木先輩に聞かねーとあんまよくわかんねーからなー。ま、その辺のことはミキサーだし俺が聞いとくとして」
「リーダー、結局自分が動いてるぞ」
「わかんねーから思い出したら指示するわ！」
end.
＋＋＋＋
食品チームが焼きそばの試作をしたりして頑張っていた裏で、ラジオチームはリーダーのシノが主に頑張っていたようです。
そういやMBCCではプロポーズ制度もあったし、その辺はどうなるのかしら。レナくるもなかなかにかわいいけど久し振りで逆に新鮮。
ササシノのコンビ観っていうのも、菜圭の陰陽と同じように本人たちと周りのイメージがちょっと違ってそう。
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「これを見ろ！ これが、俺がサキに言って出してもらった例年のタイムテーブルを元に作った今年のDJブースタイムテーブルだ！ 注！ 提出・合格済み！」
「おー」
「よくやったね」
大学祭に向けて、くるみ率いる食品ブースチームが精力的に動いているという話は聞いている。DJブースの方はどうかなと思っていたら、シノはしっかりと動いてくれていたらしい。俺も玲那も何もしてないけど、さすがリーダーだけある。
シノが作ってくれたタイムテーブルは３日間分しっかりと練られていて、各人の企画番組とリクエスト番組がバランスよく配分されているようだ。企画番組の枠は事前に聞かれていた予定を元にアナウンサーの枠だけが決められている。
「今日のサークルでＬ先輩にプロポーズ解禁の号砲を鳴らしてもらうし、ミキサーはまあおいおいって感じで。くぁーっ、俺指名されるかなぁー！」
「これも一種のお遊びなんだろうけど、脈々と続いてるっていうんだから凄いよな」
「陸、誰と組みたいか決めた？」
企画番組というのは普段の昼放送でやってるような感じの番組をやるんだけど、もうちょっと凝ったコーナーなんかもやっていいんだそうだ。持ち時間は１人１時間。１時間を１人で捌くのは初めてだし、何をどうしたらいいやら。
そして相手のミキサーはまだ決まっていない。毎年DJブースのペアはアナウンサーが組みたいミキサーにペア結成を申し込むことで決まる。これを俗にプロポーズって言ってるそうだ。もちろんミキサーの人の都合もあるので一度で決まるとは限らないのだけど。
「俺はー……あー、まだ考え中。先輩がいいなとは思ってるんだけど。玲那は？」
「私はくるみがいいなって思ってるところ」
「え、くるみか。意外だな。どうしてか聞いていい？」
「昼放送とかインターフェイス関係のイベントのペア決めの仕方っていうのをちょっと聞いたことがあるんだけど、ああいうのは学年や性別の都合で決められることが多いんだって。実際私たちもMBCCだったから１年生相手だったけど、基本的には１、２年ペアだったでしょ」
「ああ、確かにそうだったかも」
「そーいや昼放送も同じ学年のペアにはあんまなんないな」
「でしょ？ 私は履修の都合でサキと組んでるけど。だから逆に、同じ大学の同学年の、私だったら女子とは組む機会が思ったより少ないんじゃないかと思って」
俺は本当に誰と組みたいかっていうのを考えてなかったんだけど、玲那はそういうことまでちゃんと考えてたのかと思ったら偉いなと思った。確かに玲那とくるみが番組でペアを組むイメージっていうのはなかったもんな。
それに、俺たちも学年が上がれば俺たち６人の中からじゃなくて後輩の面倒を見ることになるんだと思う。そう考えると同じ学年の人間と組む機会は案外少ないというのも頷ける。夏合宿で彩人と組むことになったのも、先輩の配慮があったと言え本当に偶然だったんだなと。
「俺はＬ先輩とシノ以外の人から申し込ませてもらうことになるかな」
「――って何で俺はハブかれてんだよ！ やだよ～、俺も入れてくれよ～！」
「いや、お前とは別に焦らなくても一緒にやれると思ってるし、佐藤ゼミのラジオブースで一緒にやるって言ってるだろ」
「MBCCでもやるんだよ！ 油断するとペア組む機会なんかあっと言う間になくなるんだぞ！」
「わかった、わかったから近い近い近い」
確かに俺はちょっと油断しているのかもしれない。佐藤ゼミにだってまだ入れるって確定したワケじゃない。ペアを組む機会なんかあっと言う間になくなるっていうのもそうだ。危機感はシノの方が強く持ってるんだよな。俺が楽観的と言うか。
「シノは本当に陸が大好きなんだね」
「そりゃそうよ！ 入学２日目で出会った相棒だぞ！ なあササ！」
「ああ、うん。そうだな」
「や、お前冷めてね!?」
「冷めてないって。冷めてたらテスト前にお前の面倒なんか絶対見てないし」
「それな！ 冷めてるように見えてるのはお前の性格！ オッケー！ ひゅーっ！」
「そうそう。ちょっとやそっとじゃ顔変わらないからね陸は。何ならシノより熱いかもよ」
「え、マジで。レナには何か言ってくれてんの」
「言わないでって顔してるから内緒」
「お～い～！ な～ん～だ～よ～！」
玲那は俺の顔を見るだけで何考えてるのか大体言い当ててくるのがただただ凄い。だから隠し事をしたところで無駄だし(そもそもしてないけど)。そうそう、俺の情熱みたいな物は内に秘められてるっていうことにしておいてもらいたい。
「まあ、とにかくだな、このタイムテーブルでＬ先輩にプロポーズの号砲かけてもらうのがまずやんなきゃいけないことな！」
「了解です」
「具体的に俺たちのやることって何かある？」
「あー、そうだな、リク番の準備かな。どこまで音源とストックリストがライブラリ化してんのかとか？ まあ俺もＬ先輩か高木先輩に聞かねーとあんまよくわかんねーからなー。ま、その辺のことはミキサーだし俺が聞いとくとして」
「リーダー、結局自分が動いてるぞ」
「わかんねーから思い出したら指示するわ！」
end.
＋＋＋＋
食品チームが焼きそばの試作をしたりして頑張っていた裏で、ラジオチームはリーダーのシノが主に頑張っていたようです。
そういやMBCCではプロポーズ制度もあったし、その辺はどうなるのかしら。レナくるもなかなかにかわいいけど久し振りで逆に新鮮。
ササシノのコンビ観っていうのも、菜圭の陰陽と同じように本人たちと周りのイメージがちょっと違ってそう。
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