メモと小ネタ帳
静かな夜
2025/01/29 21:14FF16小ネタ
静かな夜
※しっとりとしたクラジル。
クリスタル自治領に向けてクライヴとジルは慣れた様子でクライヴは愛馬(チョコボ)であるアンブロシアに。
そしてジルは借りた一頭に乗ってまたダルメキアへの旅へと向かった。
馬を1日休ませることなく走らせたとしても数日は掛かる旅路だ。
先に自治領へ向かう為のボグラド市場にて未だ見ぬ協力者たちの元にいるグツをあまり待たせたくないところであるが、ジルは体調を戻して間もないのもあり。借りて来た馬(チョコボ)のペースもある。
アンブロシアやトルガルと共に先行しながら時折そっと視線を後ろへ送る。
彼女はしっかりと頷いて共に付いて来てくれていた。
砂漠の夜は冷える。
黒の一帯に沈む湖のど真ん中がクライヴたちの今の隠れ家であり。
そこから南に突き進むとまだ黒の一帯に脅かされていない緑が少ない荒野が広がる。
ダルメキアの領地である砂漠は間近であるが夜になると一気に冷えることもあり。
その手前で自らの掌に弟から信頼の証として得た炎を灯し。
そして火を起こした。その間にジルが優しく馬を撫で。ありがとうと礼を伝えていた。
先に水を飲みに出ていたアンブロシアが戻るとそちらも彼女にキュイと挨拶を送り。
そしてトルガルと共に水を飲みに出る。
アンブロシアの頭を優しく撫でクライヴも礼を贈り。括りつけていた荷物をほどきながらギサールの野菜をクチバシにはませる。
アンブロシアは音を立てることもなく器用に食し。そうした面からの彼女の気高さを感じた。
別の所で水筒に汲んで置いた水を鉄の小さな鍋に注ぎ沸かす。
その間にジルがマーテルの木、そして果実だと今の拠点の中で名付けられたりんごを取り出し小さなナイフでカットしてくれている。
クライヴは隣で干したニワトリスの肉を二等分武器としては扱わない短剣で2枚におろし。モリーが持たせてくれたワインに付けておいた乾燥イチジクを混ぜ込んだ固めのパンを旅の日数に残りを合わせてスライスする。
湯が沸く頃には仕度も整い。もう一頭の馬(チョコボ)とトルガルが戻り。彼らにも今日の疲れを取るささやかな食事を。
辛い現実をずっと目の当たりにしながら共にふたりでヴァリスゼアのあちこちを5年という歳月と共に過ごして来た時と変わらない静かな食事を取り始めた。
アンブロシアともう一頭の馬(チョコボ)は体を沈め頭を垂れて。
トルガルも焚き火のそばで巨体を伸ばしながら横たわり。
クライヴとジルはそれまでしてきたようにお互いに寄り添っていた。
彼女と再会をするその時まで。
焚き火を眺めそのはぜる火の粉と炎から彼が思い出すのはあの日の惨劇だった。
弟を失い。戻ることも出来なかった故郷も失い。
暗殺部隊にて雑兵として扱われながら本来の名を呼ぶものもいなかった。
忘れるものかとそれだけを考えて。
兵器として扱われて来た彼女はこうして炎を眺めたりはしなかった。
拘束具を嵌められたままきつく縛られ。顔を上げようものなら目の前で少女たちが痛めつけられているという現実。
何も出来ず、叫ぶこともなく。目の前の者たちを殺せ化け物。その命令だけが日々の繰り返しだったのだ。
今ふたりで寄り添いながら思い出すのはヴァリスゼアを見て回って来たこの世界の現実だ。囚われていた日々ではない。
ふたりで―今こうして手を繋いでいるのと同じ。彼は受け入れながら。
彼女はその彼の傍で時には隣に立ち。受け止めながら。
ひとりでは決して出来なかったことを重ねて来た。
彼が彼女の手を取り握りしめる時。
彼女が彼の手に自分の手を重ねる時。
お互いの決意を確かめ合っていた。
あの国で彼女が因縁そのものであった男を断罪し。
人らしく生きていくとひとつひとつのことを彼に尋ね確かめ合うようになってから。
そして人らしく生きていくのだとインビンシブルからまずは始めようと拠点で暮らしている彼らへ信頼と共に繋がり注いでいる想いとは別に。
お互いに特別なーそれは感情であり。想いそのものであり。繋がりーそしてやがては誓いそのものとなるーとてもあたたかく時には迷い、どこかで失うことを恐れもしている…そうした内なる大切なものがあるのだとクライヴとジルは互いに自覚している。
「…寒くないか」
ふたりで毛布でくるまりながら彼があたたかく彼女にそう尋ねる。そして優しく引き寄せる。
彼女は身をさらに寄せ。そのあたたかさをじんわりと受け止めていた。
「大丈夫…。こうしていられるから」
帰る場所とは、違う。
何かを成し遂げた訳でもない。むしろ真実に辿り着いていないこの大陸はこれからさらに混沌へと投げ込まれる。未だ会えない弟が月を見上げ語ったように。
それでも確かにここにあり。
そしてお互いに見出せた愛おしさを糧に。静かな夜を過ごしていった。
※しっとりとしたクラジル。
クリスタル自治領に向けてクライヴとジルは慣れた様子でクライヴは愛馬(チョコボ)であるアンブロシアに。
そしてジルは借りた一頭に乗ってまたダルメキアへの旅へと向かった。
馬を1日休ませることなく走らせたとしても数日は掛かる旅路だ。
先に自治領へ向かう為のボグラド市場にて未だ見ぬ協力者たちの元にいるグツをあまり待たせたくないところであるが、ジルは体調を戻して間もないのもあり。借りて来た馬(チョコボ)のペースもある。
アンブロシアやトルガルと共に先行しながら時折そっと視線を後ろへ送る。
彼女はしっかりと頷いて共に付いて来てくれていた。
砂漠の夜は冷える。
黒の一帯に沈む湖のど真ん中がクライヴたちの今の隠れ家であり。
そこから南に突き進むとまだ黒の一帯に脅かされていない緑が少ない荒野が広がる。
ダルメキアの領地である砂漠は間近であるが夜になると一気に冷えることもあり。
その手前で自らの掌に弟から信頼の証として得た炎を灯し。
そして火を起こした。その間にジルが優しく馬を撫で。ありがとうと礼を伝えていた。
先に水を飲みに出ていたアンブロシアが戻るとそちらも彼女にキュイと挨拶を送り。
そしてトルガルと共に水を飲みに出る。
アンブロシアの頭を優しく撫でクライヴも礼を贈り。括りつけていた荷物をほどきながらギサールの野菜をクチバシにはませる。
アンブロシアは音を立てることもなく器用に食し。そうした面からの彼女の気高さを感じた。
別の所で水筒に汲んで置いた水を鉄の小さな鍋に注ぎ沸かす。
その間にジルがマーテルの木、そして果実だと今の拠点の中で名付けられたりんごを取り出し小さなナイフでカットしてくれている。
クライヴは隣で干したニワトリスの肉を二等分武器としては扱わない短剣で2枚におろし。モリーが持たせてくれたワインに付けておいた乾燥イチジクを混ぜ込んだ固めのパンを旅の日数に残りを合わせてスライスする。
湯が沸く頃には仕度も整い。もう一頭の馬(チョコボ)とトルガルが戻り。彼らにも今日の疲れを取るささやかな食事を。
辛い現実をずっと目の当たりにしながら共にふたりでヴァリスゼアのあちこちを5年という歳月と共に過ごして来た時と変わらない静かな食事を取り始めた。
アンブロシアともう一頭の馬(チョコボ)は体を沈め頭を垂れて。
トルガルも焚き火のそばで巨体を伸ばしながら横たわり。
クライヴとジルはそれまでしてきたようにお互いに寄り添っていた。
彼女と再会をするその時まで。
焚き火を眺めそのはぜる火の粉と炎から彼が思い出すのはあの日の惨劇だった。
弟を失い。戻ることも出来なかった故郷も失い。
暗殺部隊にて雑兵として扱われながら本来の名を呼ぶものもいなかった。
忘れるものかとそれだけを考えて。
兵器として扱われて来た彼女はこうして炎を眺めたりはしなかった。
拘束具を嵌められたままきつく縛られ。顔を上げようものなら目の前で少女たちが痛めつけられているという現実。
何も出来ず、叫ぶこともなく。目の前の者たちを殺せ化け物。その命令だけが日々の繰り返しだったのだ。
今ふたりで寄り添いながら思い出すのはヴァリスゼアを見て回って来たこの世界の現実だ。囚われていた日々ではない。
ふたりで―今こうして手を繋いでいるのと同じ。彼は受け入れながら。
彼女はその彼の傍で時には隣に立ち。受け止めながら。
ひとりでは決して出来なかったことを重ねて来た。
彼が彼女の手を取り握りしめる時。
彼女が彼の手に自分の手を重ねる時。
お互いの決意を確かめ合っていた。
あの国で彼女が因縁そのものであった男を断罪し。
人らしく生きていくとひとつひとつのことを彼に尋ね確かめ合うようになってから。
そして人らしく生きていくのだとインビンシブルからまずは始めようと拠点で暮らしている彼らへ信頼と共に繋がり注いでいる想いとは別に。
お互いに特別なーそれは感情であり。想いそのものであり。繋がりーそしてやがては誓いそのものとなるーとてもあたたかく時には迷い、どこかで失うことを恐れもしている…そうした内なる大切なものがあるのだとクライヴとジルは互いに自覚している。
「…寒くないか」
ふたりで毛布でくるまりながら彼があたたかく彼女にそう尋ねる。そして優しく引き寄せる。
彼女は身をさらに寄せ。そのあたたかさをじんわりと受け止めていた。
「大丈夫…。こうしていられるから」
帰る場所とは、違う。
何かを成し遂げた訳でもない。むしろ真実に辿り着いていないこの大陸はこれからさらに混沌へと投げ込まれる。未だ会えない弟が月を見上げ語ったように。
それでも確かにここにあり。
そしてお互いに見出せた愛おしさを糧に。静かな夜を過ごしていった。