メモと小ネタ帳

香り(ほんのりクラジル)

2024/11/18 23:50
FF16
マーサの宿にモブハントの討伐をこなした帰り道、ついでにふたりで市場へと足を運んだ。

ノースリーチにて買い物を楽しんでいたジルのその様子にパンのことも楽しく語り出したりしてあやうくクライヴ自身が忘れ去られるところではあったが…。
並べられているリンゴにベアラーとのやり取りを思い出した。ほんのり甘い香りがした果実。落としたくらいで気にしなくて良いと丁寧に土を払い戻してやったのだ。相手も主人と共に去る前に微笑んでくれた。

ベアラー保護活動をシドから受け継いで5年。インビンシブル内で人らしく暮らすようになった彼らは別として殆どの場合そうした笑顔は向けられることはなく。クリスタル破壊によりより苦しくなる現実に彼らの苦境も合わさって責められることが大半だった。ただ、すまないと告げてからそれでも歩みを止めたりはしない。

ジルが幾つかの果実を手に取りそれからお茶の葉にも目を向ける。飲み終わったら埃を吸い取る床の掃除にも、それとロストウィングで大きくなった子がおいしい魚って分けてくれたわよね。塩漬けにしてあるのだけど今日焼くとモリーも言っていたでしょう。消臭に使ってお湯を沸かしたら桶の中に入れて身体を綺麗にするの。そして肥料としてナイジェルに使ってもらいましょうとそう次々とアイデアを話してくれた。
なら、俺はと柑橘系の果実を取る。
葉と枝が付いているもの。植物園はもちろん残った皮や葉を詰めて香り袋としてー…今回の敵は外に出て来た遺物だったが大抵は生身の魔物や時には他国の兵だ、血が流れるのは避けようもない、その匂いがひっついたままにならないようにー小さいもので十分だからポーチに付けておこうとジルに伝えた。
ジルは頷くと共に、初めてあなたがノースリーチに行くときにオットーから受け取ったのと同じねと続ける。
ああ、オットーが詳しいのはイサベラとよく連絡を取り合っているからかと思ったが…つい最近あいつの家族のことを聞いたんだ。奥さんへの贈り物として渡していたのかとそう思った。
「素敵ね」
「植物園の花も少し拝借させてもらおう。ジル、君独自のものだ」
「あら…」
(今すぐは無理でも…あの丘で見たあの花も一緒に。いつかそう遠くない時に)

自治領へ辿り着く前にボクラド市場へと向かうことになる。ゼメキス大瀑布を通る道だ。その前に新たな協力者となったルボルへと直接ジルを紹介した。
クライヴと同じく先代の名を引き継ぐ2代目だ。宜しくな。
ええ、宜しくルボル。
爽やかな香りがするな。…成る程、拠点での花もか。今度レシピがあったら教えてくれ。ここは温泉もあるから女性客が喜ぶ。
お、そうだ。お近づきの印にこれを持ってけよ。
子どもたちに撫でられているトルガルと店の工房の者が声を掛けているクライヴに気づかれないようにジルの手にそっとルボルはあるものを渡して来た。
これはー?
バルサム油だ。水が少ない地方ではこれを塗ったりして日差しで傷んだ肌のケアや香りを楽しみながら眠りに就く。女性の肌にも良いし、あいつにはこの香りが似合っているだろうしな。
ありがとう。

ボクラド市場についてから。赤いチョコボの看板を掲げているエルとテオの店にて奥の部屋で少し休んでから出発していけよと勧められ。
ジルがルボルからもらったバルサム油で最初は別の部屋で自分の体に。
そしてクライヴに軽装になってもらい彼女は彼の首筋に。彼自身は両腕に丁寧に塗ることにした。タルヤに縫ってもらった傷跡はもう見えないけど。その後はちゃんとしっかり身体の調子も見ていると報告できるわねとくすくす彼女が笑い、彼が少し困ったように相槌を打つやりとりを繰り広げながら。

ほんのり同じ香りがするふたりが外に出てからホンザがへえ、と腕組をして何やらうんうん頷いているのに対し。馬(チョコボ)の世話を子どもたちに教えていたテオドールはちょっと照れたように頬を搔いていたとか。


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