メモと小ネタ帳
違い(ほんのりクライヴ→ジル)
2024/11/08 22:44FF16
身体のつくりが違うというのは理解しているつもりだった。
母にとっては出来損ないなのだと産まれた時から見放されていて。
弟が生まれてからそれは取り巻きの貴族たちの振る舞いからもはっきりとした。
もっともジョシュアに向けらえている母の感情は高貴な者だけが産み出せた子―執着であり。それが自分を証しする存在であり意味なのだという言わばお飾りだ。
聡い弟はそれに気づいていながら期待に応えようと身体が弱いのに必死で。
せめて支えになろうと俺が守るのだと決めた。
君が来て間もない頃に感じた想いはそれとは違う。
寂しそうに微笑んだり会釈するばかりで。本当の意味での笑顔はきょうだいだと父上や弟がそう伝えても見せることはなく小さく頷くばかり。
大丈夫だと連れ出してからよく笑う様になってくれた。
稽古場で訓練に励む俺の様子をふたりがトルガルを連れて見に来てくれて。
母様の使いに嫌味程では無くても許可なく屋敷を抜けだしましたねと小言を言われジョシュアを連れ出そうとする。ジルとふたりでまずは迎えにきた相手に礼をし、マードック将軍がちょうど公子として護衛術を読んだばかりで学びに来たのですよと助けに入ってくれた。相手は母がするような軽蔑の視線で返してきたがまあ良いでしょう、さあ行きますよジョシュア様と引き離すように弟は連れて行かれた。ジョシュアは振り返ってまだ小さな手をそっと合図を送るように振ってくれた。足元を見ればトルガルが小さな尻尾を振ってそれに応えていた。
ジルがそっと様子を窺い気遣う様に俺を見つめる。後で稽古のことは話すさと視線で返すも後ろめたさは消しようがない。
母様には産まれてから一度も抱きしめられたことはない。侍女たちにも第一王子という立場ー公子ではなく騎士の道を選んだーがある為に赤子の頃に抱き上げてくれた彼女らは成長するにつれ尊んではくれるがどこか一歩引いた接し方だった。年下のジルとあの丘で過ごして以降仲良くなったのはごく自然のことといえばそうなのだろう。
2つ年上だったからか少し弟より背はあっても小さい子だと思っていたがだんだんと成長するにつれ侍女たちが語る可愛らしさが含まれてきたと確かにそう思う。市場で買い物に出た時にジルが手にするものも可愛らしいものか食堂を担当する使用人たちの為に果物やパンに目を良く通していた。そうした目線で語る内容は俺の視点とは違うから、何だか楽しかった。
小さい頃と違い手を取ったり繋いだりはしない。流石に、その、な…。
つくりが違うのだともう自覚している。分かっているからこそ、出来ない。
俺は君に相応しいのか、それが分からない。
「今は手を取ってくれるのね」
「君の想いが伝わるから。それと…」
「それと?」
「満たされる喜びがここにある」
母にとっては出来損ないなのだと産まれた時から見放されていて。
弟が生まれてからそれは取り巻きの貴族たちの振る舞いからもはっきりとした。
もっともジョシュアに向けらえている母の感情は高貴な者だけが産み出せた子―執着であり。それが自分を証しする存在であり意味なのだという言わばお飾りだ。
聡い弟はそれに気づいていながら期待に応えようと身体が弱いのに必死で。
せめて支えになろうと俺が守るのだと決めた。
君が来て間もない頃に感じた想いはそれとは違う。
寂しそうに微笑んだり会釈するばかりで。本当の意味での笑顔はきょうだいだと父上や弟がそう伝えても見せることはなく小さく頷くばかり。
大丈夫だと連れ出してからよく笑う様になってくれた。
稽古場で訓練に励む俺の様子をふたりがトルガルを連れて見に来てくれて。
母様の使いに嫌味程では無くても許可なく屋敷を抜けだしましたねと小言を言われジョシュアを連れ出そうとする。ジルとふたりでまずは迎えにきた相手に礼をし、マードック将軍がちょうど公子として護衛術を読んだばかりで学びに来たのですよと助けに入ってくれた。相手は母がするような軽蔑の視線で返してきたがまあ良いでしょう、さあ行きますよジョシュア様と引き離すように弟は連れて行かれた。ジョシュアは振り返ってまだ小さな手をそっと合図を送るように振ってくれた。足元を見ればトルガルが小さな尻尾を振ってそれに応えていた。
ジルがそっと様子を窺い気遣う様に俺を見つめる。後で稽古のことは話すさと視線で返すも後ろめたさは消しようがない。
母様には産まれてから一度も抱きしめられたことはない。侍女たちにも第一王子という立場ー公子ではなく騎士の道を選んだーがある為に赤子の頃に抱き上げてくれた彼女らは成長するにつれ尊んではくれるがどこか一歩引いた接し方だった。年下のジルとあの丘で過ごして以降仲良くなったのはごく自然のことといえばそうなのだろう。
2つ年上だったからか少し弟より背はあっても小さい子だと思っていたがだんだんと成長するにつれ侍女たちが語る可愛らしさが含まれてきたと確かにそう思う。市場で買い物に出た時にジルが手にするものも可愛らしいものか食堂を担当する使用人たちの為に果物やパンに目を良く通していた。そうした目線で語る内容は俺の視点とは違うから、何だか楽しかった。
小さい頃と違い手を取ったり繋いだりはしない。流石に、その、な…。
つくりが違うのだともう自覚している。分かっているからこそ、出来ない。
俺は君に相応しいのか、それが分からない。
「今は手を取ってくれるのね」
「君の想いが伝わるから。それと…」
「それと?」
「満たされる喜びがここにある」