メモと小ネタ帳

手と手(クライヴとジル)

2024/10/25 00:09
FF16
よく手を取り合うように、彼の手の甲にそっと重ねるようになった。
誰かに言われた訳ではない。シドの前で誓いを立てたあの日を除いたら
ふたりきりの時にそうすることが多くなった。

小さい時はとても寂しそうな小さな背中を見せていた君の手を取って連れて行くことに戸惑いはなかった。
成長するにつれてきょうだいの間柄とはいえジョシュアと違い血が繋がっていない。馴れ馴れしくするものではない。
今日の稽古を見届けてくれたことに感謝を伝えてからなるべく俺たちの気持ちが沈まないように明るく前向きになれるように話を続けようとして。もう今日は遅いから休んだ方が良いと促がした。
ジルはおやすみクライヴとどこか寂しそうに微笑んで去っていく。
おやすみと、心の中で返した。

直接ではなかったとはいえ、剣を取り魔法を使って多くの命を奪った。
心の悲鳴を、悲しみを、謝ることも、痛みさえ押し殺しながら。
そうでないと誰かの命が奪われる。私はもう誰かの手を取れない。誰も私の手を取らないと。逃げ出したりも出来ないのだからせめてここで死のうとそれだけを考えていた。
あなたが生きていて。お互いに何があったか現実を知ってからは受け止めると手を重ねた。
彼もまた、望まない命令を果たす日々でそこから解かれたばかりなのに。
向き合わなければならない現実が押し寄せていた。

マザークリスタルが人を幸せにしていないヴァリスゼア大陸。
大部分の人たちは手を取り合わず、目の前にいるのは人なのに手を差し伸べることもなくただクリスタルにすがりつづけていた。
ずっとそれがこの大陸の“認識”であった。それを変えようとしているのだ。あちこちで戦争が起きていて、それでいて彼らは戦争をしに来た訳ではなかったはずだ。
痛みと苦しみは同時に起こっている。石化が広がった―同時に因縁を断ったのだからこれからは人として立ち上がる戦いだ。
そうした時だからこそまた手を重ねた。きゅっと。
想いが伝わる。想いを伝える。あなたと私の―。


ガブから声がかかり、ふと我に返った。己の手を握りしめ、その温かさは。君が人らしくなろうとしているという証。
まだ俺たちは歩み続けなければならない。俺たちの因縁の相手も残っている。


この手が行なってきたことは、あいつらの手の平でしかなかった。
それでも君は俺の手を取る。



あなたの手を取る。あなたは昔からなにひとつ変わらないでいてくれるのだと。
あなたが人だから、あなただから。
いつだってだれかに目を向けて守って救おうとしていたから…だからこそ私も人でいたい、そう思っていた。
君の白い手を取る。感謝と、敬愛と、愛おしさを込めて。
他でもない君だけなのだと。こうして俺の手を取ってくれるのも、手を取りたいと俺自身が願うのも。
その手に口づけを送ると一瞬戸惑ったようでその意味を受け入れていき。涙と共に溢れてくる想いがそこにある。
そしてしっかりと俺の背中へ両手を回してお互いの温かさを確かめ合う。

手と手を取り合ってそこから伝わる愛を注ぐ。
そうして、満たされていく。







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