メモと小ネタ帳

その音(FF16:クラジル)

2024/06/28 00:43
FF16
※影の海岸のカットシーンの様に、雰囲気は大人向けなふたり。
所謂行為的なものではありません。


沛然たる天から降り注ぐ水の珠は大地を割るのではないかと錯覚するほど轟音を立てていた。
異変が起きてからそれほど時が経っておらず、果たしてこの空の下で恵の雨は降るのだろうかとヴァリスゼアの人々の不安が別の意味でも搔き立てられていた。これほどの激しい雨はここ何十年も起きてはいなかったからだ。
かつては召喚獣同士の戦いが起きれば、大地のエーテルは歪み、地形そのものが大きく変動をするーここの所それは連日に起きているマザークリスタル消滅と共にエーテル溜まりが生じ、ますますこの大陸が混沌の焦土と化し終末へと向かっているのだと人々は怯えていた。

風の大陸の中央黒の一帯ベンヌ湖に浮かぶ拠点ーインビンシブルに戻ろうとしていた道中この強烈な雨を避ける為にすぐに見つけた洞窟の最奥で一組の男女がお互いに寄り添っていた。
洞窟付近では大地を叩きつけるかのように落ちた水の珠は霧となり、付近を濡らす。これ以上濡れない様に身を寄せることにした。
今はまだ昼間なのだろう、それでも陰るこの場所でフェニックスの尾が熱くはない神々しい輝きを宿す。
インビンシブルで合流する予定だった弟の方も近くに相棒である狼と共にいて無事なのだと分かった。
逞しい身体だけでなく傍に立てかけてある大剣は男の手練れた戦歴を、その精悍な顔つきがまるで何かの運命に抗うかのような意思の強さを、そしてどこか優しさと憂いを含んだ青い瞳はこれまでの出来事を受け入れてきた強さを示していた。濡れた黒髪を少し乱暴に拭いそして静かに雨の音に耳を傾けている。
この世界に起きている異変と混沌を受け止めているのだ。
女の方はしなやかな白い肌に白銀の長い髪が非常にマッチしており類まれな美貌と麗しさがそこだけ周囲を明るく見せていた。
凛とした芯の強さもその透き通るような青い瞳に映し出される。
外の様子が気になるのか身じろぎしそして小さくくしゃみをした。
彼女が元の体勢に戻るより前に彼は己の腕の中に再び抱き込む。

「冷えるぞ」
「…雨、止まないわね」

今は休むことを考えようとその言葉に彼女は引き寄せられた胸元で彼の鼓動を子守歌代わりに聴きながら静かに目を閉じた。不思議と雨の音が遠ざかっていく。
魔法を使えず、今はただふたりだけの時を過ごしお互いに寄り添って生きている意味についてはきっと考えるまでもない。

早まっていく彼と自分の鼓動の心地よさを全身で感じながら静かに眠りにつくことにした。


※影の海岸にて(黒の一帯)魔法が使えないそこにいるのはただのふたりの男女。という意味とテーマ性があるカットシーンもジルのテーマ曲アレンジも含めて好きなのです。



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