メモと小ネタ帳

その名(アナベラとシルヴェストル)

2024/09/25 21:38
FF16
待望の、切望の、そして私の血筋から生まれた男の子。
この子こそまさに望んだ存在。

“ああ神様は私の願いをかなえて下さったのだわ”
神から救いが来たという意味を込めてジョシュアと名付けた。

メティアに祈る必要などない。私の血筋から、私のお腹から。
産まれてくるのだと分かっていたのだから。
あの出来損ないはさてどうしてくれようか。道が険しくなろうと崖のように厳しくてもお前なら越えられるとあれにエルウィンはクライヴと名付けた。

ジョシュアが産まれて間もなくエルウィンがいつまで第一王子を母親として王妃として放棄しておくのかと煩わしく話し合いを持ち掛けて来た。
全くままならない夫だ。
“クライヴに公子ではなく騎士しての道を歩まないかと話した”
“あれは身体は丈夫ね。いいでしょう。せめてここにいるならそれくらいは役に立たなければ”
“アナベラ、ふたりとも私にとってはかけがえのない息子たちだ。身体の弱い弟を支えたいとクライヴは切実にそう申し出てくれたのだ。兄と弟が互いに協力しあい支え合い人と人へと向き合う。私とてバイロンとそのようにしてきたのだぞ”

本当にエルウィン様との子なのだろうか―。
アナベラ様が従姉妹だったからこそ押し切ったとも聞いている。
実はどこか別の者と―。
クライヴ様はあれほど健康でいらっしゃるのにな。ますますもって疑わしい。

ああ…どいつもこいつも、煩わしい。

“あれがそう決めたのならどうぞご勝手に。私は戦いには出ませんから。ジョシュアは身体が弱いのです。そちらの世話に貴族たちや侍女たちとかかりっきりになります。あなたも分かっておられるでしょう。フェニックスを宿している以上ジョシュアが公主となる。それは揺るぎない事実。
では失礼するわね、エルウィン”

そう、エルウィンの血筋からではない、私の血筋からフェニックスは来たのだ。手放すつもりはない。

そう、ねー…。
もし万が一フェニックスがジョシュアから消え去るというのであれば私が生み出せばそれで良い。
その時はそう他のドミナントを産み出せる血筋の者と結ばれよう。
そうして私は唯一無二の存在となるのだ。



下賤の女から産まれたとすぐに分かった。正妃は子を未だ生さない。
名前など必要ないのだとそう思っていた。
あれは貴族のものか、騎士か。それとも賢人たちにひとりだったか。
そのことを告げられるまで世界がぼんやりとしていた。

“産まれた御子様はバハムートを宿されています”
1年ほど名も与えず…厳密にはあれの母親は与えていたのであろう、知ることも無く名付ける必要もないとそう考えていた。
その言葉が告げられてから世界が輪郭を持ち始めた―くっきりとしたのではない。
稲妻が轟き雷が落ちたように天命を受けたようにこの耳が、目が、身体が打たれた。目まぐるしく思考が働き始めたのだ。
側近に合図を送り、密かに告げた。
「“ディオン”を連れてこい」
「…は?」
「産まれた子供を連れてくるのだ。母親の生死は問わん」
天高く舞う竜の中の竜王、バハムート。
どこから来たのかも分からない下賤の女の血が混じっている、それでいて確かにバハムートのドミナントの血筋が自らにあったのだと証明する、息子。

“天と地の子”

それが私の子の名だとはっきりと告げると側近は敬礼をし、すぐさま向かって行く。
「ディオンがバハムートとなったのか…」
後ろ盾は得た。よって正妃ももはや不要だ。
あとはこの黄昏の大陸に置いて民を生き残らせ。
そしてザンブレクの血筋ーバハムートこそがもっとも優れた存在であるのだと風の大陸、灰の大陸に刻み込むことにしよう。
神皇は王座に腰を掛けながら静かに算段をつけ始めた。




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