メモと小ネタ帳

向き合う

2024/09/11 19:53
FF16
・向き合う(バイロン叔父さんとクライヴ+ジル)


鉄王国へと向かう前―。港でようやく心情を吐露出来たジルを屋敷の中で先に休ませて、静かに扉を閉めて出て来たクライヴをバイロンが近づいて声を掛ける。

バイロン「クライヴよ、彼女の様子は…」
クライヴ「落ち着いて眠りについています」
バイロン「そうか。気になっていたので良かった。わしがアナベラのことをあれは獣のようだと語ったときから様子がおかしかった…」
クライヴ「……ここへ来る5年前まで俺たちは離れ離れで…とても誰かに話せるような生き方は出来ていなかった。
目は合わさない言葉も発せない、意志など必要ない。与られた任務…命令だけをこなす。それだけの日々だった」
バイロン「ジョシュアだけでなく、お前も彼女もドミナントだったというのは流石に驚いたぞ。イフリートとやらは正直わしにも良く分からん。
シヴァに関しては…クライヴよ、お前の祖父の時代について兄上から聞いておるな?」
クライヴ「はい。当時はシヴァの勝利だったと」
バイロン「…だが北部は内部の分裂で兄上の時代に平定された。当時のシヴァのドミナントも姿を消し…民の為にと立ち上がった女性だったとわしは聞いた」
クライヴ「…」
バイロン「…北部はもう国としては存在していない。彼女が来るまでシヴァのドミナントも噂が真実なのか分からなかったが…これが現実だというのならわしは多いに悪党のお仲間として暴れさせてもらうぞ」
クライヴ「…叔父さん」
バイロン「さっきも伝えた通り、お前の癖は分かっておる」

お前には嘘をつく時に癖がある。
バイロンとしては照れ隠しで放った冗談のつもりだった。
真面目なふたりは思わず互いに向かい合いそうなのかと確認し合っていたが。
5年も無事なのだと連絡すら寄越さなかったのだから―そう出来なかった理由はきちんと受け入れている、兄上の魂が生きているのだとその証を今目の辺りにしている―少しくらい意地の悪さを見せても良いだろう?

クライヴ「ありがとうございます」
バイロン「その言葉、彼女にも伝えてやってくれ。さっきのお前たちの様子からお前に向き合い支えてくれているのだとはっきりと分かったからな」
クライヴ「もちろんです」
バイロン「昔から素直だったな、お前もジョシュアも。変わらない可愛い甥っ子たちだ。
それと彼女とはそれほど交友はなかったわしだが、あの子も変わらずお前に対してまっすぐなのだな」
振り返ってジルが休んでいる部屋の扉を眺めるクライヴ。
バイロン「そうした子が…望まない戦いに連れ出される日々だったこの世界はわしとておかしいと思う。アナベラの圧政が怖くてこれまでウェイドたちを裏から支えるくらいだったが…」
向き合うべき時が来たのだとバイロンはそう語る。
クライヴ「マザークリスタルドレイクブレスを破壊後俺たちはすぐに鉄王国を脱出します。
まだ捕虜として捕らえられているロザリアの民を受け入れる準備をお願い出来ますか」
バイロン「おお、そうだな。まずは目の前のことからだ」
クライヴに軽く手を上げ、バイロンは一二歩進んだ後―。
バイロン「そうだ、クライヴ。知っておるか」
可愛い甥っ子をからかう昔よく見た声の調子とその楽しそうなバイロンのその笑みに。
クライヴ「どうかしたんですか」
真面目に答えるクライヴだったが。
バイロン「シヴァは大変美しい女性で多くの者が見惚れていたとも聞いた」
何かを察しているのか腕を組みながらこの叔父はにこにこと笑いながらそう教えてくれた。
クライヴ「…はい」
バイロン「見惚れても構わんのだぞ」
返事を待つこともなく後のことはわしに任せなさいとどこか軽い足取りで去っていく恰幅の良い叔父の姿を見送ってから、彼は軽くため息を吐いて。

(民の為にと立ち上がった―)

叔父のその言葉を思い返す。ジルもドミナントとして覚醒したのなら誰かの為にとそう願っていたはずだ。
今はその力を自分達へ―自分を守る為に使ってくれている。
そして今度は彼女自身の過去と因縁へ向き合う為に。

共に行き、共に戦う。
そしてその後は再び―。

(支えるだけじゃない、君と向き合おう)

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