テキスト(他CSゲーム)


境(Kena)


日差しを浴びる。
ざあっと風が木々と葉を揺らす。
川のせせらぎと森の香り。虫たちは今日も住まいの為に巣をつくり花の蜜を集め、ある時は捕食者と化す。蜜を集めるときに花粉が舞いそれがこの近くにある村人たちのための収穫の実となっていたのだ。

彼らは還ったのだ、あるべきところへ見失わないようにと祈り―瞑想を捧げる。
ROTたちが静かにKena(ケーナ)を見守っている。

人目のつかぬ場所でというより悲劇に見舞われた村の人々の為に彼女は瞑想を行なっている。その内のひとり、弟たちを心から愛し彼らの為に村を出た少年、タローは囚われていた。還ることが出来ない兄と弟たち。
とどまっていた弟たちの願いを、そして解放を目指してタローと戦った…いいえ、これは浄化だ。
祠のそばで彼が身に付けていた仮面を被り彼の過去を視た。修行に励みただ弟たちの為に進んでいた。

嵐の日あの子たちは行方不明になった。
タローはふたりの名を叫ぶ、走る、走る…兄の名を呼ぶ弟たちの姿はなかった。


俺が、俺が…。
タロー、私はあなたの弟たちに導かれてここに来たの。あなたのせいじゃない。


まず自分の鼻の頭を見つめて心を落ち着かせた。
思念を抑制して“わたし”と同化する…
寂静を得、その極致を経て解放を…かつ“わたし”と同化する。

雑念を捨てていく中で彼らのことを覚えている、それを忘れたりはしない“私”がいる。
対象と自我のいずれかも意識はしないのが瞑想だ。
それでいて、私は捨てるべきではないと彼らの想いを自分の中に育んでいた。


“Kena(ケーナ)、村の山まで案内できなくてごめんね”
“いいのよ。さあ、行きなさい”


悲劇は変えられない。だからこその解放と浄化を目指す、ROTたちと共に。
浄化は再び光と彼らの想いがそこにあったのだと蘇った美しい森を再生させていく。

まだこの旅ははじまりでしかない。
私はすべての悲劇を知ってそして立ち向かわなければならない。

村の山を目指す。“わたし”、と同化を望むものがそこにある。
私とわたしの境—魂の目に現れこの舌で踊るのだろうか。

そうであっても怯むことはない。彼らのあの笑顔がそれを伝えてくれる。

Kenaは弓矢の形を取り、手にした力をまたすっとしまい込んで今度は村の反対側にROTたちにキスを送ってから向かった。木彫りの職人がそこに待っている。

悲劇が起きた小さな村を覆う大自然は来るものを時には受け入れ、時には飲み込む。
自我を手放すかしがらみと思えたとしても得るのか。


スピリットガイド、Kena(ケーナ)の旅路はまだ続く。

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