FF16小ネタ集


・その違い(ロズ兄弟・ほんのりクライヴ→ジル)

少年期ー。
母であるアナベラの影響故に何かと周囲からも離されたり距離を置かれがちな兄と弟であったが。
屋敷内ではジョシュアとジルは周囲の目を上手くかいくぐってクライヴの部屋に遊びに来て色々な話をするのを楽しみにしていた。

ある夜。ジルは侍女たちの為に針子にいそしんでいたので先に眠りについていた。
クライヴは備え付けの椅子に腰かけ。ジョシュアはすとんと寝床に座り込んでいた。
クライヴ「俺がマードック将軍と蛮族の討伐に出ている間、ふたりとも大丈夫だったか。何か困ったことはなかったか」
ジョシュア「うん、大丈夫だったよ。ああ、そうだ。気づいたことがあるのだけど」
クライヴ「どうした」
ジョシュア「ジル(女の子)は柔らかいんだね」
クライヴ「………何?」
ジョシュア「トルガルがふかふかしているのは僕も抱えるから知っていたのだけど」
クライヴ「…いや、ちょっと待ってくれ。状況が」
ジョシュア「どうして慌てているの。中庭でトルガルを抱っこしていたジルが転びそうになったから、しっかりと受け止めただけだよ」
クライヴ「そうか…。いや、お前も剣の稽古を続けているだけはあるな。ジルが怪我をしないで済んで良かったよ」
(ジョシュアの方がしっかりしているかもな…)

※クライヴは思春期に入っていて。ジョシュアは本で読んだ知識から本当にそうなのだと理解している感じです。

・お手伝い(ロズ兄弟+ジルちゃん)

ジルがダブアンドクラウンのカウンターにて腰掛けながらモリーとメイヴとちょっとした雑談を楽しんでいる。
その手には小さなナイフを持って🍎や🥕の皮を向いている。
この調理場では出た野菜くずや皮はもちろんそのまま捨てずに植物園へ持って行き肥料へとするのだ。
食べる前も食べた後も何一つ無駄にはしない。

彼女のその後姿を兄弟ふたりでテーブルについて静かに見届けながら—。

ジョシュア(小声で)「兄さん、見て」
クライヴ(静かに)「ああ…。そうだ、いい考えがある。ジョシュアがニンジンを克服出来るようにすりおろしてもらって飲み物にするか」
少しムッとしてそういう意味ではないでしょうと視線を送る弟に対し。
分かっているさと兄は口角を少し上げて。

(少し懐かしいと思った。ロザリスで侍女たちとあのように僕らの為に動いてくれていたから)
歴史を終え寂れていく首都を直接目にすることはなかった弟は過去を思い起こし。
(人らしくと何度も君と語り合ってきた。そして人へと先に戻った君はこうして俺たちの為に動いてくれている)
彼女と心の繋がりも持てた兄の方は紡がれて来た想いとその想い人とこれからのことを思い浮かべる。
兄弟そろって向かい合ってから再びその後ろ姿を見守ることにした。

過去と現在、そして未来への想いを兄弟ふたりそれぞれ紡ぎながら。


・普通(ジョシュア)

ジョシュアが目覚めて正式に拠点のメンバーとなってからー。
相手の狙いがクライヴだと気づきこれからのことを話し合った3人。ヨ―テが待つタボールへ向かう準備に取り掛かることにした。
まずは拠点の皆と挨拶を交わしハルポクラテス、図書館へと弟を案内するクライヴ。
入口付近の本棚にあるとある表題に気づくジョシュア。
ジョシュア「これはフェニックスの…」
クライヴ「ああ、お前が生きていると知って…各地を回りながらヴァリスゼアの現実をジルとこの目にしてきた。そうした中で見つけたんだ」
ジル「あなたに必ず会いに行く。そうふたりで決めたの」
ふたりに穏やかに視線を向けてからおとぎ話が書かれているその本を手にして小さめなテーブルと椅子に腰かけて開いてみる。
クライヴも隣に腰掛けてジョシュアのその様子を眺める。
ジルがそのやりとりを嬉しそうに見守っていたー。

部屋の外から治療に関してある植物の本を取ろうとしていたロドリグの姿もそこにあった。
ロドリグ(タルヤさんも広がりつつある石化のことで心配していたけれど鍛えていたのかな。彼が結構動き回れそうで良かった。
それにしても再会出来て間もないのに今までずっと一緒に居たような雰囲気だな…)
それが彼ら3人にとって普通のことだったのだろう。
ロドリグ(まだ何かを成した訳ではないけれど)

―良かったですね、クライヴ。

ジョシュアは考えていた。フェニックスに関する書物はこうしてロザリアの歴史と共に歩んできたものも含めて多く残されている。
しかし、今隣にいてくれる兄がその身に降ろすイフリートに関してはヴァリスゼア各地を自身も回って来たのだが何も残っていない。分かっているのは兄が狙われている理由もまたイフリートなのだと。
他のドミナントの力を吸収して今その力は俺にあると兄はそう語った。ディオンの過去もそれによって視たのだと。
あくまで吸収であり降ろせる訳ではない。力を失ったとしても宿主そのものの体に変化が起きている影響で顕現は自らに宿るエーテルによって己の意思で引き起こし黒の一帯の中であったとしても可能なのだ。
ラムウを宿していた男と共に過ごしたかつての拠点はタイタンを宿す男によってそうして失われたとクライヴとジルが教えてくれた。ドミナントに関しては初めて顕現したあの日から僕だけが火の召喚獣なのだとそう覚悟を決めていた。
(そうすれば、兄さんのとの約束を守れると思っていたから)
あの日の目覚め以来―兄本人の意識もなかったのだ…激昂したまま顕現をしたルサージュ卿と同じく―何も知らないまま生きて来たとそう話してくれた。
ドミナントに関しては突如シヴァとして覚醒したジルも同じなのだろう。より詳しいのは自分だ。
それは普通の人ではない。
人としての生き方から離れるとしても…教団の宗主になると受け入れそして真実を探す為に動くと決めた。
モースの書物を常に手にして。おとぎ話では神々しいまでに周囲を照らし出しそして再生の炎をその身に纏う召喚獣として描かれていた。
普通の少年として生きていける訳ではないのだと生まれ落ちたときからもう、ずっと、そう父や母、貴族たちや兵士の皆の接し方…民からも感じていた。皆フェニックスの力だけをあてにしていて。僕は…―。
“兄さんにとって僕は何-…?”
口には出せなかったが小さい頃から時折。そうした疑問を心に浮かばせて。心の中で尋ねていた。
兄弟で並んで座りながら王侯貴族のみに与えられる課題を共にこなしながら。隣にいる兄がこう答えてくれているような感覚に包まれていたー。
“弟だ”
今も隣で見守ってくれている兄からはその気配を感じている。もっとつい最近だって。そう感じられたのは自治領でしっかりと抱きしめられたあの時。
“生きてくれていた、やっと会えた。”
…僕も同じだったから。
これからタボールに向かう。3人でトルガルを連れて旅したいなと小さい頃に思っていたことが実現するのだ。
真面目な兄のことだから遊びに行く訳ではないとそう答えるだろうけれど。そしてジルが傍で小さい時からそうしてくれていたみたいに微笑んでくれるのだ。
それが僕らにとって普通だったのだから。




拠点にジョシュアが合流するようになって数十日後―。
クライヴ「相変わらずニンジンは苦手か、ダリミルでも残していたな」
ジョシュア「他の野菜で上手く栄養とっているよ」
ジル「小さい時はクライヴのお皿にそっと皆に気づかれないようにのっけていたわね」
クライヴ「…さすがに今はもうしないよな?」
ジョシュア「さすがにね。ヨーテに頼んで最初からよけてもらうようにしているよ」
クライヴ「普通は克服しようとするものだろう」
ジョシュア「その代わり兄さんが無茶ばかりしないように僕も役割分担させてもらっている。兄さんだって普通ならもっと他の人を頼るべきだよ」
クライヴ「それは俺たちでないと出来ない任務も」
ジョシュア「そうやってすぐ何でも背負おうとするの、本当に変わっていないね。
僕はともかくジルや皆に心配ばかりかけていたでしょう」


オットー「きちんとあいつに口を出してくれるのが増えて助かったが…あいつら昔からああだったのか」
ジル「屋敷に居る時は大人しかったわ。今の方がふたりともぶつかり合っていると思う。でもそれが普通なのよね」



・夢を見る(ジル)


ジョシュアを守る、それが俺の使命だった。生き残ってひとりの間は復讐を遂げることばかり…それだけしか残されていないとそう囚われていたんだ。現実と真実を知ってからは思考と歩みを。止まるな、動けとそう生きて行こうと決めた。

兄さんが宿すべきだったとそう思った。それが叶わないならお互いに支えながらこの国の人たちが確かに好きだったから。守ろうと決めた。
目覚めて真実を知ってからはー守ってくれたように今度はそうあなたが僕に誓ってくれたように僕の方から動くんだとそうして歩み出した。

産まれたときから私の価値について周囲の人々は常に話し合っていて。何かを言う事も誰かに伝えることも出来なかった。
それはロザリアに来てからでも同じで。和平として差し出されたのだからせめて役には立たないと…そう分かっていても何をすべきなのか見えて来ない。本を開いてせめて誰か…何かとお役に立てますようにと窓際で静かにしているとあの日にクライヴが声を掛けてくれて。手を引いてどこへ行くのかあなたは何も言わずあの丘へと連れて行ってくれた。その日からあなたとジョシュアを支えようと決めたの。
離れた年月は思い出したくもない日々だった。私自身に価値はない。私は存在すらしていない。穢れた獣。そう扱われて来たから。
あなたの姿を再び目にして。そして前に進もうとするあなたを…もうあの頃の私はいないけれど。それでも支えよう、そう思った。心のどこかで違和感を…頭で考えて心から出ていないものを口にしながら。
再会してからは幾度となく傍で寄り添った。その度に鼓動を感じる。心が動いている。ああ、でもそれだけではだめなの。ずっと一緒に居るにはそれだけではこの世界では叶わない。あなたは人を見つめて見出す。私は人でいたい。

ジルは小さい時何になりたかったの?とテトとクロが本を図書館へ返すお手伝いの帰りにお茶を飲んでひと息ついているジルにそう尋ねてくれた。
「ふたりはなりたいものがあるの?」
「ハルポクラテスがよくお話ししてくれる、しんわのばしょを見に行きたい。たびするひとっていうのかな、それ」
「おとうさんとおかあさんのこきょうはどんなところが見に行きたい。それで本を書いたり絵を描いたりするの」
「いいわね…。そうなれるように私も願っているわ」
「うん!」
「ありがとう、ジル」

外の世界についてはハルポクラテスだけでなくシドからも少し聞いていた。だからこそ彼らが真剣に語るヴァリスゼアに今起きている問題はより現実味が増し事態の深刻さに関してこの身に染みる。
子どもの頃はロザリアからそう気軽に出ることもないのだから知ることはないだろうとそう思ったりもしていた。
外大陸に行くことも無いのだと。
ミドがこの大陸の人々が救われるためには逃れなければならないとシドがそう考えていたことに気づいていた為だろう、クライヴにそう話してくれた。ジョシュアはモースの書物を通して外大陸の人物だったからこそより俯瞰しながらこの大陸の真実を見極めようとしていたのだろうとそう静かに語っていた。
クライヴはブラックソーンやオーガスト達を通してこの大陸にはない技法の武器に関心を示していた。
彼が戦いの渦中にあるのは何もヴァリスゼア大陸全体が抱えている認識だけでない。彼が運命の支配下に産み落とされたからだ。
それでも、最後まで人であると、ジョシュアとジルを通して。ふたりを大切に抱きしめながら彼は語ってくれた。
外大陸はその殆どが黒の一帯に沈んでいると真実も知った。
けれど私たちはその中でも人が人らしく生きられる場所を創り出していた。ヨーテがある日語ってくれた。
ジョシュア様と黒の一帯を共に巡っている間はどこか諦めていて冷めた突き放した見方を私はしていました、インビンシブルに一緒に来て欲しいと言われた時もお世話が出来ればそれが私の役目となるとそう思っていました。
あの方が語られた通り、ここに来て…その意味を悟ったのです。

拠点へ戻って来たクライヴの右手をジルは両手で包み込む。
ハルポクラテスがいつか彼が剣ではなく筆を取る日が来て欲しいと彼に語ったこと。ジョシュアがモースの様に才があると見抜きそれでいて彼へ託そうとしているもの。
ふたりで共に目にして来たことを心の中からあなたそのものから来るものを。外大陸でも同じ様に目にしてそして綴りたい。私の想いをあなたに伝えたい。あなたが注いでくれてきたものに愛を込めて。

―ジルは何になりたかったの?

ふたりを支えるのが私の役割だとそう思っていた。

今はなりたいものがはっきりとしている。あなたともうひとつの約束をして。ふたりで外大陸でもちゃんと人が生きていく姿をこの目にして。

そしてあなたと人として共に生きているのだとそう心から感じていたい。


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