テキスト(FF16)
FFシリーズの中でもとくに好きな男性と女性の組み合わせ。略し方はクラジルとなりますかね。
素直に好きな所を語っております。当方英語版日本語字幕で初回プレイをしましたのでそちらで気づいたことや、ちょっとした考察を入り混じったものも。
EDの示唆についても触れています。大っぴらではありませんが、ご注意下さい。
・再会したばかりのふたり(青年期)
クライヴがジルにイーストプールで過ごした夜に月を見上げていた彼女から12歳の時の彼女のことを思い出したことやフェニックスゲートにてそういう所は昔から変わらないな、と語った場面は昔から好意を抱いていた彼女に対して安心感や信頼感を持っていた故ですね。
よく言われる思い出が綺麗に残っている状況に近いものです。
ジルが一旦シドの拠点から戻る時に伏し目からまっすぐ彼を見つめたり私は変わったわ、と告げたりしたのは罪の意識と倒れる直前に心が限界であったために彼が知っているような昔の自分ではないと否定したかったのでしょう。
実際はそうでありたいと思っていたのと、クライヴの傍にいる為にはそうした自分だけではいけないと考えていたのが半々な青年期時代。
ジルもジルで彼に縋っているように思えました。そう見えるのは私が女性の視点で見ているからかもですが(笑)男性プレイヤーの方だと兵器としてずっと扱われていて辛かったはずなのに健気に支えようとしていると捉えられるのでしょうか。それもある意味正解だと思います。ジルは場所や立場関係なく彼の傍にいられるなら自分でいられるという感じでしょうから。
少年期のロザリスでは公式サイトにある通りきょうだいのような間柄で、シドの拠点にいる時はどう自己紹介していたのでしょうかね。テーマ的に保護されたベアラーとドミナントなのでしょうか。タルヤさんにはすっかりお見通しな仲ではありましたがあの時点では恋人とは言い難いし。新しい拠点以降で正式に恋人と呼べる仲になったのは影の海岸にて誓い合った後でしたから。
・潜伏しながらの5年間の変化
しばらくはマザークリスタルを破壊する同士で心許せる仲間であり、他の協力者との異なる点は拠点にいるかそれぞれの場所で活動するかの違い。過去を共有出来るという仲ではありますが、そこまで長い期間ではなかったので。
ジルが単独で動かず、調子を崩した時とか理由がある以外でクライヴの傍にずっと補うように居るのが好きなのですよね。ドミナント同士だからという戦力的に説得力があるのももちろんですが、子どもの頃は戦いには出られないのとずっと離れ離れだったからこそ、共に居るのだと彼女の強い意思と想いが感じられて。クライヴ自身は本来ジルが愛情深い人だと知っているので戦いに連れて行くのは本意ではないと彼から伝わってきますが。
クライヴの方は寄り添うようにそっと手を差し伸べたり、背中に手を回して支えるのだと想いを伝えたり、真面目でそれでいてちょっとリードするような仕草が好きです。彼の性格を考えるとお相手はある程度主導権を握れる方が合っているのだろうな。
(というかFFの主人公はそうしたタイプが多いですね(笑))
・ジルはいつからクライヴのことがすきだったのか
白銀の君のサイドクエストを終えてみると、ジルは子ども(本編開始は12歳)の頃からクライヴのことが好きだったと明かされます。
この時は人としてとか、いっしょにいて安心出来る人…もしくは自分という存在をきちんと見ていてくれていたという意味で。
本格的に異性として意識しはじめたのは再会してからなのかな、と思ったり。
アルティマニアによると積年の想いから結ばれる、と解説があったので子どもの頃からずっと好きだった(侍女たちにはクライヴ様と姫様の仲のよろしいこと!とふたりの仲の良さを指摘する場面も)ーその時から初恋のような淡い想いを抱いていた、でも良いのですが。
彼女はずっと兵器として扱われてきた時間がロザリスで過ごした時より長いのでどこかでそうした想いを遠ざけていたのでは。
再会してから共に行動するようになっても自分の想い自体があやふやなところがありそうです。私は変わったわ、とはっきりと発言している辺り感情を取り戻すまで時間が掛かったと言いますか。
例を挙げると新しい拠点でクライヴとジルはマザークリスタル破壊の為に再び誓い合い、その時にオットーが入ってきて邪魔をしたのではないか?とすまなそうに告げる訳ですがジルの反応は照れた様子はなくどこかぎこちなさが伴う鈍さ(※1)。
ドレイクブレス破壊の為に鉄王国に行くのだと決まってその時になってからようやく私は人でいたい、あなたと一緒にいる為に…とクライヴに心情を吐露しています。
※1 マザークリスタルが人を幸せにしていないという発言は風の大陸内を見回ってからのジルのセリフで、この時に彼女は捕らえられていた鉄王国のことも当然思い浮かべていたでしょうから、淡泊なのもそうなりますね。
実際5年間一緒にいた間にふたりの恋に大きな進展はないのですよね。港にて心情を吐露して、因縁を断ってからようやく進めたのだと。
拘束されたまま兵器として自由がなかった13年間、そこから解かれた直後は誰かに自ら触れにいくのは怖いという感情はあったでしょうにクライヴの言葉を受け止めその手を取る彼女はとても勇気のある女性だなあと思ったのと同時に弟の敵討ちがそれまでの生きていた動機であり自身の時も止っていたクライヴが世界を見始めたと同じ様に彼女も少しずつ心の面でも行動の面においても動くことが出来るようになったのだと。
クライヴもクライヴで15歳の時はジルちゃんの肩に触れようとして留めていましたが、壮年期(33歳)にはそっと背中に手を回して俺が支える、とはっきりと言えるまでになっていますね。
アインヘリアルにて捕らえられていた時、因縁を断ったとはいえジルは兵器として連れ出されそうしてまた檻へと押し込められていく過去を思い出したりもしたのでは…と心が痛くなりました。過去そのものが消えるわけではないですから。
クライヴが助けに来て、正面から力強く抱きしめてもらってすごくすごく安心したでしょうね。
PS5というプラットフォームに入り表現の豊かさが増えたのもあり、リアル寄りになったからこそ相手を・お互いを大切に思っていることを率直に言葉に出しそして行動にもきちんと示す、この辺りもクラジルの好きなところであります。
・好きなカットシーンなどを
鉄王国へ行く前後はふたりの距離が縮まっていく全体の流れが好きで。あの辺りはジルの思いの丈を感じますね。ジルの告白とクライヴへの想いの強さが目立っているようで、クライヴの方はというとフォーカスモードで見てみると押し寄せる溶岩を半顕現化で止めるジルに見惚れている表情をしていました(笑)
何気にお気に入りなのはクライヴが飲み水入れている皮袋を取り出してジルが喉の渇きを潤すシーンです。躊躇がない間接キスといいますか(笑)
飲み水は拠点にてミドの浄化槽のを運び出しているのでしょうかね。その方が戦いが終わったらブラックソーンのふいごと同じく世界中に設置する説得力増しますし。スリー・リーズ湿地帯にあった水道橋も工事を再開させて飲み水確保していく手段を立てていく為に用いられるのでしょう。
少年期にロザリスの城下町へいっしょに買い物へ出てトルガルが飛び出して...の昔話に花を咲かせるやり取りがありましたが、果物とかお茶菓子は半分こ(ジョシュアもいるなら3等分、あとはトルガルのおやつ)し合いながら過ごしていたのだと、すぐ思い浮かびました。英語版だとクライヴは祝賀会の時、俺はケーキとエールが苦手だと10歳のジョシュアくんに語るので主に甘いものはジルちゃんの為に買っていたのかもですが(笑)
フーゴの襲撃があったロザリスへ向かう決意をするクライヴにジルが焦ったようにあなたが無理をしないように着いていく旨を伝えますよね。あの辺りでもともと両想いだったのがキス寸止めになりましたがはっきり自覚したふたり、ジルのちょっとしたわがままというか人らしさを感じられて好きです。フーゴはフーゴでふたりの仲を見抜き、それに基づいた罠も仕掛けて来て。アルティマニアの年表だとフーゴがベネディクタを愛するようになった期間は8年、クライヴとジルが一緒に居られた(居る)期間は11年ですが、意識しはじめたと考えるならちょうど8年位かと。自分も王になれない(なったとしてもベネディクタはもう居ない)から王座を破壊する場面も合わせて、因縁はここにもあったのでは。
アインヘリアルから影の海岸での一連の流れはクライヴからジルへの想いの強さを感じる流れです。
ジルは無事だ(※2)と周りを落ち着かせる伝え方をしてからの檻の中へ閉じ込められた彼女を力一杯抱きしめる場面。大切なひとへの彼の愛の深さ。
※2 シヴァの力を吸収されたジルにジョシュアが近づいてからそのことに気づけたのに対し、クライヴは離れていても様子が分かることから既にこの時点でかなり人から離れてしまっている。影の海岸でふたりっきり(+一匹)になった時に良い雰囲気になっている場合かと思われてそうですが(笑)離れていてもジョシュアが無事だと分かっていると。
私は発売前はこうであるべきだというイメージは作品やキャラクターには特に持たない(先入観がない)タイプの人間ですが、クライヴは想われるより想うタイプの人なのだろうか、とぼんやりと考えたことはありました。想いが強くてもひた隠しにしてあまり表には出さないタイプかも、と。責任感という面ではそうであって命の見方や大切な人たちへはしっかり行動に起こしていましたね。
これからの時代、想うだけでなくきちんと行動に起こすことが大事であり鍵となっていくのでしょう。
そして、影の海岸での誓い。
ジルの過去が回想シーンでずっと出てこなかったのはこの為だったのか、とすとんと腑に落ちました。ディオンの過去を視たのなら、当然 他のドミナントの過去も視ている訳で。
苦しんでいた他の吸収と異なりこの時は本当に穏やかで真剣な表情をしているのですよ、クライヴ。
(最後に過去を視ることになる相手はジョシュア...)
それも含めての業を背負う覚悟の誓い。
ジルの石化含めてこれ以上はもう持たないと察した面もあり、彼自身の彼女への甘えは(合わせて危険と禁断の道へ自らさらに飛び込んでいったのでジョシュアが怒るのも無理はありません。体格差考えるとよく吹っ飛ばせたな、と思ったのと同時にこうした反応が来るのだと予め受け止めていたのだとも考えました)両思いになったらENDでなくその後もしっかりとお互いを尊重している意味も含まれているのでしょう。
私がジルをジルちゃんと時々呼ぶのはこの時の涙を浮かべながらも幸福感に包まれている(そして命をかける戦いにもういっしょには行けないという切なさも)彼女の表情が12歳の頃トルガルのおててを振りながら頑張って、とクライヴを見送っていたあの時の彼女の表情と同じだからです。
本来優しくて愛情深いあの子と。
・月とメティアとジルの涙
月を見ていたの歌詞は米津さん曰くクライヴに幸せになって欲しくて描いたのだとご本人のインタビューから。
柳、とヴァリスゼアの世界には登場していない植物が出てきますが柳に雪折れなしという諺にある通り人間の業(私は16の作中内において人という言葉は相当用いられたのに人間の単語を使わなかった意味についてずっと考えています)を背負って突き進んでいく姿は悲劇であり同時に柔軟な受け入れ方、雪が積もっても折れないしなやかな強さをクライヴに見出していたのでしょうか。
ジルのテーマ曲は“MyStar”。
(歌詞の意味をまだ訳せていないのですが。Away等含めて訳したらこのサイトに載せます)
月の描写は作中においていたる所に差し込まれて行きます。彼らの出来事を見守っていた月は忠実な証人。太陽と対となる夜を支配させる為の小さいほうの天体。
ジルにとって少年期のクライヴと共に月を見上げたことが大切なひとときであったのはイーストプールにて一夜を過ごすときの様子からそれが分かります。願いは叶ったわ、と月の隣にあるメティアを視界に収めながら。自分が生きていた理由を知った瞬間。
彼女はニサ渓谷での戦いで倒れた時に涙を流し、それによってクライヴはジルだと気づいた。
人ではない、人形になった。私は獣だから。と語ることがあってもあの時も心まで失ったわけではないと示唆されている。離れ離れの間はふたりとも月を見上げることはなかったのだと考えています、想いそのものは捨てていなくても辛いから。方や敵討ちを果たすだけが目的、方や目的もなく命令されるまま命を奪っていた13年間。
潜伏しながらの5年間は幾度も月を見ていたのでしょうね。その方が壮年期に置いての月の描写が活きて来る。
ジルの視界には月と同じくメティアずっと映っていたのでしょう。願いが叶ったからこそもう会えないのだと思っていた彼と会えて箱庭内で幸せだった時とは異なり厳しい現実を乗り越えながらも一緒に居られたのだから。
クライヴにとってメティアそのものより、ジルの想いと願いがそこに乗っかっていることの方が重要な印象を受けました。ラスト付近のセリフも月に触れているので。影の海岸での誓いあったあの時と同じ月の輝きだったということかな。誓いの時にジルは涙を流していて、この時は幸福感に包まれているのだと限界を迎えていたあの時とは異なっているのだと分かります。
メティアが陰ってしまった時、ジルは最後自分の願いは叶わなかったのだと泣き崩れた訳ですが。この後の涙痕の表現は影の海岸で誓い合った時と同じです。
そして(これは英語版の白銀の君ではっきりと表現が出て来る)ふたりが誓い合った光が差す世界へと移り変わり、誓いが果たされてメティアに祈ることがなくなった世界へと歩みだしたと。
ハルポクラテスはサイドクエストにて書き物をクライヴに託し。
トルガルは狼の習性として離れた仲間を呼び寄せるために吠えている。そして第三開発スタッフ(現CS3)はあくまでクライヴの操作のみの姿勢を貫いた、と判断材料を揃えたとき。自ずとエピローグから見えてくるものがありますね。
そしてFF16のプロローグは年老いた彼の声から始まり、終わりも彼の声で占められています。
・クライヴはいつからジルのことがすきだったのか
ジルちゃんはクライヴと再会して共に行動するようになってからもう何も考えたくないと限界を迎えた心と凍り付いていた感情が動き出して、だんだんと自分の本当の気持ちを取り戻しつつそして罪の意識とも向き合いクライヴのことを異性としても愛しているのだと自覚したのだと考えております。自覚なら5年間の間にしているのでしょうが、因縁を断たなければ本当の意味で一緒には居られないとそう考えていました。
鉄王国に行く前の吐露は、そうした流れを追うと泣けてきます。
フーゴ戦で結局足を引っ張ってしまったと思ったのもあり、拘束具で捉えられて因縁を断ったとはいえ過去を思い出してしまったのもあり、タイタン戦から無事に帰って来たクライヴに対して待っているだけじゃ辛いからと(このセリフをカットシーンにしなかったのがまた味わい深い)伝えた後はまた我慢する姿勢へと戻ると。
クライヴはいつ頃から好きだったのかと考えるなら子どもの時(少年期)からでしょうね。白銀の君辺りでジルを連れ出した時はまだ妹というか家族でありジョシュアへの兄弟愛と同じような感じで。それ以降ジルはクライヴのことが好きになった訳(人としてで、ほんのり初恋に近い感情かと)で接し方やジルが常に自分たち兄弟に寄り添ってくれていること向けて来る感情や愛情に感謝しながら思春期の頃は自然と異性として捉えるようになった。ただ彼の場合弟への後ろめたさが上回っていますから、12歳のジルの肩に触れるのを留めたりしたシーンが明確で自分の想いは引っ込めたままだったかと。あのままロザリアの統治が続いてジルに他の好きな人が出来たら(ジルはクライヴ以外の人とは結ばれないと本編からは十分伝わってきますが)黙って身を引いたのかも。
青年期にシドにジルを頼むと伝えたのも復讐者としての道は自分だけでいいしシドが語った通り自由に生きてくれればそれで良い、と突き放したというより巻き込みたくない、自分の生き方が決して正しいものでないと理解している客観的な判断。シドにはまるっと見抜かれていた訳ですが。
復讐者の道は全て崩れ、別の道を示してくれたシドと生きていることに意味はあるのだと伝えてくれたジルにはずっと5年間の間も感謝していたでしょう。
このふたりに終盤で自己否定とも取れる否定されるカットシーンが入るわけですが、それでは彼の本質はどこにあるのかといえば。鍵はジョシュアです。
その本質そのものをひっくるめて愛しているのがジル。
ジルの愛し方は女だからというより、クライヴだから。という愛し方。
クライヴの場合は彼の本質含めジルも共に生きていく理由に入っているのですが、もっと男性ぽい惹かれ方だと思っています。
妹で家族であり、支えてくれて、側にいてくれて、ロザリスに居た時も再会してからもずっと大切な人。容姿・性格を含めてジルに惚れている。
なんで、作中ではクライヴの行動はずるいところあるな~と何度か思っていました(笑)
・ジルは何を我慢していたのか
シヴァの力を吸収してからジョシュアにそのことを問われ、すでに察していた弟に誤魔化しが通用しないと分かっていたクライヴはその通りだと答えて殴られたわけですが。
影の海岸にての会話は日本語版だとクライヴがたくさんの人を殺したと罪と業を背負っていて自分が人ですらないと語っていました。(抗っていたはずが結局のところ理の思い通りだったということ。この伏線は序盤のドミナント暗殺任務に連れ出されていたことから始まり。フェニックスの力を使うベアラー兵がいると噂を耳にして探していたシドとの出会いも(※3)。
※3 裏で糸をひいていた人物がザンブレク皇国にいるので噂を含めて幾らでも根回し出来る。ウォールード王国も似たようなものですから、さしずめベネディクタの首を届けたのはスレイプニル辺りか。
タイタン戦でコントロール出来たと本人は思っていたのが戦いの後に理が現れたことで、実際は理によるリミッター解除であると分かります。鉄王国でも理は姿を見せていますがこの時はリクイドフレイム程度に解除は必要ないという判断。そもそも吸収するような相手ではない)
君は俺が怖くないのかと自分を見失いつつある彼にジルがあなたは昔から変わらないとぴたりと寄り添います。FF16本編でクライヴ・ロズフィールドと彼の名をドミナントたちが呼ぶカットシーンが多数出て来ますね。彼がどのような人物で彼の生き方そのものである本質がラスト付近にて帰結するテーマ性に日本語版はフォーカスしています。
英語版では俺はもうとっくに手遅れだという言い回しとなり、ジルに小さい頃から周りの人を助けようとしていた、多くの人を救おうとしていた。だから大切なものを見失っている、あなたは自分自身を救わなければならないと寄り添われます。
青年期時代のシドとのやりとりと救出というバルナバスの話がここに掛かってきています。(※4)罪そのものと絡めて救いにフォーカスをあてているのが英語圏らしい。
※4 余談ではありまずがヴァリスゼア大陸を方向性は異なるとはいえ救いについて考えていたのが外様のバルナバスとシドだったというのが興味深いです。バルナバスは先祖の行なったことも絡んで来るとはいえ。ハルポクラテスといい、惹きつける何かがこの地にはあるのでしょうね。主人公側が理性的、敵側は俯瞰的視点が多いのも他ナンバリングと異なっています。一時期感情的だった人物を唯一上げるならディオンくらいで。理自体も生存本能に近い理由の戦い方ですし。弱冠感情的で想いの強さで切り抜けてきたそれまでのナンバリングと異なる挑戦。
ヴァリスゼア全体に蔓延っている認識を自らの運命と理に立ち向かうことによってリセットさせ、世界そのものの舞台が変わるという話の土台は同じですが文化圏の違いでどこに重点を置いて会話しているのかが大きく変わっている。
バルナバスは理と通じていましたし、自分がこれ以上動かなくても(お前はミュトスをおびき寄せる餌だとジルに伝えるくらいですから)シヴァの力を吸収するであろうと読んでいた。実際バハムートを吸収してこれか…と彼に2回負けていますから。
斬鉄剣を放ったバルナバス様子から彼はオーディンに変貌を遂げることなくシヴァを捕らえたのでしょう。その辺りはジョシュアの方がコントロール慣れしていますね。ジルと一緒に行っても勝利は掴めないとラインを引いている。シヴァの力も吸収して他の召喚獣の力と合わせる方がまだ勝算がある。
何よりジルの身体も限界が近いのだと。力を吸収すると過去や考えが視えるのはディオンの例がはっきりしています。クライヴはこの時にそれまでなかなか本心を見せなかった・語ろうとしなかった(5年経って鉄王国に行く際にようやく吐露したくらいですから)ジルの想いも受け取り彼女の罪も背負います。それが彼の決めたこと。
最後まで彼自身の運命と戦う。そして一度決めたことをクライヴは最後まで諦めない。
同時にこれはクライヴがシドから受け継いだ夢である人として死ねるようにが、人として最後まで生きていけるようにと定義が変わった瞬間でもある。愛する人に生きていて欲しいと。
あなたを守るために、私は生きる。
これは公式サイトにあるジルを表わした台詞です。
どこでこの台詞が出て来るのだろうと考えながら実際にプレイしてみて。
クライヴにそのことを伝えた直後に彼女はそれが出来なくなるという切ない場面でした。
共に最後まで戦うという選択は彼によって失われ、受け取った想いと誓いにより積年の想いから結ばれたふたり。君の笑顔がこれほどまでに俺を満たしてくれるとは考えたことがなかった、とは英語版のクライヴの台詞。
ジルの本心と涙を流しながらの笑顔が一致した場面です。同時に本当は一緒にいたい(その為に戦っていた)、離れたくないという気持ちも彼に流れ込んできたはずです。
ジルはクライヴを守る為に戦うことはもうできない。諦めるしかなかった。
彼と再会してからはずっとそれが自分の生き方だと思って傍にいたはずなのに。再会時にすぐに私も受け止めるからと彼の手を重ねた時からずっと。
人でありたい、あなたといっしょにいたいからとはっきり告白もして。
彼女が我慢した想いも、彼は理解している。だからこそ弟の拳も受け入れた。
ジョシュアもジョシュアでため息ついていたのでクライヴがこうと決めたら絶対に聞かない性格で(ジルは分かってくれたよという兄の言葉に、ああ分かってはくれただろうさ!僕は納得していない、そう簡単にフェニックスの力を渡してたまるものかとも英語版で言っています)幼い時からそうしたところは変わっていないのだとジルと似たような動機で受け入れた感じでしょうか。
昔からそうした面も尊敬していたでしょうから最終的に笑い合えた。書いてて思ったけど弟も大概兄には甘いですね(笑)
ジルはロザリスでフーゴに捕らえられた時からこうなることを覚悟していたのではとも思っています。
イムランを断罪してから因縁を断ち切ってクライヴと両想いの示唆もあった人らしくなった彼女。あなたが無茶をしないように着いて行くと啖呵を切った後に捕らえられてしまったので。
タイタン戦後に帰還すると、待つだけは辛いから…とぽつりと話し。
いつかは…という思いが全く無かった訳ではないでしょう。作中ではぼやかされることなく、とうとうその時が来てしまった。
それ以降の彼女はといいますと。
白銀の君にてジルの様子がおかしいので励ましてあげたいと受け継ぎし炎のサイドクエストでジョシュアが仲間になった後は相談を受けます。
日本語だとジルはすぐに我慢をしてしまうといった兄弟のやりとりに対し、英語版ではシヴァの力を失ってからが特に自分に出来ることがない、落ち込んでいるとクライヴが具体的に話をします。そして英語版では覚えているか?とふたりで抜け出して彼女を連れ出した話を続けます。この話自体は日本語版でも後から出て来るので内容としては同じです。
一見唐突に思える英語版の切り出し方ですが、クライヴはシヴァの力を失って相当落ち込んでいるジルの今の様子をロザリスに和平の証として差し出された頃の彼女と似ているなと思い出したのだと考えればしっくり来ます。来たばかりで自分の居場所がなく自分そのものを見てくれる人がいなかった彼女と。
いや、現在落ち込んでいる原因はクライヴではあるんですが。ジョシュアがこのことを鋭く突っ込んでいる英語版セリフも当然出て来ます。ジョシュアくん、頑張って。
クライヴにとっての物差しがマヌエの丘で一緒に過ごした後は人であった12歳時のジルとシヴァの力を失って人に戻りつつあるジルなので、誓いのことも考えて自分が人に戻って共に生きていくなら先に彼女がそうなれて良かったのだ、と彼は考えていたのでは。
アクティブタイムロアのジルの項目は終盤では負担が軽減されたとわざわざ書いてありますし。
上記に書いた通りクライヴの惚れ方は男性ぽいので愛する人を熾烈な戦いとなる場所から遠ざけられたとちょっと安心しきっているとこがある。
ジルは逆に失ってしまった以上はクライヴと最後まで戦いに行けませんから、彼に背負わせたまますぐ傍で支えることも出来ず辛いわけです。自分の居場所がぽっかりと無くなってしまったような。
彼がマヌエの丘に連れ出したあの日から変わったのだとジルの語りからも分かる通り、それを覚えていてくれて例え力を失ったとしても大切に想ってくれていた、忘れないでくれていて嬉しい。
あの頃から好きだったのだとジルがはっきり言葉に出来たのは彼にとっても彼女にとっても良かったですよね。
素直に好きな所を語っております。当方英語版日本語字幕で初回プレイをしましたのでそちらで気づいたことや、ちょっとした考察を入り混じったものも。
EDの示唆についても触れています。大っぴらではありませんが、ご注意下さい。
・再会したばかりのふたり(青年期)
クライヴがジルにイーストプールで過ごした夜に月を見上げていた彼女から12歳の時の彼女のことを思い出したことやフェニックスゲートにてそういう所は昔から変わらないな、と語った場面は昔から好意を抱いていた彼女に対して安心感や信頼感を持っていた故ですね。
よく言われる思い出が綺麗に残っている状況に近いものです。
ジルが一旦シドの拠点から戻る時に伏し目からまっすぐ彼を見つめたり私は変わったわ、と告げたりしたのは罪の意識と倒れる直前に心が限界であったために彼が知っているような昔の自分ではないと否定したかったのでしょう。
実際はそうでありたいと思っていたのと、クライヴの傍にいる為にはそうした自分だけではいけないと考えていたのが半々な青年期時代。
ジルもジルで彼に縋っているように思えました。そう見えるのは私が女性の視点で見ているからかもですが(笑)男性プレイヤーの方だと兵器としてずっと扱われていて辛かったはずなのに健気に支えようとしていると捉えられるのでしょうか。それもある意味正解だと思います。ジルは場所や立場関係なく彼の傍にいられるなら自分でいられるという感じでしょうから。
少年期のロザリスでは公式サイトにある通りきょうだいのような間柄で、シドの拠点にいる時はどう自己紹介していたのでしょうかね。テーマ的に保護されたベアラーとドミナントなのでしょうか。タルヤさんにはすっかりお見通しな仲ではありましたがあの時点では恋人とは言い難いし。新しい拠点以降で正式に恋人と呼べる仲になったのは影の海岸にて誓い合った後でしたから。
・潜伏しながらの5年間の変化
しばらくはマザークリスタルを破壊する同士で心許せる仲間であり、他の協力者との異なる点は拠点にいるかそれぞれの場所で活動するかの違い。過去を共有出来るという仲ではありますが、そこまで長い期間ではなかったので。
ジルが単独で動かず、調子を崩した時とか理由がある以外でクライヴの傍にずっと補うように居るのが好きなのですよね。ドミナント同士だからという戦力的に説得力があるのももちろんですが、子どもの頃は戦いには出られないのとずっと離れ離れだったからこそ、共に居るのだと彼女の強い意思と想いが感じられて。クライヴ自身は本来ジルが愛情深い人だと知っているので戦いに連れて行くのは本意ではないと彼から伝わってきますが。
クライヴの方は寄り添うようにそっと手を差し伸べたり、背中に手を回して支えるのだと想いを伝えたり、真面目でそれでいてちょっとリードするような仕草が好きです。彼の性格を考えるとお相手はある程度主導権を握れる方が合っているのだろうな。
(というかFFの主人公はそうしたタイプが多いですね(笑))
・ジルはいつからクライヴのことがすきだったのか
白銀の君のサイドクエストを終えてみると、ジルは子ども(本編開始は12歳)の頃からクライヴのことが好きだったと明かされます。
この時は人としてとか、いっしょにいて安心出来る人…もしくは自分という存在をきちんと見ていてくれていたという意味で。
本格的に異性として意識しはじめたのは再会してからなのかな、と思ったり。
アルティマニアによると積年の想いから結ばれる、と解説があったので子どもの頃からずっと好きだった(侍女たちにはクライヴ様と姫様の仲のよろしいこと!とふたりの仲の良さを指摘する場面も)ーその時から初恋のような淡い想いを抱いていた、でも良いのですが。
彼女はずっと兵器として扱われてきた時間がロザリスで過ごした時より長いのでどこかでそうした想いを遠ざけていたのでは。
再会してから共に行動するようになっても自分の想い自体があやふやなところがありそうです。私は変わったわ、とはっきりと発言している辺り感情を取り戻すまで時間が掛かったと言いますか。
例を挙げると新しい拠点でクライヴとジルはマザークリスタル破壊の為に再び誓い合い、その時にオットーが入ってきて邪魔をしたのではないか?とすまなそうに告げる訳ですがジルの反応は照れた様子はなくどこかぎこちなさが伴う鈍さ(※1)。
ドレイクブレス破壊の為に鉄王国に行くのだと決まってその時になってからようやく私は人でいたい、あなたと一緒にいる為に…とクライヴに心情を吐露しています。
※1 マザークリスタルが人を幸せにしていないという発言は風の大陸内を見回ってからのジルのセリフで、この時に彼女は捕らえられていた鉄王国のことも当然思い浮かべていたでしょうから、淡泊なのもそうなりますね。
実際5年間一緒にいた間にふたりの恋に大きな進展はないのですよね。港にて心情を吐露して、因縁を断ってからようやく進めたのだと。
拘束されたまま兵器として自由がなかった13年間、そこから解かれた直後は誰かに自ら触れにいくのは怖いという感情はあったでしょうにクライヴの言葉を受け止めその手を取る彼女はとても勇気のある女性だなあと思ったのと同時に弟の敵討ちがそれまでの生きていた動機であり自身の時も止っていたクライヴが世界を見始めたと同じ様に彼女も少しずつ心の面でも行動の面においても動くことが出来るようになったのだと。
クライヴもクライヴで15歳の時はジルちゃんの肩に触れようとして留めていましたが、壮年期(33歳)にはそっと背中に手を回して俺が支える、とはっきりと言えるまでになっていますね。
アインヘリアルにて捕らえられていた時、因縁を断ったとはいえジルは兵器として連れ出されそうしてまた檻へと押し込められていく過去を思い出したりもしたのでは…と心が痛くなりました。過去そのものが消えるわけではないですから。
クライヴが助けに来て、正面から力強く抱きしめてもらってすごくすごく安心したでしょうね。
PS5というプラットフォームに入り表現の豊かさが増えたのもあり、リアル寄りになったからこそ相手を・お互いを大切に思っていることを率直に言葉に出しそして行動にもきちんと示す、この辺りもクラジルの好きなところであります。
・好きなカットシーンなどを
鉄王国へ行く前後はふたりの距離が縮まっていく全体の流れが好きで。あの辺りはジルの思いの丈を感じますね。ジルの告白とクライヴへの想いの強さが目立っているようで、クライヴの方はというとフォーカスモードで見てみると押し寄せる溶岩を半顕現化で止めるジルに見惚れている表情をしていました(笑)
何気にお気に入りなのはクライヴが飲み水入れている皮袋を取り出してジルが喉の渇きを潤すシーンです。躊躇がない間接キスといいますか(笑)
飲み水は拠点にてミドの浄化槽のを運び出しているのでしょうかね。その方が戦いが終わったらブラックソーンのふいごと同じく世界中に設置する説得力増しますし。スリー・リーズ湿地帯にあった水道橋も工事を再開させて飲み水確保していく手段を立てていく為に用いられるのでしょう。
少年期にロザリスの城下町へいっしょに買い物へ出てトルガルが飛び出して...の昔話に花を咲かせるやり取りがありましたが、果物とかお茶菓子は半分こ(ジョシュアもいるなら3等分、あとはトルガルのおやつ)し合いながら過ごしていたのだと、すぐ思い浮かびました。英語版だとクライヴは祝賀会の時、俺はケーキとエールが苦手だと10歳のジョシュアくんに語るので主に甘いものはジルちゃんの為に買っていたのかもですが(笑)
フーゴの襲撃があったロザリスへ向かう決意をするクライヴにジルが焦ったようにあなたが無理をしないように着いていく旨を伝えますよね。あの辺りでもともと両想いだったのがキス寸止めになりましたがはっきり自覚したふたり、ジルのちょっとしたわがままというか人らしさを感じられて好きです。フーゴはフーゴでふたりの仲を見抜き、それに基づいた罠も仕掛けて来て。アルティマニアの年表だとフーゴがベネディクタを愛するようになった期間は8年、クライヴとジルが一緒に居られた(居る)期間は11年ですが、意識しはじめたと考えるならちょうど8年位かと。自分も王になれない(なったとしてもベネディクタはもう居ない)から王座を破壊する場面も合わせて、因縁はここにもあったのでは。
アインヘリアルから影の海岸での一連の流れはクライヴからジルへの想いの強さを感じる流れです。
ジルは無事だ(※2)と周りを落ち着かせる伝え方をしてからの檻の中へ閉じ込められた彼女を力一杯抱きしめる場面。大切なひとへの彼の愛の深さ。
※2 シヴァの力を吸収されたジルにジョシュアが近づいてからそのことに気づけたのに対し、クライヴは離れていても様子が分かることから既にこの時点でかなり人から離れてしまっている。影の海岸でふたりっきり(+一匹)になった時に良い雰囲気になっている場合かと思われてそうですが(笑)離れていてもジョシュアが無事だと分かっていると。
私は発売前はこうであるべきだというイメージは作品やキャラクターには特に持たない(先入観がない)タイプの人間ですが、クライヴは想われるより想うタイプの人なのだろうか、とぼんやりと考えたことはありました。想いが強くてもひた隠しにしてあまり表には出さないタイプかも、と。責任感という面ではそうであって命の見方や大切な人たちへはしっかり行動に起こしていましたね。
これからの時代、想うだけでなくきちんと行動に起こすことが大事であり鍵となっていくのでしょう。
そして、影の海岸での誓い。
ジルの過去が回想シーンでずっと出てこなかったのはこの為だったのか、とすとんと腑に落ちました。ディオンの過去を視たのなら、当然 他のドミナントの過去も視ている訳で。
苦しんでいた他の吸収と異なりこの時は本当に穏やかで真剣な表情をしているのですよ、クライヴ。
(最後に過去を視ることになる相手はジョシュア...)
それも含めての業を背負う覚悟の誓い。
ジルの石化含めてこれ以上はもう持たないと察した面もあり、彼自身の彼女への甘えは(合わせて危険と禁断の道へ自らさらに飛び込んでいったのでジョシュアが怒るのも無理はありません。体格差考えるとよく吹っ飛ばせたな、と思ったのと同時にこうした反応が来るのだと予め受け止めていたのだとも考えました)両思いになったらENDでなくその後もしっかりとお互いを尊重している意味も含まれているのでしょう。
私がジルをジルちゃんと時々呼ぶのはこの時の涙を浮かべながらも幸福感に包まれている(そして命をかける戦いにもういっしょには行けないという切なさも)彼女の表情が12歳の頃トルガルのおててを振りながら頑張って、とクライヴを見送っていたあの時の彼女の表情と同じだからです。
本来優しくて愛情深いあの子と。
・月とメティアとジルの涙
月を見ていたの歌詞は米津さん曰くクライヴに幸せになって欲しくて描いたのだとご本人のインタビューから。
柳、とヴァリスゼアの世界には登場していない植物が出てきますが柳に雪折れなしという諺にある通り人間の業(私は16の作中内において人という言葉は相当用いられたのに人間の単語を使わなかった意味についてずっと考えています)を背負って突き進んでいく姿は悲劇であり同時に柔軟な受け入れ方、雪が積もっても折れないしなやかな強さをクライヴに見出していたのでしょうか。
ジルのテーマ曲は“MyStar”。
(歌詞の意味をまだ訳せていないのですが。Away等含めて訳したらこのサイトに載せます)
月の描写は作中においていたる所に差し込まれて行きます。彼らの出来事を見守っていた月は忠実な証人。太陽と対となる夜を支配させる為の小さいほうの天体。
ジルにとって少年期のクライヴと共に月を見上げたことが大切なひとときであったのはイーストプールにて一夜を過ごすときの様子からそれが分かります。願いは叶ったわ、と月の隣にあるメティアを視界に収めながら。自分が生きていた理由を知った瞬間。
彼女はニサ渓谷での戦いで倒れた時に涙を流し、それによってクライヴはジルだと気づいた。
人ではない、人形になった。私は獣だから。と語ることがあってもあの時も心まで失ったわけではないと示唆されている。離れ離れの間はふたりとも月を見上げることはなかったのだと考えています、想いそのものは捨てていなくても辛いから。方や敵討ちを果たすだけが目的、方や目的もなく命令されるまま命を奪っていた13年間。
潜伏しながらの5年間は幾度も月を見ていたのでしょうね。その方が壮年期に置いての月の描写が活きて来る。
ジルの視界には月と同じくメティアずっと映っていたのでしょう。願いが叶ったからこそもう会えないのだと思っていた彼と会えて箱庭内で幸せだった時とは異なり厳しい現実を乗り越えながらも一緒に居られたのだから。
クライヴにとってメティアそのものより、ジルの想いと願いがそこに乗っかっていることの方が重要な印象を受けました。ラスト付近のセリフも月に触れているので。影の海岸での誓いあったあの時と同じ月の輝きだったということかな。誓いの時にジルは涙を流していて、この時は幸福感に包まれているのだと限界を迎えていたあの時とは異なっているのだと分かります。
メティアが陰ってしまった時、ジルは最後自分の願いは叶わなかったのだと泣き崩れた訳ですが。この後の涙痕の表現は影の海岸で誓い合った時と同じです。
そして(これは英語版の白銀の君ではっきりと表現が出て来る)ふたりが誓い合った光が差す世界へと移り変わり、誓いが果たされてメティアに祈ることがなくなった世界へと歩みだしたと。
ハルポクラテスはサイドクエストにて書き物をクライヴに託し。
トルガルは狼の習性として離れた仲間を呼び寄せるために吠えている。そして第三開発スタッフ(現CS3)はあくまでクライヴの操作のみの姿勢を貫いた、と判断材料を揃えたとき。自ずとエピローグから見えてくるものがありますね。
そしてFF16のプロローグは年老いた彼の声から始まり、終わりも彼の声で占められています。
・クライヴはいつからジルのことがすきだったのか
ジルちゃんはクライヴと再会して共に行動するようになってからもう何も考えたくないと限界を迎えた心と凍り付いていた感情が動き出して、だんだんと自分の本当の気持ちを取り戻しつつそして罪の意識とも向き合いクライヴのことを異性としても愛しているのだと自覚したのだと考えております。自覚なら5年間の間にしているのでしょうが、因縁を断たなければ本当の意味で一緒には居られないとそう考えていました。
鉄王国に行く前の吐露は、そうした流れを追うと泣けてきます。
フーゴ戦で結局足を引っ張ってしまったと思ったのもあり、拘束具で捉えられて因縁を断ったとはいえ過去を思い出してしまったのもあり、タイタン戦から無事に帰って来たクライヴに対して待っているだけじゃ辛いからと(このセリフをカットシーンにしなかったのがまた味わい深い)伝えた後はまた我慢する姿勢へと戻ると。
クライヴはいつ頃から好きだったのかと考えるなら子どもの時(少年期)からでしょうね。白銀の君辺りでジルを連れ出した時はまだ妹というか家族でありジョシュアへの兄弟愛と同じような感じで。それ以降ジルはクライヴのことが好きになった訳(人としてで、ほんのり初恋に近い感情かと)で接し方やジルが常に自分たち兄弟に寄り添ってくれていること向けて来る感情や愛情に感謝しながら思春期の頃は自然と異性として捉えるようになった。ただ彼の場合弟への後ろめたさが上回っていますから、12歳のジルの肩に触れるのを留めたりしたシーンが明確で自分の想いは引っ込めたままだったかと。あのままロザリアの統治が続いてジルに他の好きな人が出来たら(ジルはクライヴ以外の人とは結ばれないと本編からは十分伝わってきますが)黙って身を引いたのかも。
青年期にシドにジルを頼むと伝えたのも復讐者としての道は自分だけでいいしシドが語った通り自由に生きてくれればそれで良い、と突き放したというより巻き込みたくない、自分の生き方が決して正しいものでないと理解している客観的な判断。シドにはまるっと見抜かれていた訳ですが。
復讐者の道は全て崩れ、別の道を示してくれたシドと生きていることに意味はあるのだと伝えてくれたジルにはずっと5年間の間も感謝していたでしょう。
このふたりに終盤で自己否定とも取れる否定されるカットシーンが入るわけですが、それでは彼の本質はどこにあるのかといえば。鍵はジョシュアです。
その本質そのものをひっくるめて愛しているのがジル。
ジルの愛し方は女だからというより、クライヴだから。という愛し方。
クライヴの場合は彼の本質含めジルも共に生きていく理由に入っているのですが、もっと男性ぽい惹かれ方だと思っています。
妹で家族であり、支えてくれて、側にいてくれて、ロザリスに居た時も再会してからもずっと大切な人。容姿・性格を含めてジルに惚れている。
なんで、作中ではクライヴの行動はずるいところあるな~と何度か思っていました(笑)
・ジルは何を我慢していたのか
シヴァの力を吸収してからジョシュアにそのことを問われ、すでに察していた弟に誤魔化しが通用しないと分かっていたクライヴはその通りだと答えて殴られたわけですが。
影の海岸にての会話は日本語版だとクライヴがたくさんの人を殺したと罪と業を背負っていて自分が人ですらないと語っていました。(抗っていたはずが結局のところ理の思い通りだったということ。この伏線は序盤のドミナント暗殺任務に連れ出されていたことから始まり。フェニックスの力を使うベアラー兵がいると噂を耳にして探していたシドとの出会いも(※3)。
※3 裏で糸をひいていた人物がザンブレク皇国にいるので噂を含めて幾らでも根回し出来る。ウォールード王国も似たようなものですから、さしずめベネディクタの首を届けたのはスレイプニル辺りか。
タイタン戦でコントロール出来たと本人は思っていたのが戦いの後に理が現れたことで、実際は理によるリミッター解除であると分かります。鉄王国でも理は姿を見せていますがこの時はリクイドフレイム程度に解除は必要ないという判断。そもそも吸収するような相手ではない)
君は俺が怖くないのかと自分を見失いつつある彼にジルがあなたは昔から変わらないとぴたりと寄り添います。FF16本編でクライヴ・ロズフィールドと彼の名をドミナントたちが呼ぶカットシーンが多数出て来ますね。彼がどのような人物で彼の生き方そのものである本質がラスト付近にて帰結するテーマ性に日本語版はフォーカスしています。
英語版では俺はもうとっくに手遅れだという言い回しとなり、ジルに小さい頃から周りの人を助けようとしていた、多くの人を救おうとしていた。だから大切なものを見失っている、あなたは自分自身を救わなければならないと寄り添われます。
青年期時代のシドとのやりとりと救出というバルナバスの話がここに掛かってきています。(※4)罪そのものと絡めて救いにフォーカスをあてているのが英語圏らしい。
※4 余談ではありまずがヴァリスゼア大陸を方向性は異なるとはいえ救いについて考えていたのが外様のバルナバスとシドだったというのが興味深いです。バルナバスは先祖の行なったことも絡んで来るとはいえ。ハルポクラテスといい、惹きつける何かがこの地にはあるのでしょうね。主人公側が理性的、敵側は俯瞰的視点が多いのも他ナンバリングと異なっています。一時期感情的だった人物を唯一上げるならディオンくらいで。理自体も生存本能に近い理由の戦い方ですし。弱冠感情的で想いの強さで切り抜けてきたそれまでのナンバリングと異なる挑戦。
ヴァリスゼア全体に蔓延っている認識を自らの運命と理に立ち向かうことによってリセットさせ、世界そのものの舞台が変わるという話の土台は同じですが文化圏の違いでどこに重点を置いて会話しているのかが大きく変わっている。
バルナバスは理と通じていましたし、自分がこれ以上動かなくても(お前はミュトスをおびき寄せる餌だとジルに伝えるくらいですから)シヴァの力を吸収するであろうと読んでいた。実際バハムートを吸収してこれか…と彼に2回負けていますから。
斬鉄剣を放ったバルナバス様子から彼はオーディンに変貌を遂げることなくシヴァを捕らえたのでしょう。その辺りはジョシュアの方がコントロール慣れしていますね。ジルと一緒に行っても勝利は掴めないとラインを引いている。シヴァの力も吸収して他の召喚獣の力と合わせる方がまだ勝算がある。
何よりジルの身体も限界が近いのだと。力を吸収すると過去や考えが視えるのはディオンの例がはっきりしています。クライヴはこの時にそれまでなかなか本心を見せなかった・語ろうとしなかった(5年経って鉄王国に行く際にようやく吐露したくらいですから)ジルの想いも受け取り彼女の罪も背負います。それが彼の決めたこと。
最後まで彼自身の運命と戦う。そして一度決めたことをクライヴは最後まで諦めない。
同時にこれはクライヴがシドから受け継いだ夢である人として死ねるようにが、人として最後まで生きていけるようにと定義が変わった瞬間でもある。愛する人に生きていて欲しいと。
あなたを守るために、私は生きる。
これは公式サイトにあるジルを表わした台詞です。
どこでこの台詞が出て来るのだろうと考えながら実際にプレイしてみて。
クライヴにそのことを伝えた直後に彼女はそれが出来なくなるという切ない場面でした。
共に最後まで戦うという選択は彼によって失われ、受け取った想いと誓いにより積年の想いから結ばれたふたり。君の笑顔がこれほどまでに俺を満たしてくれるとは考えたことがなかった、とは英語版のクライヴの台詞。
ジルの本心と涙を流しながらの笑顔が一致した場面です。同時に本当は一緒にいたい(その為に戦っていた)、離れたくないという気持ちも彼に流れ込んできたはずです。
ジルはクライヴを守る為に戦うことはもうできない。諦めるしかなかった。
彼と再会してからはずっとそれが自分の生き方だと思って傍にいたはずなのに。再会時にすぐに私も受け止めるからと彼の手を重ねた時からずっと。
人でありたい、あなたといっしょにいたいからとはっきり告白もして。
彼女が我慢した想いも、彼は理解している。だからこそ弟の拳も受け入れた。
ジョシュアもジョシュアでため息ついていたのでクライヴがこうと決めたら絶対に聞かない性格で(ジルは分かってくれたよという兄の言葉に、ああ分かってはくれただろうさ!僕は納得していない、そう簡単にフェニックスの力を渡してたまるものかとも英語版で言っています)幼い時からそうしたところは変わっていないのだとジルと似たような動機で受け入れた感じでしょうか。
昔からそうした面も尊敬していたでしょうから最終的に笑い合えた。書いてて思ったけど弟も大概兄には甘いですね(笑)
ジルはロザリスでフーゴに捕らえられた時からこうなることを覚悟していたのではとも思っています。
イムランを断罪してから因縁を断ち切ってクライヴと両想いの示唆もあった人らしくなった彼女。あなたが無茶をしないように着いて行くと啖呵を切った後に捕らえられてしまったので。
タイタン戦後に帰還すると、待つだけは辛いから…とぽつりと話し。
いつかは…という思いが全く無かった訳ではないでしょう。作中ではぼやかされることなく、とうとうその時が来てしまった。
それ以降の彼女はといいますと。
白銀の君にてジルの様子がおかしいので励ましてあげたいと受け継ぎし炎のサイドクエストでジョシュアが仲間になった後は相談を受けます。
日本語だとジルはすぐに我慢をしてしまうといった兄弟のやりとりに対し、英語版ではシヴァの力を失ってからが特に自分に出来ることがない、落ち込んでいるとクライヴが具体的に話をします。そして英語版では覚えているか?とふたりで抜け出して彼女を連れ出した話を続けます。この話自体は日本語版でも後から出て来るので内容としては同じです。
一見唐突に思える英語版の切り出し方ですが、クライヴはシヴァの力を失って相当落ち込んでいるジルの今の様子をロザリスに和平の証として差し出された頃の彼女と似ているなと思い出したのだと考えればしっくり来ます。来たばかりで自分の居場所がなく自分そのものを見てくれる人がいなかった彼女と。
いや、現在落ち込んでいる原因はクライヴではあるんですが。ジョシュアがこのことを鋭く突っ込んでいる英語版セリフも当然出て来ます。ジョシュアくん、頑張って。
クライヴにとっての物差しがマヌエの丘で一緒に過ごした後は人であった12歳時のジルとシヴァの力を失って人に戻りつつあるジルなので、誓いのことも考えて自分が人に戻って共に生きていくなら先に彼女がそうなれて良かったのだ、と彼は考えていたのでは。
アクティブタイムロアのジルの項目は終盤では負担が軽減されたとわざわざ書いてありますし。
上記に書いた通りクライヴの惚れ方は男性ぽいので愛する人を熾烈な戦いとなる場所から遠ざけられたとちょっと安心しきっているとこがある。
ジルは逆に失ってしまった以上はクライヴと最後まで戦いに行けませんから、彼に背負わせたまますぐ傍で支えることも出来ず辛いわけです。自分の居場所がぽっかりと無くなってしまったような。
彼がマヌエの丘に連れ出したあの日から変わったのだとジルの語りからも分かる通り、それを覚えていてくれて例え力を失ったとしても大切に想ってくれていた、忘れないでくれていて嬉しい。
あの頃から好きだったのだとジルがはっきり言葉に出来たのは彼にとっても彼女にとっても良かったですよね。