FF16小ネタ集


・旅に出よう(FF16 望郷組+トルガル)

クライヴ「トルガルは本来ジルともっと繋がりがあったんだよな…北部地方でもっと早くジルと出会いたかったか、トルガル」
トルガル(顔を上げてじっとクライヴを見つめる)
クライヴ(優しく撫でながら)「分かっている、俺たちはもう離れ離れにはならない。ずっと覚えていてくれてありがとう、トルガル」
ジョシュア「僕はよく3人で旅に出られたら嬉しいな、トルガルとアンブロシアも連れて行くからねと話しかけていたよ」
ジル「買い物行こうとすると嬉しそうについて来て。すぐに飛び出していってしまうんじゃないかしらと皆で笑いながら見守っていたわよね」
クライヴ(あの小島にふたりっきりにならない限り外にはなかなか行けなかったからな…)「城内では退屈していたのか、トルガル」
トルガル(尻尾を振りながらクライヴを見つめる)
ジョシュア「それでもトルガルやアンブロシアと一緒にちょっとした時でも遊びに出られた時が楽しかった。こんな風に旅に出たいとそう思っていたんだ」
ジル「…トルガルも一緒よ。私も」
クライヴ(その時まで、最後まで戦い抜く)「トルガル、お前と再会してから色んなものが目に入るようになれた。青空を眺められるようになったらまた見に行こう」
トルガル(じっとクライヴを見つめた後ジョシュアとジルをそれぞれ眺める)「ワフ🐺」
ジョシュア「想いは僕らと一緒だ」
ジル「…ありがとう、トルガル」
クライヴ(優しくわしわしとトルガルを撫でる)

この運命に打ち勝った暁には、また旅に出よう。

・まっすぐに(望郷組)

エッダが語るアルケーの空へと変わってから空は覆われているものの変わらず月は煌めきメティアは赤く光っている。


混沌とした情勢と疲弊した心が黄昏から終息へと向かうのだとヴァリスゼアの人々が怯えている夜の刻。パチパチと火の粉がはぜる焚火は3人の姿と一匹の狼と一匹の馬(チョコボ)の姿を照らし出す。

焚火をぼんやりと眺めるクライヴの傍で右側に弟のジョシュア、左側にはつい最近彼と恋人と呼べる仲となった幼馴染のジルが寄り添っていた。
ルサージュ卿に協力を求めようとクリスタルロードを通りながらヨーテと語った時を思い出すよ、あの時から僕らが引き起こすのが混沌であっても自分の意思で得ようとする不確実な世界だろうかと考えていたとジョシュアが語る。
クライヴはその想いの背後にあるものも受け入れながら頷くと共に、正式にナイトになってから3人で出ていった青空の日を思い出していた。
夜ともなれば魔物が危険を増す。そうなる前に戻ろう。それまではトルガルも喜んでいるし、ジョシュアの身体を気遣いながら少し遺跡を見て回ろう。夜にロザリスから出るとするなら自分がもっと大人になって激しい戦いに赴く時だ。弟を守るのだという誓いをこの胸に抱えながら。ある意味では今もそうである。
ジルは彼の左肩に頭を乗せ、兄弟ふたりの語らいに静かに耳を傾けている。ふとしたことでも気遣って彼らと血がつながっていなくても家族の様に傍にいて支えるのが自分の役目だとそう思っていたからと。
メティアに視線を向け、心の中でまた祈りを捧げる。
彼らと一緒にいられる大切なこの時がとって何よりの―…。

ジョシュアがジルのその様子に気づき、彼女が願いのことで苦しい想いをしない為にもおとぎ話に関連して話題を差し出した。
「ロザリアではフェニックスに関するおとぎ話がたくさんあったね」
その内の幾つかが拠点の図書室に置いてあるので子どもたちによく質問されたものだ。
「…ジル、北部地方にもそうしたものはあったのか」
トルガルの目覚めを思い出しながらクライヴが尋ねると。
「寒い地方だから暮らしに関係したものを偶に口ずさんでいたわ。針子をしながら、私に出来ることをずっと探していた…」
ぽつぽつと静かにそう語る。
「…私が来た頃にはふたり共もう書物に随分と親しんでいたわね。ジョシュアは特に才能があるのだと周囲の皆から言われていて。兄弟揃えば文武両道だとマードック将軍も語っていた…」
ジルはクライヴの肩越しにジョシュアを、そしてクライヴ自身へ視線を投げる。
「私は北部での暮らしや何か物語を語るより、ふたりの力になりたい。あなたたちの背中を見送る度にまっすぐにそう思っていた」
「…ありがとう、ジル」
「…今も変わらないな」
トルガルがジルの方へと寄っていく。ジルがトルガルを優しく撫で。
「トルガル、あなたも…うん。一目見てからクライヴにすぐに懐いていたものね」
アンブロシアはジョシュアの方へ寄って来た。
ジョシュアもアンブロシアを見つめ礼を告げる。
「雛の時から決めていたんだね、兄さんの役に立つと」
「…ふたりとも、まっすぐだったな」
「…兄さんだって」
「…あなたも」

おとぎ話は時に紆余曲折する。だからこそこのヴァリスゼアの舞台にはあまたの神話が生まれたのだ。
悲劇や痛み、混沌が避けられないとしても誓いに対してまっすぐに最後までやり遂げると決めたひとりの男の決意。


最後の物語としてこの風の大陸と灰の大陸に残るものを見届けたいとジルは願う。
あの場所には自分は行けない。だからメティアに祈るのだ。

真実を知りたい。
その為にも辛くて悲しくも厳しい現実と戦う。
シドの前で彼女とそう誓った。

…各地を見て回っていた。ハルポクラテスとモースの書物に限らず幾つか見聞きしたものの語らいをしたよ。

…俺もジルと共にヴァリスゼア各地を回っていた。

ふたりで必ずあなたに会いに行くと、そう心に秘めながらね。


僕が書物を記す時にはそれを書いて、いいかな。



クライヴは黙って目を伏せてから少し考え事をした後に弟をまっすぐに見つめ。
静かに頷いた。
ジルは彼の傍らにまた寄り添いながら微笑んだ。

ジョシュアもまっすぐに兄とジルを見つめ返した。僕が人として生きていると記したいんだと口元を少し緩めながら。



・授ける(ロズ兄弟)

疑いの矛先はすぐに兄に向かった。あの場にいたのは殺された父上、炎に巻き込まれたマードック将軍、中には助けを呼んだにも関わらずザンブレク皇国兵に手を掛けられた者を含め亡くなったロザリアの兵士たち。行方不明になったウェイドとトルガル、アンブロシアを除いたら僕たちを裏切った母様に連れていかれた兄のみだったのだから、当然だ。

ザンブレクの暗殺部隊にフェニックスの力を用いる雑兵がいる―。
瞬く間に教団の彼らは処分をどうするのか話し合っていた。

そのことを告げられあの日をすぐに思い出した。兄さんにフェニックスの祝福を送った―正式に兄がナイトへとなった日を。

手を取る時はなるべく右手を取った。剣を握る手がそちらだからだ。
腕を握る時も僕の右手で兄の右手を取って。真正面から向き合うよう姿勢を向ける。

兄さんの決意と僕からの信頼。それがいつもそこにあった。


「…すぐに会えないと分かっていても変わらなかったよ」
夜遅く、マーサの宿にてジルは2階の寝室でトルガルとアンブロシアは外の馬(チョコボ)小屋に先に眠りについてもらってから兄弟ふたりでマーサが特別に出してくれた酒を少しずつ口に含めながら語り合っていた。
「…ひとりでずっと抗ってくれていたのか」
「ひとりじゃなかった。あなたの意思でフェニックスに手を掛けた訳じゃない。それに兄さんはそれまで生き抜いてずっと耐えてくれていた…そう考えて動いていたから」
「買い被り過ぎだ…俺はお前もジルにももう会えないんだ、ひとりなんだと…残ったものに縋っていただけだ」
「そうかな。率先して誰かを守ろうとしていたの、変わっていないと僕はあなたを目にしてすぐに分かったよ。トルガルはずっと兄さんを探していて。シドはそれが失われていないと気づいていたから兄さんに託した。
僕も同じだよ。
一緒にはまだいられなくても。あの日と同じー…今度はフェニックスの尾を授けることにしたんだ」
懐からフェニックスの尾を取り出す
神々しいまでの炎を宿す度にジョシュアの声が聞こえていた。

クライヴ、と。

それは遠い遠い過去から繋がっている炎の民の血筋であり。ロズフィールド家の長男であり。
5つ下の弟、ジョシュア・ロズフィールドの兄でもあり、ナイトでもある。
そしてー。
目の前に存在している同じ血を分けた男がもっとも信頼を寄せる存在であり誓いそのもの。

彼は他の召喚獣の力をフェニックス除いてすべて吸収していた。
それでいて彼自身が授けられたのだと考えているのはフェニックスの祝福のみである。

自身が器である運命から抗い逸脱するのと同じ様に弟ももしかしたらー。
選ばされた器だとしても授け、信頼を示したのは彼自身の意思なのだと。
最後の戦いにおいて証明する決意を固めているのだろう。

―クライヴ、騎士としての道を歩む気はあるかー?
公子として位は下がるとしても父が授けてくれた別の道。
弟が授けてくれた守る為の力。不死鳥の盾。


「休むか。明日も早いぞ」
「子どもの頃は夜遅くまで宝探しをしていたね」
「…宝探しとは違うがネクタールから詳細不明のモブハントの依頼があったな。探し当てに一緒に行くか」
「誰に向かって言っているんだい、兄さん」
「怖気づいたりはしない、と。昔から負けず嫌いだったな」
「あなたの弟だからね」


・違い(ロズ兄弟+ジル)


ノルヴァ―ン砦近くでロストウィングがエーテル溜まりに沈み。生き残った彼らの為にアカシアと魔物退治を終え。
服に降りかかった血と汗でべたつくので近くにてジルが水浴びをしている。
アンブロシアに見張りを任せ、近くの橋の上でトルガルを挟んで兄弟ふたりで語り合っていた。

(川の流れる音を聞きながら)クライヴ「‥‥」
ジョシュア(小声で)「兄さん。ジルの石化は―」
クライヴ「シヴァを降ろさなくなったからな、軽減されている。タルヤが少し前に具合を診てくれて。石化の広がりが極めて緩やかになったと教えてくれた。お前はどうなんだ」
ジョシュア「薬はきちんと飲んでいる。兄さんほど前には出ないからね。後ろから魔法を直線状に乗せて放っただろう」
クライヴ「援護の心配はしていないさ」
ジョシュア「身体が心配だから、限界だと思ってジルから力を奪った、とでも?
前にも伝えたけれど僕はそう簡単にフェニックスの力を渡さないよ」
クライヴ「…分かっている」
そう答えるとクライヴは静かに橋に背もたれた。
トルガルはふたりを見上げながらパタパタと尻尾を振っている。
ジョシュアも揃って橋に寄り掛かり。
少し前にエッダがアルケーの空と教えてくれた変わり果てた空模様を見上げて僕だって分かっていると気配を放った。
ジョシュア「僕は小さい時から身体が弱かったから。母様がフェニックスを宿していなければ期待外れだったと嘆いていたのを三国同盟の式典を尋ねる為にノックしようとした扉の前で聞いた。貴族たちにまた馬鹿にされた、兄さんが宿すべきだったと」
クライヴ「自治領で杯を投げつけられてそう吐き捨てられた。…あの人にとっては俺の方が期待外れだったんだ。お前が母様の重圧に応えようと必死だった姿を見送る度に自分を責めていたよ」
それ以上に、そうクライヴは続ける。
クライヴ「お前の方から俺に手を差し伸べてくれた。産まれたばかりの時に微笑んで俺の指をぎゅっと握りしめてくれて。ナイトとして認められてすぐにまた手を取り父上の前に連れて行ってくれて…守ることの意味を教えてくれた」
ジョシュア「…僕が誰かを守ろうと決めたのは兄さんが始まりだ。身体も心も弱い僕だけど、お互いに使命を果たそうと約束してくれただろう。それが父さんみたいにロザリアだけでなくこのヴァリスゼア全体に変わった。そして僕と兄さんはこの世界に残されたドミナント。最後まで人なのだと証明して戦う。そうだろう?」
クライヴ「ああ、そうだ」
こうした時の兄の答え方には迷いがない。ひとつひとつの事を外から眺めながらそれでもと受け入れて来た自分とは異なる。
それを話したら後悔していることは沢山あると答えるのだろう。
やはりあなたはとインビンシブルで伝えたときと同じことを話そうとして―発するのをやめた。
違いがあるとは生まれてからすぐに気づいた。ずっと、あなたが宿す“べき”だったとそう思っていた。その方が相応しい、現実的だとそう考えて。真実を知った今となってはそれがいかに残酷な現実だったのかふたりで思い知らされて来た。引き離されてからは長かった。これからどれくらい本当の意味で一緒にいられるのかも分からない。
ただこれだけははっきりと言える―。
クライヴ「あの日と同じ決意が今も俺の中にある、ここに生きている」
ジョシュア「クライヴ兄さんとの誓い。僕にとってもそれは変わらない」
穏やかに微笑む兄と弟のそのやり取りをじっと眺めていた彼らにとっても大切な狼は後押しをするようにウォンと吠えた。
子どもの頃に3人で真剣に考えていた将来とは全く違っていても。
誓いそのものを決して失わなかった炎の絆を持つ兄弟ふたりの様子を少し遠くから静かに愛おしく眺めた後、白銀の髪を風に流して白い馬(チョコボ)の手綱を優しく引いて彼らの幼馴染は凛と歩み寄っていく。


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