FF16小ネタ集
・知ってもらおう
クライヴが熱っぽいと聞いてタルヤから処方薬と植物園の方からは味が実った果実をダブアンドクラウンの彼らがすりおろして蜂蜜を加えた飲み物が彼の部屋に運ばれ。
ジョシュアが身体の怪我とは違うからケアルガでは意味がない、とにかく大人しくしていてねと念を押して部屋から一旦出ていく。何やら思いついたことがあるらしい。
ジルが椅子を引き寄せ座り横たわる彼の右手を取る。物凄くはなくても熱い。
「ジル、大丈夫だ。薬も飲んだし眠っていれば…」
「あなたが眠りにつくまでここにいるわ」
「君にうつったらそれこそ」
「お願い、ここにいさせて」
ずっとしばらく拠点にいなかったでしょう。そうしたいのと切実な想いを吐き出されては拒めない。
きゅっと彼の手を握る。シヴァの力を失ってはいるが氷の魔法はまだ使える。
戦い以外でコントロールをするのは神経を使う。目覚めてすぐに戦う為に利用されて来たからだ。
それでもこの人の為なら苦にはならない。
そっと彼に送り込むとぴくりと反応した彼も手を握り返してくれた。
「熱冷まし、か…」
「こういう使い方も出来るのかなって思ったの。クリスタルから魔法はもう使えない」
「…魔法はもうなくなる」
「…ええ」
ジョシュアが水差しとお茶の葉、果物を携えて戻って来た。
乾燥を避け、喉を潤し栄養をつけさせる為に。
拠点内で魔法を使わずに産み出せたこれからの成果だ。
「ありがとな、ひと眠りしたら食べるさ」
「そうして兄さん。小さい頃は兄さんが風邪をひいたら僕の身体が悪くならないようにと一歩も部屋に入れなかったしね」
兄と一緒にいられることがいちばん人らしさを感じられたひとときだった。
ドミナントではなく、たったひとりの弟として接してくれていたから。宝探しとか、子どもらしい遊びもしたこともよく覚えている。
だからその時は隔たれようで寂しかった。
ジョシュアとジルを横たわりながら視界に収めて。クライヴはふたりとトルガルがいてくれるのが当たり前だと思ったことはない、とそう静かに淡々と告げてきた。
傍にいてくれて、ありがとうな。
心地よい感謝の言葉を添えて。
そっと口角を上げて彼は目を閉じた。
(…だからあなたは全てをひとりで背負おうとする)
(…もっと頼って欲しいのに)
静かに眠ったクライヴの部屋から出ていき、心配していたのだろう近づいてきたトルガルの頭をジョシュアが優しく撫でる。
「大丈夫だよ、今眠ったところだから」
トルガルが尻尾をぱたぱたと振っている。
「兄さんがトルガルにも感謝していたよ」
そう教えるとトルガルの目が輝いた。
凛々しいこの狼はこうした可愛らしい仕草もよく見せる。背中もよしよしと優しく撫でてやった。
「…兄さんに似たのかな」
「…可愛いのよね」
「…だね」
本人の前では言うつもりもないがこの相棒は飼い主によく似たものだ。
また少し時間が経ったら様子を見に来よう。
ここにちゃんといるのだとあの人にもっと分かってもらう為に。
ふたりにとってもクライヴがいてくれることを当たり前だと思ったことはないのだともっと知ってもらうためにも。
※私の初回プレイスタイルはジョシュアとジルを終盤の終盤で連れていく形になったので(なので終盤のサイドクエストは残っておらず、モブハントくらいしかありませんでした(笑))その場合ちょっとしたことでもふたりはクライヴの世話を焼くのは喜ぶのだろうなあという感じになります。
・受け入れる(クラジル+ジョシュア:セリフメイン)
インビンシブル内の拠点内クライヴの私室—そこにはこれまでとこれからの証として贈り物と手紙がたくさん並べられている。ひとつひとつを丁寧にきちんと取ってあり。
彼らの軌跡と関わってきたものすべての人たちの想いがそこにある。
全てが良かったと思えるような出来事ではなかった。
それでもそれをも受け入れてこれからを語る兄と弟の姿があった。
ふたりのそうしたやりとりの中で―。
ジョシュア「兄さんにひとつ聞いておきたかったのだけど」
クライヴ「どうかしたのか」
ジョシュア「兄さんはジルのどこに惹かれているのか教えて欲しいんだ。はぐらかしたりしないでね、そうする責任もあるのだから」
クライヴ「…最もな話だな。そうだな―」
傍に居てくれて、受け止めてくれる。
本当は怒っていたり、言いたいことが沢山あるんだろう。
…それでも、俺自身や俺の意思を大切に想ってくれている。そしてそれを何より望んでいてくれるんだ。
ジョシュア(前にも話し合ったけれど、我慢させている自覚はあるんだよね‥‥)「他にもあるよね」
クライヴ「…気高く、毅然としている。隣に立つとそれを深く感じるんだ。
ロザリスに来たばかりの時は居場所がないと考えていたと話してくれた、その時も礼儀正しく真っ直ぐに俺とお前を見つめていたな」
ジョシュア「覚えているよ。寂しい想いをしていたはずなのに、それを表には出そうとはしないでロザリアに来た意味を精一杯受け止めていた。ロザリアにいてもいいんだと受け入れるようになったのは兄さんのお陰だから、ずっと感謝していたんだろうね」
クライヴ「その後は3人で過ごすようになって…すぐにそれが当たり前になっていったな」
ジョシュア「僕は屋敷からそう易々とは出られなかったから、兄さんの稽古やロザリアの兵達や民のこと、アンブロシアやトルガルを含めて沢山のことを教えてもらっていた。僕が尋ねることも優しく微笑んで受け止めてくれていたよ」
クライヴ「母様が逐一睨みを利かせていたが、ジルは礼儀正しく頭を垂れて上手く対応していたな。
自治領であの人と向き合った時も脅しではなく逃さないここで決着を付けようとレイピアを抜いて共に立ち向かってくれた。お前を抱き止めていた時も同じだ。気高く俺が行うべきことを見送ってくれていたんだ、そうした所も、強く惹かれている…」
ジョシュア「ずっと受け止めてくれていたんだと、意識を取り戻してすぐに気づいたよ。ルサージュ卿をあのままにはしておけないのは僕も同じだった。彼が民の為に立ち上がったのは分かっていたからね。僕らの戦いを見守ってくれていた。最後までそうするつもりだったんだろうね」
クライヴ「ジョシュア、俺は―…」
ジョシュア「ジルがそうして受け入れられるのは、クライヴ兄さんだけだ。僕もそれは受け止めているし、受け入れている。後戻りは出来ないからね。元気になってくれてからはまた凛としてそして柔らかい彼女だ。そのことに感謝しないとね」
クライヴ「ああ…そうだな」
ジョシュア「兄さんが僕とジルが一緒にいることを当たり前の様に思っていないのは知っているさ。それはとても嬉しいよ。でも偶には怒るよ、子どもの頃から僕だって我慢してきたこと、いっぱいあるからね」
クライヴ「そうしてくれ」
※ジョシュアは少年期から受け入れるという選択は取っています。クライヴは節目節目で。ジルは影の海岸にて。
・その音(FF16:クラジル)
※影の海岸のカットシーンの様に、雰囲気は大人向けなふたり。
所謂行為的なものではありません。
沛然たる天から降り注ぐ水の珠は大地を割るのではないかと錯覚するほど轟音を立てていた。
異変が起きてからそれほど時が経っておらず、果たしてこの空の下で恵の雨は降るのだろうかとヴァリスゼアの人々の不安が別の意味でも掻き立てられる。これほどの激しい雨はここ何十年も起きてはいなかったからだ。
かつては召喚獣同士の戦いが起きれば、大地のエーテルは歪み、地形そのものが大きく変動をするーここの所それは連日に起きているマザークリスタル消滅と共にエーテル溜まりが生じ、ますますこの大陸が混沌の焦土と化し終末へと向かっているのだと人々は怯えていた。
風の大陸の中央黒の一帯ベンヌ湖に浮かぶ拠点—インビンシブルに戻ろうとしていた道中この強烈な雨を避ける為にすぐに見つけた洞窟の最奥で一組の男女がお互いに寄り添っていた。
洞窟付近では大地を叩きつけるかのように落ちた水の珠は霧となり、付近を濡らす。これ以上身体を冷やさない様に身を寄せることにした。
今はまだ昼間なのだろう、それでも陰っているこの場所でフェニックスの尾から熱くはない神々しい輝きを思い起こす。
インビンシブルで合流する予定だった弟の方も近くに相棒である狼と共にいて無事なのだと男は語った。普通の“人”にその気配は察知出来ないのだが“今”の彼には可能なのだ。
逞しい身体だけでなく傍に立てかけてある大剣は男の手練れた戦歴を。その精悍な顔つきがまるで何かの運命に抗うかのような意思の強さをそして優しさとどこか憂いを含めた青い瞳がこれまでの出来事を受け入れてきたのであろう真っ直ぐに前を見つめていた。青年時より伸びて濡れた黒髪を少し乱暴に拭いそして静かに雨の音に耳を傾けている。
この世界に起きている異変と混沌を受け止めているのだ。
女の方はしなやかな体つきでその白い肌に白銀の長い髪が非常に調和しており類まれな美貌と麗しさがそこだけ周囲を明るく見せていた。
凛とした芯の強さもその透き通るような青い瞳に映し出される。
男が視線を向けている外の様子が気になるのか身を乗り出そうとして小さくくしゃみが出た。
彼女が元の体勢に戻るより前に彼は己の腕の中に再び抱き込む。
「冷えるぞ」
「…雨、止まないわね」
今は休むことを考えようと視線を彼女の方へ向け。引き寄せられた胸元で彼の鼓動を子守歌代わりに聴きながら静かに目を閉じた。不思議と雨の音が遠ざかっていく。
魔法は使えず不意に訪れたふたりだけの時を過ごしお互いに寄り添って生きている意味については考えるまでもない。
早まっていく彼と自分の鼓動の心地よさを全身で感じながら身を委ね静かに眠りにつくことにした。
※影の海岸にて(黒の一帯)魔法が使えないそこにいるのはただのふたりの男女。という意味とテーマ性があるカットシーンもジルのテーマ曲アレンジも含めて好きなのです。
・寄り添う(ジルとタルヤ)
夜も更けていく静まり返ったダブアンドクラウンにてジルとタルヤはふたりで小さなお茶会を開いていた―。
ジル「クライヴのどこに惹かれている、ね」
タルヤ「無茶をしないようについて行くと啖呵を切ったわよね。そういう危なっかしいところも放っておけないわけ?私は腹立つことの方が多いんだけど」
ジル「…守りたい、と思っているわ。
けれどそれは失ないたくない想いだけではないの。
優しく引き寄せられているの」
タルヤ「‥‥」
ジル「…クライヴは無理強いしないから。私たちのしていることは大部分の人たちは受け入れられない。望まれて行なっている訳でもない」
強制や本人の意思を否定するような強請を彼は行なわない人なのだ。
クライヴはその人の意思を尊んで生そのものに向き合っている。
だからこそ残された時が少なくそうした中で世界を変えなければならない戦いの渦中にいる彼を。
そして所詮は手の上の出来事でしかないと嘲笑うかのようなこの世界の理と現実へと。守り、抗う為にジルは隣に立つと決めたのだ。
「このヴァリスゼアで起きている現実を受け入れて彼はひとりひとりへ目を向けてその人を見出してくれる。
優しく、そうしてくれるの。
ジョシュアも私も小さい頃から彼のそうした所が大好きだったからこそ離れ離れになっても大切に想っていられたのだと、今ならそう分かるの」
月を一緒に見上げたあの時は忘れられないひととき。
再会してから幾度となく、ある時は震えある時には凍えそうになる辛い現実に直面しても共に在て(いて)お互いに手を取りそして心を手探りで引き寄せながらそっと月を見上げた。
メティアは変わらず赤く美しく輝いていた。
彼が生きていて願いが叶ってから生きていた―今共に生きている意味について幾度も心の中で反復した。
優しく愛を込めてその腕の中で彼の名を呼び彼に自分の名を呼ばれるあたたかさを感じながらお互いの命の鼓動を奏でる。
タルヤ「シドと出会って命のやり取りの意味を、クライヴが新しい拠点で皆の居場所を作ってくれて―
インビンシブルに皆を引き寄せて今生きている意味…確かに私の中でも変わっていったわ」
ジル「きっと、それも人らしく生きていることなのだと、私はそう思うの」
タルヤ「幸せだとずっと感じている訳ではないしこれが全て正しいとも思っていないけれど。
私は私の役目を、誇りを持って最後までやり遂げようと決めている。
ジル、あなたもそうなのでしょうね」
ジル「さあ、どうかしら。けれど、これだけは言える。
彼にはずっとそうやって優しく引き寄せられて生きてきた。
あたたかくて優しい炎がここに灯っているの」
タルヤ「絶やさないように出来るわ。
インビンシブルはそうした居場所だもの」