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フルコース

最近は雨ばかりで嫌になる。
前の私は外が静かで、雨の降る音しかしないのが好きだったけど、虎石君と出会ってからはお日さまの匂いがするぽかぽかとした明るい陽気がとても好きになった。

多分虎石君が太陽みたいな男の子だからかなと、どんよりとした外を見ながら呟く。

雨の日はお家デートが多い。
いつもより少し早めに起きてちょっと豪華なブランチ、焼きたてのスコーン、この前友達からお土産で貰ったアプリコットのジャム、この前虎石君が美味しいって褒めてくれたコーンスープ、定番のスクランブルエッグ、ベーコンくるみとチーズのサラダ。
テーブルに昨日買ったお花とセットして心の中で完璧と呟く。

いつもなら遅くてもこのぐらいの時間に起きてくるはずなのにまだ寝てるのは、よっぽど疲れているのかなと考えながらキッチンの後片付けをする。
もうそろそろお越しに行こうかな、いや疲れてるから寝かせておこうかなとぐるぐる自問自答をしていると後ろから抱きしめられる。

びっくりして顔が赤くなっているのを隠すように少し間を置いておはようと声をだす虎石君は私の耳が赤くなったのをかかうようにおはようと顔を近づけながら言う。
2ヶ月ぶりに虎石君にあった私にはこの刺激は強すぎるし心臓に悪いしずるい。

やっとの思いで冷静を装いながらご飯出来てるよと虎石君を食卓に急かす。
そんな私をくすくす笑いながらおはようのキスはとねだってくる虎石君は確信犯だ。

焼きたてのスコーンをぱくぱく食べる彼を見ると、この前見た映画を思い出す。
主人公が彼氏の食事に少しずつ毒を盛って自分の手で殺して彼氏を食べてしまう話で、それを見たあとなんとなく、虎石君って美味しそうだなと考えてしまった。

もし食べるなら凄く時間をかけてとびきり美味しいフルコースにしたい、そんなどんよりとした空に似た色の考えは2ヶ月も会えなかった寂しさの後遺症だろうか。

こんなにも虎石君は、私が触ろうと思えば触れられる距離にいて触り返してくれる関係なのにまだ足りないと求めてしまうこれ以上何も無いのに。
上の空な私の口に虎石君の口が触れる、至近距離で虎石君のまつげの影が見えて、私はつい、「虎石君ってどうしてそんなにかっこいいの?」と口に出すと、虎石君は私のおでこにキスを落として、「秘密」と笑った。

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