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ディスコミュージック

様々な色の光が交差しては弾けては安っぽいミュージックに華をいろどって人は気の向くままに揺れている。

友達の付き合いで来たはいいもののフライドポテトは砂漠みたいにカチカチだし、目はチカチカするし、声をかけてくる男は死ぬほど退屈で最悪なにおいがして。

人の誘いとはいえなんで来てしまったんだろうと、普段は飲まないピンク色の甘いカクテルを見ながら考える。
こんな鮮やかな色のドリンクを頼むなんて普段の私らしくない。

そんな中人混みの中に目を引く男の人がいた。最初はクラブで一人小説を読みふけっているのが珍しくてしばらく見ていて。

顔もスタイルもとてつもなく良いいのに一人だし、いかにも逆ナンしにきました見たいな女の子も彼を遠目に見るだけで去っていくしで、まるでそこに透明の壁があるみたいだそれが面白くて何となく戯れに話しかけて見たくなった。

鉄壁の王子様はどんな匂いがするのかと、でも実際彼は私の言葉に意外にも素直に答えてくれて拍子抜けする。

近づいているようで遠ざかっていく私達の会話は止めどなく続いていく揺れる駆け引きは終わることがない。
スパイシーだけど少し甘いムスクは彼にぴったりので目にかかる前髪に触れたくなった。

多分私達は会った時からこうなる運命だったと神様が告げたように、どこかに行ってしまった友達を置いてクラブを二人で抜け出す。

夜道に伸びる二つの影は天国への道しるべみたいだとアルコールでフワフワした頭で思った。
夜中に初めて行ったクラブから良い匂いのするイケメンと手を繋いで抜け出すなんて私はなんだか昔みたドラマの主人公みたいだなと。

繋いだ手は大きく骨張っていて暖かいそのぬくもりはこれからのことを予感させた。慣れた手つきでホテルに入る彼の横顔は何の感情もなくて、ああこの行為には何の意味も無いんだ思ったとさっきまで一人で盛り上がっていてバカみたいだ。
私はきっとさっきまで遠巻きに見ていた女の子と何も変わらない。

LINEも番号も名前さえ何も知らない泡みたいに消えた彼にはきっと多分に二度と会うことは無いだろう。

あんなにも近いところにいた彼の匂いを私は全て忘れてしまったのだから。
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