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ビトウィーン・ザ・シーツ

「お姉さん、飲み過ぎじゃない?」


もう何杯目から分からない度数の高いお酒を反論する余地すら無い早さで飲みほされて、私は知らない男が酒を飲み干すたび上下する喉を見つめるしかなくて、それと同時に自分の口の中がどんどんと渇いていくような気がした。


顔色一つ変えずにどうせ振られたんでしょ?、と意地悪に笑う彼は名前も知らないけれど この穴があいた心と体を満たすには充分で、見え透いた下心が逆に今は気持ちが良い。
この時を待っていました、と思わんばかりに元カレの悪口をペラペラと喋る私に気持ちのいい相づちを打つ彼の横顔は、どこか遠くを見ていて、その興味がなさそうな眼差しに自分の体温が上がっていくのを感じる。


あれよあれよと気づいた頃にはベッドの上で、自分の趣味では無いワンピースのファスナーが卸されていく。綺麗な顔がどんどんと近づいてきて押し倒されて順序良く進んでいて、慣れた優しい手つきがこの行為を遊びと強調するようでくらくらした。
私の形だけの抵抗は見透かされているようでもう遅いっつーの、と獲物を捕らえるような眼に吸い込まれていく。


「真面目そうなのに大胆な下着じゃん」


「今日振られるなんて思ってなかったから」


「ふーん、こんな可愛い下着あんな男にもったいねーの 」


もう何ヶ月も付き合ってるかのように、髪を撫でて唇を重ねる名無しの男に口答えする気も失せて片手間の行為に身を委ねた。
優しいピロートークも、抱き締められた体温も、朝起きた時には何も残っていなくて律儀に置かれたホテル代と、ルームキーだけが昨日を夢だと感じさせてふわふわとした足取りで駅まで歩く。



いきなれたカフェチェーンのコーヒーは二日酔いに良く聞く気がする。顔をしかめるようなその苦さも今は有り難くて、だんだんと視界がクリアになっていく。


気づいたら街中は思っていたよりも騒々しくて、どこからともなくやってきた女の子達が、駅ナカの広告にスマホを掲げている光景が目にはいる。気になって顔を上げたらでかでかと昨日私を抱いた男が口紅を持ってニヒルに笑っていた。
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