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揺れたレース

「新しい元号は令和です。」


テレビから流れる静かなざわめきと、令和の二文字を見て、へ~とかふ~んとか心の中で言ってはカレーを口に運ぶ。


本当に変わるんだね、とか間違って平成って書くだろうな、とかくだらないことを言い合う。何もかもめんどくさくなって頼んだチーズトッピングのカレーは、温かくて美味しくてまたよりいっそう何もかもどうでも良くなった。


新しい新居に引っ越してから毎日、毎日、段ボールを開けても終わらない荷ほどきには気が遠くなる。もう段ボールごと捨てたい、とぼやく私にやんわりと絶対やめてね、と苦笑いされる。
あんまり物は無いと思っていたけれど、南條君と生活してからこんなにも物が増えたんだと実感して新居の部屋を見渡す。


まだ生活感の薄い部屋にとりあえず設置したベッドは、なんだか大きくみえて自分の家じゃないみたいだ。
手が止まった私にこれが終わったらご飯食べに行こうね、と甘やかしてくる南條君は私を転がすのがうまくなったなと心の中で笑う。


「この重いふりふりのカーテン何?」と怪訝な顔の南條君と目が合う。さぞ当たり前のように、「姫部屋のためのベッドの天蓋だよ」とウインク付きで言う私に「俺聞いてないんだけど」と呆れられる。
「姫部屋は譲れないんだよ!」とか、「そんなスペースなくない?」だとか言い合う私達はなんだか新婚ぽくて面白い。


最終的に折れてくれた彼にベッドの天蓋を取り付けて貰う。こういう時に身長が高いと便利だね、と要らんこといったりする。キスしにくいよね、とかさらっと言ってくる彼はずるい。天蓋をみて想像以上に可愛いね、とテンションが上がる私にそうだね、と興味の無さそうな返事を返される。


こんなの付けても結局俺のベッドで寝るくせにと意地悪に言う南條君に私は顔を赤くすることしか出来なかった。










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